釣具量販店がここまでやるか! タカミヤ・REALMETHOD カロス S3000HGは、もはやプライベートブランド商品の域を超えている!
釣具量販店のオリジナル商品といえば、メーカー品の旧モデルをベースに、一部のパーツや外観色などを変えて、プライベートブランド商品として、本来のメーカーに製造してもらって安く販売する、或いは、量販店が独自に商品企画をし、パーツの材質や機能を絞り、海外の委託工場で大量に製造させたものを輸入し安価に販売するもので、性能には目をつぶり、とにかく安くタックルを揃えたい人向けのラインであるとされていたのは今は昔です。今は釣具量販店のプライベートブランド商品も高品質で使える製品が増えています。そんな釣具量販店のオリジナル商品の中で、ひときわ異彩を放ち、高品質タックルを次々とリリースしている、株式会社タカミヤのハイエンドスピニングリール、「KALOS(カロス)S3000HG」について紹介いたします。
タカミヤとは?
株式会社タカミヤは、福岡県北九州市に本社を置き、釣具量販店「釣具のポイント」を展開する会社です。しかし、全国展開はしておらず、2020年6月現在、九州全県(沖縄を除く)、山口、広島、岡山、島根、鳥取、香川、徳島、兵庫、千葉、神奈川の、17県全64店舗の展開のため、とくに東日本ではご存知ない方もいることでしょう。昭和24年に個人商店として釣具店を創業して以来、他社に先駆けて大規模スーパーのテナントとして出店したり、釣具の通信販売をはじめたりと、新機軸を打ち出す中、早くから国内外ネットワークを構築し、商品の企画立案から製造、卸売、小売に至るまで、一貫したサプライチェーンを構築しました。そんなタカミヤのオリジナル商品は、他社には真似のできない逸品が数多く存在し、今日では釣具メーカーとしての存在感も高まってきています。
タカミヤのオリジナルブランドライン
タカミヤのオリジナルブランドは、目的によっていくつかのブランドに分かれています。釣りデビューをしたばかりのビギナーのためのタックル商品群「smile ship」、すべての人に、あらゆる釣具、釣り用品を手軽な価格で提案する「H.Bコンセプト」、船釣り用タックル商品群「伝衛門丸」、磯釣り用タックル商品群「武勇伝」、ゲームフィッシング用タックル商品群「REALMETHOD」があります。それぞれのブランドで、ロッドやリールはもちろん、ウェア類タックルケース、ルアー、ラインなどの消耗品に至るまで、タカミヤのオリジナルブランド商品は莫大な点数にのぼります。今回紹介する、カロス S3000HGはゲームフィッシング用品ブランド「REALMETHOD」シリーズのハイエンドスピニングリールになります。
ゲームフィッシング用タックルのハイエンドライン・REALMETHOD シリーズ
タカミヤのゲームフィッシングブランド「REALMETHOD」は、ジギングロッド、スピニングリール、ベイトリールから、ウェア、シューズ、グローブ、帽子、ヘッドライト、サングラスなどの釣装品、フィッシュグリップ、プライヤー、ハサミなどの釣小物、ルアー、ワーム、ラインに至るまで、ゲームフィッシングに必要なほぼ全てのアイテムがラインアップされています。どのアイテムもおサイフに優しい価格帯ながら、プライベートブランド商品とは思えない性能と洗練されたデザインが特徴です。「REALMETHOD」シリーズは、「安いから妥協して購入する」商品ではなく、「積極的に選ぶべき理由がある」商品が多く、コアなファンもいます。
タカミヤ・REALMETHOD カロス S3000HGのスペック
「カロス」とは、ギリシャ語で「素晴らしいこと」、「美しいこと」という意味なのだそうです。タカミヤがこのモデルに馳せた想いがネーミングに込められています。そしてその想いは基本スペックの高さに現れています。カロスには、ノーマルギアモデル、ハイギアモデル、ダブルハンドルモデルの3タイプがあります。以下はS3000ハイギアモデルのスペックとなります(カッコ内はノーマルギアモデル・カロスS3000の数値)。ギア比5.8(5.1)、1回転あたりの最大巻上げ長さ89cm(78cm)、最大ドラグ釣力6kg(同)、ベアリング数 本体8+ローラー1(同)、ラインキャパ PE0.8号250m、 PE1号180m、PE1.2号150m、ナイロン6lb150m、ナイロン8lb120m、ナイロン10lb90m(同)、自重320g(同)となります。
実売価格8,000円前後で同スペックの製品は見当たらない!
まず、ミニチュアベアリングが9個使われていることに驚きます(本体に8個、ラインローラーに1個)。1万円以下のリールで、合計9個ものベアリングが使われているモデルは他にはありません。この価格帯なら多くても7個、ほとんどのリールは5個使いでしょう。カロスには9個も使われている上、そのうち、最も塩の影響を受ける、ラインローラーおよびピニオンギア部(回転運動をスプールの上下運動に変換するギア)には、日本製高耐食ベアリング「SA-C」が使用されています。ちなみに、「ラインローラー用ベアリング」と「ローラーベアリング」は全く別のものです。外輪と内輪の間に鋼球が使われているのがボールベアリング、円柱状のコロが使われているのがローラーベアリングです。リールのラインローラーに使われるものはボールベアリングです。混同しないようにしましょう。ベアリング以外の特徴ですが、このカロスはフルメタルボディです。ボディコア、ローター、スプール、ベイル、ハンドルなど、すべてにアルミ合金が使われています。プラスチックパーツが使われているのは、ドラグ調整ノブ、ハンドルネジのカバー部、装飾用メッキモール、リバースON/OFFスイッチ、ベイルアーム(ベイルアームはメタルパーツにして欲しかった!)です。剛性や機構に関わる部分はほぼすべてメタルパーツが使われています。なので、このリールは手に取った瞬間、メタル独特のひんやり感を感じます。マグネシウム合金が使われていればさらに軽量化と剛性UPに寄与できるのですが、さすがにそこまで望むならもっとお金を出しましょうということでしょう。
ねじ込み式ハンドルが素晴らしい!
カロスの一番の嬉しいポイントです。この価格帯であれば、通常のリールは折りたたみ式ハンドルです。すなわち、ハンドルシャフトをメインボディに差し込んで、反対側のハンドルキャップネジで固定するタイプです。この方式は、ハンドルを回す際のガタや歪みを抑えることが難しい構造です。ハンドルの反対側のハンドルキャップネジの締め付けだけで固定するため、どうしても使用中に緩みが出てしまい、少しでも緩んでしまうと、ガタの原因になります。また、この方式では、ハンドルに長いシャフトがついているため収納性が悪く、どうしても折りたたんでコンパクトに収納できる構造にせざるを得ません。余計にガタやゆるみの原因になってしまいます。それに引き換え、カロスのハンドルは、ミドルグレード以上のモデルにしかつかない、ねじ込み式ハンドルが採用されています。ハンドルにシャフトはなく、本体側にハンドルを固定するオスネジが内蔵されており、ハンドルをつけたい側にねじ込んで締め付けるだけで、一切ガタのないハンドル固定が可能です。さらに、左ハンドル側は逆ネジになっていて、右ハンドルでも左ハンドルでも、正回転(巻き取る回転方向)が締まる方向になっているため、一日使っていてもハンドルが緩んでくることはありません。敢えて注意する点があるとすれば、ハンドルを失くさないように、きちんと収納しましょう。
ワンランク上の巻心地!
カロスの巻き心地は、よく言えば重厚感がある、悪く言えばやや重めです。ただし、レスポンスは非常にクイックで、ヌルっとしたフィーリングはワンランク上のモデルを彷彿とさせます。一気に巻いている途中、突然ピタッと止めることもできます。ルアーフィッシング、とくにショアスロー、エギングには大変良いでしょう(エギング用にはカロスのダブルハンドルモデルがありますが)。ハイギアタイプではありますが、ギア比は5.8と、スピード自慢のエキストラハイギアタイプとは全く違い、ノーマルギアと比較して多少は速いかなと言った程度の印象ですので、いわゆる「超高速リトリーブ」が必要な場面ではキツいかも知れません。
じわーっと効きはじめるドラグが気持ちいい!
カロスの特筆すべき点はまだあります。ドラグ性能が、この価格帯のリールの中では群を抜いています。キツめのセッティングからガバガバのセッティングまで、細かい調整が可能です。ドラグノブを1回転もさせるとドラグのフィーリングがわずかに変わります。とても頼りになります。ドラグのカチカチ音は小さめで、防錆性の高いボールベアリングとカーボン製ドラグワッシャーの効果が相まって、じわ〜っと効きはじめるフィーリングが良いです。ドラグワッシャーのスペアが2枚付属しているのもグッドポイントです。尚、ドラグ部は防水機構とはなっていないので、釣行後は必ず水で塩分を流し、スプールを逆さにして陰干ししましょう。
ネオプレン製ロゴ入り専用リールケースがついている!
カロスには、ネオプレン製の専用リールケースがついています。「REALMETHOD」「KALOS」のロゴ入りで、本体を収納する場所と、取り外したハンドルを収納する場所がきちんと分かれています。造りもしっかりしたケースになっています。オマケに滅法弱い貴兄にはこういうちょっとした心遣いは嬉しいでしょう。所有欲を満たしてくれるアイテムですよね。
唯一の難点は・・・
カロスは、同価格帯のリールの中ではとても良くできたリールですが、唯一、自重だけがいただけません。同スペック帯の、ダイワ・レガリス LT3000-CXHは220gと、圧倒的な差をつけられています。同価格帯のシマノ・サハラC3000HGは250g、格下のダイワ・リバティクラブ3000の295gと比べても見劣りします。金属パーツの多さ、ベアリング数の多さによるものだとは思いますが、300gは切って欲しかったというのが正直なところです。ジギング、エギングなど、一日中ロッドをシャクる釣りをする場合は、ロッドにリール、ルアーを装着し、タックル全体の重量バランスを考慮し、疲れにくいセッティングを自分で見つけていたほうが良いでしょう。
アンダー1万円のリールではトップクラスの実力を誇る、羊の皮をかぶった狼!
以上、タカミヤ・REALMETHOD カロス S3000HGについてインプレを書きましたが、現在国内で手に入る、アンダー1万円のスピニングリールとしては傑出した出来ばえと言えます。まさに、羊の皮をかぶった狼といったところです。ねじ込み式ハンドルの剛性、ハンドル、ローターの回転精度、ドラグの性能などは、同価格帯のメーカー品を凌駕する部分も多いです。自重以外の部分では、コストパフォーマンスを訴求するために、妥協できるところ、絶対に妥協しないところの取捨選択が上手く、一流メーカーも学ぶべき部分が多いと思います。タカミヤは早くから韓国に現地法人を設立し、製販のネットワーク構築に努めてきました。現在では韓国を中心に大規模な製造拠点を持っています。釣具量販店の域を超え、総合釣具メーカーとして、釣りの裾野を広げるために活動しています。そんなタカミヤのオリジナル商品ラインから、良い意味で釣具専門メーカーを脅かす逸品が今後も次々と出てくることに期待しています。