地磯に潜む"ヌシ"を狙うぶっこみ釣りは、お金も掛かるが夢とロマンがある!
作成:2022.04.25更新:2022.04.25
目次
サザエやウニ、ヤドカリなどの大型のエサをつけ、強靭なロッドにパワーのある両軸受けリールをつけ、太糸、ワイヤーハリスを付けた仕掛けを狙ったポイントに投げるぶっこみ釣りは、磯釣りの王者とも言える「石物(イシダイ、イシガキダイ)」を狙う豪快な釣りです。イシダイ、イシガキダイは、釣りの対象魚としては、サイズあたりの引きの強さは別格です。30cmクラスでもものすごいパワーで竿を絞ってくれます。50cmクラスともなれば、大袈裟ではなく「やるかやられるか」といった攻防を繰り広げてくれます。
簡単に釣れる相手ではありませんが、一度は釣ってみたい石物は、意外なほど近い場所にも存在します。地磯から気軽に狙えますので、ぜひ一度挑戦してみてはいかがでしょうか?
イシダイの生態
イシダイは、スズキ目イシダイ科に分類される魚で、北海道以南の日本各地の岩礁地帯に広く分布します。極端な高水温、低水温を嫌い、18℃〜24℃程度の暖海を好みます。幼魚・若魚のときは、体に黒い横縞が7本鮮明に入るため「シマダイ」とも呼ばれますが、老成魚になると縞模様は消え、全体が銀白色になり、口の周りだけが黒くなり、「クチグロ」と呼ばれるようになります。
イシダイは最大で70cm程度まで成長します。長寿の魚として知られており、20年程度生きるようです。食性は完全な肉食性で、甲殻類や貝類、ウニなどを主食としています。日本沿岸で見られるイシダイ科の魚はイシダイとイシガキダイの2種類のみです。
ぶっこみ釣りと投げ釣りの違い
実は、ひとくちに「ぶっこみ釣り」と言っても、石物狙いのぶっこみ釣りをはじめ、アナゴのぶっこみ釣りや、淡水での鯉釣りやナマズ釣りなどでもぶっこみ釣りというジャンルが存在します。しかし、それらは、いわゆる「投げ釣り」とは区別されています。
仕掛けをキャストする釣りという意味で捉えれば、ぶっこみ釣りと投げ釣りは同じと言えます。しかし、ぶっこみ釣りと投げ釣りは、アプローチの仕方が違います。ぶっこみ釣りは地磯やストラクチャー周りなど、障害物のキワなどを狙い、中近距離のポイントに仕掛けを投入します。仕掛けを投入したらさびいたりせず、置き竿でターゲットの魚がエサに食いつくのを待ちます。ぶっこみ釣りは魚が掛かるまでは「静」の釣りですが、フッキング後は非常にアグレッシブでエキサイティングな釣りとなります。対して投げ釣りは、基本、大遠投から広範囲をさびき、魚が溜まっていそうなポイントを探り、次々と魚を掛けて行くアクティブな釣りです。
ぶっこみ釣りのタックル
ぶっこみ釣りのタックルは、最もパワーが強いとされる、石物(イシダイ/イシガキダイ)にあわせて準備します。石物タックルが用意できれば、何が掛かっても基本大丈夫でしょう。
ロッド
instagram @daiwaiso
ぶっこみ釣りに使用するロッドは、石物専用のぶっこみロッドを準備します。石鯛竿はジギングロッドと同じように、M、MH、Hと、硬さの違いによるバリエーションが存在します。はじめて石鯛のぶっこみ釣りに挑戦する場合は、MHのロッドを選んでおくのが無難でしょう。
長さは磯の状態によって変わってきますが、遠投し置き竿でアタリを待つ場合は5m程度の長さが必要です。足元から深い場所で遠投をしない場合は4m前後、竿を手持ちでアタリを待つ場合は4.5m前後が使いやすいでしょう。
リール
ダイワ公式「幻覇王 石鯛 40」
リールは石物対応の両軸受けリールを使いましょう。巻きパワーが非常に強く、イシダイ、イシガキダイの強烈なファイトに対し真正面から立ち向かうことが可能です。ラインキャパは、ナイロン20号が150m程度巻けるくらいが最低必要です。ぶっこみ釣りは30m〜50m程度の距離に仕掛けを投入することが多く、30号程度のシンカーを使います。タックル全体の重量は1kgを超えますので、できるだけ軽いものが良いのですが、石物狙いの場合は巻きパワーと剛性重視で行きましょう。
ライン/瀬ズレワイヤー
サンライン公式「磯スペシャル 石鯛鬼憧 瀬ズレワイヤー」
メインラインはナイロン20号を標準として考えます。磯でのぶっ込み釣りは、常に仕掛けが根ズレにより損傷を受けますので、メインラインとハリスの間には、必ず瀬ズレワイヤーを噛ませます。瀬ズレワイヤーの長さは場所にもよりますが、1m前後あれば良いでしょう。
ワイヤーハリス/石鯛針
サンライン公式「口白鬼憧 石鯛 ハリスワイヤー」
イシダイもイシガキダイも、サザエやヤドカリを殻ごと齧り、殻を砕いて中身を食べる、強靭な歯と顎を持っています。ハリスを齧られたら簡単に切れてしまいます。ハリスは齧られても切れないワイヤーハリスを使うことが必須です。ワイヤーハリスの番手は36〜38番程度の太さのものを約20〜30cm針に結び、ハリス切れを防止します。針は、石鯛針の17号〜18号を使用します。イシダイの成魚のパワーは半端ではないので、太軸のイシダイ専用針を使用しないと、針を伸されてしまいます。くれぐれも、刺さり性重視のため、細くて柔らかいチヌ針は厳禁です。
ピトン(竿掛け)
ベルモント公式「MR-115 ステン石鯛ピトンDX」
地磯で石物狙いのぶっ込み釣りをする際の必需品がこのピトンです。「チャラン棒」という俗称の方が通りが良いでしょうか? 釣り座付近の岩に打ち付け、ロッドをかける道具です。ぶっ込み釣りの場合、置き竿でアタリを待つことが多いのですが、石物が掛かった際にロッドをきちんと固定出来ていないとかなりの確率でタックル人揃え海に引きずり込まれてしまいます。
昔は竿尻に「尻手ロープ」をつけ、その尻手ロープを身体に巻き付けたり、岩などに括り付けたりして、引きずり込み防止にしていました。今はピトン使用が普及し、尻手ロープを使用している石物師は全く見かけなくなりました。ピトンはかなり高価なツールですが、価格と強度はキチンと比例しますので、安物は求めないほうが無難です。
エサ
石物のぶっ込み釣りはお金がかかります。タックルが高価なことはもちろんですが、特にエサ代がかかるのがボディブローのようにフトコロに効いてきます。サザエ、ウニ、ヤドカリ、エビ、カニなど、人間の食材としても高級なものを惜しげもなく使います。中でも食いつきがよく、使い勝手が良いエサがサザエです。小型のサザエで1個50円前後、大型のサザエになると1個200円くらいします。ウニも1個100円前後します。釣りエサとしてはかなり高価です。
もちろん、サザエやウニなど高価なエサでなくてもぶっ込み釣りはできます。現地採集のカニやカラス貝、マツカサガイなどでも釣れますので、色々と試してみることをおすすめします。
ぶっ込み釣りのポイント
ぶっ込み釣りのポイント選びについては、石物釣りに関しては、「古くからの実績ポイント」が最も有利なポイントです。古くからの実績ポイントでは、石物狙いのエサが周囲よりも多く投入されています。また、石物狙いの撒き餌として、ウニや貝を割ったものなどが通年大量に撒かれ続け、必然的にイシダイやイシガキダイが集まり易い環境が整います。チヌやグレ狙いの、オキアミやアミを大量に加えた配合コマセばかり撒かれている場所には石物は定着しないと言われています(シマダイなど幼魚は集まりますが)。
そのため、未知の場所で石物狙いのぶっこみ釣りをする場合は、現地の釣具店や地元の石物師から得る情報が大事になってきます。従って、コミュニケーション能力の高い人が有利になります。・・・というのは半分冗談ですが(半分は当たっています)。
自力でポイントを探す場合はなかなか容易ではありません。基本は離れ根やシモリ根が散在している場所で、周囲より水深があるところを狙います。そういう場所にはイシダイが隠れることができる穴や、岩がハングオーバーしているトンネル状のポイントが存在しています。そういう場所で、ワカメなど海藻が豊富に生えている場所には、ウニやサザエなど、イシダイの好物がたくさんいます。岩と岩の隙間にはウニ類が、海藻にはサザエが良くついています。海藻が生い茂る中近距離の沖にあるシモリ根を見つけたら、その周辺に仕掛けをぶっ込みましょう。エサは目立つように置く必要があります。シモリ根の頂点付近に餌を置くことができればイシダイに見つけてもらいやすくなります。逆に、岩の割れ目の溝の中などに入り込んでしまうと見つけられにくく捕食もされづらくなるので注意が必要です。
アワセは十分に食い込ませてから!
イシダイの歯は非常に強靭なため、早アワセは厳禁です。置き竿で、ティップが小刻みに揺れるようなアタリは餌盗りである可能性が高いです。イシダイのアタリはティップがグーッと下に持っていかれるような特徴的な挙動を示します。これはイシダイの「前アタリ」であり、そこでアワセてはいけません。しばらくティップが下に持っていかれるような前アタリを繰り返したあと、竿の真ん中辺りまでグイーッと絞り込まれるアタリが来ます。これが「本アタリ」という、十分に食い込んだイシダイのアタリです。大きくロッドをあおり、フッキングを確実にしたら素早くファイトの態勢に入ります。
イシダイの引きは強烈です。ロッドをしっかり両手で握り、ロッドを伸されないように角度を保ちながら素早くリールを巻いていきます。イシダイが走ったときは無理に巻き上げようとせず、ドラグを効かせてラインを出しながら待ちます。そしておとなしくなったタイミングで一気に巻いて距離を詰めます。しばらくこうしたやり取りを続けていると、そのうちイシダイが疲れてアングラー側が主導権を握ることができるようになります。それまで、根ズレに注意しながらイシダイとの至福のファイトの時間を堪能しましょう。
ぶっ込み釣りのゲストたち
ぶっ込み釣りでは、イシダイやイシガキダイの他、底物と呼ばれる様々な肉食性魚、雑食性魚のゲストが釣れます。代表的なものを紹介します。
クロダイ
クロダイはブッコミ釣りで最もかかる可能性が高い魚のひとつです。雑食性でウニもカニもサザエも多毛類も昆虫も野菜や果物などにも食いついてきます。歯も鋭いため、牡蠣なども殻ごとバリバリ食いつきます。基本底棲魚のため、生息域も石物とかぶります。絶対数も増えてきていますので、一番お目にかかることの多いゲストでしょう。地磯で数が多く、オフショアではやや少なくなります。
ブダイ
ベラの仲間であるブダイは、季節により食性が変わる魚として知られています。夏場はカニやエビなどを鋭い歯と強い顎で殻ごと食べる食性を示しますが、冬場はハバノリやクロメ、ヒジキ、ホンダワラなど、海藻類主体の食性に変わります。夏のブダイは磯臭いと言われますが、真冬のブダイは、刺身にしても鍋にしても最高に美味な魚です。
ウツボ
ウツボもぶっ込み釣りの定番のゲストです。完全な肉食魚で、魚やカニや貝などを旺盛に食べます。岩場の入り組んだ狭い場所に潜んでいることが多く、岩礁の際付近に投入したぶっ込み釣りのエサにかかる確率がかなり高いです。ウツボは生息域内に天敵がいないとされ、磯場の食物連鎖の頂点に君臨する魚です。非常に歯の鋭い魚であり、口が非常に大きく、釣り上げられるとメチャクチャに暴れますので、絶対に素手で触ってはいけません。
ハタ類
カニや魚の切り身を餌に使ってぶっ込み釣りを行っていると、キジハタやオオモンハタ、アカハタなど、ハタ類もかかることがあります。嬉しいゲストです。ハタ類は、エサのにおいに誘われて寄ってきますので、石物狙いと同時にハタ類も狙いたいのならば、魚の切り身を塩締めしたものも持ち込むとよいでしょう。サバの切り身が定番でしょう。
アイナメ
アイナメも雑食性の底棲魚であり、カニや貝餌には食い付いてきます。50cmを超える大型の個体は非常にエキサイティングなファイトを繰り広げてくれる、釣ってよし、食べてよしの嬉しいゲストです。
釣り師なら一度は上げたい石物、大物は簡単には釣れないがロマンがある!
イシダイや、イシガキダイといった石物は、小型の個体は比較的通常のフカセ釣りでもかかることがありますが、40cmを超える個体は、専門で狙ってもなかなか挙げられることは稀でしょう。50cmを超える個体、ましてやクチグロやクチジロなどの老成魚は、時に70cmを超える個体も現れますが、それらは一生に一度釣れるか釣れないかといった激レアなターゲットでしょう。だから、追いかけ続ける意味があり、ロマンがある、夢のターゲットということができますね!
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