ブラウントラウト釣りのタックル要件は?ロッド・リールの条件を細かく解説
作成:2019.08.15更新:2023.04.17
目次
大物に合わせた道具でこそ大物ブラウントラウトが釣れる
湖のブラウントラウトの釣り方に、専用の道具はありません。バスロッドを使ってもいいし、シーバスロッドを使ってもいいでしょう。スピニングでもベイトでもどちらでもいいと思います。ここでは、それぞれの道具にどのような要素が求められるか?について整理してみようと思います。湖のブラウントラウトを釣りに行く際、お手持ちの道具の中から何を使うか?の選択するヒントにしてみてください。
この記事ではブラウントラウトを釣るために必要なロッドなどの道具の条件と選び方を解説します(第5章・最終章)。この記事と合わせて読むべき記事をシリーズ仕立てでご紹介します。
湖の大物ブラウントラウトを釣るための釣り具
ブラウントラウト釣りでロッド(竿)に求めるもの
最近は、河川や湖沼でのトラウトフィッシングに最適だとうたった道具が数多く販売されています。高価なものも安価なものも、新品も中古もあります。湖のブラウントラウトの釣りにおいて、ロッドを選ぶ場合に注意することは、魚が遠くにいる場合と近くにいる場合の両方を想定するということでしょう。遠くにいる場合は遠投できなければいけませんし、近くの場合はなるべくフワッと着水させられるロッドが理想的です。さらに大事なことは、魚がルアーを咥えたことが分かり、違和感なく喰わせ、しっかりとフッキング(針がかり)させることが出来て、大物であっても負けることなく寄せてこれるパワーがあるロッドだということです。まして、足元の悪い湖岸を一日中歩き回らなければいけませんから、軽いことも大事です。そこで、具体的なポイントをあげてみます。
大物ブラウントラウトを手にできるロッドの条件
- 軽い
- ティップ(竿先)は負荷がかかった分だけ曲がる(プログレッシブアクション)
- 硬いロッドではなく全体が曲がる
- 1m台の魚に耐えられるバットパワー
- 7.5~8.5ft
- 適合ルアーは10~30g
- ガイドは大きめ
ある程度、矛盾とも思えるような要素を取り上げていますが、お手持ちの道具の中に、似たようなスペックがあれば、流用できます。また、足元が悪い釣り場が多いので、あまりに長いロッドはトラブルの原因になります。反対に、短すぎてもロッドパワーを活かしきれないので、ある程度の長さは必要です。
湖で巨大化したブラウントラウトは、皆さんが想像されるより引きます。特にメスは体高も高く、走り回ることはありませんが、ダッシュ力は同じサイズの魚ならコイよりも強く、80cmを超えるサイズになると、日本の淡水魚でも1、2位を争う引きの強さになります。その引きに耐えられるロッドでなければなりません。また、ハイモデュラスカーボンのロッドではなく、少し専門的な用語を使わせていただくと、ナノレジン(最新鋭のカーボン繊維の接着剤)のカーボンを素材に使っていることが理想です。ナノレジン素材でねじれを防ぐようなカーボンシートの巻きのものは、感度が高く、ちゃんと曲がるのに戻りが早くて、細いのにパワーがあります。
注意点として、ハイモデュラスカーボンロッドは感度がいいと、多くの方が勘違いをしています。ハイモデュラスカーボン素材であることと、ロッドの感度が高いことに相関関係はありません。ロッドの感度と素材は無関係と言ってもいいと思います。感度を高めるのはグリップ性能です。
メガバスというメーカーが高く評価されているのは、感度を高めるのはグリップだという原理に気付いて独自に開発を進め、それまでの日本に存在していなかった高感度のバスロッドの製品化に成功したからです。優れた感度のロッドは、ラインを張った状態で、グリップの上部のブランクス部分を持って感じる感度と、グリップを持って感じる感度が全く違うロッドです。グリップに感度を増幅させる機能が備わっていれば、グリップを握る方がはるかに感度がいいはずです。
これらの条件を考慮した参考ロッドを2つご紹介します。
ブラウントラウト釣りでリールに求めるもの
リールはスピニングでもベイトでもいいのですが、一番大事なことはスムーズなドラグ性能です。飛距離だけなら重いルアーを使ったベイトがいいのですが、寒い季節に釣りをすることを考慮すれば、ガイドの大きなスピニングがいいでしょう。また、ベイトのドラグとスピニングのドラグは、間違いなくスピニングのドラグの方が優れています。構造上、ドラグワッシャーの径を大きくとれますし、調整幅が広く、微妙なやりとりが可能になります。また、ラインのところでも触れますが、必ずワンサイズ大きいリールを選びましょう。以下は、スピニング、ベイトに関係なくリールに求めるものを書いてみます。
大物ブラウントラウトを手にできるリールの条件
- ドラグ性能の良いもの
- 糸巻き量の多いもの
- 出来れば軽いもの
- ライントラブルの極力無いもの
- ハイギアのもの
ブラウントラウト釣りでライン(糸)に求めるもの
ロッド、リール、糸の中で、最も重要なのが糸です。ナイロン、フロロカーボン、PEとありますが、湖で岸からの釣りでしたらナイロンライン一択です。フロロカーボンは寒い時期は硬くなりますし、すぐに傷がつきます。また同じポンドテストなら太くなり、しかも弱いです。また、比重が高いため沈んでしまい、アタリが取りにくく、これは使い勝手の面でおススメ出来ません。
PEはハッキリ言って、使い物になりません。確かに同じポンドテストなら細いラインが使えますので、遠投が出来ますし、伸びがないのでアタリが取りやすいと言われています。ところが、PEは結束力が弱く、比重が軽いので水面に浮きやすくラインにたるみが発生しやすくなります。ちょっとでもラインがたるんでいると、張った状態からは考えられないほど、魚のアタリを感じ取ることが出来ません。
また、湖の魚を岸から狙う釣りでは、足元に多くの岩があり、ラインがこすれる可能性が非常に高いです。PEは岩の擦れに弱く、信じられないくらい呆気なく切れます。最近ではPE表面のコーティング剤が向上し、擦れに強くなったとは言われますが、それでも、優秀なナイロンラインには敵いません。ただし、PEは擦れるものがない釣りにはいいと思います。せっかく一生に一度の魚に出会っても、足元でラインを切られてしまっては何にもなりません。フロロカーボンもPEもそれぞれにいいところもありますので、釣りによって使い分けると良いと思います。
以下、湖の大物にナイロンラインを使う上での注意事項です。
大物ブラウントラウトを手にできるラインの条件
- 12~16lbテスト、出来れば18lb
- なるべくしなやかなもの
- 必ず表面に耐摩耗コーティングがあるもの
- 一匹でも釣ったら、ラインとルアーを結び直す
- 釣行ごとに巻き替える
特に、最後の釣行ごとに巻き替えるというのが、最も重要です。何だかもったいないような気もするかも知れませんが、一生に一度の大物を、ラインを巻き替えていなかったばっかりに取り逃がしては、いくら悔やんでも悔やみきれません。
巻き替えを推奨する理由を解説します。ナイロンはいかに表面にコーティングされていても、素材の性質上、幾分かの水分を吸収します。一旦水に浸かったラインは、乾燥する際に劣化が進みます。また、1日重いルアーをキャストしていれば、伸び縮みが起きています。それも、ナイロンラインが劣化する原因です。
リールに巻きっぱなしのナイロンラインは、12lbテストであっても、そして相手が50cmくらいのブラウントラウトであっても、やりとりによっては簡単にラインを切られてしまいます。そのかわり、新品の優秀なナイロンラインであれば、80cmを超えるサイズであっても12lbクラスで獲れます。新品のライン強度は、最大表示されている対荷重の3倍の重量の魚の重さに対応できます。そのためにも、リールのドラグ性能はとても重要です。
太いラインだったら、見破られて釣れないのではないか?という疑問もあるでしょう。大前提として、ラインは太くてもブラウントラウトは釣れます。村田 基氏も言うように、ラインが見破られ警戒される原因は、光の乱反射です。水中の輝きはエサを見つける一つのトリガーでもありますが、同時に警戒感を生んでしまうトリガーともなります。不必要で不自然な水中の光の反射は、ブラウントラウトに警戒心を起こさせるだけです。
これらの条件を考慮した参考ラインを2つご紹介します。
ブラウントラウト釣りのルアーに求めるもの
湖で大型のブラウントラウトを狙う上において、ルアーの選択の難しさに躊躇する必要はありません。魚が泳ぐ層、陸地から想像する湖底の形、湖流の向き、風の方向が分かれば、ある程度のルアーは絞り込めます。多少、動きが悪かったりしても、ロッドアクションでなんとかなります。
ブラウントラウト釣りでのルアー選びの考え方については前章で詳しく解説していますのでご参照ください。
ルアーで最も大切なのは動きや形よりもフック(釣り針)
昔は、刺さりが良くなるように先端を研いで使っていたものですが、最近の日本製のフックは世界一の刺さりの性能を持っています。何もしないのが一番刺さりが良いです。ただ、ルアーに付いている針が日本製とは限りませんし、全てのルアーの針が性能が良いとは限りません。ちょっとでも不安に感じたら、あるいは少しでも動きが良くなる可能性があるなら、フックメーカーが出しているフックに交換しましょう。また、ルアーを使っていると、岩に擦れたりすることはよくあります。針先のチェックを怠らず、少しでも不安を感じたら、釣り場であっても、予備のフックに交換しましょう。
ブラウントラウトのアゴは、大物になるほど硬く、ちょっとやそっとではルアーフックを刺すことはできません。ブラックバスなどもそうですが、大物を寄せてきてあと一歩という時に、ポロッと針が外れて魚がバレることがよくあります。つまり刺さっているように見えても実は刺さっていないのです。テレビでバスプロと言われる人が、思いっきり合わせる動作を行なっていますが、そうしなければ、針が貫通しないからです。大型のブラウントラウトの顎は、ブラックバスよりも硬いので、余計にしっかりとした合わせが必要になります。特に、遠くで魚を掛けた場合、二度三度の合わせは必ず行いましょう。確実に魚の口にルアーが入っていれば、針は刺さります。
あと、注意が必要なのは、速いアクションをつけている時に魚が咥えた場合です。魚が掛かった瞬間、条件反射でロッドをあおってしまいますが、その場合、瞬間的にラインに凄い負荷がかかり、ラインが切れてしまう可能性もあります。いわゆるビックリアワセというやつです。ブラウントラウトがしっかりルアーを咥えていれば、ロッドに重みが乗りますので、一度アワセを入れた後、タイミングを見て、再度しっかりとアワセる癖をつけましょう。
ブラウントラウト釣りのためのその他の道具
ランディングネット(手網)は必須
湖のブラウントラウトの釣りでは、一生に一回の大物の出会いの可能性は常にあります。ハンドランディング(手で魚を掴む)はやはり危険です。魚釣りをしていて魚を逃してしまうのは、ほとんどが最後に魚をキャッチする瞬間です。
長い時間暴れさせて大人しくなったように見えても、魚は最後の余力を残していますし、大物になるほどその傾向があります。ちょっと荷物になるかも知れませんが、大きめのネットは必ず持参しましょう。
フィッシュグリップという魚の顎を掴む道具もありますが、ネットで掬って、その後に魚を持つ時に使うものと思っていた方がいいと思います。確実なのはやはりランディングネットです。それも、湖で使う場合は、なるべく大きなサイズを選びましょう。
ウェアに求めるものはまず安全性
ウェアについては、季節にあったもので、岩の上で転んでもいいように、夏でも出来れば長袖がいいと思います。湖岸の岩は尖っている場合もありますので、滑らないウェーディングシューズは必須です。もしくは、磯釣りに使うようなブーツでもいいと思います。
絶対に着てはいけないのが黒い服です。山間部に入るわけですから、色々な毒虫がいますが、中でもスズメバチには万全の注意が必要です。スズメバチは凶暴なので、黒い物が動いているとクマだと勘違いして襲ってきます。例えば、毒ヘビのマムシやヤマカガシはゴム製の長靴を履いていれば、噛まれても牙は貫通しませんし、長い棒でつつくかビュンビュン振れば逃げていきます。しかし、スズメバチは興奮状態にあれば容赦なく襲ってきます。また、攻撃体制に入ると仲間を連れて戻ってきます。そこで、走って逃げられればいいのですが、湖岸はそういうわけにはいきません。
そのためにも、なるべる白に近い明るい色の服装を選びましょう。白や明るい色の服なら、万が一スズメバチに遭遇してもじっとしていれば刺されることはありません。手で払ったり、叩き落とそうとしたりすると、怒って襲ってきます。どうしても逃げられない時のために、スズメバチが出る可能性がある場所には専用のスプレーを持っていくことをオススメします。
ついでですが、クマが出る可能性がある場所には、クマスプレーを持っていった方がいいのですが、自分が風下にいて噴射すると、2~3時間は目も開けられず動けなくなるくらい強烈なので、注意しましょう。
また、トラブルや事故防止の観点から、自動膨張式のライフジャケットを身につけましょう。通販等を活用すればお好みのデザインの物が手に入ります。また、邪魔にならないベルトタイプやポーチタイプのものもあります。事故が起きてからでは遅いので、必ず着用するようにしましょう。
ブラウントラウトが釣れる条件:特別な道具よりも最適な道具
道具がなければ魚は釣れません。それぞれのこだわりが出るのも道具の選び方です。デザインの好き好きや、微妙な性能の違いもあるでしょう。チャレンジ精神で細いラインや細いロッドで釣りをしたいという方もいるでしょう。もしかしたら、何かの思い込みで小さなルアーでなければ釣れないから、細いラインと柔らかいロッドを使わざるを得ないということもあるでしょう。
その時の活性の問題等もありますが、食い気が起きている魚は、動くものに興味を持っています。ルアーフィッシングはエサ釣りではないので、魚の活性に合わせて口を使わせるために、動きを見せて誘うものです。釣れてくる魚のサイズは必ずしも大物ではないかも知れません。でも、中には驚くほどのサイズがいるかも知れません。
細いラインと細いロッドで苦労して大物を手にすることもいいのですが、確実に大物を仕留め、速やかに水に返してやるということも大事なことだと思うのです。魚釣り、特に難しい釣りであればあるほど、魚を掛けるまでのプロセスが大切だと思います。
テクニックや知識を駆使し、厳しい寒さや暑さに耐え、厳選の道具でチャレンジしたそのプロセスに釣りの全てがあります。そうやって準備に準備を重ね、トライアンドエラーの繰り返しを経て、一匹の大物に巡り会った喜びはひとしおだと思います。
決して楽な釣りではありませんが、挑戦しがいのある釣りでもあります。ぜひ、湖のトラウトフィッシング、それも大物のブラウントラウトフィッシングに挑戦してみてください。