海釣りの仕掛けは種類が多いと思った方、タイプは違っても基本は全部一緒です!
作成:2022.05.09更新:2022.05.09
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釣りのタックルの進化は目覚ましく、ロッドやリールはどんどん軽く、強く、高感度になっており、ラインも新素材や新しい製糸技術の開発により、より細く、強く、長持ちするものが日々リリースされています。ルアー関連に至っては、今まで考えもしなかった魚種が狙えるようになったり、およそ魚やエサに見えないものでバンバン魚を釣ったり、老舗・新興や規模の大小を問わず、数多のメーカー日夜研究開発に腐心し、毎日のように新しい商品が発表されています。こうしたタックルの進化のおかげで、昔は釣りの対象にはならなかった巨大魚を釣り上げることができるようになり、釣りというジャンルの幅も大幅に拡大しました。
こうして、釣具の選択肢が倍々ゲームのように拡大する中で、特に初心者アングラーにとっては、自分が何を選べば良いのか、わからなくなってしまうこともあるでしょう。使いもしないものを買い集めても無駄になります。冒頭に結論めいたことをいうようで恐縮ですが、釣りの仕掛けはたくさんの種類がありますが、「基本の部分は石器時代に発祥したとされる黎明期の釣りとほとんど変わっていない」のです。
すなわち、「竿」、「糸」、「針」、「餌」の最低4つがあれば、大抵の魚は釣れるということです。なので、難しく考えず、シンプルな仕掛けを心掛けるとわかりやすいと思います。実際、釣りをはじめてしばらくたち、知識や経験が増えてくると、お金をかけて複雑な仕掛けに邁進するなんて時期が誰にでも来ますが、さらに経験値が上がって、大ベテランの域になると、仕掛けはどんどんシンプルになって行きます。
大事なのは、仕掛けに色んなギミックを使うということではなく、ターゲットの魚のサイズに合わせた仕掛けを作ることと、ターゲットの魚がいるポイント対し、正確に仕掛け、すなわちエサを送り込むことですので、こだわるべきポイントは、第一にターゲットの魚と直接アクセスする「針」、次に「糸(ハリス・道糸)」となり、その次が、ターゲットの魚がいるポイントに正確に仕掛け投入し、魚を掛けた後に確実に回収するための「竿」、「リール」ということになります。
海釣り仕掛け、必ず覚えておきたい基本のタイプ8選
海釣りの仕掛けは、ターゲット魚種、釣りを行う場所、釣り方により星の数ほどありますが、主に初心者におすすめの仕掛けについて、できるだけたくさん紹介して行きます。なお、仕掛けについては穴釣り仕掛けやフカセ釣り仕掛けなど一部を除いて、市販の「〇〇釣り仕掛け」を購入することをおすすめします。特に針を複数本使う釣りの場合、自作でエダスを出したりして仕掛けを作るのは現場では大変です。もし自作したいと思うなら、休日などを利用して自宅でまとめて作っておきましょう。市販の仕掛けを用意しておけば、現場で台紙から引き出してメインラインに接続するだけで簡単に釣りが始められます。
ちょい投げ仕掛け
まず最初に初心者が行う釣りとして非常にお手軽なのがちょい投げ釣りです。漁港や小堤防などの波止で、10号~15号前後のシンカーをつけた天秤に接続し、50m以下程度の範囲を探り、ハゼやシロギス、カレイなどを狙う釣りに使用する仕掛けです。市販のちょい投げ仕掛けには、2本針仕掛けと3本針仕掛けがありますが、どちらを選んでも構いません。初心者には2本針仕掛けの方が扱いやすいかも知れません。同じ仕掛けの針のサイズ違いを3種類程度用意しておきましょう。現場では根掛かりをして針を失うことが多いので、仕掛けは数セット用意しておかなければなりません。仕掛けの全長は1m前後のものが多いですが、初心者には60cm程度の短いものの方が扱いやすいです。
投げ釣り仕掛け
ちょい投げ仕掛けよりも重い、25号~30号のシンカーをつけて100m以遠のポイントに仕掛けを送り込み、大型のカレイ、シロギス、マゴチ、アイナメなどを狙うものが投げ釣り仕掛けです。幹糸やハリスはちょい投げ仕掛けよりも太いものが使われ、針も大きくなります。競技用のシロギス仕掛けなどは、手返しの良さを最優先に考え、カエシのない10本針仕掛けなども存在します。また、競技用シロギス仕掛けには、ボビンに巻かれた50本針仕掛けも販売されており、現場で好きな針数に切って使うようなものもあります。
サビキ仕掛け
小アジや小サバ、イワシなどの小型の青物を狙うものから、大型の飛ばしウキをつけて遠投し、イナダやワラサなど、中・大型の青物の回遊ルートに打つサビキ仕掛けまであります。針にはピンクやグリーンのラテックススキンや、サバ皮などが巻かれています。小型のサビキ仕掛けは6本針が主流で、大型のサビキ仕掛けは1本針〜3本針仕様が多いです。また、最近では、コマセカゴを使わず、青物狙いの中・大型サビキ仕掛けの一番下にメタルジグをつけてフルキャストし高速リトリーブで青物を狙う「ジグサビキ釣り」も流行しており、ジグサビキ釣り専用の仕掛けも多数販売されています。
どちらもアミコマセなどを詰めたコマセカゴを幹糸に取り付けて、海中でコマセを少しずつ撒きながら青物を足止めにしつつ、サビキ針に食いつかせます。小型のサビキ仕掛けは子供でも扱いやすく、魚を釣りやすいため、ファミリーフィッシングに特におすすめです。
トリック仕掛け
トリック仕掛けは、小型魚用のサビキ仕掛けによく似た仕掛けですが、針にラテックススキンやサバ皮などはついておらず、コマセカゴもつけません。6本〜10本程度の小型の針がついているもので、小型のイワシ、アジ、サバなどを簡単に数釣りができる仕掛けです。自動餌付け器という特殊な容器の上にアミブロックを置き、アミブロックの上にハリスを擦り付けると自動的に針先にアミが刺さります。針に触ることなく餌を針につけられるので安全です。活性の良い日は、餌をつけず、カラ針でも釣れます。コマセは必要で、スプーン1杯程度の少量をこまめに撒いて、回遊してきた魚を足止めにします。
胴突き仕掛け
ハリミツ公式 クログチ仕掛け
胴突き仕掛けとは、主に船釣りで多用される仕掛けで、仕掛けの一番下にシンカーがあり、仕掛けの本線である幹糸からエダスを数本出し、それぞれのエダスの先端に針がついている仕掛けのことを言います。バーチカルにタナを探る釣りのため、タナを探り当てれば針すべてに魚をかけることも不可能ではありません。
ショアでもこの胴突き仕掛けは使えます。水深のある堤防から胴突き仕掛けを垂直に落としてみたり、投げ竿で沖のポイントにキャストする、胴突き投げ釣りも盛んに行われます。特に岩礁地帯で胴突き仕掛けをロングキャストしてロックフィッシュやカワハギ、青物などを狙う釣法は「キャスティズム」とも呼ばれ、プロアングラーの村越正海氏により様々な胴突き投げ釣りが紹介されています。
胴突き仕掛けの一番のメリットは、「根掛りに強い」ことであり、根掛りを恐れず、果敢に根を攻めることができます。また、アタリ感じやすいことも挙げられます。総じて、天秤のアームの先端に仕掛けを付ける吹き流し式の投げ釣り仕掛けよりも釣りやすいメソッドと言えます。
ぶっ込み仕掛け
胴突き仕掛けとほぼ同じ構造をした仕掛けですが、ターゲットとなる魚が大型でパワーがあり、歯が鋭かったり顎の力が大変強いため、ラインやハリス、針に至るまで様々な場所が強化されている仕掛けをいいます。ターゲットは主に石物(イシダイ/イシガキダイ)を中心とした底物なのですが、これらはエサのサザエやウニなどを殻ごとバリバリと齧って砕く顎の強さを持っています。これらの歯の鋭い魚からハリスを守るために、金属製のワイヤーハリスを使うことがあります。また、根ズレからメインラインを守るための瀬ズレワイヤーというのもあります。
メインラインはナイロン20号などの極太ラインを使います。当然リールはパワーのある両軸受けリールを、竿は石物専用ロッドを使います。
ブラクリ仕掛け
ブラクリ仕掛けは、テトラポッド帯での穴釣りや、磯やゴロタ場でのロックフィッシュ狙いのための専用仕掛けです。狭く、暗い穴や、岩の割れ目、海藻が生い茂っている藻場などに隠れているロックフィッシュを直撃で狙うため、常に根掛かりと、根ズレによるハリスの傷つきのリスクが付きまといます。そのため、ブラクリ仕掛けは、極端に短いハリスがつけられていて、さらに根ズレによるハリスの傷つき劣化を抑制するため、ハリスの素材はナイロンでもフロロカーボンなどのモノフィラメント(1本の繊維)ではなく、ナイロン糸や木綿糸などを複数本編み込んだマルチフィラメントの強力なものが使われています。
ブラクリ仕掛けは、ナス型錘の下に短いハリスと針がついているものがスタンダードですが、錘の代わりに微妙にカーブした金属プレートが使われているブラー、平べったい錘の下にティンセル付きの針が付いている、スイムリグ(泳ぐブラクリ仕掛け)などもあります。また、錘の部分にアイの模様を入れたり、ホログラムが貼られて水中でキラキラ光ってロックフィッシュを誘い出すタイプなど、さまざまなブラクリ仕掛けが販売されています。
ウキ釣り仕掛け
釣り堀などでウキ釣り一度はしたことがあるでしょう。道糸にウキをつけた仕掛けを流し、ウキの挙動に全神経を集中するという、他の釣りとは少し趣が違う仕掛けです。ウキを道糸に固定し、一定のタナを探る固定ウキ仕掛けと、表層からボトムまで探ることができる機動力の高い遊動ウキ仕掛けがあります。構造は非常に単純なのですが、撒いたコマセの流れの方向と沈下のスピードに合わせて、仕掛けの流れ方、沈下スピードをコントロールし、撒き餌と刺し餌を同調させるために仕掛けの重量を考慮し、さらに自然な沈下を演出するためにハリスに微小なジンタンを多段打ちしたりと、その奥は大変深く、理論とメカニズムの研究がつづけられていて、日々新しいメソッドが発表されています。
釣りをしている最中も、潮流、潮位、風、波などの状況に合わせて、適宜仕掛けの調整(ガン玉やジンタンの数量調整やウキの残浮力変更、ウキ下長さ調整など)を行わなければならない、的確な状況判断と臨機応変なチューニングが必要な釣りです。ある程度の経験が必要な釣りではありますが、自分の頭の中でシミュレートした海中の状況と、それに合わせた戦術がばっちりハマった時の快感はたまりません。
海釣り仕掛け、こんなのもあるぞ、特殊な仕掛け4選
先の項で紹介した仕掛けたちは、海釣りのシーンではジャンルを問わず、必ずと言ってよいほど経験するであろう仕掛けです。ここからは、「こんな変わった仕掛けもあるよ!」と言った、特殊な仕掛けを紹介します。
カットウ仕掛け
ヤマシタ公式 ショウサイフグ仕掛 SFK
オフショアのフグ釣りに使われる仕掛けです。25号〜30号のシンカーにエサとなるアサリの剥き身や鶏肉などを刺せるエサ針がついていて、その下に15cm程度と25cm程度垂らしたハリスにトレブルフックを付けた掛け針が2本ついた仕掛けです。上部のエサを突きに来たフグのアタリを感じたらロッドを大きくあおり、エサ針の下の掛け針にフグを掛ける仕掛けです。フグ以外に、カワハギにも使える仕掛けです。すなわち、「ホバリング(水中で静止する)しながら餌をついばむ」魚種に有効な仕掛けです。
カッタクリ仕掛け
カッタクリ釣りとは、小型のボートに乗って、水深50m以下の比較的浅いオフショアで行う釣法のひとつなのですが、所謂「手釣り」です。木製の糸巻きにラインを巻き、30号程度のシンカーをつけた天秤のアームの先端に、乾燥させた魚皮を巻いた、「バケ」という疑似餌をつけて海に投入します。着底したらボトムから2~3m程度のエリアまでの間、仕掛けを手でしゃくりながらアタリを待ちます。魚が食いついたら、手で仕掛けを手繰り寄せます。主にカンパチ、カツオ、イナダなど、小・中型の青物を狙う釣りです。魚のアタリやフッキング後の走りを指先にダイレクトで感じることができるエキサイティングな釣りですが、肩に疲労がたまる釣りのため、「肩に来る」→「カッタクリ」となったと言われています。
乗り合い船などの場合は、カッタクリ釣り用の短いロッドおよびパワーのあるリールを使用し、周囲の釣り師の邪魔にならないように釣りを行います。
ひとつテンヤ仕掛け
マダイ、タチウオをはじめとして、ボトムエリアを中心に棲息する様々な大型魚が狙える釣りがひとつテンヤ釣りです。似た釣りにタイラバがありますが、タイラバは完全な疑似餌釣りであるのに対し、ひとつテンヤには生のエビをつけますので、釣果の面ではタイラバより有利な釣りです。また、タイラバでは釣れる魚がマダイや青物、メジナやクロダイなどに限定されるのに対し、ひとつテンヤではそれらに加え、ロックフィッシュやフラットフィッシュ、フグやタコなども釣れる、エビを食べるものであればすべて釣れる可能性がある、守備範囲の広い仕掛けです。
ヤエン仕掛け
あおりねっと フッカーヤエン
最後に紹介するのは、特殊中の特殊と言えるでしょう。アオリイカのヤエン釣りの仕掛けを紹介します。基本の仕掛けはアジの泳がせ仕掛けです。アジの尾筒の部分の側面にある硬いゼイゴの部分に針を刺し、アジを自由に泳がせます。この時リールのドラグは一番緩めた状態にしておき、置きざおにしてイカがアジに襲いかかるのを待ちます。アオリイカがアジに近寄ってくるとアジは逃げようとしてラインを引っ張り、ドラグが作動してラインが出て行きます。
アオリイカがアジを抱と、例外なく後頭部から食べ始めます。食べ始めてしばらくすると、アオリイカはアジに夢中になり、警戒心が極端に低下します。この時、ゆっくりとラインを張り、リールをゆっくり巻いて距離を詰めていきます。その状態でも以イカはアジを抱いたままムシャムシャ食いついていれば、ヤエン針投入のチャンスです。距離を30mくらいまで詰めることが出来たら、道糸をピンと張って手で持ち、ヤエン針を道糸に取り付け、ロッドを立てて45°程度の角度を取って、ヤエン針を道糸に沿って滑らせていきます。道糸のテンションを緩めないよう気を付けながら(緩めるとヤエン針が道糸に絡みます)、アオリイカのところまで送り込んでフッキングさせます。ヤエン釣りは常にバラシのリスクがあり、エギングよりもばらすことが多い釣りです。その分、スリリングでテクニカルな釣りとして、南紀地方を中心に愛好者が多い釣法となっています。
仕掛けの基本構造を理解し、自分の理想の仕掛けを作れるようになろう!
以上、海釣りの仕掛けをいろいろと紹介しましたが、冒頭でも書いたように、一部の特殊な仕掛けを除き、竿があってリールがあって道糸があってハリスがあって針があるという構造は同じです。構造は同じでも、ターゲットの魚のサイズやパワー、狙うべき水深、距離、水中地形などによって少しずつが変わっているだけであるということがご理解いただけたのではないかと思います。メーカーが製品として市場に出している仕掛けの仕様やネットの情報がすべてではありません。様々な釣りを経験することによって自身の知識と経験値を高め、釣行後は必ず良かった点、悪かった点をさらい出し、次回の釣行に活かす。さらなる高みを目指して飽くなき追究を続けるアングラーになりたいものですね。