スピニングリールの名機はこれだ! 独断と偏見で大解説!
作成:2022.06.30更新:2022.06.30
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釣りの進化はここ20年で飛躍的に進みました。新しいメソッドが次々と開発され、新しいタックルが次々と開発され、新しい素材が次々と市場に投入されました。結果、これまで釣りの対象ではなかった魚がターゲットになり、餌でしか釣れないと言われていた魚がルアーでバンバン釣れるようになりました。
中でもリールの進化はめざましく、素材の進化、成形技術の進化、精密機械加工技術の進化を惜しみなく注ぎ込み、毎年ブラッシュアップされたモデルが登場しています。ニューモデルはもちろん、既存のブランドが、新技術を身にまといフルモデルチェンジするもの、或いは既存のブランドが名前を変え、心機一転新しいブランドとして生まれ変わるものを含めると、各社合計で毎年数十種類のモデルが新たに発売されています。
今回は、私が名機であると、読者の皆様におすすめしたいモデルを独断と偏見で紹介して行きます。尚、原則、現行モデルについて書きますが、私の40余年の釣り歴の中で、少年時代から使い倒し、今でも大事に使っているレトロリールも少しだけ紹介します。
ダイワのスピニングリールの名機
ダイワは1955年、釣具(リール)の専門メーカー「松井製作所」として創業し、その後1958年に「大和精工株式会社」、1969年に「ダイワ精工株式会社」となり、総合釣具メーカーとしての確固たる地位を築きました。その後、自転車、ゴルフ用品、テニス用品など、多角化を推進し、2009年「グローブライド株式会社」と社名変更して、全世界に釣具、スポーツ用品などを供給しています。釣具事業単体の売上は全社売り上げの約90%を占め、1,082億円(2022年3月期)で、2大メーカーのシマノの釣具事業の売り上げをわずかに上回っています。まずはダイワのスピニングリールから、名機と呼べるものを紹介します。
19セルテート
2004年に初代モデルが発売されたセルテートシリーズは、デビュー当初から明確にキャラクター設定がなされていました。メタル素材を多用し、大物に挑むための剛性を追求するモデルとして、シマノのツインパワーと並び、「質実剛健」をウリにしたハイエンドクラスの汎用スピニングリールです。昨今のリール素材は、軽量化と強靭性を両立するため、カーボン強化プラスチックを使用するモデルが隆盛を究めていますが、セルテートシリーズは歴代モデルすべて頑なにメタルボディ(アルミ合金)で固めています。特に現行モデルである19セルテートは、ボディをアルミモノコック構造を採用し、最高クラスの剛性とパーツマウントの精度を手に入れています。
そして、2018年に発表された、ダイワのリールの新設計思想「LTコンセプト」の導入により、「軽さ(Light)」と「強さ(Tough)」の両立をストイックに求める厳しい設計基準によるものづくりが始まりました。19セルテートからは、LTコンセプトによる、軽量化をより意識した設計となっており、モノコックボディの採用による強靭化、パーツレイアウトの精度向上、そして軽量化と、前モデルである16セルテートよりも更に戦闘力が上がっています。
20ルビアス
ルビアスも2004年に初代モデルがリリースされて以来、ダイワの量販機の屋台骨を担うロングセラーモデルですが、コンセプトはセルテートとは大きく異なります。初代モデルから「軽さ」、「感度」に重点を置いた商品を開発を進めています。
初代モデル・04ルビアスこそ、ボディ材質にはマグネシウム合金を使っていたものの、ダイワが2007年に、カーボン長繊維を樹脂に入れ込んだコンポジット素材「ZAION」を発表してから、すなわち、二代目07ルビアス以降は一貫してZAION、DS4(ガラス繊維強化プラスチック)、DS5(カーボン短繊維強化プラスチック)などの繊維強化プラスチックを使用しています。
現行モデルの20ルビアスは、初めて採用されたZAIONモノコックボディに、タフデジギアをマウントし、ローター素材もDS5からZAIONに変更、スプールの薄肉アルミ化、ラインローラーの2BB化など、随所に前モデル、15ルビアスよりも30g〜35gほどの軽量化を実現し、感度の点においても進化しています。
ルビアスは、ZAIONをはじめとした、ダイワのカーボン繊維強化プラスチックの可能性を最大限に高めたモデルであり、ルビアスを樹脂ボディモデルのハイエンド機として、イグジストを頂点としたメタルベースのモデル群とは一線を画すラインアップを形成しています。
19レグザ
2019年に初代モデルがデビューしたレグザは、アルミボディにアルミスプール、DS4製ローター、アルミマシンカットハンドルを使用した、メタルリッチのモデルです。2万円を切る価格で手に入るリールの中で、メタルリッチで剛性が高く、更にマグシールド防水まで奢ったこのモデルは、そのシックなデザインと戦闘能力の高さで、ミドルクラスの汎用リールの中では異彩を放つ存在として人気となっています。
ダイワが「LTコンセプト」を発表した翌年にリリースされたレグザは、LTコンセプトに則った設計ながら、軽量化よりも剛性の確保に軸足を置くという、フリームス、カルディア、ルビアスなどが軽量化に舵を切り、樹脂化に邁進を開始した2018年〜2019年にかけて続々と誕生したモデルたちのアンチテーゼとして、メタル素材にこだわりたい青物アングラーを中心としたパワーゲーマーの受け皿として存在感を持つモデルになっています。
シマノのスピニングリールの名機
釣具の世界ではダイワと双璧をなすシマノは、1921年創業の「島野鐡工所」がルーツです。当時は自転車用フリーホイールの製造からスタートし、そこから自転車用コンポーネントの世界No.1企業へと発展します。釣具事業への参入はダイワに遅れること15年、1970年ですが、自転車コンポーネントの製造で培われた高い金属精密加工技術ですぐにダイワと比肩する二大釣具メーカーへと成長して行きました。かつてはゴルフ事業、スノーボード事業も手掛けていましたが、現在は自転車コンポーネントと釣具の事業に資源を集中させています。企業としては、規模も売り上げもダイワ(グローブライド)をはるかに凌ぐ大手金属加工メーカーですが、自転車コンポーネント事業の売り上げが4,437億円(2021年12月期)釣具事業の売上は1,023億円(同)となっています。ここからはシマノのスピニングリールの名機を紹介します。
19ヴァンキッシュ
シマノが提唱する「クイックレスポンスシリーズ」の最初の具現化モデルが初代12ヴァンキッシュです。ステラに代表される、「コアソリッドシリーズ」は、アングラーに対し巻きのパワーをアシストするよう、高速回転するローターの慣性力を敢えて残し、長時間の高速リトリーブの際の疲労軽減に寄与します。これに対し、最近のシマノは「巻き出しの軽さ」と、「素早い停止」、そして「高感度」を重視する「クイックレスポンスシリーズ」の商品ラインアップを拡充しています。これは、ゲームフィッシングの多様化が大きな要因のひとつです。そのクイックレスポンスシリーズの頂点がヴァンキッシュです。
現行の19ヴァンキッシュは、マグネシウムボディ、CI4+製マグナムライトローター、CI4+製ハンドル、チタン製ワンピースベールなど、軽量・強靭を両立するためのマテリアル選定が極められています。ドライブギアは超々ジュラルミンの冷間鍛造品「HAGANEギア」を、ドライブギアからの入力パワーをローターの回転運動に変換するピニオンギアは超高強度真鍮が使われ、妥協のない精密な回転と軽い巻き出しを約束します。そして、ステラ同様の最高級の防水性能も備え、シーンを問わず高感度、高強度の釣りが可能です。
前モデルの16ヴァンキッシュと比較して、10g~30gの軽量化を実現し、また、ロングストロークスプールの採用により、飛距離も約4%アップしています。シマノのスピニングリールというより、すべてのスピニングリールの中で、軽さと強さの両立が最も高いレベルで実現しているモデルであると言っても過言ではないでしょう。
21ツインパワーXD
シマノ「21 ツインパワー XD 4000XG」
1987年、当時のシマノの最高峰モデルとして発売された、チタノス ツインパワーGTをルーツとし、シマノの「強靭なスピニングリールの代名詞」として、コンセプトを脈々と受け継ぎながら最新技術を取り入れて進化し続け、1992年にハイエンド機「ステラ」がデビューするまでは、同社の最上位機の座を張っていたハイエンドクラスモデルです。
ツインパワーシリーズは、現在3モデル展開しており、汎用リールの「20ツインパワー」、耐久性と操作性を重視した万能モデル「21ツインパワーXD」、オフショア専用リールの「21ツインパワーSW」があります。この中で、私がおすすめするのは21ツインパワーXDです。ツインパワーXDの「XD」とは、「eXtra Durability」の略で、シマノ曰く「過剰なまでの耐久性」ということです。こう聞くと、重厚で大雑把な印象を受けるかもしれませんが、ツインパワーXDは、シリーズ中唯一、カーボン繊維強化プラスチック「CI4+」製マグナムライトローターが採用されており、繊細で軽快な巻き操作を可能にしたモデルです。現行のツインパワーシリーズの中では、「軽さ」と「強さ」を最も高いレベルで具現化しているモデルと言えます。オフショアでの大型青物を専門で狙うようなアングラーには、さらに剛性の高い、ツインパワーSWをチョイスする必要があろうかとは思いますが、それ以外の釣りのシーンであれば、ツインパワーXDを選んでおけばまず間違いありません。
21スフェロスSW
シマノ公式サイト「21 スフェロスSW 6000HG」
シマノのオフショア専用リールの中で、エントリークラスに位置するスフェロスSWは、2014年、アセレーションSWの後継機としてデビューし、現在の21スフェロスは3代目になります。最大の魅力はその価格の安さです。1万円台で手に入るモデルであるにもかかわらず、シマノ最高クラスの防水性能を確保しています(Xシールド+Xプロテクト)。これにより、IPX8レベル(継続的に水没しても内部浸水しない防水性能)相当という、鉄壁の防水性を持っています。オフショア専用リールに最も必要な機能は防水性です。ここが担保されている21スフェロスSWは大変おすすめです。
オフショアフィッシングは、もちろん汎用スピニングリールでも出来なくはありませんが、本格的に青物のオフショアキャスティングゲームなどをする場合にはやはりラインキャパが大きく、ドラグ性能の高い(かつ放熱性の高い)、大型のSW専用リールを求める必要があります。しかし、オフショア専用リールは非常に高価なものが多いため、初心者にはハードルが高いと感じるのではないかと思います。そんな時は、迷わず21スフェロスSWを選びましょう。メーター越えのブリ・ヒラマサ・ロウニンアジ・マグロなどがターゲットでもない限り、オフショアフィッシングの醍醐味を体験するには十分対応できるスペックを備えています。
懐かしのスピニングリール
以上、現行モデルの中で、名機として私がおすすめする機種について紹介してまいりましたが、最後は余談ですが、小学3年生から釣りをはじめ、初心者歴40余年の私が、現在でも大切にメンテナンスしながら使っている、懐かしい機種を紹介させてください。現在の最新機種とは比較するべくもありませんが、これらをロッドに装着してハンドルを回していると、自転車に乗ってどこまでも走って釣りに行った少年時代の思い出が蘇ってきます。
ダイワ ロングスポーツ GS850M
いつ購入したかも記憶がありませんが、1980年代後半に8,000円くらいで購入したものと思われます。当時のダイワのエントリークラスのスピニングリール、スポーツラインシリーズの派生機でしょうか? 当時高校生くらいだったと思いますが、3.9Mの安いサーフキャストロッドにナイロン5号の道糸を巻いたこのダイワ ロングスポーツ GS850Mを合わせ、20~25号のジェット天秤をつけてフルキャストしていました。堤防や大きな河川の河口部で夏はシロギスやイシモチ、冬はカレイを狙っていました。木製のハンドルノブが気に入っており、購入から恐らく40年近く経った今でも物置から定期的に引っ張り出して来ては注油をして、ハンドルを回しています。いつでも登板できる準備は整っています。
ダイワ スプリンターX 1500C
私が仕事の関係で海外に単身赴任していた2006年、日本に1週間ほど一時帰国した際にどうしても釣りをしたくなって、海タナゴや小メジナのウキフカセ釣りをするために購入した、小型スピニングリール、ダイワ スプリンターX 1500Cです。コンパクトながらドラグの微調整が結構細かくできるため、現在でも小物釣りで暇つぶしするような時にはメインで使っています。ナイロン2号を巻いており、こちらも定期的にメンテナンスしています。非常に小さいので、リュックのサイドポケットに入れ、緊急用リリーフ要員としてでいつも持ち歩いています。
リョービ エクシマ SS-2000
最後は、世界最大級のダイカストメーカーである、リョービの小型スピニングリール、エクシマ SS-2000です。リョービは残念ながら、2000年に釣具事業を釣具量販店の「上州屋」に売却してしまいましたが、上州屋は「リョービ」のブランド・商標をそのまま受け継ぐ契約を結び、現在も上州屋オリジナル釣具として「リョービ」のブランド名を使用しています。このリールも1990年代に購入したものですが、当時はあまりなじみのなかったロングストロークスプールを備えた小型スピニングリールであり、10~15号程度の錘をつけたちょい投げ釣りの際、好んで使っていました。ライントラブルが少なく、同クラスのスピニングリールよりも飛距離が出ていたモデルです。残念ながらメンテナンスが悪く、今ではジャンク品となってしまいましたが、最も登板試合数が多いリールだったので、名残惜しくて処分できないでいます。
リール選びは他人の評価よりも自分で見て、触って選びましょう!
最後は独りよがりの記事になってしまった感がありますがお許しください。道具はお金さえ出せば最新機能が満載の素晴らしいものが買えますが、釣具、特にロッドとリールは消耗品として考えるのではなく、「相棒」として、手をかけてやって、長く使えるようにしたいものです。ボロボロの古いリールは、それだけたくさんの現場を共にしたパートナーであり、たくさんの楽しかった思い出が詰まっているはずです。新しいリールを購入する際はカタログスペックや口コミも大事ですが、どうか、自分の目で見て、自分の手で持ってみて、ロッドに合わせてみて、ハンドルを回してみて、フィーリングを感じて選んでください。そうして選んだリールとは、10年、20年と大事に使い倒し、たくさんの思い出をタックルにしみ込ませてあげてください!