磯釣り、夏場の服装は素材とカラーリングを工夫し、暑さと陽射しと害虫のリスクを低減しよう!
作成:2023.07.24更新:2023.07.24
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夏場の釣りは、地球環境の変化により、ここ半世紀くらいで非常に危険を伴うアクティビティになってしましました。古き良き昭和の時代、夏休みの宿題は「午前中の涼しいうちにやりましょう」と言われていたのですが、現在の日本の夏には「涼しい時間」なんてほとんどありません。地域差は当然ありますが、日の出と同時に気温は一気に上がり、40℃を窺う酷暑という日も少なくありません。
夜間でも気温が25℃を下回らない熱帯夜も一日や二日のレベルではありません。釣りに限った話ではありませんが、屋外のアクティビティには相応しくない季節、それが夏場と言ってもよいでしょう。そして直近の数年間は異常な暑さと、それに起因する自然災害が頻発し、特に水辺のアクティビティーは控えるべきかもしれませんが、少ない好コンディションの日を狙って磯釣り師は海に出ます。
今回は、真夏の磯釣りの服装と、安全のために心得ておかなければならないことについて説明したいと思います。
夏の磯釣りはとにかく暑い
現代の夏、特に梅雨明け直後、南岸の小笠原気団が運んでくる熱波に覆われる関東以西の地域では、生命の危険をきたすほどの酷暑に見舞われます。夜明けとともに一気に気温が上がり、午前中に35℃以上の猛暑日に到達してしまう日も少なくありません。基本的には、そういう日に釣りをすることは大変危険です。釣りはもちろん、そもそも外出自体控えるべきです。しかしそう言ってしまうと身も蓋もありませんので、身体の安全を確保しながら磯釣りを楽しみたいと考えているアングラーの方に、対策のヒントを考えてみましょう。
怪我のリスクが高い磯では肌の露出は最小限に
灼熱の夏の磯では、ついつい短パン・Tシャツなど、海水浴客かと思うような格好で釣りをしたくなるものですが、腕や脚を大きく露出した格好は危険です。まず、磯は足場が悪いため、常に転倒の危険があります。転倒して手をついてしまったり、足を岩にぶつけてしまったりすれば、たちまち皮膚をざっくりと切ってしまいます。磯ではどんなに暑くても、長袖・長ズボンの着用が必須です。そして手にはフィッシンググローブを着用しましょう。
写真のような恰好をする場合は、必ず下に長袖のTシャツ、スパッツなどを着用したレイヤードファッションにするべきです。この場合、下に着用すべき肌着は、通気性と紫外線カット性能、ドライ性能に優れた商品を選びましょう。安価なコットン製のものより、毛細管現象により身体から出た汗を速やかに空気中に放出し、蒸発させる際に気化熱を奪って表面温度を下げてくれる、ポリエステルなどを極細に製糸したマイクロファイバーを素材とした製品の方が、高価ではありますが機能的で長持ちするはずです。
ラッシュガードを着用すれば、紫外線対策もできる
海水浴などで着用する「ラッシュガード」は、紫外線をカットする加工が施されており、日焼け止めを使わなくても、強い陽射しから身体を守ってくれます。ラッシュガードは体に密着するような着心地なので、多少暑苦しさを感じるかもしれませんが、基本的には濡れた状態で着用するものなので、思い切って真水で濡らした状態で着用すると快適です。
冷感タオルを首に巻くのは激しくおすすめ!
アメリカで開発された冷感タオル「COOLCORE」という商品があります。これは、特殊な繊維で作られたタオルで、タオル生地内に水分を循環させる機能を持たせたもので、水分を保持したタオルから水がゆっくり蒸発する際に気化熱によりタオル表面の温度が奪われ、冷却効果を発現させるというもので、タオル全体に水を含ませ、軽く絞ったあと、タオルを広げて勢い良く振ることで、瞬時にタオルの熱が下がるというものです。タオルが完全に乾燥しない限り、何度でも振るたびに冷却効果が復活するため、快適な状態が長く続きます。私は釣りの際はもちろん、炎天下では日常の外出時でも愛用しています。
最新冷却グッズ・アイスリングは救世主となるか?
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NASA(アメリカ航空宇宙局)が開発したという、潜熱蓄熱素材・PCM(Phase Change Material:相転移物質) の技術を応用した、まったく新しいタイプの冷却素材です。「アイスリング」、「ひえリング」、「PCM ネッククーラー」などの名称で、スポーツ用品店やホームセンター、ネットなどで様々な商品が売られています。
28°C以下で凍結をすると言われる素材で、首に装着すれば、30分~1時間程度はひんやりとした感覚を得ることができます。現在のところ、冷却効果の持続時間に難があると言われていますが、冷たくなくなっても、クーラーボックスの中など、冷たい環境下に置いておけば15分~20分程度で再凍結しますので、非常に便利なグッズです。今後、冷却の持続時間が長くなるようであれば、凍結の時間が短くなるようであれば、酷暑対策のメインストリームとなること間違いありません。
冷凍したペットボトル飲料は効く!
冷却効果および冷却の持続時間の長さで言えば、タオルで巻いた冷凍ペットボトル飲料、これが一番かも知れません。真夏の海辺のコンビニエンスストアやスーパーなどでは、ペットボトル飲料が冷凍された状態で売られていることは少なくありません。現地で入手できない場合は、自宅で冷凍しておいて、氷をたっぷり入れたクーラーボックスに収納しておきます。ただし、釣りをしているときは邪魔になりますね。また、首にずっと巻いたままにしていると、タオルに巻いていたとしても凍傷になる場合があるので十分注意しましょう。釣りの休憩時間などに数分間首にあてて、素早くクールダウンするという使い方が良いでしょう。
夏の紫外線は目に見えない危険な電磁波
夏の太陽は地球に対して高角度で太陽光を浴びせてきます。太陽光には目に見える可視光線、それよりも波長の長い赤外線、波長の短い紫外線、それよりも更に波長が短い、X線、ガンマ線をはじめとした放射線など、様々な電磁波を含んでいます。
それぞれの電磁波には様々な特性があり、レントゲンや電子レンジなど人々の生活に役立っている反面、生物にとって悪い影響を及ぼす面もあります。特に釣り場で影響を受けるのは紫外線です。
紫外線は、殺菌作用があったり、体内でビタミンDを生成したり、良い面もあるのですが、被ばく量が多くなると、身体に重篤な影響を及ぼします。代表的なものは過剰な日焼けによる火傷ですが、眼への悪影響も深刻です。急性症状としては結膜の充血や角膜炎、目の奥の強い痛みなどがあげられますが、慢性的に強い紫外線を浴び続けると、白内障へと進行するリスクがあります。これらを防ぐため、紫外線から身体を守るウエアとアイウエアが必須です。
アイウェアは陽射しがなくても必ず着用すべし!
磯で釣りをする場合は、海中の状態を視認するため、雑光をカットする偏光サングラスが必須ですが、本来は目の保護が目的です。水面からの照り返し、岩肌からの照り返しにより、ものすごい量の紫外線が目に入ってきます。アイウェアなしでは一日で角膜や水晶体、場合によっては網膜にまで大きなダメージを受けてしまいます。
偏光サングラスを選ぶ際にチェックしておきたいのが「UVカット率」と「可視光透過率」です。UVカット率は、ほとんどの製品が99%~99.9%以上ですから、あまり気にする必要はないかもしれませんが、気を付けたいのは可視光透過率です。一般的なサングラスの可視光透過率は30%~60%くらいまでありますが、釣り用やスキー用など、照り返しが過酷な環境で使うものの可視光透過率は10%~30%程度のものが主流です。
可視光透過率は低ければ低いほど暗いレンズとなります。太陽光の直接的な眩しさは暗いレンズの方が抑えられると思うかも知れませんが、あまりに可視光透過率が低いものは、瞳孔が開いてしまって、 却って眩しく感じてしまうこともありますので、極端に暗いレンズのものは避ける方が無難でしょう。可視光透過率は20%~30%程度のものが磯釣りには向いているでしょう。
紫外線から身体を守る服装の色
肌の保護は服装で対策しますが、服のカラーリングに気を付ける必要があります。紫外線を通しにくい色は「黒」色の素材です。黒色の素材は、紫外線を吸収しやすいため、肌まで通しにくいともいえるのですが、同時に熱も吸収しやすい性質があるため、暑さ対策とはなりにくいところが玉に瑕です。次に紫外線を通しにくいカラーは紺系の素材です。次いでグレー系、青系、緑系、黄系、赤系、白系と続きます。
ざっくりと言えば、暗い色のものは紫外線を通しにくい素材と言えます。ただし例外があります。白をより白く見せるために、蛍光剤を使用したものは、白い素材でも紫外線カット効果が高いです。ポリエステル系の白い肌着やワイシャツなど、暗いところでブラックライトを当てると青白く光るものが該当します。
素材別では、最も紫外線カット効果が高いのはポリエステル系の素材です。次にコットン系、麻系と続きます。ポリエステル系の素材は、様々な機能性素材として使われています。皆さんが良くご存知なのものは、ユニクロの夏用機能性素材「エアリズム」ではないでしょうか? ポリエステルの夏用機能性素材は通気性にもドライ性能にも放熱性にも優れています。
これらを考慮すると、ポリエステル素材で、黒系の服装をするとのがベストと思われがちですが、磯釣りの場合はもう一つ考慮しなければなりません。「虫対策」です。
虫がたかりやすい色
磯釣りをしていると、たくさんの虫がやってきます。特にコマセバッカンを広げていると、ハチやアブ、ハエの類が結構たかってきます。そんな時、アングラーの服装のカラーによっては、虫を誘引する効果があります。答えを言ってしまうと、黄色、オレンジ色には虫の誘引効果があります。最も厄介なアブ・ハチ類は黄色、オレンジ色、黒色の、蚊は黒色の服にたかりやすいといわれています。
紫外線を通しにくく、熱を吸収しにくく、さらに虫がたかりにくい色となると、薄いブルーあたりが無難なのかもしれません。
日焼け止めを必ず使おう
帽子もサングラスも服装もバッチリ固まりました、フローティングベストもスパイクブーツも着用し、熱中症対策、防虫対策、安全対策もバッチリ決まりました。あとひとつ、女性アングラーにはわざわざ私が言及するまでもありませんが、男性アングラーが疎かにしがちなものは「日焼け止め」です。日焼け止めには、UVカット性能を表すスケールとして「SPF」と「PA」というものがあります。
「SPF」とは、「Sun Protection Facter」の略で、シミ・そばかすの原因となる紫外線Bをどれだけ防げるかを表します。SPF1=20分の紫外線Bをカットします。つまり、SPF20と言えば400分=6時間40分、SPF50と言えば1,000分=16時間40分の紫外線Bのカット効果があるということです。SPFスケールは、SPF10からSPF50+までの6段階あります。
「PA」とは、「Protection Grade of UVA」の略で、しわやたるみの原因となる紫外線Aをどれだけ防げるかを表します。PAは、プロテクト性能によって、「PA+」から「PA++++」まで、4段階あります。
一般的にはSPF50、PA+++くらいを使うと思いますが、数値の高いものを使うよりも、数値はそこそこでも、こまめに塗り直すほうが紫外線対策としては優れています。せっかく塗っても汗をかけば流れますので、単純に数値通りの紫外線カット効果が持続するとは限りません。
クリームタイプとミストタイプ
日焼け止めには、写真右のクリームタイプと、写真左のミストタイプがあります。クリームタイプは白い高粘度の液体状の日焼け止めで、手のひらに適量出してから、肌に塗り広げるタイプのものです。基本的な日焼け対策はこれで行いますが、手を洗う場所が近くにないときや、顔に日焼け止め対策をしたいときはミストタイプが便利です。ミストタイプも基本的な使い方はクリームタイプと同じです。手のひらに数プッシュして、身体に塗り広げるのですが、粘度が低く透明な液体なので、クリームタイプの日焼け止めの上にも塗れますし、何度塗りなおしても白くならないので手軽に使えます。
クーラーボックスは高性能なものを!
炎天下の磯では、基本日陰がありません。クーラーボックスは常に強烈な直射日光にさらされています。クーラーボックスの性能は真夏にこそ真価を問われます。クーラーボックスは使用される断熱材によって、いくつかのグレードに分けられます。価格帯もピンからキリまであります。詳細な説明は別の機会に譲りますが、ざっくりと、「発泡スチロール」、「発泡ウレタン」、「真空断熱パネル」があり、後者ほど断熱性能が高く、自重は重く、高価になります。6面発泡スチロール断熱のクーラーボックスと、6面真空断熱パネルのクーラーボックスでは、同サイズで10倍近いコスト差があります。
日帰り釣行であれば6面真空パネル断熱のクーラーボックスまでは必要ないかもしれませんが、真夏の炎天下での釣りは、地面の熱が異常な高温になっていることが多いので、底面だけは真空断熱パネルを使用したモデルをおすすめします。写真のモデルは、ダイワ・RX SU-1800Xという、底面のみ真空断熱パネル、残り5面が発泡ウレタンのモデルですが、私がメインで行っている夜明けから約半日の地磯フカセ釣りで程度であれば、真夏の炎天下でも中の氷が溶けきってしまうことは全くありません。私は18リットルのクーラーボックスに約1kgの板氷と500gの保冷剤を2個を入れ、飲み物と食わせエサ、締めて血抜きした魚を入れますが、釣りをしている間炎天下の磯にずっと置いていても、氷は帰宅後も半分以上、溶けず残っています。
あらゆる対策を講じ、真夏の磯釣りも楽しもう!
真夏の釣りは非常に過酷です。今後数年間、さらに過酷さを増し、真冬の極寒期以上に釣りに不向きなシーズンとなってしまうかも知れません。無理してまで灼熱の真夏に釣りをする必要はないのかもしれませんが、それでもこれまでに説明した熱中症対策、紫外線対策について事前の準備をきちんと行い、心身に余裕を持った行動をすれば、必要以上に恐れることもありません。一番大事なのは「撤収のタイミングを見誤らないこと」に尽きます。事故が起こる際、多くの場合が「まだ大丈夫」、「もう少し粘る」といった、無理をした末の撤収判断の遅れが原因であることがほとんどです。この点だけは、臆病であるに越したことはありませんね。
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