湖のブラウントラウトには釣れる時間があることを知ろう
作成:2019.08.08更新:2023.04.17
目次
釣れる時期はブラウントラウトが決める
ブラウントラウトの釣り方に限らず、どんな釣りでも魚が目の前にいなければ釣れないし、自分の投げるルアーやフライが届く距離に魚がいなければ、釣ることは出来ません。言い換えると、私たちの投げるルアーが届く距離にブラウントラウトがいて、魚が興味を持つ動きのルアーやフライを目の前に届けることが出来れば、魚は釣れます。では、一年の中でいつ、魚が自分の釣れる場所に接近してくるのでしょうか?
この記事ではブラウントラウトを釣りに行くのに適した時期について追求します(第3章)。この記事と合わせて読むべき記事をシリーズ仕立てでご紹介します。
この記事では時期を中心に解説しています。時間帯については第1章もご参照ください。
エサの捕食行動がブラウントラウトの行動原理
湖のブラウントラウトは、常にエサを捕食する機会を狙っています。そして、よりエネルギーを使わず効率よく捕食するチャンスを狙っているわけです。だから、水生昆虫が羽化する時期にはよりたくさん羽化する場所を探していますし、陸生昆虫が風に飛ばされる時期には、風下にあたる虫がたくさん飛んでくる場所を探しています。また、より大型な個体はエサになる魚の群れを捕捉して捕食のタイミングを見計らっています。季節により動きを変えるブラウントラウトは、言い換えればエサの状況により居場所を変えていると言ってもいいでしょう。ところが、湖の中には貧栄養湖と言われる、栄養分が少なくエサになる生物の発生が少ない湖も少なくありません。
ことに山上にあって栄養価の豊富な河川の流入が少ない湖では、エサの発生が大きくブラウントラウトの動きに影響します。そして、エサが豊富な時期、ブラウントラウトは集中してエサを捕食しています。特に秋は、エサが乏しくなる冬に備え、積極的に捕食行動に出ます。また、産卵を控えたメスはより多くのエサをとろうとします。河川に生息するブラウントラウトは、他のマス族同様、春に産卵するのですが、湖のブラウントラウトは、必ずしも春に産卵するとは限りませんし、流入河川が産卵に適しない場合は、伏流水が湧き出している湖底でも産卵をします。
ちなみに、産卵行動に入っているオスは、産卵床に入ってくる外敵を追っ払うのに必死で、ルアーを投げると、いともたやすく釣ることが出来ますが、多くは顔や尻尾に近い場所に針が掛かります。これは追い払う時に針が掛かってしまったことを意味します。産卵行動に入ったペアは、驚かさなければ、かなり近くまで寄って観察することが可能ですが、ストレスがかかったり、警戒心を出したり、釣り針に掛かってしまったりすると、産卵行動をやめてしまうこともありますので、産卵時期の釣りは控えた方がいいでしょう。
人間の感覚とブラウントラウトの感覚の違い
冬に釣りをされた方なら分かるように、魚にとって、冬の冷気は命取りです。真冬にブラックバスを釣ると、体が硬直して弓なりに曲がってしまいますが、それは水中より外気の方が温度が低いためです。
人間は夏の暑い日に水の中に入ると気持ちよく感じますが、魚にとっては高気圧が水を押すためと水中の酸素濃度が低下するため過ごしにくいのか、流れが強い場所や、流れ込み(流入河川)近くの白泡が立つような場所を好みます。山上湖の流れ込み付近は、真夏でも大物が回遊してきて、タイミングが合えばいい釣りが出来たりします。水中にいるブラウントラウトの感覚と、釣りをしている人間の感覚は真逆と言ってもいいかも知れません。
東北や北海道の湖で釣りをする場合、真冬にやるのは寒さとの戦いですが、真冬は水中の方が環境がいいので、意外と魚は活発にエサを捕食しています。ただし、内水面の湖沼には、殆どの場合漁業権が設定されているので、釣りをすることは出来ません。もし、真冬でも釣りができる湖があったら、寒さ対策をしっかりして釣りをしてみれば、盛期(春、夏、秋)とは違った釣りを体験できるかもしれません。
何故、釣れない時期に釣れて、釣れる時期に釣れないのか?
釣りにはビギナーズラックというものがあります。始めたての人が大物を釣ったり、誰よりも数を釣ったりすることです。ルアーの投げ方も知らないような女の子が、始めて行った場所で、並み居るベテランや、師匠であるはずの彼氏よりいい魚を手にすることはたくさんあります。まるで、魚が彼女のルアーを選んで食いに来ているように感じてしまいます。そうなんです。魚は彼女のルアーを選んで食べにきているのです。
私たちは、それまでの経験やセオリーに基づいて、自分のデータベースにあるように釣りをし、データベース通りの場所を狙います。いつしか固定観念のように自分で釣れる時期と釣れる場所を決めてしまっています。ルアーにしてもそうです。湖のブラウントラウトはこのルアーで釣るものだ、という感覚にとらわれすぎています。
始めたての人は、そもそもデータベースにそんなものはないので、投げろと言われれば投げるし、巻けと言われれば素直に巻いてきます。ルアーは設計者の思惑通り、狙い通りの動きをします。ルアーの持てるポテンシャルが知らず識らず発揮され、魚にアピールすることが出来ます。
釣れる時期や時間帯を自分で決めていないか?
湖では、湖岸の形状により、浅場が沖合遠くまで続いている場所も、足元からすぐ深くなっている場所もあります。魚は自分が岸から何メートル先を泳ごうと決めて回遊しているわけではありません。自分にとって適正な深度を、エサを求めて回遊しています。時に、人間が驚くほど近くを泳いでいたりするので、ルアーフィッシングを始めたての方でも、タイミングさえ合えば、魚は釣れます。また、始めたての人は、殺気がないと言いますか、余計な欲心もないので、魚が警戒しないというのもあるかも知れません。
釣れる時期や時間は人間が決めるものではありません。目の前のルアーに食いつくか否かは、魚が決めています。目の前をルアーが通り過ぎても、興味がなければ追いませんし、食い気がなければ見向きもしません。一方、食うわけがないと決めつけている時期や時間帯に、練習のつもりでルアーを投げたら釣れたということもたくさんあります。だからと言って、次に同じ時間に同じ場所で釣ってみても、また同じように釣れるというわけではありません。
釣り場に立つ時は、少しだけ謙虚に、自分は分かっているという思い込みを捨て、全ての可能性を排除せず、こだわらず、自然と一体になれるように心掛けてみましょう。開高 健は『オーパ!』という紀行本の中で、「腕はプロ、心はアマ」という名言を残しましたが、その通りだと思います。
ブラウントラウトが釣れる条件:時期を知りそして忘れる
- 思い込みを捨てる
- 経験に縛られない
これも当たり前と言えば当たり前なのですが、釣りに熱中するあまり、つい忘れがちになるところです。しかし、その経験や知識は、大変に貴重な財産になります。また、湖のブラウントラウトの釣りというむずかしい釣りに挑戦することは、結果的にその経験値を多くの釣りに反映させていけると思います。逆に、湖のブラウントラウトの釣りに挑戦するにあたり、バス釣りの経験も活かされるでしょうし、海釣りの経験も活かせるでしょう。
日本は世界的に見ても淡水域に恵まれた国です。水は美味しく、淡水域の美しさ、水質の良さも誇れるべきものだと思います。そして、海外から移入された多くのマス類が生息していて、人知れず、大きく成長しています。あらゆる釣り人の針をかいくぐり、ワシ、タカ、クマ、タヌキといった野生動物の危険もかいくぐって、あなたの挑戦を待っています。