シロギスは夏の堤防やサーフのアイドル、仕掛けを工夫して効率よく釣りまくろう!
作成:2021.05.24更新:2021.08.20
目次
シロギスは、その美しい魚体と食味の良さ、釣りの奥深さの三拍子揃った、夏から秋にかけての堤防やサーフのアイドル的存在です。ショアからの投げ釣りでシロギス釣りが楽しめる最盛期である盛夏であれば、ちょい投げでも釣ることはできるでしょう。
しかし、海の女王と形容されるシロギスは、とってもツンデレで、サイズと数をまとめようと思ったら、それはそれは奥が深いんです。だから、全国的にトーナメントが開催されているんです。ツンデレ攻略のためには、キス師は研究と努力を怠ってはいけません。
シロギスの投げ釣りの魅力
シロギス釣りは、パワーファイトを楽しむ釣りでは全くありません。しかし、シロギス独特の「プルプルプルッ!!」という、鋭いアタリには中毒性があり、「お~っ、来てる来てる!」とシロギスからの魚信を味わいながら「連掛け(すぐには仕掛けを回収せず、2匹目、3匹目を掛けること)」を狙いつつゆっくり仕掛けを引き続け、すべての針にシロギスを掛けると、回収してくる仕掛もずっしりと重くなります。
そうやって、鯉のぼりのような状態で上がって来たシロギスの虹色の魚体は息をのむ美しさです。そして、すべての釣り対象魚の中でも最上位グループに入るであろう食味の良さが魅力です。釣ったばかりのシロギスをさばいて天ぷらなどでいただけば、キス師が人生をかけてシロギスを追い続ける理由が分かるというものです。
シロギスの生態
シロギスは、青森県以南の日本全域に分布し、砂底を好む底棲魚です。敵から身を隠すために砂に潜る習性があるため、ハゼやカレイが好むような泥質の砂泥底はあまり好まず、完全な砂底を好みます。そして、身を隠すことができる、変化に富む場所を好みます。底砂が波の影響で盛り上がった「ヨブ」や、浅場から深場に切り替わる「ブレイク」、船道にできるカケアガリなど、変化のある場所につきます。
冬季は水深50m前後の深場に棲息していますが、春から初夏にかけて、水温が上がってると、産卵のため浅場に接岸して来ます。数匹から数十匹の群れを形成し、海底付近を回遊し、ゴカイ類や小型の甲殻類などを食べながら、秋の終わり頃まで浅場で過ごします。寿命は4~5年程度と考えられており、最大サイズは30cm前後(尺ギスと呼ばれます)です。
シロギスの投げ釣りに必要なタックル
ただシロギスを釣るだけであれば、ちょい投げ仕掛けでも十分釣れます。しかし、冒頭で紹介した通り、シロギスはツンデレであり、数とサイズをコンスタントに追いかけるとなると、それなりに奥義を究めなければなりません。つまり、本気のシロギス釣りに特化したタックルを構築する必要があります。
そして、効率よくシロギスを数釣りするには飛距離が絶対的な正義となります。ここでは、サーフから、あるいは潮通しの良い大規模堤防などから、フルキャストでシロギスを狙う場合のタックル、仕掛けについて紹介して行きます。
ロッド
シロギスの投げ釣りに使用するロッドは、釣りを行う場所がどこであるかに関わらず、サーフキャストロッドが必須です。理由は、絶対的に飛距離を出さなければならないからです。もちろん、ちょい投げ程度の距離で数釣れる日もあるかも知れませんが、そういう日は稀です。日によって群れの場所が気まぐれに変わるシロギスをサーチするには、できるだけ広い範囲に仕掛けを通す必要があります。
長さは3.6m~4.5m前後のサーフキャストロッドで、細身で柔らかいロッドが良いでしょう。太くて硬いロッドは、仕掛けを遠くにキャストするために非常に体力を使います。体力自慢の御仁にはそういうパワーのあるロッドで200mを越える領域を探る強者もいます。しかし、通常は、細身で柔らかい、4m超えるサーフキャストロッドで、キャスト時にロッドがしなやかな弧を描いてよく曲がり、その曲がりが元に戻る際のバネの力を利用して仕掛けを一気に飛ばします。まずは6色(150m)以遠まで飛ばせるようにしたいです。
ロッドの選び方ですが、錘負荷が30号程度のものが良いでしょう。例えば「30-420」と記載がある場合は、錘負荷30号の全長420cm(4.2m)という意味です。また、ロッドは収納性や汎用性に優れた「振出」タイプと、耐久性といった機能性の高い「並継」タイプがありますので、自身のスタイルに合わせて選択しましょう。
リール
リールは大口径、ロングストロークスプールが付いた、サーフキャストリールを使用しましょう。ショアジギング対応の汎用スピニングリールでも100m以上飛ばせる人はいますが、それ以上の距離を狙うためにはサーフキャストリールを使いましょう。ドラグ機構は、シロギス釣りに特化する場合であれば不要です。実際、シロギス釣り用のサーフキャストリールには、ドラグ機構がないモデルが多いです(少しでも軽量化するため)。シロギス以外の魚種(マゴチやヒラメなど)も想定する場合は、ドラグ機構のついたサーフキャストリールを使用します。
ライン
シロギスの投げ釣りでは、飛距離が最重要となると言っても過言ではありません。そのため、ラインは出来るだけ細いものを使います。トーナメンターなどは8色(200m)狙いでPE0.3号、0.4号などと言った極細ラインを使う猛者もいますが、一般的にはライントラブルの少なさと飛距離のバランスを考えてPE0.8号を使います。ある程度経験を積んだアングラーは0.6号をメインで使い、飛距離をさらに伸ばしましょう。
逆に4色(100m)以内で十分勝負になる場所なら1号でも良いでしょう。PEラインには、一般的には4本編みと8本編みがありますが、価格は張りますが8本編みをおすすめします。フィラメント1本1本が細く、密に編み込まれた8本編みの方がライントラブルが少ないです。
テーパーライン
シロギス釣りの仕掛けは、飛距離を稼ぐためにメインラインが非常に細いので、テーパーライン(力糸)は必須です。ストイックに飛距離を追究するならば、PEテーパーラインを使います。トーナメントに挑戦するなら必須です。しかし、PEテーパーラインは1本1,000円以上するのと、特殊な結び方を必要とするため、万人におすすめできるものではありりません。
経済的に釣りを楽しみたければ、多少飛距離は犠牲になりますが、ナイロンテーパーラインを使いましょう。5本で1,000円以下で手に入ります。ナイロンテーパーラインを使う場合は、メインのPEラインはビミニツイストでダブルラインを作っておき、ダブルラインの輪に正海(セイカイ)ノットでテーパーラインを結びます。
天秤
シロギスの投げ釣り仕掛けにおいて、重要な意味を持つ道具が天秤です。仕掛けを遠くに飛ばすことはもちろんですが、それよりも大事なものは、100m以上遠い場所で起こっている、シロギスの鋭いアタリを確実にアングラーの手元に届けることです。そのためには、天秤にも感度が求められます。釣具店に行くと、シロギス釣り用の、高張力材を使った、高感度を謳ったさまざまな天秤が売っていますが、「感度は値段に比例する」のが現実です。
線材の細さ、線材の比重、線材の張力(バネとしての反発力)、アームの長さなど、様々な要因で感度の高い低いが発生しますが、筆者は、樹脂製の中空アームにラインを通し、アームの先端からラインを出し、そこでサルカンを取り付けて天秤を半固定にして、その先に仕掛けをつける、遊動式天秤仕掛けをメインで使っています。遊動式天秤もいろいろありますが、私は三彗製作所・発光パール天秤をよく使います。この仕掛けは、仕掛けを分断して天秤を取り付ける、ジェット天秤やL型天秤などよりも感度の点で有利になります。
シンカー
シンカーは、飛距離を重視するのであれば、比重の高いタングステン錘をおすすめします。一般の鉛製シンカーと比較すると、同じ重さであればサイズがコンパクトですので、遠投に有利です。
また、特に堤防からの投げ釣りの場合は、底砂の状態が複雑なことが多く、またサーフでも、ブレイクを重点的に探る場合など、さびくのが重く感じるときは、ウッドシンカーやVシンカーを使うと便利です。これは、シンカーにウッド製や樹脂製の浮力材を合わせたもので、水中でシンカーが立ち気味になります。その効果で、さびきが圧倒的に軽くなり、小さなシロギスのアタリも確実にラインへ伝えてくれます。ただし高いです。番手にもよりますが1個500円~1,000円程度します。
ここまでシンカーにお金を掛けたくないという場合は、空力を考慮されたシンカー、例えば弾丸タイプなどを使用しましょう。番手は水深、潮の流れの強さなよって使い分ける必要がありますが、だいたい15号~30号を持っていれば良いでしょう。私の場合は、25号をメインに、15号、20号、30号を使い分けています。
仕掛け
一般的な市販のシロギス投げ釣り仕掛けは、流線形針を使った2本針もしくは3本針です。もちろん、それらを使えばシロギスは釣れます。しかし、この流線形針というものが曲者で、なかなか細身で柔らかいものがないのです。流線形針は、口の小さな魚が吸い込みやすいように設計された針ではありますが、線材が太くて硬く、シロギスのバイトを弾いてしまったり、釣れた魚を外しづらかったり、一日使っているとストレスになります。
そんな時便利なものが、「競技用針」という、線材が非常に細くて柔らかく、フックのカエシも小さく加工されているて、シロギスが吸い込みやすく、自動的にフッキングし、釣れた魚を外しやすく、エサも付けやすい、手返しの良いフックがあります。また、競技用針をさらに針掛かり性を良くした「早掛け針」という、針の先端にチョンとシロギスをフッキングさせる向こうアワセ専用針もあります。
こうした針には、バラシやすいという欠点がありますので、さびくスピードを一定にし、回収時はテンションを緩めないなどコツが必要ですが、手返し重視の針で、向こうアワセによる連掛けを経験すると、楽しくて元に戻れなくなるかも知れません。
トーナメンター御用達「50本仕掛け」とは?
全国各地で開催される、シロギスの投げ釣りトーナメントでは、仕掛けの規定で、針数は「10本針まで」とされている大会が多いようです。制限時間内に匹数もしくは重量、はたまたサイズを競うなどいろいろな大会形式がありますが、そういう大会に出場するアングラー達が使っているものが、「50本仕掛け」です。
これは、幹糸からエダスと針が一定の間隔で出ているものを50本分リールに巻いたもので、アングラーが好きなところで切って、砂ずりを結んで天秤と接続して使います。レギュレーションぎりぎりの10本針をライバルより1投でも多くキャストすれば、それだけ出し抜ける確率が高くなります。ただし、トーナメンターでない者が、いきなり規定いっぱいの10本針仕掛けを扱うことは、仕掛けの部分だけで3mを超える長さとなるため、相当の経験と技術が必要です。まずは5本針程度から始めれば良いと思います。
シロギス釣りのエサ
シロギス釣りの基本のエサはジャリメです。できるだけ細くて活きの良いものを選びます。シロギスにエサを吸い込ませるため、タラシは長く取る必要はありません。約1cmも取れば十分です。ジャリメは非常にヌメリの強いイソメです。エサ付けを手返しよく行うため、石粉をまぶしながら行うと速やかにエサ付けが可能になります。
通常はジャリメを使うのですが、シロギスには「チロリ」と呼ばれる特効餌があります。「東京イソメ」、「東京スナメ」と呼ばれることもある、ジャリメよりも赤みが強く、岩イソメのような強烈な匂いを発するイソメです。体は柔らかく、シロギスの嗜好性も抜群です。ただし、入手性が悪く、価格もジャリメの倍程度します。また、弱りやすくちぎれやすいため、使い方も気を使いますが、入手できる時は是非とも使いたい特エサです。
シロギス釣りの仕掛け投入のポイントとさびき方
「シロギスは凪を釣れ」という言葉があります。シロギスは濁りを嫌い、荒れているときは活性が上がりません。凪が数日続き、水が澄んでいるときはエサの多い浅場に接近してきますが、台風や長雨で濁りが入ったり、うねりが底砂を巻き上げたりすると沖へ避難してしまいます。従って、ポイントはまずは天気です。
そして、底砂に変化がある場所を探します。最も期待できるポイントはカケアガリなのですが、ショアから目視で確認するのはほぼ不可能ですので、仕掛けを投げて引きながらカケアガリを探すしかありません。目視で確認できるのは「ヨブ」と呼ばれる、海底の小規模の起伏です。凪でも海をよく見ると白波が立っている場所があります。そういう場所の真下にはヨブがあります。ヨブは何か所もありますので、丹念に探します。
必ず「狙うポイントより沖に」キャストし、着底させたら、ゆっくりと仕掛けを引いて行きます。引いていると、巻きが重くなる場所があります。そこからさらに引いて、すぐに重さが戻ればそこがヨブです。重さが一定時間続くようであれば、そこはカケアガリの可能性が高くなります。そういう場所の距離や方向をよく覚えておき、重点的にさびきます。
シロギスの投げ釣りは、堤防でもサーフでもランガンが効く!
カケアガリやヨブにシロギスがいれば、通常はすぐに鋭いアタリがあります。アタリがあっても特に大きくアワセを入れる必要はありません。一定のスピードでさびき続け、2匹目、3匹目と掛けて行きましょう。アタリがなければ数十秒さびくのを止めてアタリを待ってみますが、それでもアタリがなければすぐに見切りをつけて、次のポイントを探った方が良いでしょう。
シロギスを数多く釣るためには、一か所でも多くのポイントを探る必要があります。ショアジギングよろしく、ランガンが効きます。シロギスの投げ釣りには、様々なゲストも混じります。ハゼ、メゴチ、ヒイラギ等の小型魚がほとんどですが、真夏の堤防やサーフでは、マゴチ、イシモチ、アナゴ、ウシノシタ、シャコなども釣れます。どれも食べて美味しい魚ばかりですので、これらが釣れたら是非持ち帰って食べることをおすすめします。
シロギスは、天ぷら、刺身、塩焼き...何をしても最高に美味い!
シロギスの食味の良さは折り紙付きです。私の場合は、シロギス釣りをする最大の目的は食べることです。シロギスは基本どうやって調理しても美味しいのですが、中でも天ぷらと、昆布締めにしたシロギスの握り寿司は最高です。いろんな料理をしたいので、ノルマは必然的に高くなりますが、家族1人あたり、良型でも10匹、小型なら15匹以上欲しいですね。そのため、1mでも遠くへ、1投でも多くキャストし、プルプルした小気味よいアタリを満喫し、持ち帰って海の恵を満喫するという、質の高い休日を目指し、サンデーアングラーは今日も広大な海原めがけてフルキャストするのであります!