「優れたもの」「上級の」と言う名を持つ、唯一フルサイズラインアップする「アブガルシア スーペリア」は全てのフィールドが相手だ!
アブガルシアのスピニングリールのラインアップとしては中級グレードにあたる、「REVO(レボ)」、「ROXANI(ロキサーニ)」に次ぐモデルである「Abu Garcia SUPERIOR(アブガルシア スーペリア)」は、アブガルシアのスピニングリールのラインアップとしては唯一、1000番から5000番までフルサイズのラインアップを持ち、ほぼすべてのフィールドを網羅するモデルとなっています。そのラインアップの中でも汎用性の高いミドルサイズモデル、スーペリア3000SHにフォーカスし、一体どこが「SUPERIOR」なのか、解説して行きたいと思います。
Abu Garcia SUPERIOR がターゲットとする釣りのシーンは?
アブガルシア スーペリアは、メーカー希望小売価格9,600円(1000s)から11,500円(5000H)という、非常にリーズナブルなコスト帯でありながら、アブガルシア社がラインアップ全モデルについて、FW(フレッシュウォーター)、SW(ソルトウォーター)それぞれに適した釣りのシーンを提案する力の入れようです。
ちなみに、今回インプレする3000SHについてメーカーサイトでは、「FW:ネコリグやジグヘッドで狙うビッグバス・本流のトラウト/SW:シーバス・磯場のルアーゲーム・シイラ、カツオの高速プラッギングゲーム」と、明確に定義しています。3000SHのディープスプールモデルである、3000MSH以上のモデルはソルトウオーター専用のようで、フレッシュウオーターシーンの記載はありません。ラインアップ中最も小さい1000Sは、「FW:エリアトラウト・渓流トラウト スローリトリーブゲーム/SW:アジング・メバリング・メッキ・イカメタルのスローリトリーブゲーム」となっています。このように、スーペリアシリーズは、ほぼすべてのフィールドをカバーできると、メーカー自らが自信を持ってアングラーに贈るシリーズとなっています。
スーペリア 3000SH の基本スペック
スーペリア3000SHは、アブガルシア社によると、フレッシュウオーターではネコリグやジグヘッドによるビッグバス、本流トラウト釣り、ソルトウオーターでは、シーバス、磯場のルアーゲーム、シイラ、カツオの高速プラッギングゲームを想定しています。淡水用としてはもちろん、海水用としても、トローリングなどの大物ジギングゲームを除くほとんどの釣りに対応できるリールとなります。
ギア比は6.2のハイギアタイプで、ハンドル1回転あたりの最大ライン巻き上げ量は96cmとなっています。ラインキャパはPE1.2号で150m、ドラグ釣力は最大5kg、自重268g。数値だけ見ると特段目立つところは見当たらない、一般的なスペックではありますが、それでもアブガルシア社はこのリールの想定シーンをかなりヘビーなところにおいています。そのヘビーなシーンでパワフルなパフォーマンスを担保するために、ケーシングを見直し、独自のドラグ機構を備えることで、コストを上げることなく、上位機種同等の剛性を実現しています。
DURAMETAL製ワンピースボディコアの採用がタフなユースを担保する!
スーペリアの剛性を担保するために最も寄与しているものが、ドライブギア、ピニオンギアなど、駆動系を支えるボディコア部に採用されている、DURAMETAL製一体型ボディです。これは、リールフットから脚にかけてのステム部からメインドライブが収まるボディ、ボディーカバー(側板)までのパーツを、高強度アルミ鋳造合金でワンピース化し、高い剛性と軽量化を両立した機構です。これにより、ねじれの応力に対し特に高い耐性を示し、リーリングの軸心がブレることがなく、最適なギアフィーリングを長期にわたって維持するもので、上位機種のロキサーニ、更にハイエンドのREVO ALXに採用されているテクノロジーです。
アブガルシア独自の2way DRAG機構はスーペリア以上で搭載。
アブガルシア スーペリア 3000SHは、メーカーサイトの提案シーンにもあるように、タフなファイトとシビアなコントロールを要求されるシーンをメインターゲットにしていますが、そのハードな場面を闘い抜くために、独自のドラグ機構を備えています。フラッグシップ機「REVO」とスーペリアの上位機種「ロキサーニ」に搭載されている、2way DRAGシステムがスーペリアにも採用されています。これは、4枚あるドラグワッシャーのうち、カーボンマトリックスハイブリッドドラグワッシャー(後述)の順番を並べ替えることで、ドラグ強度をカタログ値の最大値(3000SHの場合は5kg)でタフに使用する「Tough」モードと、最大ドラグ強度をカタログ値の半分程度に抑えつつ、細かい強度調整ができる「Light」モードに切り替えができる機能です。通常はToughモードで使用しますが、エギングやアジング、メバリングなど、ドラグを緩めに設定し、ヒット後も細かく調整が必要なゲーム(ラインブレイクからの保護の意味よりも、ターゲットの身切れ、口切れによるバラしからの保護)のシーンではLightモードを使用します。
2way DRAGシステムを実現させるキーパーツ「カーボンマトリックスハイブリッドドラグワッシャー」とは?
この、2way DRAGシステムの要となるものが、「カーボンマトリックスハイブリッドドラグワッシャー」です。通常のカーボン繊維強化樹脂は、カーボン繊維を熱硬化性樹脂などで固めたものですが、カーボンマトリックスは、カーボン繊維を固めている熱硬化樹脂などのバインダーをさらに2000℃以上の高熱で熱処理し、熱硬化樹脂自体もグラファイト化(炭化)させたもので、圧倒的な耐熱性と耐薬品性、耐摩耗性を獲得したワッシャーとなります。このカーボンマトリックスにフェルトワッシャーを貼り合わせたハイブリッドワッシャーがスーペリアには1枚使われています。上位機種のロキサーニと最上位機種のREVOには、カーボンマトリックス製ドラグワッシャーと、カーボンマトリックスハイブリッドドラグワッシャーが4枚使われており、より軽く滑らかな滑り出しができるドラグになっています。
2way DRAGシステム、3000SHでは切り替え使用する機会は少ないか?
2way DRAG機能、フィールドを問わずすべての釣りで使い倒す人には非常に便利な機能かも知れませんが、3000SHを購入しようと検討しているアングラーは、ライトジギングなどある程度パワーのある釣りを想定しているはずで、そういったアングラーはToughモード固定かも知れませんね。2000番、1000番を購入しようとしているアングラーには大変訴求力のあるファンクションとなりますね。
1万円のリールにどこまで求めるか?
その他、マシンカットねじ込み式アルミハンドル、Salt Shield ベアリング(ピニオンギアに採用)、COGギアデザイン(コンピュータ解析によるギア歯型形状の最適化)など、強度、耐久性にかかわる部分の設計には抜かりはありません。正直、これだけの機能を織り込んだリールが、実勢価格1万円を切る価格で手に入るとは驚きです。この、驚愕のハイコストパフォーマンスがこのリールの商品名である「Abu Garcia SUPERIOR」の「SUPERIOR(優れたもの、上級のという意味)」たる所以です。
一体どこでコストを抑えているのか?
ここまでタフで激しい使い方を想定しているリールで、この価格で販売できるということは、どこでコストをカットしているのかとも思ってしまうのですが、スペックを細かく見て行くと、ラインローラーにベアリングが使われていなかったり、ドライブギア、ピニオンギアなどのパーツの材質がアルミではなかったり(亜鉛鋳造合金と思われます)、リバース機構が無かったり(正直なくても全然困りません)、ベールがアブガルシアの上位機種に使われるユニフローベール(アルミ合金を使用したワンピースベール)でなかったり、防水ドラグでなかったりして、それなりにコストを抑えるところは抑えています。
上級者、リールマニアのサブ機として、改造用ベースモデルとしての使い方もアリか?
Abu Garcia SUPERIORは、基本設計が上位機種と比較しても遜色ないハイスペック機であり、もちろん購入状態そのままでも十分に使えますが、上級者や改造マニアのアングラーがパーツを改造して自分だけのオリジナルリールを作るベースモデルとして購入するのも面白いと思います。基本性能が高いスーペリアを購入し、ベアリングを追加・変更したり、ギアをアルミマシンカット品に変更したり、ハンドルをロキサーニやREVOに使われているDURA CARBON製に変更したりして、さらにタフに使い倒すのはいかがでしょうか?