ルビアス・LT3000-CXHのキーワードはズバリ「パラダイムシフト」
2004年発売の初代モデル以来、ダイワのミディアムハイラインを15年以上支えてきたルビアスが、2020年、全面リニューアルしました。5代目となる20ルビアスは、5年ぶりのモデルチェンジということもあり、あらゆる点で「大化け」しています。発売前からどんな進化を遂げるのか話題になっていましたが、蓋を開ければ、ダイワ初のテクノロジーであるZAIONモノコックボディが採用されたり、ダイワのフラッグシップモデルであるイグジストより軽量であったり、まさに、ダイワの技術の粋を極めたモデルとして、満を持してフィッシングフェスティバル横浜2020、フィッシングショー大阪2020でベールを脱ぎました。そんなルビアスの中で万能性の高い、ルビアスLT3000S-CXHを紹介いたします。
5年ぶりのルビアスフルモデルチェンジに対するダイワの気合いが半端ではない!
まず、ダイワのテクノロジーの中で、いわゆる設計思想のパラダイムシフト(これまで当然とされていた社会通念や価値観などの革命的変化)が2018年に起こりました。「LTコンセプト」の導入です。「軽さ(Light)」と「強さ(Tough)」の両立を必達するため、材料開発、CADによる設計、加工技術など、すべての工程に於いてこれまでの常識、考え方を一新して生み出された新たな設計手法です。LTコンセプトに基づいて設計された製品は、18イグジストを皮切りに、18カルディア、19セルテート、19バリスティック、19レグザ、19フリームスなど、あらゆるモデルがLTコンセプトの下、劇的な進化を遂げています。その中で、フィッシングショー2020でファンの度肝を抜いたのが、「18イグジストを抑え、ダイワの最軽量モデルとなった」ことです。これがまさに「Light」と「Tough」の両立なのです。
ダイワ初の、超高用量炭素強化樹脂「ZAION(ザイオン)によるモノコックボディ」が凄い!
炭素繊維を混ぜたプラスチックと言うもの自体は昔からあり、軽くて剛性の高い素材として知られてはいましたが、カーボン繊維を入れると流動性が悪くなるため、インジェクション成形(射出成形)を行う場合は、炭素繊維添加量を10〜15%ほどに抑える必要がありました。それ以上添加すると、成形や加工が上手くできないため、カーボン繊維の高用量化は不可能とされていました。しかし、ここでパラダイムシフトが起きました。マグネシウムを超える素材を目指し、カーボン繊維量の増加のトライアンドエラーを繰り返し、2007年、カーボン含有量を40%以上に高めることに成功し、マグネシウムを超える剛性を持つ素材が完成し、ZAIONと命名されました。ZAIONは、ローターの材料或いはボディ材料として大活躍しましたが、2020年、ZAIONの誕生から13年、ついにZAION100%のモノコックボディが誕生し、20ルビアスに初採用されました。まさに軽さと剛性が両立した瞬間です!この、ZAIONによるモノコックボディだけで前モデル比25gの軽量化を叩き出しました。今後増えて来るとは思いますが、ZAIONモノコックボディのスピニングリールは2020年8月現在、ルビアスのみです。
メインパーツをZAIONで固めた異端児。スピニングリールのあり方を問うマイルストーンとなるか?
ボディも、カバーも、ローターも、すべてZAION製です。これまでのスピニングリールで、これほどZAIONの構成率が高いスピニングリールは他にありません。だから、イグジストより軽いものが作れたのでしょう。ここでもパラダイムシフトが行われています。軽量化のためにCFRP(炭素繊維強化プラスチック)は使うべきだが、剛性の屋台骨となるボディコアはやはりマグネシウム合金ダイキャストでしょという、一見正しそうな考え方を否定し、プラスチックでマグネシウム合金を超える剛性を確保しました。これは、ダイワのスピニングリールの今後を占う試金石となります。すなわち、マグネシウム合金、超々ジュラルミン、超高強度真鍮、カーボン繊維強化プラスチックと、複数の素材を適材適所で使い、最適解を出してきたこれまでのモデルを否定することにならないか?というところです。ルビアスが市場で受け入れられるかどうか、決めるのは紛れもなく、釣り師の皆さんです。
ルビアス LT3000S-CXH の基本スペック
メーカー希望小売価格39,900円というクラスのスピニングリールですから、スペックに不足はないでしょう。ギア比6.2、ハンドル1回転あたりの最大巻長さ93cmのエキストラハイギア、最大ドラグ釣力は10kg、ラインキャパはPE1号190mのシャロースプール、ベアリング数9/1個ながら、自重は180gとなっています。フラッグシップモデルのイグジスト LT3000S-CXH
は185gですので、ルビアス LT3000S-CXHの方が5g軽くなっています。軽さだけでない! ZAION モノコックボディだからできた、ドライブギアの大口径化
ZAIONはCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)の一種ですが、その炭素繊維の添加量が世の中の汎用CFRPの3倍程度と高用量で、マグネシウム合金以上の剛性を確保したことで、軽さに加えてタフなボディも手に入れました。その結果、ドライブギアの大口径化が可能になりました。大口径の「タフデジギア※」をパッケージ出来たことにより歯数が増え、より軽い回転でパワーを伝達出来るようになりました。この、ドライブギアの大口径化は、ギアを格納するケースと、ギアの回転を支える軸受、ハンドルを固定するエンジンプレート全ての剛性が高いレベルにあり、ねじれ応力に対抗できなければなりません。これをZAIONで実現したというのが、LTコンセプトのパラダイムシフトの成果と言って良いでしょう。
※参考記事:タフデジギアとは - 具体的な説明と搭載されているダイワのリール機種一覧
ルビアス LT3000S-CXHが活躍できるシーンとは?
ルビアス LT3000S-CXHは、これだけの軽さと強さを兼ね備えたスピニングリールですから、アングラーの釣りシーンのほとんどをカバーできるはずです。しかし、あえて言えば、エギングが面白いでしょう。優れたドラグシステム・ATD(オートマチックドラグシステム)という、負荷がかかった瞬間の力の大きさに応じて、ドラグパワーが自動でコントロール出来るシステムにより、より繊細なドラグコントロールが必要なエギングに向いていると思います。特に、「春アオリ」と呼ばれる、産卵前の大型アオリイカを狙う際に使いたいです。フッキング時の身切れ、イカが逆噴射して抵抗した際の力を緩衝しながらやり取りができます。また、180gの軽さは、一日中シャクり続けるアクションでも疲労の蓄積が少なくて済むでしょう。
2020年発売のスピニングリールの中で現時点ではベストバイではないか?
5年ぶりのフルモデルチェンジをしたルビアスですが、4代目・15ルビアス発売から5年の間に、ダイワのテクノロジーが大きく進化しました。そんな中、これまでローターには積極的に使ってきたものの、ボディコアにはアルミやマグネシウムにこだわってきたダイワのパラダイムシフトが生み出した、ZAIONモノコックボディを使った、チャレンジングで試金石的な製品です。メーカー希望小売価格4万円を切る、実質3万円前後で入手出来るスピニングリールとしては、というより、2020年発売のスピニングリールの中で、話題性、機能性、コスパなど、全てにおいて最高の製品になる可能性を秘めています。ZAIONメインの外装デザインによる、プラスチック感が受け入れ難いと言う人はいるかも知れませんが、パラダイムシフトしてみませんか?