カワハギを投げ釣りで狙う! 自作の簡単胴突き投げ仕掛けを引っ提げて磯に出よう!
作成:2021.04.26更新:2021.08.20
目次
カワハギの投げ釣りと聞いてもピンと来ないかも知れませんね。カワハギ釣りはカワハギ船に乗って、軟調のインターライン(中通し式)のカワハギロッドにベイトリールを装着し、胴突き仕掛けにアサリのむき身を針につけて静かに投入し、着底させてから仕掛けの一番下のシンカー(オモリ)で底をたたきながらカワハギを誘い、神経を研ぎ澄ませて「コツッ、コツッ!」という鋭く小さなアタリを捉え、すかさずロッドを持つ腕を真上に上げて(ロッドの角度は変えずに腕ごと上げる)、カワハギの板状の歯を避けた、口先のわずかなフッキングポイントに巧みにハゲ針の先端を掛ける非常に難しい釣り...そんなイメージではないでしょうか?
オフショアでのカワハギ釣りはまさに、そういったテクニカルな釣りです。同じ船に乗っても腕の差が歴然とするのがカワハギ船での釣りです。そんな釣りとは一線を画したメソッドが、胴突き仕掛けを使用した「投げカワハギ釣り」です。
カワハギの生態
カワハギは、フグ目カワハギ科に分類される魚で、本州北端から九州南端までの水深100m以浅の岩礁地帯に多く分布します。カワハギ科に分類される魚で釣りの対象になるのはカワハギ、ウマヅラハギ、ウスバハギなど、種類としては多くなく、さらに本命のターゲットとされるのは、「本カワハギ」とも呼ばれるカワハギのみです。
カワハギは岩礁帯と藻場が混在する砂泥底を好み、甲殻類、貝類、ゴカイ類、クラゲ類、海藻などを食べています。完全な昼行性で、夜は海藻や岩などを口でくわえ、流されないようにしながら眠ります。寿命は10年程度と考えられています。1年で15cm程度(ワッペンと呼ばれます)、2年で20cm前後、最大で40cm程に成長します(カワハギ釣りの日本記録は44.3cmとなっています)。産卵期は初夏から盛夏にかけて、底砂に水を吹きかけながら産卵床を作り、産卵、放精したあと砂をかぶせます。秋に内湾の藻場で新仔がよく見られます。カワハギは好奇心旺盛で、ダイバーが近づいても逃げない大胆なところもあります。
カワハギの投げ釣りに必要なタックルと仕掛け
カワハギを投げ釣りで狙う場合、地磯や堤防から、離れ根などのキワ、藻場と底砂の境目などを狙います。磯での投げ釣りには根掛かりが付き物かも知れませんが、胴突き仕掛けを使用した投げ釣りはかなり根掛かりのリスクを軽減できるためおすすめです。
胴突き投げ仕掛けの詳細については後述しますが、地磯など根がきついフィールドで釣りをする場合はメリットがたくさんあります。根掛かりを回避するコツは、仕掛けを引き始める際に、ロッドをポンと軽くシャクリ、底についているシンカーを跳ね上げて、根を乗り越えながらリールを巻くことです。これだけでかなり根掛かりを回避できるはずです。
1.ロッド
カワハギの投げ釣り専用の竿と言うものはありませんが、サーフキャスト用のロッド若しくは遠投タイプの磯竿(5号前後)を使用します。離れ根を狙う場合は、フルキャストする必要はあまりありませんので、サーフキャストロッドなら錘負荷25号程度、遠投タイプの磯竿なら5号程度、錘負荷20号程度あれば良いでしょう。
最近では、岩礁地帯などでのキャスティングゲーム専用ロッドもいくつかあります。ダイワ・キャスティズムTなど、ショアキャスティングゲーム専用ロッドであれば、ぶっこみ仕掛けにもカゴ投げにも対応でき、青物から石物まで、幅広く対応できます。カワハギの投げ釣りの場合は、ロッドの長さよりも、先径が細く感度の良いもので、25号程度のシンカーまで投げられるモデルを選ぶのがコツです。
2.リール
カワハギの投げ釣りに向いているリールは、20~25号のシンカーが投げられるショアキャスティングリールですが、サーフキャストリールのように毎投フルキャストというわけではなく、特に地磯からのキャストの場合、遠くても50~70mほど先の離れ磯狙いですので、扱いやすいものを流用すればよいでしょう。ただし、置き竿でアタリを待つ場合は、ダイワでいうクイックドラグ、シマノでいうハイスピードドラグ搭載モデルが良いでしょう。これらは、ドラグ釣力のMIN.~MAX.まで、ドラグノブ1回転で調節できるモデルです。置き竿でアタリを待っているときはMIN.にしておいて、予期せぬ大物がかかり、走られた場合にタックルごと持っていかれることを防止します。フッキング後は素早くドラグを締め、速やかにファイトを開始することができます。
ダイワ・キャスティズム 25 QD、シマノ・サーフリーダー CI4+ SD35 標準などが良いでしょう。置き竿をしないのであれば、クイックドラグ、ハイスピードドラグ搭載機種でなくても十分に対応可能ですが、ドラグ性能の良いリールを使いましょう。
3.ライン
カワハギの投げ釣りに使うラインは、カワハギ船での胴突き釣りの場合は通常、PE0.8号程度のメインラインの先にフロロカーボン16lb程度の幹糸にエダスを3本程度出し、一番下に25~30号程度のシンカーをつけますが、特に地磯での投げ釣りの場合は、敢えて厳しいポイントを攻めるため、PEラインの根ズレが懸念されます。その場合は、メインラインを根ズレに強いフロロカーボンラインにすることをおすすめします。
筆者の場合は、フロロカーボン12lb、150m程度をメインラインに使用することが多いです。数投に一度、ラインの状態(メインラインの末端から捨て糸の先端まで)を指で触り、ささくれがないかチェックします。ささくれがあると即ラインブレイクに直結しますので、ささくれたラインは直ちに交換することを心掛けましょう。
4.シンカー
カワハギの胴突き投げ釣りに使用するシンカーは、攻略するポイントの水深や海況によって使い分けますが、20号を標準として、15号~25号までを使用します。胴突き仕掛けの場合は、シンカーが岩と岩の隙間にハマって抜けなくなることが多いため、シンカーを結ぶラインは「捨て糸」と言って、敢えて強度を落として、捨て糸が切れるようにして仕掛けを回収する手法を取ります。シンカーは多めに用意する必要があります。
最近は、飛距離が出るものの、回収時など、引きのパワーが加わった時に、沈み根の上を越えられるように、比重の低い亜鉛を使った、浮き上がりやすい「フロートシンカー」もあります(大変高価ですが・・・)。フロートシンカーはひとつふたつ持っていれば十分です、現地の根の状態で通常のシンカーを使ったりフロートシンカーを使ったり、使い分けすると良いでしょう。コスパ重視であればフロートシンカーは敢えて使う必要はありません。
5.仕掛け
カワハギの投げ釣り仕掛けは、「胴突き仕掛け」を強くおすすめします。胴突き投げ仕掛けには、天秤の先に仕掛けをつけて投げる「吹き流し式仕掛け」と比較して多くのメリットがあります。
- 針が着底しないため根掛かりの回避率が高い。
- シンカーが一番下にあるため、底の状態を把握しやすい。
- 針が水中を浮いて流れているため、自然な誘い効果がある。
- 天秤を使用しないため、アタリをダイレクトに感じやすい。
- 捨て糸や幹糸の長さを変えることで攻略レンジを簡単に変えられる
- 市販の仕掛けを使わずに、現場でも簡単・安価に自作が可能。
などのメリットがあります。次項では、簡単で現場でもすぐに作れる胴突き投げ仕掛けの作り方を説明します。
超簡単! カワハギ用胴突き投げ釣り仕掛けの作り方
カワハギの投げ釣りに使う胴突き仕掛けの作り方を紹介します。最も重要なパーツは「トリプルサルカン」です。トリプルサルカンは、通常のサルカンの真ん中に、もう一つサルカンがついていて、T字型になっているものです。これをメインラインと幹糸の接続に使うと、簡単にエダスを出すことができます。このトリプルサルカンを、針の本数個使用します。
- メインラインの先にトリプルサルカンを結ぶ。
- メインラインと反対側に幹糸を結ぶ。幹糸の太さはメインラインと同じが望ましい。長さはエダスより少し長く取る(20~30cm程度が良い)。PEラインは締結性が悪いためNGです。
- 幹糸の先にもう一つトリプルサルカンを結ぶ。
- 二つ目のトリプルサルカンの反対側に捨て糸を1m程度結ぶ。捨て糸はメインライン、幹糸よりも強度を少し落とす(幹糸がフロロカーボン12lbであれば捨て糸はナイロン2.5~3号くらいが良い)。
※3本針仕掛けにする場合は、二つ目のトリプルサルカンの先にもう一本幹糸を結ぶ(一本目の幹糸と同じ長さ)。 - 捨て糸の先端にシンカーを結ぶ。捨て糸とシンカーの締結は直結が良い。
- ハリスは幹糸よりもやや短く、15cm程度取り、トリプルサルカンに結ぶ。ハリスはフロロカーボンの2号程度。
- 針はカワハギ専用の「ハゲ針」が望ましい。カワハギ以外にもターゲットが多くいる場合は小さめの丸セイゴ針を使うとよい。
慣れれば現場でも10分かからずに仕掛けが作れるようになります。簡単で安価に仕掛けが作れますので、是非自作の胴突き仕掛けでカワハギの投げ釣りに挑戦しましょう。
カワハギの投げ釣りの狙い目ポイントとアタリの取り方
カワハギの投げ釣りの胴突き仕掛けを投入すべきポイントは、多くのロックフィッシュを狙う場合とほとんど同じですが、より藻場や岩のキワに近いところを好みますので、離れ岩のキワギリギリを狙うことになります。キャストしたら、素早くラインスラックを取ったら、すかさず仕掛を2~3回小さく振って誘いをかけ、アタリを待ちます。胴突き仕掛けの場合は、水中でハリスがゆらゆら揺れますので、あまり頻繁に仕掛けを動かして誘いをかける必要はありません。
また、カワハギが居ればすぐにエサに興味を示し、小さく鋭いカワハギ独特のアタリが出ますので、全身を研ぎ澄ませて感じ取りましょう。カワハギ用のハゲ針を使用している場合は、早アワセOKです。カワハギはホバリングしながら、一度エサを吸い込んで、すぐに吐き出し、また吸い込んで、また吐き出し...を繰り返しながら巧みに捕食しますので、先端がわずかに折れ曲がったハゲ針が、口先に針先を掛けるのに向いています。怪しいと思ったら一度聞きアワセをして、食っていなければ1~2回竿を振ってみると直後にググッと食い込んでくることもあります。そうなったらすかさずアワセましょう。
エサについて。アサリのむき身は不向き!
カワハギ釣りの定番の特効餌として、アサリのむき身があまりにも有名ですが、投げ釣りの力には残念ながら耐えられません。したがって、エサは青イソメを使います。匂いの強い岩イソメが最も良いとは思いますが、青イソメでも十分です。ポイントは、頭の固い部分(2本のアゴの部分)をハサミで切り落とすことと、タラシを長くしすぎないことです。タラシは1cm未満にし、なるべく細いものを使うことです。その他のエサとしては、サンマやサバの切り身(あらかじめ塩締めしたものを小さく切っておくと針持が良いです)、シラサエビ、イカをサイの目状(5mm角程度)に切ったものなども使えます。
カワハギの胴突き投げ釣りは本命以外にも豪華ゲストがいっぱい!
カワハギの胴突き投げ釣りは、もちろんカワハギを狙う釣りではありますが、本命以外にも様々な豪華ゲストが期待できるのも魅力です。ウマヅラハギやウスバハギといった近縁種から、カサゴ、ソイ、メバル、アイナメなどの定番ゲストを筆頭に、マハタ、キジハタ、オオモンハタなどのハタ類、シーバス、フエダイ、ブダイ、コショウダイ、メジナ、クロダイ、イシダイ、はたまた回遊青物の誤爆等々、嬉しいゲストも数多く釣れます(実際はベラ、フグがほとんどなのはご愛敬!)。カワハギよりゲストの活性の方が高い時は針を丸セイゴなどに交換し、幹糸やハリスもひとまわり太いものに付け替えて、軸足を「磯五目胴突き投げ釣り」にシフトしてしまうのも手です。
カワハギの胴突き仕掛けによる投げ釣りで「キャスティズム」の醍醐味を満喫しよう!
地磯から胴突き仕掛けを投げる釣りは、プロアングラーの村越正海氏が提唱し、数々のフィールドを釣り歩いてその魅力を紹介して来た、「キャスティズム」と言われる比較的新しい釣りジャンルのひとつです。「投げ釣り」の可能性を自由気ままに追い求めるというコンセプトで、現在も様々なフィールドで様々な投げ釣りのメソッドを提案し続けています。
従来、地磯では根掛かりがきついため、メジナやクロダイのフカセ釣りがメインの釣法で、投げ釣りは一部の石物師(イシダイ、イシガキダイ狙いの人達)がぶっこみ釣りをする程度でしたが、近年は青物狙いのカゴ投げ師や、エギンガー、ショアジギンガーなど、キャストフィッシングを楽しむアングラーが増えてきています。そして、こうしたアングラーたちは、メソッドを開発し、これまでショアから釣ることが難しかったターゲットを続々と新しい釣りのジャンルに育てています。
こうしたムーブメントが起こることこそが「キャスティズム」の狙いであり、村越正海氏の面目躍如といったところでしょうか。カワハギの胴突き投げ釣りは、「キャスティズム」の醍醐味を味わうには最高のメソッドであるといえます。