シマノ同社にとって特別のリール、アルテグラ 3000XG はおトク度MAXだ!
シマノの汎用スピニングリールの中で、メーカー希望小売価格15,000円〜20,000円クラスをカバーする「アルテグラ」シリーズ。実はこの「アルテグラ」というブランドは単なるリールのブランドではありません。元々は、シマノの世界No.1事業である、自転車コンポーネントのシリーズの一つに「アルテグラ」シリーズがあります。また、かつて同社がゴルフ事業を手掛けていた頃は、ゴルフクラブのブランドにも「アルテグラ」が使われていました。自転車コンポーネント、釣具、ゴルフクラブの共通ブランドとして、「アルテグラ」は同社にとっては重要なネームとなっています。スピニングリールの「アルテグラ」は、上位機種に採用されている技術がてんこ盛りで、メーカー希望小売価格15,000円〜20,000円のスピニングリールとしては破格の高スペック機となっています。
「アルテグラ」とは?
「アルテグラ」とは、「アルティメット」と「インテグレート」をかけ合わせたシマノの造語で、同社製品にたびたび使われている登録商標です。直訳すると、「究極の統合」とでもなりましょうか? ロードバイク用コンポーネントでは、プロユースの最上位シリーズコンポーネントの「DURA-ACE(デュラエース)」に次ぐ高級なコンポーネントが「ULTEGRA(アルテグラ)」シリーズと呼ばれています。自転車の世界では、アルテグラは、プロの練習用自転車や、ハイアマチュアがレース用自転車で使うコンポーネントといった感じで、運動不足解消や趣味程度のサイクリストにはなかなか縁がない、垂涎のラインアップです。また、かつてシマノが、当時世界最大級の慣性モーメントを持つというドライバー(ゴルフクラブ)を引っ提げて、1999年にゴルフ業界に参入したのですが、そのドライバーも、「アルテグラ」の名を冠していました(ゴルフ用品事業は2005年に撤退)。ちなみにシマノは、もう一つ、スペイン語で「安心、くつろぎ」を意味する、「ALIVIO(アリビオ)」という共通ブランドも持っていて、こちらも自転車コンポーネントのうち、マウンテンバイク用コンポーネントのエントリーグレードと、釣具ではシマノの最安価レンジのスピニングリールの名称に使われています。
アルテグラ 3000XGの基本スペック
アルテグラ 3000XGのスペックを見て行きましょう。ギア比6.2、ハンドル1回転あたり最大巻き上げ量91cmのエキストラハイギアタイプになります。ベアリングは5ボールベアリング+1ローラーベアリングとなっています。ディープタイプのスプールが装着されており、ラインキャパはPE1号でまさかの400m。近くに釣り人がいなければ、潮の流れに任せてどこまでもドリフトできます!ナイロン・フロロカーボンは4号、すなわち16lbで100mです。最大ドラグ釣力は9kg、自重は250gです。スペックから見ると、オフショアのライトジギングや、100m以深を狙うアマダイ釣りまでこなせる(オモリは50号くらいまででしょうか?)汎用リールといったところです。このPEラインキャパは、バーチカルなオフショア釣りを意識したセッティングといえるでしょう。ショアジギングするなら、下糸を相当巻いた方が良さそうですね。
アルテグラ以上の機種から採用されているシマノテクノロジー
シマノのメーカー希望小売価格1万円台のリールの中で、アルテグラのすぐひとつ下の機種であるナスキー(メーカー希望小売価格10,500円〜13,500円)と比較すると、「コアプロテクト(ラインローラー、ローラークラッチ)」、「ドラグノブ防水」、「超々ジュラルミン製マシンカットねじ込み式ハンドル」が、アルテグラに追加されています。「コアプロテクト」とは、水の侵入経路にあたるパーツに強力な撥水加工を施し、水のそれ以上奥への侵入を防ぐ機能です。ナスキーはローラークラッチ部のみですが、アルテグラは一番塩水とのコンタクトが過酷なラインローラーにもこの加工が施されています。「ドラグノブ防水」は言わずもがな。
さらに、筆者が個人的に一番嬉しいのが、もう一つの機能である「高強度アルミ製ねじ込み式ハンドル」です。安いスピニングリールを使っていて何が気に入らないかといえば、ドラグ性能と、折りたたみ式ハンドルの脆弱さです。1日中タックルを振りまくるのです。リールのハンドルにガタがあったらもの凄いストレスになります。軽くて強い超々ジュラルミン材で、さらにシマノのオンリーワン技術である冷間鍛造で仕上げたねじ込み式ハンドルであれば、そんなストレスを感じることは微塵もありません!これらの機能がプラス数千円でトッピングできるなら、選ばない理由はありません。「あったほうが良い」ではなく、「なくてはならない」機能であります。
目立たない気遣い、スプール下部の刻印が嬉しい!
それだけではありません。アルテグラのスプール下部のフランジには、ラインキャパの3分の1ごとに円が刻まれていて、下糸を巻く際の目印になっているのです! 例えばPE1号を巻く際、スプール下部のフランジに刻まれた2本の同心円の内側の刻印まで下糸を巻けば、残りのラインキャパは約270mとなります。外側の同心円までした糸を巻けば、残りのラインキャパは約140mとなります。下糸をどれだけ巻いたら、メインラインがピッタリスプールいっぱいに巻けるか?を探り当てるのは至難の業です。同じスプールがもう一つあれば、一旦予備のリールにメインラインを自分が巻きたいだけ巻いて、その後下糸を接続し、スプールいっぱいまで巻き、その後それをもう一つのスプールに下糸から巻き直すという荒業もできなくはないですが、なかなかここまでできる人は少ないですよね。このスプールフランジへの刻印は、そうしたアングラーの悩みを絶妙に汲みとっで、アナログ的発想で見事に解消した好例だと思います。すべてのスプールに採用してほしい、ちょっとした心遣いですね。
まだある、アルテグラの気になる特徴
その他にも、アルテグラには上位機種譲りのテクノロジーが盛り込まれています。現行モデルから採用された、「HAGANEギア」と呼ぶ、超々ジュラルミン製の冷間鍛造ドライブギア(前モデルまでは亜鉛ダイキャスト+マシンカット品でした)は、熱をかけない精度の高い鍛造プレスにより、分子を高密度に並べることができるため、非常に硬く強度があり、優れた形状安定性を得ます。負荷がかかるエキストラハイギアに最適な素材と工法が使われています。また、アルミスプールは「AR-Cスプール」と呼ばれる、特殊なスプールフランジエッジ形状(逆テーパー形状のフランジエッジ)により、ラインの放出時のラインの接触抵抗を極限まで低減でき、飛距離の向上に寄与します。
クイックレスポンスシリーズとコアソリッドシリーズ
シマノのスピニングリールには、そのリールの性格から「クイックレスポンスシリーズ」と「コアソリッドシリーズ」があります。簡単に言うと、クイックレスポンスシリーズは、ローターの慣性モーメントを低く抑え、軽量化と高剛性を追求し、非常に軽い始動と巻き心地で、リールの巻き上げよりも細かいアクションを重視したシリーズで、現在のシマノのスピニングリールでは主流となりつつあります。代表的なモデルは、19ヴァンキッシュ、17セフィアCi4+、18エクスセンスCi4+などです。
「コアソリッドシリーズ」は、剛性を重視したモデルとなります。ローターの慣性モーメントを利用して、釣り人のパワフルなリーリングをサポートするシリーズで、主にショアジギングなど、キャスト→リトリーブを長時間行うような釣りに向いているリールです。代表的なモデルは18ステラ、20ツインパワー、19ストラディック、17アルテグラとなります。17アルテグラは、今モデルより、クイックレスポンスシリーズからコアソリッドシリーズに鞍替えしています。よりジギングに寄せた商品設計になっていることがわかります。ただし、最近のシマノのラインアップを見ている限り、今後はやはり、シマノのスピニングリールはクイックレスポンスシリーズに集約していくのではないかと思っています。フラッグシップモデルのステラがどうなるのかが非常に気になります!
※参考記事:シマノの「コアソリッド」と「クイックレスポンス」の違いを解説
アルテグラ 3000XG はおトク感が半端ない!
以上、シマノ アルテグラ 3000XG について紹介いたしましたが、アルテグラは現行モデル(2017年モデル)になって、そのスペックの充実度が上がっています。対抗するライバルモデルとしては、ダイワ エクセラー、アブガルシア ロキサーニあたりになろうかと思います。現行アルテグラは、発売からすでに3年が経っていますが、そのスペックとコストパフォーマンスはいまだに見劣りしません。実勢価格が下がってきている今、実は大変おトク感の高いスピニングリールであるといえます。とくに、自転車乗りの諸兄には、「アルテグラ」と聞くだけで、胸がわくわくすることでしょう。リールの方もきちんと「アルテグラ」ですよ!