穴釣りでは大物は釣れない? 少しの知識でそんな常識を覆そう!
作成:2021.03.09更新:2021.08.20
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テトラポッドや岩礁地帯で行う穴釣りは、メインでやる釣りではなく、一日中別のターゲットを狙ってあれやこれや手を尽くすも全く釣れず、万策尽き果てた時の最後の手段として、「ボウズのがれ」のために穴釣りをして何とかボウズを回避し溜飲を下げる。そんな程度の釣りだと思っていませんか?
確かに、穴釣りは地味で、テトラポッド帯を歩くのは危険で体力が要り、根掛りが多く、タックルをテトラポッドの隙間から落としてしまってイライラしたり、労力を使う割に釣れる魚は小さかったりする、効率の悪い釣りかもしれません。しかし、穴釣りに真面目に取り組み、ちょっとした知識を身につければ、「こんな足元でこんな大物が?」という意外な驚きを体験できるのが穴釣りの最大の魅力です。
穴釣りでいう「大物」とは?
穴釣りは、暗くて狭い穴に餌を垂らして、穴の中に隠れている魚を釣り上げるという単純な釣りです。誘いをかけるのも、竿をゆっくり上下に動かすだけです。そして、穴の中に魚がいれば、ほぼ確実に釣れます。フッキングに失敗しても、何度でも食ってきます・・・小さい魚は。
しかし、大物となるとそう簡単ではありません。ここで言う大物とは、25cmを超える根魚としましょうか、カサゴ、ムラソイ、メバル、アイナメ、キジハタ、オオモンハタ、マハタ、ベラ(キュウセン)あたりとしましょう。これらが穴釣りでいう大物です。「尺超え(30cmオーバー)」は非常に稀で、40cmを超えるサイズの魚は穴釣りではほぼ不可能でしょう。次の項では、これら25cmを超える大物が身を隠せる場所はどんなところなのかを考えます。
穴釣りで大物を釣る極意は魚の習性を徹底的に知ること!
穴釣りで大物を釣るためには、根魚の習性を知る必要があります。魚種ごとに必要な水量や穴の中の状態に違いはあるのですが、水深が15cm程度あれば十分生息できるムラソイを除けば、ほぼ同じです。以下に、穴釣りの対象となる根魚の大物が居付きやすい場所について説明して行きます。
1.複雑な形状の穴
穴釣りで仕掛けを落として行くと、錘(オモリ)が止まる場所がありますが、ほとんどの場合、そこは底ではありません。一度錘が止まってから、ロッドを左右に小刻みに振りながら、更に仕掛けが落ちて行かないか探ります。
うまく仕掛けが入ると、そこからさらに数m入って行くことがあります。そういう穴の最深部は、光の入りも少なく、常に薄暗い場所になっており、大物が潜んでいる可能性があります。成長が進んだ大物ほど知能が高く、単純な構造の広い穴を避け、狭い穴の深奥部を棲み処とします。
2.波が打ち付ける穴
潮通しの良い、外洋に面したテトラ帯などによくみられる、常に波が打ち付けている場所の周辺は、新鮮な水の出入りが多く、酸素濃度も高いため、プランクトンの流入が多く、それを捕食する甲殻類などのエサが豊富であり、結果、根魚が住み着きやすくなります。そういう場所においても、複雑で狭い穴の深奥部ほど大物が住み着きやすいのは同じです。
3.藻が茂っている穴
穴釣りとしては最も攻めにくいのですが、ホンダワラやヒジキなどの藻が茂っている穴は、最も大物が期待できるでしょう。藻が入る穴は日中光が入りやすい場所ではありますが、藻自体がシェードの役割を果たし、敵から身を隠せると同時に、藻は他の生物の棲み処になるため、エサの供給元や産卵床の役割も担っており、ロックフィッシュにとっては非常に都合の良い場所となっています。
根魚の習性について
次に、根魚のおおよその習性について説明します。多くの根魚は、自分の縄張りを持ち、日中は棲み処としている穴の中でじっとして、目の前に餌が通り過ぎるのを待っています。もちろん、餌を求めて泳ぐこともありますが、せいぜい自分の縄張りの範囲内の狭いエリアだけです。
夜は自分の穴を出て、餌を求めて積極的に泳ぎ回ります。そのため、穴釣りは日中にチャンスが多い釣りです。この習性は殆どの昼行性の根魚に当てはまります。その他、穴釣りで大物を釣り上げるために押さえておきたいポイントについて上げて行きます。
a.防波堤の切れ目のヘチ際にあるテトラポッド穴は大チャンス
漁港の船舶の出入口付近などに、外壁のように伸びる防波堤は、水深があり、潮通しの良い場所になっています。こういう場所の防波堤は、激しい波などで堤防が壊されないように、波の力を逃がすための切れ目が一定間隔であります。そうした防波堤の外洋側に設置されたテトラポッド帯は、穴釣りで大物が狙えるチャンスが最も高いポイントになります。
こういう場所のテトラポッドは、堤防のヘチ際でも水深のある穴が形成されやすくなっています。その堤防の壁際ぎりぎりから仕掛けを深奥部に入れることができれば、高確率でアイナメ、カサゴ、キジハタの大物が狙えるでしょう。潮が激しく流れるポイントではシマダイやメジナも穴釣りで釣れることがあります。
b.同じ穴に複数の魚がいる場合は「大きい魚」から掛かる
良い穴は魚達にとっても取り合いなので、ひとつの穴に複数匹の魚がいることは珍しくありません。しかし、同じ穴に餌が落ちてきた場合は、「体格の大きい魚が先に」食いついてくることが殆どです。経験上、同じ穴で複数匹釣れる時、後から釣れる魚の方が大きかったことはありません。縄張り意識の高い根魚達の特徴で、同じマンションの中で、しっかりと序列が出来上がっているのは面白いですね。
c.台風の後は地図が総変わりすることがある
大型の台風が直撃すると、荒れ狂う海からとてつもない大きな力が防波堤やテトラポッドにかかります。台風通過後には、かなりの確率で、テトラポッドが動いてしまっており、マンションの地図が変わってしまうことが多いです。今まであった穴が塞がってしまったり、新たに穴ができたりして、様相が変わります。そうするとまた新たな住人が新しい穴に入ってきます。そこまでテトラ帯の様相が変わってしまうほどの台風は年に1回あるかないかと言った頻度でしょうが、安全に配慮して、新たな穴を探すのも楽しいでしょう。
穴釣りで大物を狙うためのタックルは?
穴釣りで大物を狙うために、特別に必要なタックルはありません。ロッドもリールもラインもシンカーもフックも、通常の穴釣り仕掛けと同じで構いません。具体的に説明します。
竿
穴釣り用の安価なさぐり竿で構いません。テトラ帯でも岩礁地帯でも、穴釣りはタックルにとっては過酷な環境です。傷がついたり、ロッドが折れたりは日常的に起こり得ます。特にトップガイド部は常に岩やコンクリートにぶつかり、数回の釣行で傷だらけになってしまうでしょう。ロッドは消耗品と割り切って、現地でいつ壊れても良いように、数本持ち込みましょう。
穴釣り用のさぐりロッドは短いものは90cm程度から、120cm、150cm、180cm、210cm程度のラインアップになっています。テトラポッドの大きさや足元から穴までの距離などにより、必要とされる長さは異なりますが、穴釣りにおいては長いものは使いづらいです。経験上、90cmと150cmの2本あれば大抵の穴釣りは対応可能です。足元のアプローチがほとんどないのであれば、120cmと180cmがあればよいでしょう。
リール
穴釣りにはベイトリールが必須です。理由は、スピニングリールでは、ラインに螺旋状の癖がついてしまうためです。穴釣りでは、ラインに巻き癖が付いてしまうと極端に仕掛けの操作性が悪くなります。大物を狙うためには、少しでも穴の深奥部に仕掛けを入れたいので、ラインの巻き癖が付きにくく、片手でのクラッチON/OFF操作ができ、かつメカニカルブレーキをあらかじめ調整しておくことで、仕掛けの送り込みスピードを自由に調整できるベイトリールが必要です。穴釣りではキャストはしないので、マグネットブレーキや遠心ブレーキは不要です。
ライン
もし、あなたが穴釣り専用にベイトリールをひとつ仕立てることができるのであれば、ラインには是非、フロロカーボンの12lb(3号)を巻きましょう。フロロカーボンラインは、根ズレに強く、水切れが良く、吸水劣化もない、穴釣り用ラインとして最も適した素材です。最近は価格も随分こなれてきており、使いやすい素材となっています。メインラインを12lbと強めのものを使い、ハリスの強度と差を大きめにつけることにより、高切れを防ぐことにつながります。
シンカー
穴釣り専用のタックルとして、様々なブラクリ仕掛けが売っています。赤く染めた錘の先に、赤く短いハリスと針が付いているものですが、穴釣りは根がかりによる仕掛けのロストが避けられないため、市販のブラクリ仕掛けを使うのは不経済です。メインラインに中通しのナツメ錘(オモリ)若しくは丸型錘(オモリ)の3号を通し、錘の穴とサルカンの環が直接触れないように、発光玉などのクッションゴムを噛ませてサルカンに固定します。
ハリス
ハリスは、フロロカーボンの1.5号で決まりです。上級者は1号でも良いでしょう。根がかりしてしまった時、ハリス側が切れて被害を最小限にするため、できるだけメインラインとハリスの強度に差をつけたいです。フロロカーボンの1.5号であれば、30cm級のアイナメやメバルが掛かっても負けることはありません。ただし、ハリスは一投ごとに手で触って状態を確認します。キズやささくれがあったら速やかに交換します。ハリスの長さは5cm以下にします。錘(オモリ)と食わせ餌の距離を近づけて、深奥部まで餌を送り込むためです。
針
穴釣りに万能な針は丸セイゴです。丸セイゴは適度にフトコロが狭くなっており、吸い込むように摂餌する魚に違和感を与えにくい針です。基本は丸セイゴの12号~14号くらいが、大物狙いには向いています。他にはフトコロが広く、エビや魚の切り身などのエサがつけやすく、カサゴやメバル、ソイ類など、口の大きな魚をフッキングさせやすいカサゴ針、太軸でフトコロが狭い、パワー重視のアイナメ針などが適しているでしょう。根がかりがきついポイントではムツねむり針のように、針先が内側に向いているものを使うこともあります。
餌
穴釣りで大物を狙うには、実は餌の選定が重要になります。シラサエビなどの活き餌が使えれば申し分ないのですが、穴釣りの現場に活き餌を持ち込むのは機動力の点で厳しいですので、塩締めしたサバもしくはサンマの切り身が良いでしょう。小魚に攻撃されても取られにくい餌を使うことが重要です。塩締めしたサバやサンマの切り身は、皮側から刺し、身側に針を出し、再度身側から刺して皮側から針先を出す「縫い刺し」にすることが必須です。この刺し方をしておけば、小魚ら取られることは格段に少なくなります。そもそも小さな魚に餌をつつかれているような穴には大物はいない可能性が高いので、さっさと見切ることも重要です。
現地で採集できる活餌は大物狙いの切り札!
穴釣りで思わぬ大物が釣れた話で、「実は、餌がなくなって、苦し紛れに捕まえたものを針につけていたら掛かった」というケース、聞いたことありませんか?実はこの手の話、非常に合理的なんです。最も効くのがフナムシです。フナムシは動きが速く、捕まえるのが大変ですが、メジナやクロダイの知る人ぞ知る特効餌です。フナムシはアイナメやカサゴなどもよく食ってきます。
次に期待できるのがイソガニです。小型で、脱皮して日が経っていない殻の柔らかいものは特餌になる可能性大です。カニはあらゆる根魚に効きます。次に貝類、岩やテトラポットに着生しているマツカサガイやムラサキイガイなどはそのままあらゆる釣りに使える生餌です。さらに、海産ではないものも餌として使えるものがあります。現場近くに公園など植え込みがあれば、ミミズを掘ったり、カナブンの幼虫を掘ったりすれば、短時間にある程度の量を確保できます。筆者はツツジなどの植え込みがあると軽く掘ってみて、カナブンの幼虫を採集し、餌箱に入れて現地入りすることもあります。タダで手に入る餌です。ぜひお試しください。
- 竿:90cmと150cmの2本
- リール:ベイトリール
- ライン:フロロカーボンの12lb(3号)
- シンカー:市販のブラクリではなく、自作
- ハリス:フロロカーボンの1.5号
- 針:丸セイゴの12号~14号
- 餌:塩締めしたサバもしくはサンマの切り身
安全第一で、穴釣りの意外性を堪能しよう!
穴釣りは、一歩間違えると非常に危険性の高い釣りであることを忘れないでください。くれぐれも、半袖半ズボン、サンダル履きなどでテトラポッドの上を歩いてはいけません。また、濡れたテトラポッドには絶対に足を乗せてはいけません。長袖長ズボン、ラジアルソールのしっかりとしたシューズ(釣り用ではないですが、山歩き用のトレッキングシューズがおすすめです)を履き、両手には必ずフィッシンググローブを装着しましょう。
また、最近は釣り人のマナー問題に端を発した立ち入り禁止措置により、穴釣りができる場所がどんどん少なくなっています。一部の心無いアングラーの蛮行と思わず、すべてのアングラーに課せられた共通の問題として襟を正し、漁業関係者、港湾関係者最優先で、釣りをさせていただけることに感謝して、穴釣りの意外性を堪能しましょう!
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