洗練されたデザインに首ったけ! アブガルシア・ロキサーニ 3000MSHは眺めているだけでも夢が広がる高コスパ機だ!
アブガルシアのスピニングリールは、2016年にひとつの転機を迎えました。設計思想のリニューアルです。アブガルシアの中では、2016年は「スピニング元年」と言われています。ダイワが2018年に導入した新しい設計思想である「LTコンセプト」より2年先行し、「新素材」、「軽量化」、「高精度」、「新機構」をブラッシュアップしたハイエンドライン「REVO」シリーズに製品を次々と投入しました。以後、アブガルシアのスピニングリールは日本市場での存在感を増し続けています。そんな中、ハイエンド「REVO」シリーズのすぐ下のミドルライン「ロキサーニ」シリーズが、猛烈なコスパを引っ提げて市場に割って入ったのが2018年6月。洗練されたデザインと異常なまでのコスパで、マニアの心を鷲掴みにしています。そんな「ロキサーニ」シリーズより、今回は万能リールとして様々な用途に使い倒せる3000MSHを紹介します。
「ロキサーニ」の立ち位置
アブガルシアのスピニングリールは、フラッグシップモデル「REVO」シリーズが最も機種数が多く、以下、「ロキサーニ」、「スーペリア」、「クロスフィールド」、「オーシャンフィールド」、「カーディナル」、「ZENON(ゼノン)」の7モデルがあります。ロキサーニシリーズは、スピニングリール、ベイトリールどちらもラインアップがありますが、ロキサーニシリーズは、フラッグシップモデルである「REVO」シリーズのすぐ下のラインになります。しかし、他のメーカーではエントリークラスの価格帯(ロキサーニ 3000MSHはメーカー希望小売価格 15,000円)となっています。この価格帯ながら、フラッグシップモデルのREVOシリーズのエッセンスが存分に盛り込まれた、超コスパモデルとなっています。
ロキサーニ 3000MSHの基本スペック
ロキサーニ 3000MSHの基本スペックを見てみましょう。ギア比は6.2、ハンドル1回転あたりの最大巻き長さは96cmのハイギアタイプです。ドラグは最大釣力5.2kgの2wayドラグが搭載されています。ラインキャパは、ナイロン4号で150m、PE2号で220m巻けるディープスプールがついています。自重は242gとなっています。スペック的には、ショアジギングに向いたスペックと言えます。
フラッグシップ・REVOシリーズの遺伝子を極限まで投入した超ハイコスパモデル!
ロキサーニシリーズには、アブガルシアのフラッグシップモデルである、REVO譲りの技術が惜しげもなく投入されています。まず、ボディ剛性の部分は、同社が「DURAMETAL」と呼ぶ、高強度アルミ合金の鋳造品を使ったワンピースボディを採用し、強固なハウジングを形成しています。これは、REVOシリーズに多用されている「FEATHERMETAL(軽量マグネシウム合金)」の技術を安価に移植したものと言えるでしょう。そのDURAMETALボディに支えられるドライブギアは、高強度アルミを精度の高いマシンカットで切り出したもので、力強いギアリングをDURAMETAL製ボディがガッチリ支える構造となっています。
最大のウリ、DURACARBONハンドルは、性能も見た目のインパクトも絶大!
そして、ここがロキサーニシリーズの最大のウリなのですが、ハンドルバー材質に、アブガルシアでは「DURACARBON」と呼んでいる、カーボンプリプレグの切り出し品を使っているのです。航空機やレーシングカーなどの構造部に使用される、軽くて強靭な素材です。これは硬くて加工性が極悪なのですが、ロキサーニのハンドルには、切り出したあと、熱曲げ加工されたシートがそのままハンドルバーになっています。アブガルシアのREVOシリーズにのみ使われていたDURACARBONハンドルが、メーカー希望小売価格15,000円前後のロキサーニシリーズにも採用されたことは、ただただ驚きとしか言いようがありません。軽量で強靭、見た目のインパクトも絶大なこのハンドルは、めちゃキャッチーで、アブガルシアのアイデンティティとも言える、優れたデザイン美の一翼を担っています。
2wayドラグ、アルミスプール、ソルトシールドベアリングなど、機能に死角なし!
もちろん、ウリはDURACARBONハンドルだけではありません。2wayドラグシステムや、精度の高いアルミスプール、耐塩水性の高いソルトシールドベアリングがピニオンギヤ部に、他の部分にも耐食性の高い素材を使用したHPCRベアリングが使用されています。このうち、特筆すべきは2wayドラグシステムで、ドラク内に組み込まれているドラグワッシャーの組み付け順序を変えるだけで、ドラグ釣力を半分にできる機構です。すなわち、最大釣力を2.6kgにすることができる機構です。ショアジギングなど、普段は最大釣力5.2kgの「toughモード」で使用しますが、最大釣力2.6kgの「lightモード」にすることで、同じドラグノブの回転量でも、より細かな調整が効かせられるモードです。より細いラインを使い、繊細なドラグ設定が必要なアジングやトラウト釣りなどに最適なセッティングです。この、まったく味が異なるドラグを、スプールを変えることなくできるのが、アブガルシアの2wayドラグシステムです。
どこでコストを抑えているのか?
ロキサーニシリーズの高スペックぶりを見れば見るほど、価格との整合性に疑問符が付きますが、一体どこで帳尻を合わせているのでしょうか? 実はカタログには現れない部分でコストダウンが随所に図られています。例えばローター材質。アブガルシアには、カーボン繊維強化樹脂として「C6カーボン」という素材を持っているのですが、ロキサーニのローター材質についてはどこにも記載がありません。ガラス繊維強化樹脂ローターではないかと思われます。また、ところどころで安価なスチールパーツが使われていたり、パーツが省略されていたりするようです(部品表を見るとパーツ数が少ない)。そういう、安価なハイスペックモデルの裏に、コストダウンの努力の跡が窺えます。
ライバルは存在するのか?
ロキサーニ 3000MSHにはライバルは存在するのでしょうか? 価格帯でいうと、シマノ・ナスキーあたりになるのかもしれません(ダイワには2021年1月現在、同価格帯のモデルはありません)。しかし、各社2021年モデルが続々とベールを脱いでおり、気鋭のモデルが出てきています。ダイワ・21フリームス LT3000-XH、シマノ・21アルテグラ C3000-XGあたりがガチンコ勝負といったところでしょうか? 21フリームスは新開発のカーボン長繊維強化樹脂「ZAION V」を多用し、コストダウンを図りつつ、さらなる軽量化を、21アルテグラは、マイクロモジュールギアⅡ、サイレントドライブといった、これまで上位機種にしか採用されなかったテクノロジーを採用し、市場に衝撃を与えています。ロキサーニ 3000MSHは2018年6月発売で、約2年半の開きがあること、さらにアブガルシアは2021年5月に、「REVO」を超える衝撃の新フラッグシップモデル「ZENON」のデビューが控えていることから、埋没してしまった感がありますが、コスパの破壊力とデザインの美しさは、ロキサーニで決め打ちさせる魅力は十分です。
ロキサーニ 3000MSHは、「マニア受け」だけでは本当にもったいない!
一部の熱狂的信者に支えられてきた感のあるアブガルシア・ロキサーニ 3000MSHではありますが、価格を考えたら、戦闘能力は最強レベルです。ランカーサイズのバス、本流トラウト、サーフからのショアジギング(青物、フラットフィッシュ、シーバスなど)、磯でのロックフィッシュ、エギングなど、どんな釣りにも対応できるスピニングリールとして、マニア以外にもユーザーの輪を広げたいモデルであります。2wayドラグシステムを堪能してみたい人、DURACARBONハンドルに興味がある人には激しくおすすめします。