ダイワEM MSの魅力 - 2023年現在でも買うべきか?
作成:2020.08.06更新:2023.01.04
釣具通販:釣人館ますだ本店
目次
2023年現在、ダイワの公式サイトにも載っていない「ダイワ EM MS」という陰キャラ気味のこのリール。2016年に発売された際には「コスパ最高」とまで言われましたが、いつしか知名度を大きく下げ、ついには公式サイトからも追い出されてしまいました。一体このリールにはどんな歴史があるのでしょうか。今回はこの「ダイワ EM MS」の歴史を振り返りながら、現行の類似モデルとの比較もしていきます。
EM MSって何?
そもそもこのリールが何者なのか気になる方向けに、まずは歴史を振り返ってみます。なぜこのような名前なのかも詳しく説明していきます。
「エンブレム」というリール
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1980年代後半、ダイワは「トーナメントEX750」というリールを発売し、当時のリール界で最高値を付けられるという伝説を成し遂げました。これを放って置かない宿敵シマノは、続く1992年に現在にも続く名機「ステラ(初代)」を発売し、当時のアングラー達に大きなインパクトを与えました。さらにダイワはこれに対抗する形で、98年に「ダイワ エンブレムZ2000iA」という名武将を戦場へ送り込みました。この「エンブレム」というリールが20世紀を締めくくる世紀末覇者となりました。そして現在に至るまでこのリールは当時の釣り人達の心に刻み込まれているのです。この「エンブレム」というリールは90年代のリール武将達を語る上で、決して外してはならない名機なのです。
ダイワ EM MSは「ダイワ エンブレム」の復刻版
もうお分かりかと思いますが、この1990年代に活躍したダイワの名機「エンブレム(EMBLEM)」の頭文字を取ったのが「EM」です。つまり、時を超えて「ダイワ エンブレム」の名を引き継いだ復刻版リールがこの「ダイワ EM MS」という事です。
「MS」は「マグシールド」の意味
復刻版というくらいですので、現在の技術に合わせて、当時よりもグレードアップをしていなくてはなりませんね。後述しますがこの「ダイワ EM MS」には今では当たり前となっているダイワの防水技術、「マグシールド(MAG SEALED)」が搭載されました。他にも様々な機能が追加されていますが、一番大きな付加技術として、このマグシールドの略称「MS」が製品名に付けられました。まとめると「ダイワ エンブレム マグシールド」というのが正式名称になります。
14カルディアをモデルにして作られた
実は、EM MSは「初代エンブレム」を参考に設計をされているのではなく、14カルディアを参考に開発をされています。この2つのリールは機能面がほとんど酷似しています。下記、2004番の同番手での比較表をご覧下さい。
項目 | 14カルディア 2004 |
EM MS 2004 |
---|---|---|
ギア比 | 4.8 | 4.8 |
最大ドラグ力 | 2kg | 2kg |
自重 | 205g | 205g |
ベアリング | 6/1 | 6/1 |
ナイロン糸巻量 | 3lb-140 4lb-100 |
3lb-140 4lb-100 |
PE糸巻量 | 0.4号-120 0.6号-100 |
0.4号-120 0.6号-100 |
マグシールド | ● | ● |
ZAIONボディー | ● | ● |
エアローター(DS5) | ● | ● |
ドラグシステム | UTD | ATD |
価格(当時) | 25,000円 | 20,900円 |
アルミ製のスプールや巻き心地を追求したエアローターという技術は同じですし、自重も変わらず、ベアリング数も一緒なのが見て取れますね。ドラグシステムにおいてはEM MSの方が「ATD」という高性能なものを搭載しています。機能以外での大きな違いと言えば価格です。このように14カルディアと同等のスペックにも関わらず、EM MSの価格が約4,000円も安いという事が、当時話題となった大きな要因です。
EM MSのスペック
まず特筆すべきは、防水機能です。今では当たり前となっている「マグシールド」を搭載する事で、ソルトゲームにもしっかり耐えられるモデルとなっています。さらに先ほども記載したように、このリールにはATD(オートマチックドラグシステム)が搭載されています。不意に大物が掛かった時は優しく糸を出すように自動で調整をしてくれるので、ラインブレイクといったトラブルを軽減する事ができます。この「ATD」という技術は現在では当たり前のように使用されていますが、ドラグの調整が釣果の要と言えるエギングにおいては、非常に重宝される技術です。
EM MSのラインナップ
EM MSには、全部で10つのラインナップがあり、2000〜4000番代の比較的中サイズのリールに絞られています。下記が一覧になります。
- EM MS 2004
- EM MS 2004H
- EM MS 2506
- EM MS 2506H
- EM MS 2508PE-H
- EM MS 2510PE-H
- EM MS 3012
- EM MS 3012H
- EM MS 3500H
- EM MS 4000H
EM MSはエギング向きのリール
番手によって対応魚種は異なりますが、EM MS 2500番代の3つのラインナップにおいては、エギングに向いているリールであるといえます。「軽さ」「ATDの搭載」という強みを考えると、当時のエギンガー達の注目を集めたという事もうなずけますね。ちなみに、2000番代はアジングやメバリング、タイラバや青物などの引きの強い魚と闘う場合は3000番・4000番がオススメです。
そして終焉を迎えた2018年
ここまで良い事を沢山書いていきましたが、実は2018年に「EM MSシリーズ」は商品価値は大きく落とし、人々の人気が離れてしまいました。要因は、同じダイワ内からTLコンセプトを掲げた「18フリームス」が誕生してしまったからです。まずはこの2つのリールスペック比較表をご覧下さい。
項目 | EM MS 2004 |
18フリームス LT2000S |
---|---|---|
ギア比 | 4.8 | 5.2 |
最大ドラグ力 | 2kg | 5kg |
自重 | 205g | 190g |
ベアリング | 6/1 | 5/1 |
ナイロン糸巻量 | 3lb-140 | 3lb-150 |
PE糸巻量 | 0.4号-120 | 0.4号-200 |
価格(当時) | 20,900円 | 15,800円 |
ご覧のように、ベアリングが一つ少ないという事くらいで、その他のスペックはEM MSの全てを上回り、さらに価格も5,000円くらい安いのです。18フリームスはこのLTコンセプトによってボディ、スプール、ハンドルといった細部までの徹底した軽量化が施され、従来のモデルでは太刀打ちできない最強のリールとなりました。この結果、EM MSシリーズは一気に製品価値を失ってしまったという訳です。正直、ダイワ全体がLTコンセプトになりつつある今、EM MSシリーズが再び日の目を浴びる事は無いでしょう。
結論:EM MSは買いなのか?
2016年の発売から2年でその役目を終えたEM MSですが、当時はコスパ最強のとても良いリールであった事に間違いはありません。ただ、技術の進化が進んだ現在において、リールの機能や価格を重要視するのであれば、18フリームスを買う方が堅実だという意見が多いです。
もしこのEM MSを敢えて買うとするならば、エギングのサブ機を超低価格で用意したい時に中古品で購入するのは有りかもしれません。18フリームスは中古であってもまだ価格が高いです。さらに18フリームスと比較をすると確かに劣ってしまう部分は多いですが、このリール単体でみた場合、その性能は十分過ぎるほどのハイスペックであると言えます。
いかがでしたでしょうか?たまに今でも釣具屋のショーケースに入っていることがある「EM MS」。なんか他製品と比べても安いので、気になって調べらる方も多いのではないでしょうか?EM MSの購入を検討されている方にとって、この情報がリール選びの参考になって頂ければ幸いです。