アブガルシアの激安リール、カーディナルⅡ SX2500Sは究極の汎用リールだ!
ABU GARCIA(アブガルシア)は、欧州や米国では、総合釣具メーカーとして確固たる歴史を持ち、抜群の知名度を誇っていますが、日本ではどちらかというと、ルアーフィッシング用タックルの専門メーカーとして認知され、マニアが好むブランドという立ち位置かもしれません。ルアーフィッシングを好む釣り人の中には、アブガルシアの熱狂的なファンが多数存在します。そんなアブガルシアのスピニングリールの中で、驚異のコスパとセンス良いデザインで、初心者からベテランまで魅了する、汎用性の高いスピニングリール、カーディナルⅡ SX2500Sを紹介します! その前に次の項では、「アブガルシア」というブランドの歴史をすこし紐解いてみたいと思います。
アブガルシアとは?
アブガルシアは、もともと1921年にスウェーデンで創業された、ABウルファブリケン社(創業者のイニシャルのAB、時計工場を意味するウルファブリケン)のことで、略称としてABUと呼ばれていました。社名の通り、機械式懐中時計と、タクシーメーターを作っていた会社でした。第2次世界大戦中の1941年に釣具の製造をはじめ、当時製造していたタクシーメーターの商標「RECORD」という名前で、同社最初のベイトキャストリールが発売されました。そして、1951年、ABU社を一流釣具メーカーに一気にのし上げた大ヒットベイトリール、「RECORD AMBASSADEUR(レコード アンバサダー)5000」が誕生しました。
「大使」という名前の由緒正しいリール
「アンバサダー」とは、日本語で「大使」を意味します。なぜ、そんな名前になったのでしょうか? アブ社は、1951年に、これまでの同社製品の品質と企業活動の健全性が認められ、スウェーデン王室御用達の栄誉を賜ります。同社の製品にはスウェーデン王室の徽章であるクレストマークがあしらわれた商品が今も多数あります。そんなアブ社の製品を、世界に広めたいという思いで、AMBASSADEUR(アンバサダー)と名付けられました。この、アンバサダーシリーズは、現在でもアブガルシアブランドの代名詞として世界中で認知され、愛されています。その後、アブ社は米国へ販路を広げるため、米国の有力な釣具輸入商社であるガルシア社と販売契約を結び、米国でのアブ製品のライセンスを同社に提供します。米国でもヒットしたそうですが、ガルシア社は倒産してしまいます。そこで、1979年にアブ社はガルシア社を吸収する形で、米国での商権を取り戻します。そして、1984年、社名を「アブガルシア」に変更し、ここに今日まで続く「アブガルシアブランド」が誕生しました。
カーディナルシリーズの誕生
アブ社は、ベイトリールの製造開始から遅れること4年、1955年に、インスプール型のスピニングリール「ABU444」を発売します。そして、1966年、「CARDINAL(カーディナル)」シリーズが誕生しました。今日、「カーディナル」は世界中でアブガルシア「カーディナル2」として販売されています。尚、日本においては、アブガルシア製品の企画と販売は、ピュアフィッシングジャパン株式会社(東京都)が担当しています。
カーディナルⅡ シリーズのラインアップ
アブガルシア・カーディナルⅡ シリーズは、糸付きリールとして販売されている、替えスプールが付属しない「Sシリーズ」、本体にもともとついているアルミスプールと材質が異なる、グラファイト(炭素繊維強化プラスチック)製替えスプールが付属する「SXシリーズ」、本体にもともと装着されているスプールと同じ材質で、色違いのアルミ製替えスプールが付属し、ベアリング数も5/1個と、SX(3/1ベアリング)より多い最上位グレードの「STXシリーズ」の3機種ラインアップされていますが、最も一般的に販売されているものが「SX」シリーズになります。以降、記事内容は、SXシリーズに関するものとなります。
カーディナルⅡ SX2500Sの基本スペック
カーディナルⅡ SX2500Sは、淡水トラウト、バス釣りをはじめ、ソルトウォーターではちょい投げ釣りからサビキ釣り、ショアジギング、エギング、ジギング、ロックフィッシュ、穴釣り、磯フカセなど、一部の大物釣りや、飛距離がモノを言うサーフキャストフィッシングを除き、ほとんどの釣りに対応できます。ギア比5.1、最大ライン巻き取り長73cm、ボール/ローラーベアリング 3/1、自重262gとなります。本体スプール(アルミ製シャロースプール)のラインキャパは、PE0.8号で140m、フロロカーボン1.5号(6lb)で100mとなります。付属のグラファイト製替えスプールは、PE1.5号で150m、フロロカーボン2号(8lb)で150mとなります。スペック上はとくに目立つようなところは見当たらない、ごく普通のスピニングリールです。
筆者が2台購入した理由
筆者、実はこの、カーディナルⅡ SX2500Sを2個所有しています。実勢価格が安く、3,000円台で手に入るのが魅力ではありますが、それを遥かに上回る理由があり、最初に1個購入した後、もう1個買い足した次第です。その理由について、以降で言及して行きたいと思います。
やっぱり替えスプール付属は嬉しい
この価格帯で替えスプールが標準でついているのが、小遣い制のお父さん方には朗報ですね。グラファイト製の替えスプールは、もともとついている本体スプールとはラインキャパが違いますので注意してください。筆者は、2台持っている1台目には、アルミ製本体スプールにはPE0.8号を140m巻き、エギング用リールとして使い、グラファイト製替えスプールには、フロロカーボン3号(12lb)を巻いて、地磯でのウキフカセ用として使っています。2台目には、本体スプールにはPE1.5号を巻いてライトショアジギング用に、替えスプールにはナイロン5号を巻いて、キャスティズム(胴突き仕掛けの投げ釣り)用にしています。ラインキャパはグラファイト製替えスプールの方が大きいので、替えスプールにPEラインを巻く場合は下糸を巻いたほうが経済的でしょう。
替えスプールのデザインはアルミスプールと比べたら野暮ったさは否めませんが、替えスプールが付属するメリットははかりしれません。グラファイトスプールの剛性は素晴らしく、15号〜20号の錘を投げても衝撃によるスプールの歪みやガタツキなどは一切ありません。もし、替えスプールのデザインがどうしても気に入らなければ、上位機種のカーディナルⅡ STXシリーズを購入することをおすすめします。本体スプールと同じアルミスプールの色違い(ラインキャパは本体スプールと同じ)がついていますよ。
ロケットラインマネジメントシステムって何だ?
アブガルシアのスピニングリールにおける、キャスト時のライン放出、回収時の巻取り制御を最適化させる基幹技術に、「ロケットラインマネジメントシステム」というものがあります。アブガルシア社のスピニングリール全モデルに採用されています。何のこっちゃ? とお思いでしょうが、簡単に言えば、ラインの放出、巻き取りに関わる各パーツ全ての位置関係を見直し、ラインが勢いよく出て行く際に暴れたり、あらぬパーツにラインが触れたりして、ラインがまっすぐ出ないことで結果的に抵抗となり、飛距離が落ちるトラブルを防ぐために、関係するパーツ全てのバランス(形状と位置関係)を最適化した技術のことを言います。
具体的には、スプールリップ(スプールの先端部のフランジ)が、ラインが放出される際に、ラインが触れないような形状であったり、ベイルの角度、あるいはラインローラーとラインの接触角度の最適化などにより、ラインの自由な放出を阻害しないよう、限界まで追い込んだ設計であるということです。また、「スローオシレーションシステム」と言って、ローターの回転とともに上下に運動するスプールのスピードを敢えて遅くして、ラインの巻取り角度をできる限り浅く、できる限り密に巻き取ることで、次回キャスト時のライン放出がスムーズに行われるよう調整されています。
ベイル周りの安定感
カーディナルⅡ SX2500Sは、ベイルを起こしたときのベイル位置が絶妙で、キャストの際に誤ってベイルが戻るトラブルが少ないです。また、他のリールと比較して、ベイルとスプールの距離が近く、巻取り時のライン落ちが少ないと感じます。ローターとベイルを取り付けるジョイント部もしっかりと固定され、グラつきなどの不安は全くありません。ローター材質は安価な鋳造材のようですが、加工精度が良いため、しっかりと造り込まれているなと感じます。いわゆる「アソビ」がほとんどありません。
ハンドルの巻き心地はどうか?
ハンドルについては、さすがにこの価格帯で文句は言えませんといった感じです。しかし、折りたたみ式ハンドルならではの、しっかり締め込んでもガタが残ると言うことはなく、キチンと締め込めばそれなりに使えます。また、このリールが持つアンチリバース性も相まって、巻いた感覚は悪くありません。ただし個人的には少し巻が重いかなと感じるため、粘度の低いオイルをこまめに注油しています。
デザインはドストライク!
この価格帯のリールにとって、デザインは意外と重要だったりします。なぜならひと目みて、「あ〜、安っぽいデザインだな」と言われるのはイヤですからね。確かに安いリールなんですが、カーディナルⅡ SX2500Sの開発担当者は、きっと「安っぽく見せないデザインを、コストを掛けずにやる」ことを至上命題にしていたのかと思うほど、高見えするデザインとなっています。ハンドルやスプール、ハンドルの反対側のねじ込みキャップにいたるまで、必要以上にメッキパーツが使われています。また、本体スプールとベイルはゴールド(正確にはクリアピンクとクリアイエローの中間色)の塗装が施されています。個人的にはこれが一番気に入っています。シルバー基調のボディにメッキパーツが数多く使われ、アイキャッチにゴールドが使われた見事なデザインで、価格の安さを忘れさせてくれます。
ドラグ性能は必要最低限・・・
このリールで、どうしても目をつぶらなければならないのは、1にも2にもドラグ性能です。スペック上は最大ドラグ釣力6kgと書かれてはいますが、やはりミドルクラス以上のリールのような、細かい調整はできません。もちろん、ドラグ調整ノブはノッチ式で、細かく調整できるようにはなっていますが、細かく動かせるのは調整ノブだけです。強いて言えば、ロック→強→中→弱程度です。それでも、ドラグを締める方向であればそれなりに調整できますが、弱める方向は厳しいです。例えばエギングで、ドラグをゆるゆるにしたいと思っても、ドラグが理想のセッティングになる前にドラゴンズ調整ノブが外れます・・・。ドラグは必要最低限の機能です。それでも筆者はエギングで使っていますけどね(エギングで必須と言われる、ガバガバのドラグセッティングが嫌いなので)。
ザ・汎用リール! ほとんどの釣りに対応可能。4,000円台のリールの中ではトップクラスの完成度!
以上、アブガルシア・カーディナルⅡ SX2500Sについてのインプレを色々書かせていただきましたが、釣り歴は長いものの、道具にあまりお金を掛けられないサンデーフィッシャーのお父さんや、釣りを始めたばかりのアングラーの皆さんに激しくおすすめしたい逸品です。少なくとも「安物買いの銭失い」とはならないでしょう。最終的に、アブガルシアのフラッグシップライン「REVO」シリーズにステップアップする前に、この、実勢価格4,000円を切る価格で手に入る、激安ながら基本性能はしっかり確保し、さらに安物に見えないデザインのカーディナル2シリーズのパーサタイル性(万能性)を体験してください。