トラウトの種類って意外と知らない!?サーモンはトラウトなの?呼び方の違いも解説します。
作成:2022.02.08更新:2023.04.17
目次
トラウトの定義とは?
一般的に【トラウト】というとスーパーでよく見る『トラウトサーモン』でしょうか。しかしこの『トラウトサーモン』何か矛盾を感じませんか?だって『トラウト』を訳すと『マス(鱒)』で『サーモン』は『サケ(鮭)』です。『トラウトサーモン』は直訳で『マスサケ(鱒鮭)』です。生物分類上『トラウトサーモン』という種の魚はいません。
実は『トラウトサーモン』というのは商品名であって、それは何の魚なのかというと海水で養殖したニジマスなんです。見た目は鮭の切り身と似て味も美味しく養殖なので、安価に供給しやすいトラウトサーモンが人気なわけですね。でもこの『トラウトサーモン』以外にも生物分類的にトラウト=マスとサーモン=サケではないものが多いのです。ではトラウトの定義とは一体何でしょうか?今回はトラウトとは?サーモンとの違いは?をわかりやすく解説します。見やすくするため『鱒』=『マス』、『鮭』=『サケ』と表記します。
そもそも日本のマスとサケって何が違うの?
マスの生物の分類はサケ目サケ科なんです。マスなのにサケ目サケ科ということはマスはサケなのか?トラウトサーモンを見ても身はサーモンピンクで同じだし味も美味い。でも見た目はニジマスとサクラマスなどはマスだけどサケではないですね。う~ん難しい。ちょっと釣り目線で考えましょう。
アングラーがマスといえばエリアフィッシングでの【トラウト】をイメージされると思います。エリア定番のトラウトといえばニジマスやヤマメ、イワナ、ブラウントラウトなどが主なターゲットでしょう。それらのトラウトはマスであることは理解できると思いますが生物分類上サケなんだ~ってなりませんよね。ではなぜ生物分類上このような矛盾がおこっているのか?諸説ありますが一番有力なのは和名と英名での呼び方の違いです。和名と英名は範囲が広く、比較する地域や国で変わりますのでご了承ください。
「和名:マス」と「英名:トラウト」の違いは?
表のとおり一番大きな違いは生息域の違いです。日本のマスの場合は〇〇マスといっても淡水魚と海水魚がいます。例えばニジマスは淡水魚でサクラマスは海水魚です。英名のトラウトの場合は川や湖の淡水魚のみです。一部の個体は降海して河川に戻る魚も含みますが基本的な淡水域の魚を【トラウト】と呼びます。和名のマスと違い、英名は淡水で生息する方をトラウトと呼んでいるということですね。
日本 | 英名 | |
呼び方 | マス(鱒) | トラウト(Trout) |
繁殖域 | 河川(淡水) | 河川(淡水) |
生息域 | 淡水・海水 | 主に淡水 |
寿命 | 3~10年 | 3~?年 |
「和名:サケ」と「英名:サーモン」の違いは?
ではサケとサーモンはどこが違うのでしょうか?繁殖域は淡水で生息域は海水で同じですね。違いは寿命?でも同じ魚の寿命が場所によってこんなに違う訳はありません。日本のサケは基本シロザケで寿命は4~5年です。一方の英名のサーモンはたくさんの種類がいるんです。例えばキングサーモンは約9年、アトランティックサーモンはなんと13年です。日本のサケは種類が少なく英名のサーモンは種類が多いということですね。
日本 | 英名 | |
呼び方 | サケ(鮭) | サーモン(Salmon) |
繁殖域 | 河川(淡水) | 河川(淡水) |
生息域 | 海水 | 海水 |
寿命 | 4~5年 | 3~10年 |
種類 | 基本「シロザケ」 | 多種多様 |
トラウト(マス)の種類について
さて、ここからは国内の釣りでターゲットとなるトラウト(マス)を釣りでの呼び名を中心にアングラー目線で違いを確認していきます。しかもスーパーなどの商品名で名前が変わるトラウト(マス)がいますので合わせてご説明しています。最後にサーモン(サケ)をご説明します。
ニジマス(虹鱒)
管理釣り場では定番のニジマス(虹鱒)もちろん河川や湖にも多く生息している外来種トラウトの代表魚。英名ではレインボートラウトです。呼び方が非常に多いトラウトです。特に養殖されたニジマスは食用としてご当地鱒としていろんな名前がついて販売されておりとても美味しい魚ですがトラウトの中でも虹(Rainbow)が付くとても綺麗で美しい鱒です。自然繁殖したニジマスはできるだけキャッチ&リリースを心掛けてください。
呼び方 | |
生物分類(種) | ニジマス(虹鱒) |
釣り(淡水) | ニジマス(虹鱒) |
釣り(海水) | スチールヘッド(Steelhead) |
英 名 | レインボートラウト(Rainbow Trout) |
降海魚 | スチールヘッド(Steelhead) |
養殖魚 | ニジマス 商品名 トラウトサーモン(Trout Salmon) *別呼称サーモントラウトなど多数 |
ヤマメ(山女魚)
ヤマメは生物分類上はサクラマスです。メスとオスのほとんどが海に降海しサクラマスとなり河川に残留したオスの一部がヤマメとして成魚になります。『渓流の女王』と呼ばれパーマークが綺麗で遊泳力と警戒心が強い魚です。降海したヤマメはサクラマスとなり大きいもので5㎏以上にもなります。アングラーからは海サクラと呼ばれ憧れの海鱒です。SNSに『今年もサクラが咲きました!』と粋な報告をするアングラーもいるほどです。
呼び方 | |
生物分類(種) | サクラマス |
釣り(淡水) | ヤマメ(山女魚)・ヤマベ・アマゴ *サクラマスの河川陸封型 |
釣り(海水) | サクラマス(桜鱒)・サツキマス・本マス |
英 名 | チェリーサーモン(Cherry Salmon) |
降海魚 | サクラマス(桜鱒) |
養殖魚 | ヤマメ・サクラマス(桜鱒) |
▼サクラマス
イワナ(岩魚)
イワナは鱒の在来種の代表で『渓流の王様』とも呼ばれます。生物分類はイワナ属イワナです。現在はエゾイワナ・ニッコウイワナ・ヤマトイワナの3種がほとんどでエゾイワナは千葉県、山形県以北から北海道に生息しておりイワナの中で唯一降海し大きなアメマスとなります。海アメと呼ばれて海サクラと並び初春から海鱒としてトラウトアングラーに人気な鱒です。なお陸封されたイワナは湖でアメマスとなります。
呼び方 | |
生物分類(種) | イワナ |
釣り(淡水) | イワナ(岩魚) (種)エゾイワナ・ニッコウイワナ・ヤマトイワナ |
釣り(海水) | アメマス(雨鱒) |
英 名 | チャー(Charr) |
降海魚 | アメマス(雨鱒) |
養殖魚 | イワナ(岩魚) |
▼アメマス(海アメ)
ヒメマス(姫鱒)
ヒメマスは北海道の阿寒湖とチミケップ湖が原産です。支笏湖・屈斜路湖・倶多楽湖へ移植され本州では十和田湖、中禅寺湖、西湖、芦ノ湖へも移植されており芦ノ湖のヒメトロ(ヒメマスレイクトローリング)が有名です。ヒメマスを食べたことがある方はお判りと思いますがサケ・マスの中で1、2を争うほどの美味しさです。それもそのはずヒメマスが降海して成魚はベニザケ(紅鮭)です。おそらく日本人ならほぼ全員食べたことあるおにぎりの紅鮭(紅しゃけ)です。ベニザケ(紅鮭)と呼ばれるように繁殖期のオスはセッパリと呼ばれ背中が盛り上がりオス・メスともに身体が真紅に染まり遡上するため紅鮭と呼ばれています。このヒメマス・ベニザケがマスとサケの両方の名前を持つ魚です。
呼び方 | |
生物分類(種) | ヒメマス(姫鱒)・ベニサケ(紅鮭) |
釣り(淡水) | ヒメマス(姫鱒)・チップ |
釣り(海水) | ベニザケ(紅鮭) |
英 名 | コカニー(Kokanee) レッドサーモン(Red Salmon) |
降海魚 | ベニザケ(紅鮭) |
養殖魚 | ヒメマス(姫鱒) |
ブラウントラウト
ブラウントラウトは黒と赤い斑点が特徴です。大きくなると80cm以上に成長し国内に生息するトラウトの中でもフィッシングターゲットとされることが多くアングラーには人気のトラウトです。しかし外来種のため特に近年は駆除されることも多く日本の在来種を守るためとはいえ悲しいですね。これ以上、魚の命を無駄にしないように地域のフィッシングルールブックや内外水面のルールを守りましょう。
呼び方 | |
生物分類(種) | ブラウントラウト |
釣り(淡水) | ブラウントラウト |
釣り(海水) | シートラウト(Sea Trout) |
英 名 | ブラウントラウト(Brown Trout) シートラウト(Sea Trout) |
降海魚 | シートラウト(Sea Trout) |
養殖魚 | - |
イトウ(魚鬼 ※魚+鬼で一文字です)
日本最大の淡水魚で幻の魚『イトウ』。イトウを守る団体とルールを守るアングラーのおかげで幻の魚といわれたイトウも増えてきました。最近ではエリアフィッシングにゲストとして放流しているところもあるとか。北海道では淡水だけではなく降海しているメータークラスのイトウがいます。これを狙うイトウアングラーも少なくありません。唯一無二のイトウになるともうマスやサケ、英名の呼び名などを無視して『イトウ』に統一されてますね。名前の由来はサケと比べて細く長いという意味の『糸魚』から来ているそうです。
呼び方 | |
生物分類(種) | イトウ |
釣り(淡水) | イトウ |
釣り(海水) | イトウ |
英 名 | イトウ(Ito) |
降海魚 | イトウ |
養殖魚 | イトウ |
カラフトマス
カラフトマスは馴染みのない名前でしょうか。でもこのカラフトマスも知っているかもしれません。あの『鮭缶』に使われている魚がカラフトマスです。写真のように繁殖期のオスの見た目はセッパリと呼ばれる背びれ部分が盛り上がった形になります。北海道のオホーツク側ではアキアジ(サケ)釣りより早く夏からカラフトマスの釣りがスタートします。
呼び方 | |
生物分類(種) | カラフトマス |
釣り(淡水) | カラフトマス |
釣り(海水) | カラフトマス |
英 名 | ピンクサーモン(Pink Salmon) |
降海魚 | カラフトマス |
養殖魚 | - |
シロザケ(鮭)
一般的にサケ(鮭)と言っているのは正式名は『シロザケ』のことです。新巻鮭や秋鮭の切り身そして熊が豪快に咥えているヤツです。そしてなんといってもシロザケの魚卵はみなさん大好きな『イクラ』です。他のマスなどの魚卵をイクラとして販売している場合もありますがそれはマスコ(鱒子)でイクラより少し小さいんです。見分けられますか~?シロザケの魚卵が本当の『イクラ』です。そんな魚卵まで日本国民に好まれるシロザケ(サケ)は昔から呼ばれ方がたくさんあります。例えば捕れる時期で味も違うため呼び名が違うサケもいます。特にケイジ(鮭児)のように滅多に捕れないので希少価値があり美味とされお寿司屋さんでは高級なサケとして扱われています。
呼び方 | |
生物分類(種) | サケ(鮭)・シロザケ |
釣り(淡水) | サケ(鮭) |
釣り(海水) | サケ(鮭)・シロザケ・秋鮭・アキアジ・ケイジ(鮭児)・トキシラズ(時鮭、時不知)・メジカ・シャケ |
英 名 | サーモン(Salmon) |
降海魚 | サケ(鮭) |
養殖魚 | - |
結論:「トラウトとマス」「サーモンとサケ」の違いは?
さて日本でフィッシングターゲットになるトラウト(マス)とサーモン(サケ)を詳しくご説明しましたが違いは分かりましたか?改めてそれぞれの呼び方を分析してみると、下記の傾向があります。
- 海水域なのに〇〇マスが多い
- 淡水域では〇〇マスで海水域では〇〇サケもいる
- 日本では〇〇マスなのに英名が〇〇サーモン
- 〇〇マスなのに養殖後の商品名が〇〇サーモン
なるほど・・・やはり日本のマスの呼び方は淡水と海水で分かれていないためマス=トラウトと解釈すると矛盾が生まれる。ということです。そしてもう1つはニジマスの養殖魚『トラウトサーモン』という商品名です。一般的に目にする機会が多いのでより混乱する要因となっているようです。生物分類上のマス=サケ目サケ科で定義されているようにマス=トラウトと定義するのは難しいということですね。ちなみに海水域のサケ=サーモンはほぼ矛盾はないです。
ネイティブか?エリアか?によって「トラウト」は定義される!?
最後にアングラー目線でトラウトを定義できないか確認してみましょう。フィッシングターゲットとする『トラウト』は大きく2つです。
- ネイティブトラウト:河川・湖そしてロック・ショア・オフショアなどの自然水域(一部ダム湖)のエリアを生息域とするトラウト
- エリアトラウト:管理釣り場(管釣り)・釣り堀など管理された川・池などに放流されたトラウト
ネイティブトラウトの【トラウト】の定義とは?
ではネイティブトラウトのフィッシングのターゲットトラウトはどう定義されているのでしょうか?日本に生息する鱒と鮭はすべて釣りのターゲットになっています。生息するすべての鱒や鮭に対して釣法がありネイティブトラウトをターゲットとしているアングラーが存在するということです。先ほどご紹介したニジマス・ヤマメ(サクラマス)・イワナ(アメマス)・ヒメマス(ベニサケ)・ブラウントラウト・イトウ・カラフトマス・シロザケ(アキアジ)はもちろんトラウトの亜種、例えばオショロコマなども含めてすべてターゲットトラウトです。そしてDAIWA、SHIMANOなどのネイティブトラウトロッドは淡水域・海水域のトラウト・サーモンをターゲットに展開していることからトラウト(マス)、サーモン(サケ)に関係なくすべてのネイティブトラウトを【トラウト】として定義されていることになります。
エリアトラウトの【トラウト】の定義とは?
一方、管理釣り場は場所によって放流されているトラウトは異なります。種類としてはニジマス・ヤマメ(サクラマス)・イワナ(アメマス)・ブラウントラウト・イトウなどです。これ以外の亜種も多く特にニジマスの色素変異したアルビノニジマスが人気です。いずれも養殖がメインです。ということはエリアトラウトの【トラウト】は淡水の養殖または移植されたトラウト(マス)が【トラウト】として定義されています。DAIWA、SHIMANOなどのエリアトラウトロッドも管理釣り場で管理されているトラウトがターゲットとして展開されていますので同じですね。余談ですが最近海上釣り堀というものが流行っていますね。そこには海水のトラウトやサーモンがいるようです。この海上釣り堀がエリアトラウトに含まれてくるとエリアトラウトの定義も変わるかもしれませんね。
トラウトは渓流・管釣りからショアまで!食べても美味しく幅広いフィッシングエリアが魅力
さて今回はトラウトの種類を詳しく掘り下げてみました。亜種を入れたらもっといますので日本のトラウトの多さにびっくりします!その種類以上に釣法があるのでアングラーに人気があるのだと感じました。トラウトを釣るのために養殖・放流して管理して釣る場所まであるのは【トラウト】だけではないでしょうか?綺麗なトラウトたちが未来永劫、私たちアングラーが楽しめるようにルールやマナーを守って楽しくそして美味しくいただきましょう!