ブラウントラウトが釣れるルアーセレクトとは?その選択が釣果を決める
作成:2019.08.13更新:2023.04.17
目次
常識が通用するとは限らないブラウントラウトのルアーセレクト
湖のブラウントラウトの釣り方の基礎となる、魚へのアプローチの仕方について考えても、結局のところ使用するルアーの選択が肝心であることに変わりはありません。では、これが間違いなく釣れるルアーだ!と言えるルアーは存在するのでしょうか?結論から言えば、そんなものはありません。 自分が好きだから、こだわりがあるから使ったら釣れた、ということもありますし、友人に勧められて使ってみたら釣れた、ということもあるでしょう。ネット上の情報をもとに使ってみたら釣れたというのもあります。
しかし、それは果たしてルアーセレクト(ルアー選び)の上で決定的な選択の根拠となり得るでしょうか?ブラウントラウトの習性や食性、湖の特性、季節等を考慮に入れながら、その時々に魚が興味を示す、関心を示すルアーというものが存在するのでしょうか?ルアー釣りをする上で、古くて新しいテーマのルアーセレクトについて、考えていきたいと思います。
この記事ではブラウントラウトを釣るために必要なルアーの条件と選び方を解説します(第4章)。この記事と合わせて読むべき記事をシリーズ仕立てでご紹介します。
釣れるルアーと釣れないルアーの違い
多くの釣り雑誌や情報サイトに載っている記事では、大抵、タイアップしたメーカーが開発中だったりこれから広く販売したいと考えていたりするルアーが使用されています。長年の研究や、他社にはない独自性を追い求め、実際に釣りに使用することで結果を出し、その効果を視覚的に見せることで、宣伝効果を狙っています。当たり前ですが、その世界で専門的に研究しているわけですから、釣れるのも当然です。
ルアー開発を行う場合、通い詰めたフィールド(釣り場)で実証実験を繰り返しますが、開発したルアーが、実験を繰り返した場所以外でも通用する可能性を探るため、テスターと言われる人々が日本中の河川や湖沼で使用し、確かにこのルアーは多くの場所で釣れるルアーである、という確信を得て、製品化されます。我々ユーザーは、自分たちの代わりにルアーを開発してくれている方々の声を聞いて、使ってみようということになるわけです。
なるほどそれで釣れることもあれば、期待を裏切られる場合もあるでしょう。ルアーは、人に言われて選ぶものではありません。最初はそれでもいいかも知れませんが、釣り人に与えられた釣りの条件は、皆同じではありません。気候も、釣り場も、魚の機嫌も、時によって変化し、変わり続けています。人間の心だって、時により変化するのと同じです。夫婦喧嘩の後の釣りは、後ろめたい思いが残り、釣り場に着いても気分が乗らないのと同じです。
釣れる条件の広いルアーは存在する
ルアーセレクトの時に注意が必要なのが、目の前にあるルアーは、ある特定の条件下になら効くというコンセプトで開発されていないか?ということです。春先に小魚が産卵で岸に接岸している時に使用するルアー、という開発コンセプトのルアーがあったとします。一年のうちで春に釣りが出来て、しかもそこには産卵のために接岸してくる性質の小魚がいて、しかも都合よく小魚が接岸していて、しかもその小魚を狙っている大物がいて、という状況に、果たして何人が遭遇できるでしょうか?
釣れるルアーとは、使う条件に左右されないルアーです。もしくは、使う条件の幅が広いルアーです。釣り具店に行くと、パッケージが古めかしくて、デザインも特色がなくて、カラーリングも野暮ったいのに、何故か昔からずっと売られ続けているルアーがあります。売り場の隅っこでそれほどスペースも取ってもらえず、新興メーカーの煌びやかさに比べると物足りない感じがするのに、何故かずっと減っては補充され続けているルアーがあります。
それが、使う条件を選ばなくても釣れ続けているルアーです。絶対条件ではありませんが、そういうルアーは信頼して良いルアーかも知れません。条件付けをし、特定の魚種のために開発されたルアーでもいいのですが、魚がつい口を使ってしまうルアーには、「動くものに反応する」という魚が持つ本能を刺激し、食欲や好奇心を喚起できる動きや形が備わっています。だから、わざわざ宣伝をしなくても、いちいち釣れますよ!と言わなくても、いつまでも売れ続けるのです。そういうルアーは、多くのユーザーから、ルアーケースに入れておけば、困った時に役に立ってくれるという信頼感が寄せられています。
対ブラウントラウトでは意外性が功を奏する
ルアーがたくさん並んでいるのを見ると、どれを選んでいいのか迷ってしまいます。そこで、パッケージの説明文を読んで、騙されたと思って買ってみるか、と思いルアーを購入します。あなたの釣りはそこから始まっています。そのルアーを釣り場で投げることを想像して、ワクワク感が止まらなくなります。そして、予想通りになることもありますが、裏切られることもあります。また、説明書に書かれていることが、当たることも外れることもあります。
拙記事でテーマにしている湖のブラウントラウトの釣り方については、既存のマニュアル本に決定的な攻略方法は記載されていません。ルアーセレクトにしてもそうです。市販品の中に湖のブラウントラウト、もしくはトラウト用のルアーと記載のあるルアーはごくごく限られています。トラウト用のルアーはほとんどが川用のものです。あるいはついでに湖にも使えますよ、という程度です。結局、自分がやりたい釣りに向いたルアーを、数多く買って確かめるしかなく、それなりの出費を求められます。
釣れるルアーはブラウントラウトが決めている
ルアーは人間の側が、使い方を勝手に決めているので、ブラウントラウトは人間の都合に合わせてルアーに飛びかかるわけではありません。海用だから使ってはいけない理由はないし、ブラックバス用のルアーをブラウントラウトに使ってはいけない法律はありません。ブラウントラウトは、バス用ルアーだから食うのをやめようとは思っていません。思わず口を使いたくなったから、口を使ったのです。これ、当たり前のことですが、ルアーフィッシングというジャンルの一つの核心部分です。魚がルアーに食いつく理由を逆に考察する一つのヒントになります。
自分で何かを作り出す趣味と違い、釣りの世界には相手がいます。中でも比較的難しい湖のブラウントラウトの釣りは、気難しいブラウントラウトという魚の側に立って、ルアーセレクトをする必要があります。つまり、一つの固定観念のようなものを拭い去り、自分の行きたい釣り場の特性やエサの生息状況を踏まえつつ、ルアーの形状から動きを想像していくことが大切で、メーカーの方々には申し訳ないのですが、メーカーの推奨する方法や説明は、無視してもいいと思います。既成概念や固定観念を排除するルアーセレクトは、時に思いもかけない効果を発揮するものです。
釣りたいルアーではブラウントラウトは釣れない?
湖のブラウトラウトの釣り、あるいはトラウトの釣りは難しく根気が続かなくなるものです。あまりにも釣れないと、それが当たり前になり、むしろたまに釣れると釣った自分がビックリするくらいの釣りです。1日で1匹でも手にできれば、それで満足し、帰宅してもいいくらいの気持ちになります。
ルアーフィッシングを紹介している雑誌に出てくる人は、高価な道具と「らしさ」満点のウェアに身を包んでいる人たちです。その姿を見れば、カッコいいとも感じますし、憧れを抱くものです。当たり前ですが、釣りは見た目を気にしても仕方がありません。見た目がカッコいい人を選んで、魚は食いついてくるわけではないのです。大きな岩が点在し歩きにくい湖岸、苔が生えて滑りやすくなっている湖岸に対し、歩きやすくて転んでも安全なウェアであれば、釣り用のウェアにこだわる必要も高価な物を買う必要も一切ありません。
これは道具のセレクトにしても、ルアーセレクトにしても同じことが言えます。釣りの世界の有名人が使っている道具に憧れたり、釣り場で出会った人の道具を気にするのもいいのですが、それでは魚を手にするという釣り本来の目的を逸しています。湖のブラウントラウトのように、あまりにも釣れないと、いつしかルアーセレクトにも「このルアーで釣りたい」というこだわりが強くなるあまり、魚をキャッチする機会を逸しているかも知れません。よく、自分の得意なルアーはこれだ!という人がいるのは、単に好きで使い続けているから、数あるルアーの中で釣れる比率が上がっているに過ぎません。つまり、人間が好きなルアーではなく、魚が好きなルアーを見極める必要があるということです。
ブラウントラウトを釣るのはルアーではなく人間という当たり前の話
湖のブラウントラウトの釣りという難しい釣りに取り組み始めたら、そのあまりの釣れなさっぷりに驚かれると共に、挑戦しがいのある釣りであることも分かると思います。既に拙記事でも触れている通り、魚たちは私たちの存在もルアーの存在も知っています。だからこそ、大切にしたいのは、ルアーが魚を釣っているのではなく、人間が魚に挑戦しているということだと思います。心を鎮め、自然に溶け込み、日頃のストレスやイライラを忘れ、目の前の水面に集中することです。
この釣りに限ったことではないのですが、釣りに集中するあまり、またのめり込み探求するあまり、全てを投げ打って世捨て人のように、その釣りの世界に没入する人は多くいます。どれほどの大物を釣っても、他人に自慢することなく、ただ自分の信じた道を追求する。おそらく、メディアにも何にも注目もされず、そんなことには一切頓着しないで、一心不乱に我が道を追求する釣り人は、もう修験道にでも入っているのではないかとさえ思えます。それほど、この世界は奥深く、行っても行ってもゴールのないレースのようなものです。
釣り場環境について
それと同時に、釣りを通じた自然を見つめる世界観が変わると、自然に対しての見方や捉え方も変わっていきます。苦労して手にした魚に感謝するようになりますし、釣り場にゴミを残すようなこともしなくなります。人に言われたからではなく、本当に自然に釣り場環境を守ろうという気持ちが醸成されていきます。それこそ、ルアーを取り替えた時の糸の切れ端ですら、釣り場に残して帰りたくはなくなります。自然分解しないから、というのもありますが、やはり、好敵手に敬意を表し、魚の棲む環境を自分が来た時のままに守っていこうという気持ちが芽生えるのだと思います。
ゴミを拾ったから魚が釣れるようになる、という都市伝説めいたことを言うつもりはないのですが、拾わないより拾った方が、釣れるかも知れないという気になるものです。また、現実的な効果として、釣り人が来るようになってからゴミが増え、地元住民が問題視し、釣り禁止になってしまった釣り場はたくさんあります。釣り場環境は私たち人間が守る以外に方法がありません。キツネやタヌキが、せっせとゴミ拾いしてくれるわけではないのです。
ブラウントラウトが釣れる条件:ルアーに使われずルアーを使う
ルアーセレクトについて触れてきました。そうかなあと思ったことも、知っているよと思ったことも、それより具体的に名前を出して教えてくれよと思われたかも知れません。ここで具体的なルアーの名称を出してもいいのですが、それこそ皆さんを迷わせる原因にもなりかねません。どうか、ここに記載している内容をヒントに、ご自分の判断で自信を持って投げ続けられるルアーをセレクトして欲しいものです。
と言いましても、それではあまりに不親切なので、ルアーの動きの中で大切な部分と、筆者が使用しているルアーセレクトをご紹介いたしますので、ルアーを購入される時の参考にしていただければと思います。
ブラウントラウトが好きなルアーの動きとは?
- ブラウントラウトは規則正しい動きに弱い
- ゆっくり動かしても、早く動かしてもアクション(動き)が破綻しない
- ウォブリング(首振り)より左右のローリング
- サッと動かした後に余韻がある
- 虫の時期以外は動かした方がいい
- ラトルはむしろない方がいい
これらのことを参考にルアーをセレクトしてみてください。ルアーの大きさについては、小さいルアーだから小さい魚しか食ってこないということはありません。ビックリするような大物が、とても小さなスプーンに食うこともありますし、逆に13cmくらいのミノーに40cm以下のブラウントラウトが釣れる場合もあります。ブラウントラウトは目の前のルアーを咥える前に、目の前の動いているものを口にするかどうか?の判断をしています。その時に、ルアーの動きに合わせて同じ速度で移動しながらルアーの様子を見ています。
もう一つは、リアクションバイトです。魚に迷う時間を与える前に、口にさせてしまうということです。ルアーが着水後、人間が必死に巻いても、瞬発力では魚にはかないません。どれだけ竿を強く煽ってルアーを動かしても、ルアーに食いつくスイッチが入ったブラウントラウトは、ルアーを追い詰めるかのように、ルアーと同じ速度で泳ぎながら、食いつくタイミングを見計らっています。季節も関係ありません。捕食スイッチが入ったら、季節に関係なく追ってきます。明らかにブラウントラウトがいることが分かっている場合は、意図的な早い動きで誘ってみるのも効果があるでしょう。
参考ルアーセレクト
参照1:魚の生態からみた魚道の見方:水野信彦
参照2:Extreme winter aggregation of invasive rainbow trout in small tributaries: imprecations for effective controls(The Ichthyological Society of Japan)
参照3:魚類の通し回遊現象の解明:新潟大学理学部飯田研究室