釣具の保管、皆さんどうしてますか? 大切に保管するために注意すべきこと
作成:2023.06.15更新:2023.06.15
目次
釣りというアクティビティは、ジャンルが非常に多岐にわたるため、経験値の上昇とともに、あれも釣ってみたい、これも釣ってみたいとエスカレートしやすく、気が付いたらタックル収集地獄にハマってしまったなんて方、たくさんいらっしゃるのではないかと思います。大量に買い集めてしまったロッドやリールをはじめ、ラインやシンカー、ウキや針などの仕掛け関連の消耗品に至るまで、どのように保管していますか?
どんなにたくさん道具を集めても、一回の釣りで使うタックルはせいぜい2~3式と言ったところでしょう。実際は出番がほとんどないロッドやリール、全然使わない消耗品がたくさんあることでしょう。
そんな釣具たち、保管の仕方が悪いと使わずして劣化し、いざと言うときに使い物にならなかったなんてことになりかねません。今回は、釣具を末永く愛用するための保管方法について考えてみたいと思います。
納竿時に現場で行うこと
まずは釣りを終えた直後に現場でやるべきことから説明します。納竿の際、ロッドやリール、ライン、ルアー、ウキなどの塩抜きを完全にできることはまずあり得ませんが、最低限、付着しているホコリや砂粒、水滴をきれいなタオルなどでふき取っておくことはしておかねばなりません。
特に振出式のロッドは必ず水滴を完全に取ってからでないと畳んではいけません。塩水の水滴が残った状態でロッドを縮めてしまうと、ロッドの内部に入り込んだ水滴が乾燥した際に塩の結晶が析出し、そのまま使い続けていると、次に使用する際に伸ばした時、ロッドが潮を噛んで固着し、納竿時に縮められなくなる原因となります。
フカセ釣りの場合はコマセバッカンがありますが、このコマセバッカンだけは、現地である程度念入りに洗っておきましょう。水汲みバケツで何度も何度も新しい海水を汲み、ブラシでこびりついたコマセを完全に洗い流さなければなりません。この作業を怠ると、帰宅後の本洗いが大変になります。ブラシを使ってコマセの残りを徹底的に落としたら、バッカンの中にゴミや濡れものをひとまとめにして持ち帰りましょう。
帰宅後、ビールを飲む前に必ず行うこと
帰宅したら、イの一番でお風呂へ直行して汗を流し、サッパリしたところでビールをあおる瞬間が至福のひとときであることは間違いありません。しかしちょっと待ってください。釣り道具はどうしましたか? 玄関に放置ですか? ビールのお楽しみは少し後にとっておいて、まずは今日一日頑張ってもらったタックルの塩抜きを先にやってしまいましょう!
ロッドを水拭き
濡らしたタオルを使い、ロッドを徹底的に拭き上げます。ジョイント部分、フリーガイドの固定部分、リールシート周辺は特に塩が残りやすい部分ですので、念入りに拭き取ります。
ガイド部分は、特に丁寧に拭き上げます。小さなガイドは、濡らした綿棒で根気よく塩を拭き取ります。拭き上げが終わったら、できればロッドを伸ばした状態で陰干ししましょう。ガイドの汚れを拭き取る場合は、ティップを破損しないように、特に慎重に行いましょう。水拭きが終わったロッドは、振出式ロッドの場合は伸ばした状態で、マルチピースの並継ロッドの場合はバラした状態で陰干しし、完全に水分を乾燥させてから保管しましょう。
リールに優しく冷水シャワー
最近のリールは防水性能が高くなっていますが、それでも、精密機械ですので、真水にドボンはいただけません。まず、ドラグをいっぱいまで締め、ドラグノブの上から冷水シャワーをかけます。お湯をかけてしまうと、リール内部の油分を熱で溶かしてしまう可能性があるためNGです。
また、水をかけながらハンドルを回すのもNGです。リール表面の塩分を洗い流すのが目的ですので、強烈な水流も避けたいです。シャワーをかけるのは常にドラグノブの真上からにして、ローターの下部や、アンチリバーススイッチの隙間などからボディ内部に水が浸入しないよう心がけましょう。洗い終わったら、乾いたタオルなどでリール表面の水滴をふき取り、ドラグノブを緩めてから(ドラグノブを締めたまま長時間放置するとドラグワッシャーがヘタってしまうため)、完全に水分が乾燥するまで1日程度陰干しします。
リールが完全に乾燥したら、指定の個所に注油をします。メーカー純正のリールオイルには、粘度の高いグリースタイプ、粘度の低いオイルタイプがありますが、グリースタイプは主にラインローラーに、ベイルやメインシャフト、ハンドルなどにはオイルを注油するようにします。ローラークラッチ部や、ダイワのマグシールド部など、注油厳禁の個所もありますので、取扱説明書をよく確認しましょう。
ルアー・シンカー・ウキなども真水で塩抜きを
ルアーは使ったものをそのままルアーケースに収納してはいけません。未使用のものと一緒にしないよう、使用したルアーをまとめてしまっておけるケースを用意しておきましょう。自宅に帰ったら洗面器に水道水をため、使用したルアーを1時間程度漬けておき、塩抜きをしましょう。その後、水切りを十分行い、乾燥させてから、ルアーケースに戻しましょう。シンカーやウキも同様に、真水で良く洗い、水気を乾いたタオルなどで完全にふき取ってからしかるべきケースに収納しましょう。
バッカン、クーラーボックスなど
最後に、バッカン、クーラーボックス、水汲みバケツ、ランディングネットなどの洗浄を行いましょう。私は自宅がマンションのため、屋外の広い水場がありません。そのため、これらは風呂場に持ち込み、自分の身体と一緒に洗ってしまいます。
蛇足ですが、バッカンやクーラーボックスの洗浄にボディソープを使うと、臭いが取れやすいと感じています。皮脂を餌とする常在菌が引き起こす悪臭を洗い落とすための有効成分が、魚やコマセの臭い除去に効果的なんだろうなと勝手に思っています。
釣具の保管方法
納竿から帰宅後の釣具の洗浄についてはこれまで説明したとおりですが、ここからは釣具の保管について説明して行きたいと思います。屋外保管か室内保管か、戸建てにお住まいか集合住宅にお住まいか、釣具の保管に関して家族の理解があるか否かなど、人によって釣具の保管の前提条件がまちまちだと思います。そのため、釣具の保管は斯くあるべしと、一概に言及することはできません。
しかし、釣具を末永く愛用するため、自然劣化を防ぐために考慮しなければならないことは、どういう保管条件であるかにかかわらず同じです。それは、「熱劣化」、「紫外線劣化」、「吸湿劣化」を起こす原因となる状態に釣具を晒すことをを避けることです。特に樹脂製品はこれらのストレスによる劣化が起こりやすいので、保管の際には細心の注意を払いたいものです。
熱劣化を防ぐために
熱劣化とは、長時間高温環境下に置かれた場合、熱負荷の影響でプラスチックの分解物質が生成され、それが酸素と結びつくことによって、過酸化物となって樹脂の分子を分断し熱分解が起こります。熱劣化は高温であるほど促進され、短い時間で劣化します。こうした劣化が起こると、樹脂製品の機械強度が下がり、変色や脆化などが起こり、本来の性能が発揮できなくなります。
この熱劣化を防ぐためには、やはり温度変化の少ない室内保管、あるいは空調管理がしてあるトランクルームなどに保管できれば理想です。屋外の物置あるいはコンテナストッカーに収納する場合は、できる限り日の当たらない建物の北側に設置しましょう。
夏場、日が当たる場所に設置した物置の中などは、炎天下の車の中と同様、あっという間に50℃以上になります。そういう場所に保管されたラインなどはたちまち劣化してしまいますので、絶対に高温に長時間さらされることがないよう、ラインやソフトルアーなど、劣化しやすい消耗品は可能な限り室内保管しましょう。また、熱劣化は高温下ほどではないものの、低温下でも起こりますので、凍結するような環境では屋外保管はしない方が良いでしょう。
紫外線劣化を防ぐために
紫外線は、波長10nm~400nmの、不可視光線(目に見えない電磁波)で、プラスチック製品が紫外線を受けると、熱劣化と同じように分解物質が生成され、それが酸素と結びつくことで過酸化物となり、プラスチックを構成する分子鎖を徐々に切断して行きます。
これにより、脆化、変色、機械強度の著しい低下を招きます。この紫外線劣化は釣具にとって最もダメージを受けるファクターと言えるでしょう。紫外線の発生源は殆どが太陽ですが、蛍光灯、LEDライト、ブラックライトなどの光源にも紫外線の波長を持つ電磁波が出ています。そのため、室内保管といえども照明の光に曝されるだけでも劣化が進むのが紫外線劣化の厄介なところです。
そのため、紫外線劣化を防ぐには、光のない場所に保管する事が何よりも大事になります。紫外線によるダメージを特に受けやすいものはライン、中でもナイロンラインは特に弱いとされていますので、メーカーによってはスプールにUVカットフィルムが巻かれているものもありますので、こういうものを購入するのはおすすめです。そして、光の当たらない場所に保管します。可能であれば、酸化を少しでも抑制するため、脱酸素剤を入れたファスナー付きビニール袋に1巻ずつ保管すると良いですね。
吸水劣化を防ぐために
私は化学の専門家ではないので詳しい説明はできませんが、吸水劣化とは、アミド結合またはエステル結合という分子構造をもつものに起こりやすいと言われる現象で、加水分解とも呼ばれます。これらの結合構造により、樹脂に靭性や耐熱性、耐薬品性なとの機能を付与できる一方、アミド結合やエステル結合は水と結びつきやすい性質があり、水と反応してできる生成物が分子同士の結合を断ち切り、熱劣化、紫外線劣化と同じく脆化、変色、機械強度の著しい低下を引き起こします。
この、アミド結合を持つ代表的なものがポリアミド(一般的にナイロンと呼ばれる)、そして、エステル結合を持つ代表的なものはポリウレタン、ポリカーボネートなどです。ナイロンラインはこの吸水劣化により、膨潤、脆化が特に起こりやすいため、一定以上の価格帯の製品には、表面に吸水劣化を防ぎ、耐久性を高めるコーティングが施されています。磯釣りをメインで行う方は、ある程度グレードの高いナイロンラインを選ぶ方が良いでしょう。
吸水劣化を防ぐには、多湿の環境を避けて保管しなければなりません。密閉性の高いツールボックスなどに保管し、室内であれば遮光できる引き出しの中やクローゼットに、屋外であれば物置などの暗所に保管します。そして、保管場所の周囲には除湿剤を置いたり、新聞紙を下に敷いたりして、湿気を吸収する環境を作ってやると良いでしょう。
どんなに対策をしていても劣化は避けられない
尚、これまで説明した、熱劣化、紫外線劣化、吸水劣化は、それぞれが単体で起こることはなく、どんな環境に置かれていても、それらすべての劣化は僅かながら進んでしまうのは避けられません。そのため、熱対策、紫外線対策、吸水対策のすべてを考慮して、全体の最適化を考えなければなりません。
- 熱対策→車の中などの保管はNG。
- 紫外線対策→日光、蛍光灯などの照明の光を避ける。
- 吸水対策→湿度の高い場所での保管を避ける、乾燥剤を使用する。
この3つを常に頭に入れ、場所の制約がある中で最善の保管方法を自分なりに考えて下さい。
ディスプレイ保管について
釣具をインテリアとして飾るディスプレイ保管はアングラーの憧れですよね。壁に取り付けたラックにロッドをたくさん掛ける、ロッドスタンドに立てる、リールをリールスタンドに掛けてサイドボードの上に並べる、ルアーをコレクションケースに並べるなどなど、釣具店さながらのレイアウトを施した部屋は大変素晴らしいと思います。
しかし、こういうディスプレイ保管も気をつけなければならないことがあります。基本は前項で説明した3つの劣化対策を考慮すればOKです。
- 日が当たらない場所に限定する
- 南向き、西向きの部屋は避ける
- こまめにホコリをとる
- 小さな子供やペットがいる家では不可
これらを考慮すると、実はディスプレイ保管は、劣化を防ぐ保管の方法としては適していないことが分かるのではないかと思います。釣具のコレクションをディスプレイするための地下室などの専用部屋があれば別ですが、明るく、日当たりが良い生活空間でのディスプレイ保管は、釣具を長持ちさせるという観点から言うと、あまりおすすめできる方法ではありません。
ロッド、リール、消耗品も全て正しく保管しましょう!
ロッドの保管は専用のロッド袋に1本ずつ入れて、ロッドケースに収納しましょう。ロッドケースにロッドを収納する際は、ケースに収納できるキャパを決して超えてはいけません。詰め過ぎは即、ロッドの傷付きやガイドの破損に繋がります。
リールもクッション性のある専用のリールシェルターに入れて、冷暗所にしまうのがベストです。ルアー、シンカー、ウキ、ライン、針なども、然るべきケースに入れて、冷暗所に保管するようにしましょう。
何度も言いますが、熱劣化、紫外線劣化、吸水劣化から釣具を護るのはアングラーの責任です。今日とても楽しかった釣行が、次回も快適に行えるように、意識することが大事ですね!