夏の女王、シロギス釣りの餌の代用品として使えるものはあるのか?
作成:2022.06.23更新:2022.06.23
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初夏から続々と近場に押し寄せて、夏の投げ釣りの人気ターゲットとして堤防やサーフを賑わしてくれるシロギスは、スマートなフォルムと真珠のような美しいカラーから、サーフの女王と呼ばれ、親しまれています。さらに、魚類トップクラスの食味の良さも相俟って、シロギス釣りをライフワークとして追いかけ続けているアングラーが多いことでも知られています。
そんなシロギス釣り、餌は主に小さく切ったイソメ類、通常はジャリメ(石ゴカイ)が多用されますが、餌切れや、何らかの理由で入手ができなかったときの代用餌はないか? ということについて考えてみたいと思います。
シロギスの生態
シロギスは、スズキ目キス科に分類される魚で、アフリカ大陸東岸から中東、インド洋、南シナ海、東シナ海、太平洋西岸、オーストラリアに分布しています。キス科に分類される魚は世界で33種程が確認されていますが、日本の沿岸にはシロギス、アオギス、ホシギス、モトギスなどが分布しています。しかしその殆どがシロギスで、キスと言えば通常はシロギスのことを指します。南西諸島以南ではホシギスが多くなります。
シロギスは、湾内の清澄な砂地を好み、水深30m未満の浅場の底層を主な住処としています。最大30cm程度になり、寿命は4年程度と言われています。食性は雑食性ですが、幼魚、若魚の頃は、カイアシ類などのプランクトンを主に捕食し、その他にゴカイやイソメなどの多毛類、アミエビなどの甲殻類もわずかながら食べます。成魚は主にアミエビなどの甲殻類を多く捕食し、他に多毛類やカイアシ類なとのプランクトン、小型の二枚貝やカニ、魚なども捕食します。産卵期は6月〜10月頃で、1回で数万個の卵を産むことが確認されています。
シロギス釣りは数を追求すべし!
シロギス釣りは、競技釣りはもちろん、休日のレジャー釣りのシーンでも、数を追い求める釣りです。そのため、できるだけ効率的に釣ることが大事です。すなわち、1回のキャストでなるべく多くのシロギスを掛ける必要があります。初心者の場合は、市販の3本針程度のシロギス釣り仕掛けを購入すれば良いと思いますが、経験者の場合は、もっと針数を多くして、手返し良く数を稼ぎましょう。
例えば、カエシのない針をたくさんつけた競技用の50本針仕掛けなどから、自分が扱うことができる本数のところまで引き出して天秤に接続します。7本針〜10本針程度の仕掛けを使い、1回のキャストで多点掛けを目指しましょう。
シロギス釣りの餌について
岸本釣具店
シロギスは雑食性であることは先程記載しましたが、シロギス釣りの定番餌はイソメ類です。シロギス釣りは、ちょい投げ程度の軽いキャストでも釣れなくはない魚ですが、基本は仕掛けを大遠投し、広範囲を探る必要があるため、キャスト時に針から外れにくい餌を使う必要があります。そのため、キャストに耐性のないオキアミやアミエビなどは使えません。また、非常に口の小さい魚であるため、餌も小さくつける必要があります。そのため、カニなども食い込みができず、使えないでしょう。
シロギス釣りの定番餌はジャリメ(石ゴカイ)若しくは青イソメです。タラシが1cm程度になるよう、小さく針につけます。ジャリメも青イソメも水中で良く動きながらアピールします。シロギスは、針にわずかでも餌が残っていれば、餌の状態を問わず何度でも釣れるハゼとは違い、常に新しい餌を好みますので、一度他の魚が食って口から吐き出したような餌は速やかに交換しましょう。
シロギス釣りの特効餌「チロリ」を見つけたら即買いだ!
釣りnews
「チロリ」と呼ばれるイソメがいます。釣具店に稀に入荷するレアなイソメで、「東京イソメ」、「東京スナメ」などとも呼ばれています。潮通しの悪い内湾の砂地で、湿っていて腐敗臭がするような場所を掘るとまとまってとれることがありますが、外洋に面したサーフなどではほとんど見かけることはありません。
身が非常に柔らかく、鮮やかな赤色で、匂いの強い体液を分泌するチロリは、シロギスに限らず、ハゼやイシモチ、サヨリなど、多毛類で釣れる魚の殆どに対し、反則級の効果をもたらします。
チロリは通年入荷するものではなく、シロギスの投げ釣りシーズンに合わせるかのように、4月頃〜10月頃まで、不定期に入荷します。普遍的に取り扱われている餌ではないので、チロリがどうしても欲しい場合は事前に店舗に問い合わせしたほうが良いでしょう。もちろん、運よく見つけたら即買いをおすすめいたします。
シロギス釣りの餌の代用品はあるのか?
正直、シロギス釣りにイソメ類以外の餌で臨むアングラーは殆ど聞いたことがありません。しかし、シロギスは雑食性のため、他の餌でも釣ることは可能です。その条件は大きくふたつあります。それは、「キャスタビリティー」と「サイズ」です。この2つを満たす餌であれば、可能性はあるということです。つまり、「仕掛けを投げた際に千切れて飛んで行かず」、「シロギスのおチョボ口でも食い込めるサイズ」の餌であれば良いということになります。
とはいえ、このふたつの条件を満たしていれば何でも良いのかというと、そこまで甘くはありません。ここでは、私が実際にシロギスを釣ったことがある、イソメ類以外の餌について紹介します。実はこのカテゴリーには、とんでもない代替餌が存在します。
ホンモノを凌駕する可能性のある人工イソメ
ピュアフィッシング・ジャパン バークレー
代替餌どころか、場合によってはホンモノのイソメを凌駕することもあるのが人工イソメです。人工イソメは、水中の微生物の働きにより、最終的に水と炭酸ガスに分解され、地中に還る生分解性プラスチックを材料にした疑似餌のことで、魚の嗜好性が高い保存液に浸漬することにより、常温で長期保存できる柔らかいゴム状になっています。
その見た目はイソメそっくりで、魚がつついたときのちぎれ方までホンモノのイソメを忠実に再現しています。代表的なブランドには、マルキュー「パワーイソメ」と、バークレイ「ガルプ!」があります。
マルキュー・パワーイソメ
マルキュー パワーイソメ
釣り餌業界に革命をもたらしたと言っても過言っぱありません。見た目はイソメそのものですが、保存液はブルーベリーの芳香がつけられているため、独特の生臭いヌメリを発するイソメの代替品として、イソメを触れないというアングラーでも安心して使えます。もちろん、パワーイソメはアングラーの手を噛んだりしません。
魚の嗜好性は、本物のイソメをはるかに上回る、約5〜6倍のアミノ酸が含浸されているため、場合によっては生イソメを凌駕する食いつきを見せることもあります。
パワーイソメには、3サイズ(中、太、極太)、4カラー(青、茶、赤、桜(夜光))合計12種類ラインアップされていますが、経験上シロギスには中サイズを使いましょう。カラーはその日のコンディションにより、当たりカラーが異なりますので、余裕があるならば2色以上用意できれば安心です。針に刺したらタラシを1cm〜2cm程度にします。食いを重視するならチョン掛け、針持ちを重視するなら通し刺しにします。
バークレー・ガルプ! イソメ
ピュアフィッシング・ジャパン バークレー
バークレー・ガルプ!シリーズは、日本ではアブガルシアでおなじみの、ピュアフィッシング・ジャパンが販売を手掛ける、米国バークレー社の製品です。マルキュー・パワーイソメと双璧をなす、人工イソメの定番品です。
ガルプ!シリーズは、イソメタイプの他、クロータイプ、グラブタイプ、ホッグタイプ、パルスワームタイプ、サンドワームタイプなど、様々な形状の製品がラインアップされており、様々な釣りに対応しています。
パワーイソメシリーズと異なるのは、ガルプ!は保存液の強烈な臭いで魚にアピールするという点です。そのため、リスクもあります。例えばタックルケースの中などで保存液を誤ってこぼしたりすると臭いが移ってしまい、大変な思いをします。保存液を服につけてしまうとなかなか臭いが取れなくなります。そのため、一度開封したら、液漏れを完全に防止できる密閉容器に移し替えて保管する必要があります。
この保存液はガルプ!シリーズ最大の特徴であり、また最大の欠点でもあります。この保存液を充分に吸ったワームは、一般的なワームと比較して、集魚成分の拡散が400倍とも言われています。つまり、ガルプ!の絶望的な臭気を気にせずに使うことができるアングラーには、集魚効果は折り紙付きであるということです。
ガルプ!は、保存液だけの販売もされておりますので、ガルプ!ワームの乾燥防止のための添加はもちろん、他のワームを漬け込んだり、生餌に振りかけたりして集魚効果を高めるといった使い方も可能です。
マルキュー・HPPベイツ オキアミ
マルキュー HPPベイツ ボイルオキアミ
HPPベイツは、マルキューが開発した全く新しい餌です。ボイルオキアミをHPP(High Pressure Processing)処理をして、常温保存を可能にした画期的な製品です。生のオキアミを高圧環境下で処理をして、無駄な水分を抜き、更にアミノ酸を添加し、魚の嗜好性をあげています。シロギスもオキアミは食べます。大型のシロギスが特に食いつきが良いです。
フルキャストにはさすがに耐えませんが、ちょい投げ釣り程度であれば充分対応可能です。生のオキアミも大変臭いがキツいため、こちらを使うアングラーも増えています。地磯でのフカセ釣りや穴釣りに大変向いています。
余ったHPPベイツは冷凍すれば長期保存も可能です。現在、HPPベイツはコノシロフィレ(2枚入り)とボイルオキアミの2種類が発売されています。今後の製品ラインアップの拡充が期待されています。
その他のシロギス用餌の代用品
シロギスは雑食性であることは先に述べましたが、イソメ、人工イソメ、オキアミ、アミエビ以外の代替餌を紹介します。
シロギス釣りは基本的にイソメ以外の餌はほとんど使いませんが、雑食性の魚ですので、代替餌の選択肢は広いという特徴があります。中でも、小型の昆虫の幼虫は効果的です。
サシ・紅サシ
Blue Earth Fishing
川釣りではおなじみのサシは、ショウジョウバエの幼虫(いわゆる蛆虫)です。これを食紅で赤く染めたものは紅サシと呼ばれ、ワカサギ釣りの特効餌として使われます。もちろん、シロギスも良好な反応を示します。
これは釣り餌用として養殖されているものですので、衛生的に問題はありません。冷蔵庫で保管することが条件です。常温保存で放置すると数日でハエになってしまいますので保管には注意が必要です。
赤虫
赤虫は、オイカワやウグイ、カワムツなどの淡水釣りの餌として、また、ペットの熱帯魚のおやつとして、釣具店でもペットショップでも手に入ります。釣具店では生きた状態で、ペットショップではキューブ状に冷凍された状態で売っていることが多いです。魚の嗜好性は最高クラスであることは断言できます。私はもう30年以上自宅で熱帯魚を飼育していますが、毎日与える配合飼料の他に、週1回冷凍赤虫を与えるのですが、水槽に赤虫を入れた瞬間、狂ったように魚が暴れだします。
赤虫は非常に小さいため、針につけるのに一苦労しますが、輪切りにした大根などの上に赤虫を置き、赤虫と大根を一緒に針に刺し、針を抜くと赤虫だけが綺麗に針に刺さりますのでお試しください。
ミールワーム
Wikipedia
爬虫類、両生類、魚類、小型の哺乳類などの餌として、ペットショップで簡単に入手できるミールワームは、チャイロコメノゴミムシダマシの幼虫です。ミールワームは、体表がやや硬いため、小型魚の嗜好性は赤虫やサシに一歩劣る感じではありますが、ほとんどの魚が食べますので、様々な釣りの代替餌として使えます。
これもサシ同様、常温保存してしまうと次々と蛹化(サナギになること)してしまいますので、必ず冷蔵庫で保存しましょう。
ミミズ
マイナビ農業
やはりなんだかんだ言っても、困ったときはミミズです。釣り餌としての性能は抜群で、フルキャストにも耐え、嗜好性も高く、大変おすすめです。一番優れているのは、どこにでもいて、落ち葉が混じったような柔らかい黒土を掘ると難なく採集出来ることでしょう。
自分で掘るとサイズが統一できないのが難点ですが、シロギス狙いに使うのであれば、できるだけ細身の個体を探して使いましょう。
シロギスをルアーで釣る「キスイング」
スプリットリグ、ダウンショットリグ、ジグヘッドなどに細身のワームをつけてキスを狙う「キスイング」という釣法もあります。わざわざキスをルアーで狙う必要はあるのかと思う方もいらっしゃるかも知れませんが、薄暮時や夜間はアジングやメバリングをやりながら、日中の時間帯はシロギスを狙うなんて方にはおすすめです。タックルも、アジング、メバリング用のもので代用できます。
1本針仕掛けのため、数釣りには向かないこと、天秤をつけてフルキャストする投げ釣りの飛距離には遠く及ばない事、キスイング専用タックルがほとんどないことなど、まだまだデメリットの方が多い感じではありますが、ライトタックルで他の魚を狙いながらキスも釣れるという気軽さは魅力です。今後のこのジャンルの盛り上がりに期待したいところです。
シロギス狙いは原則イソメで! イソメが切れたら代用品の出番!
色々と書きましたが、現時点では、シロギス釣りの餌は、嗜好性、水中でのバイタル感、キャスタビリティーなどを考慮すると、チロリ、ジャリメ、青イソメ、に敵うものはないかもしれませんが、パワーイソメやガルプなどの人工イソメは、生餌にほぼ肉薄していると言っても過言ではありません。これらには、常温保存ができるという最大のメリットがあります。
万が一、用意したイソメが切れてしまったときの代替餌として、人工イソメは持っていたほうが良いかもしれません。乾燥さえさせなければ使い切れなくても保存が効きますし、放置していても勝手にハエになったりしないので、わざわざミミズを掘ったり、幼虫を探したりしなくても良いでしょう。