真夏の釣り、天敵は陽射しと虫、しっかり対策しよう。
作成:2022.09.12更新:2022.09.12
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温室効果ガスによる地球温暖化が叫ばれて久しいですが、一向に解消の兆しが見えないどころか、世界では100年に一度の気象災害が毎年のように起こっていて、悪化の一途を辿っています。
日本列島においても例外ではなく、毎年災害級の大雨や40℃を超える猛暑を記録しています。これらは、地球上の全ての人間の意識変革と、それに伴う生活様式の変革が行われないと解消は難しいと言わざるを得ないでしょう。
日本は美しい四季のある国とされていますが、ここ数年は春と秋が極端に短くなってしまった気がします。長い夏と長い冬の二季の国に近付いているような気がしてなりません。
我々アングラーをはじめ、アウトドアアクティビティを楽しむ者にとっては非常に厳しい環境になっています。特に夏の暑さは場所にもよりますが、早いところでは5月下旬頃から夏の陽射しが照りつけ、遅いところでは10月上旬頃まで残暑が続きます。
今回は、一年のほぼ三分の一を占めるようになってしまった、夏の釣りについて、注意すべき点と、便利なグッズについて解説いたします。
過酷な季節、それでも釣りをするのだ!
釣り師には真夏も真冬も関係ありません。釣りは一年中するのです。それが釣り師の性ですから。日本のほとんどは四季のある国ですから、通年釣れるものもいますが、基本は季節ごとに釣り物が変わります。それぞれ、釣り方も全く異なるでしょう。一年を通じて退屈することがないのが日本の釣りです。
なんだかんだ理由をつけて、日本のアングラーは一年中釣りをするわけですが、やはり真夏の釣りはコタエます。暑さと強い日射しに、ショアアングラーもオフショアアングラーも、それなりの対策が必要になります。キーワードはズバリ「熱中症対策」と、「虫刺され対策」です。熱中症対策には、「水分補給(ミネラル補給)」、「深部体温冷却」、「日焼け対策」があります。それぞれについて、意識すべき点を紹介します。
水分補給(ミネラル補給)のために気をつけること
敢えて「水分補給(ミネラル補給)」と書いたのには理由があります。真夏の釣りは朝イチから大量の汗をかきます。体温調節のために放出される汗の成分は、水が99%ですが、残りの1%には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル分のほか、乳酸塩、尿素、皮脂などが含まれ、さらに鉄、亜鉛、ニッケル、クロムなどの微量元素も含まれています。
こうした様々な成分が体から失われた際に、水だけを大量に補給し続けると、体液の収支が釣り合わなくなり、いわゆる「水中毒(みずちゅうどく)」の状態になってしまう危険性があります。
水中毒とは、低ナトリウム血症のことで、血中のナトリウムイオンの低下に伴い、軽度の場合は疲労感、頭痛が、ひどくなると嘔吐、痙攣、意識障害、昏睡、最終的には死亡と、重篤な症状を来すこともあります。
ここまで大げさではないにしろ、水分をこまめに取ることは重要ですが、ミネラル分を適宜補給することを心がけたいです。常に高温環境下で仕事をする人は、失われたミネラル分を補給するために、水分を取るほかに、補助的に塩をなめながら、或いは梅干しを食べながら作業をしているはずです。
釣り師はつい夢中になってしまうと、水分補給(ミネラル補給)を忘れてしまいがちですが、のどが渇いてから水分を取るのでは遅いそうです。体重の2%に相当する水分が失われると危険域と言われます。体重50kgの人なら、1リットルの水分が失われると危険域ということです。
15分おきくらいでこまめに少しずつ水分を取りましょう。そして、水だけでなく、塩分タブレットを適宜口に含んだりして、ミネラル補給も忘れずに行いましょう。経口補水液を飲むのが一番確実な熱中症対策なんだそうです。ドラッグストアなどでまとめて購入しておくと便利でしょう。
深部体温冷却とは?
聞き慣れない言葉かも知れませんが、熱中症対策には深部体温を冷やすことが何よりも大事です。汗をかき、汗が蒸発する際に気化熱を奪い、表皮の体温を下げるのはもちろん重要ですが、それよりも身体の内部、すなわち全身を巡る血液を冷やすことがより効果的です。
深部体温は通常、表皮温よりやや高い37℃前後と言われていますが、これが40℃前後になると熱中症の症状が出てきます。深部体温を冷やすには以下の方法が適しています。
動脈が通る箇所を冷やす
頸動脈が通る首、腋窩動脈(えきかどうみゃく)が通る脇の下、鼠径部(そけいぶ)を通る大腿動脈などの上から保冷剤を当てて冷やします。大量の血液が流れる部分を冷やし、冷えた血液が体内を巡るため、効果的に深部体温を下げることができます。
コンビニエンスストアでは、凍らせた状態でドリンクが販売されていることがあります。見つけたら即GETすることをおすすめ致します。タオルで包んで首に巻けば、長時間クールダウン効果が続きます。溶けてしまったら飲んで水分補給もでき、一石二鳥です。
冷たい飲み物を一気に飲む
水やスポーツドリンク、経口補水液などを凍らせてクーラーボックスに入れておくと、現場で適度に溶けて、低温をキープしたまま飲むことができます。これを一気に飲むと深部体温を素早く下げることができます。水分補給も同時にできますので一石二鳥です。また、水の場合は、かち割り氷のように氷の塊をかじるのも良いです。
大塚製薬
最近は「アイススラリー」と呼ばれる、スポーツドリンクを小さな氷の粒に凍らせて、シャーベット状にしたものも販売されています。アイススラリーは、凍った状態でも軽く手で揉むと素早く飲むことができ、深部体温の冷却効果も長いため、特におすすめです。
手のひらを水で冷やす
手のひらには微細な血管が複雑に張り巡らされており、ここを水で冷やすことでも効率よく深部体温を下げることができます。氷水のような冷たい水に手をつけると血管が収縮し逆効果になりますので、常温の水道水をバケツなどに溜め、手のひらを下にして冷やします。
メッシュべストを着て、あらゆるポケットに保冷材を入れる
釣具店、スポーツ用品店などで、夏季シーズン限定ではありますが、シースルータイプのフィッシングベストが売っていることがあります。私はこれにタックルを一切入れずに、全てのポケットに保冷材を入れて釣りをすることがあります。冷たさは長くは続きませんが、2時間程度は体を冷やしてくれます。クーラーボックスに予備の保冷材ををたくさん入れておけば交換しながら一日中体を冷やしながら釣りをすることも可能です。
このように、体を冷やす方法はいくつもありますので、複数の対策ができるように準備しておくと安心です。
尚、言わずもがなですが、アルコールは水分補給にはなりませんので、絶対にNGです! 酒気帯びでの釣りは、水難事故に直結する、大変危険な行為です。厳に慎みましょう。祝杯は自宅に帰って、身体をきれいにしてから、獲物を肴に思う存分あげましょう。
日焼け対策も抜かりなく!
日焼けは火傷と同じです。真夏の強い陽射しは危険です。日焼けは、紫外線に過剰に暴露された際に起こる反応で、紫外線による攻撃を緩和するために起こります。日焼けには2種類あり、表皮が赤く火照りを伴い、急性の炎症状態を示す「サンバーン」と、体内のメラニン色素が表皮に沈着する「サンタン」です。
紫外線は、波長の長さによって、UVA、UVB、UVCがあります。このうち、UVAとUVBは地表まで届きます。表皮を赤く炎症させるものがUVB、肌の奥まで届き、皮膚の硬化やシミシワの原因となるのがUVAとなります。
短期的には急性の「サンバーン」による発赤、浮腫、水疱などの重篤な症状を回避するために対策をします。
暑くても半袖半ズボンはNG!
夏の海に半袖半ズボン、サンダルで釣りに行くのは自殺行為とも言えましょう。とてつもなく強い陽射しに、1時間も釣りをすれば顔から首、腕、足と、全身遠火にあたり続けたかのように真っ赤に焼けてしまいます。帰宅後風呂に入るのも難儀するダメージを受け、酷いと水膨れができ更に酷くなると頭痛、発熱します。そうならないためにも、服装でガードしましょう。
UVガード機能のある服装で固めるべし!
夏のウェアは釣具店で売られているものを着用するのが良いです。釣具店のアパレルであれば、通気性、ドライ性能、紫外線ガード機能がほぼ網羅されていると考えて良いでしょう。帽子、サングラス、シャツ(長袖推奨)、パンツ(長ズボン)、を着用しましょう。海水浴用のラッシュガードを着用するのもおすすめです。UVガード効果が高く、これ一枚で、首から上を除く上半身の日焼け対策になります。
もう一つの敵、虫対策!
夏場は熱中症、日焼け以外にも気を付けなければならないことがあります。それは虫対策です。昆虫類(蚊やブヨ、マダニなど)には、繁殖のため哺乳類の吸血をするものが多くいます。これらの生物は、体内で卵を作る際に特殊なたんぱく質を必要とします。そのたんぱく質が、人間をはじめとした哺乳動物の血液に含まれているため、産卵を控えたメスのみが吸血します。蚊は人間の痛点を交わす細い針を皮膚に打ち込み、同時に唾液を体内に送り込み、血液が固まらないようにします。この唾液が人間にアレルギー反応を起こすため、かゆみや腫れ、水疱をもたらします。蚊にされてしまうとかゆみで集中力が維持できなくなります。非常に不快なので、不幸にも刺されてしまったときは、速やかにかゆみ止めを患部に処置しましょう。
蚊よりも激烈な症状に悩まされるのが、写真のブヨ(ブユ)です。これは針で刺して吸血するのではなく、アゴで皮膚を噛みちぎって吸血します。この際、蚊と同様、血液が凝固しないよう唾液を送り込みます。このため、蚊と比較すると出血の量が多く、また、送り込まれる唾液の量も蚊とは比較にならないほど大量になるため、噛まれてから1週間以上(耐性のない人は2週間以上)、腫れ、疼痛、発熱の症状が続きます。ブヨにやられてしまったら、釣りはあきらめて、速やかに病院で処置してもらうことをおすすめします。
対策は先にも言った通り、半袖半ズボンを避けることと、虫よけスプレーを肌にマメに吹いて、害虫を寄せつけないことに限ります。また、服の色には、虫を寄せやすい色、寄せにくい色があります。黒系の服装は多くの虫を寄せ付けやすい色ですので、注意が必要かもしれません。スズメバチも黒い色は敵と認識するカラーだそうです。逆に白系の服装は虫が寄り付きにくいと言われています。服のカラーに気を遣うのも対策のひとつですね。
海では心配ありませんが、淡水域ではヤマビルをはじめとしたヒル類にも注意が必要です。ヒルもブヨ同様、皮膚を齧って血液が固まらない唾液を送り込み吸血します。大量に吸血することと、吸血されていることにほとんど気が付かないこと、出血がいつまでも止まらないことなどから、大変厄介な存在です。ヒルの厄介なところは、少しでも肌が露出している場所があると容赦なく襲ってくることです。靴の裏などに付着し、巧みに靴の隙間などから侵入し、靴下の口などから足に噛みついたりします。ヒルに吸血されたら、速やかにヒルの体液が注入された幹部を指で強く押しながら血液を絞り出して水で洗い流し、消毒液で消毒した後、レスタミンなどの抗ヒスタミン軟膏を塗り、止血のために絆創膏を貼っておきます。
なお、ヒルの忌避は、通常の虫よけスプレーで対応可能です。ただし、対ヒルの場合は効果の持続時間が蚊よけよりも短いので、30分に1回程度の頻度で腕、脚(靴の上からで効果あり)、首などにしっかりと吹き付けておきましょう。
コマセバッカンにはスズメバチが寄りやすいので注意!
最後に、フカセ釣り限定ではありますが、夏場はコマセバッカンにスズメバチやアシナガバチなどがしつこく寄って来ることがあります。しかし、ハチを追い払おうとして刺激してはいけません。追い払っても、コマセがそこにあって、においを発し続けている以上、何度でも寄ってきます。人間が刺激しなければ、ハチが襲ってくることはほとんどありません。ハチは黒い服を敵とみなす性質があるので、上から下まで黒ずくめの服装をしていると威嚇してくるかもしれません。そんな時でも、人間から攻撃すべきではありません。ハチの攻撃スイッチが入ってしまうと手に負えなくなります。
熱中症対策、日焼け対策、虫対策を万全にして、過酷な真夏の釣りを安全に楽しみましょう!
真夏の釣りは冬の防寒よりも過酷ではありますが、いろいろな魚が高活性になる季節であります。特に青物はショア、オフショアを問わず、チャンスが多い季節です。青物以外も、高水温を好むタコやアナゴ、イシモチやシロギス、マゴチ、スズキ、イシダイなどなど、夏がハイシーズンのターゲットを上げたらキリがありません。しかし、アングラーの準備不足で現地で体調を崩してしまったりしては元も子もありません。熱中症対策、日焼け対策、虫対策をしっかりと準備し、安全に真夏の釣りを楽しみましょう!
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