磯は、さまざまな釣りのシーンにおいて、最も危険な場所で行う釣りであると言えるでしょう。足場が悪く、かつ、濡れた岩に生えた藻類で滑りやすく、一般の靴で磯を歩くのは転倒の危険がありとても歩けたものではありません。そして、磯での転倒は、鋭く尖った岩や、岩に着生した貝やフジツボなどの殻などがびっしりついているため、素手をついてしまうと大怪我します。肌の露出は原則NGです。そのため、軽装で磯釣りなどあり得ません。サンダル履きなどもってのほかです。真夏でも長袖長ズボン、手袋の着用は最低限の装備です。
そして、転倒のリスクを軽減させるためには、スパイクシューズ、スパイクブーツが必須です。靴底からステンレスのピンがびっしり突き出ているものです。写真上のシューズタイプは、水をかぶるリスクがない、足場が高い磯などで着用し、水をかぶるリスクが高い、足場と海面が近い磯ではブーツタイプを着用しましょう。これらを履くだけで、滑って転倒するリスクはかなり軽減されます。しかし、スパイクシューズも万能ではありません。岩についた藻類の上を歩くと滑る危険があります(それでも一般的な靴と比較すれば防滑効果は大きいです)。その場合は、スパイクピンとフェルトソールを併用した、フェルトスパイクシューズ/ブーツを使用します。フェルトソールが濡れた藻類を吸いつけるように受け止めるため、非常に防滑性能が高いです。ただし、フェルトスパイクソールは、フェルト部の耐久性が弱く、高級モデルを除き、ソールの張り替えができないものが多くコスパが悪いこと、フェルト繊維に絡みついた藻類を洗い落とすことが大変で、洗い残しがあると異臭が染みついてしまうことがウィークポイントです。
歩幅をいつもの歩行より小さくする、ソール全体に均等に体重がかかるように歩く、足元をよく見て藻類の上を極力避けて歩くなど、注意を払って歩くことができるなら、無理にフェルトスパイクソールを求めなくても良いと思います。ただし、スパイクソールのシューズ/ブーツは、磯から上がったら通常の靴に必ず履き替えましょう。スパイクシューズを履いたまま車の運転をすることは、フロアマットにスパイクが引っかかることがあるため大変危険です。また、スパイクソールのままコンクリートの上を歩くとスパイクが傷んだり、また、スパイクソールのまま店舗に入ったりすると、店舗のフロアを傷つけたりしてしまいます。スポーツサンダルでも構わないので必ず通常の靴も用意しておきましょう。
磯釣りに限ったことではありませんが、フローティングベストの着用は必須です。着用していなければ釣りは禁止です。これは強く言わせてもらいます。私が良く行く神奈川県の江ノ島の地磯でも、フローティングベストの着用率は3分の2程度と思います。非常に残念です。磯は海に落ちたらほぼ自力では上がれない場所がほとんどです。万が一の時、命を救ってくれる確率を高めるアイテムです。絶対に着用してください。
尚、磯ではガス膨張式の救命胴衣は使用できません。岩などに引っかけてしまい、胴衣に穴が開くとガスが抜け、浮力がなくなってしまうためです。磯では必ず浮力材を入れたフローティングベストを着用してください。
磯では肌の露出を極力避けなければなりません。転倒して岩の切っ先、貝殻などに手をついてしまうと高確率で手をざっくり切ってしまいます。磯で手袋なしは大変危険です。真夏の暑い時期でもフィッシンググローブは着用していた方が安全です。
アイウェアも磯釣りには必須です。特にウキフカセ釣りの場合は、偏光サングラスをかけていないと、水面に反射する太陽光のギラギラで、根の有無やコマセの拡散の状態など、水中の状態が見えないだけでなく、ウキの動きも見えなくなります。また、過度な反射光は目に悪影響を及ぼします。必ず使用しましょう。眼鏡を使用している人は、度付きサングラスを作ることができれば一番良いのですが、なかなかそうもいかない方は、眼鏡の上からかけられるオーバーグラスタイプ、眼鏡にクリップで取り付けるクリップオンタイプがありますので、そちらを利用すればよいですが、煩わしさは否めません。
これまでは、磯釣りでの安全装備に関わる、なくてはならない必須アイテムについて紹介しましたが、ここからは、必ず必要というわけではないけれど、あったら便利なグッズについて紹介します。
SNS全盛の現代、釣果を写真に収め、SNSに投稿することが大変流行っています。釣果の記録方法として、手間のかかる魚拓から完全に取って代わったと言っても過言ではありません。釣り専用のメジャースケールは、魚とスケールを一緒に写真に収め、サイズを正確に記録するためのものです。ターポリン(塩化ビニールベースの多層素材)製で、耐水性があり、ベース布にPVCがコーティングされたものは熱収縮による寸法変化も少なく、使わないときはコンパクトに折りたたみ、タックルケースに収納できます。また、裏面に粘着剤が塗布されたステッカータイプのメジャースケールは、好きなところに貼って、メジャー代わりに使えます。私はクーラーボックスの蓋に貼り、38cmまでの魚であればクーラーボックスの上で計測・写真撮影ができるようにしています。
スマートフォンがあれば何でも情報を取ることができる現代ですが、速報性の点で言えば今でもラジオが最速です。ラジオはかけっ放しにしてそばに置いておけば、天気予報、地震速報、交通情報、ニュースなどがリアルタイムで勝手に耳にどんどん入ってきます。天気予報と地震速報は特に重要で、場合によっては撤収の判断を下さなければならないこともあります。雷と地震の情報は絶対に取りこぼしてはいけない情報です。ラジオは持っておいた方が良いアイテムです。そうした情報とは別に、スポーツ中継やバラエティ番組などを耳で楽しみながらの釣りも悪くありません。乾電池の予備をくれぐれもお忘れなく。
玉網は、もちろん大物がかかった際のキャッチツールとしての用途で必要なアイテムですが、磯釣りに限って言えば、別の使い方があります。それは、釣れた魚を磯の小さなタイドプールに入れて活かしておき、納竿時に玉網を使って回収するという使い方です。
あまり大きなタイドプールに放してしまうと回収が大変になりますので、水深20cm程度までの浅く小さなタイドプールにしておきましょう。但し、あまり水量が少ないタイドプールだと、水温が上がってしまい、魚が弱ってしまいますので、時々新しい水が流れ込むようなタイドプールを選びましょう。また、満潮時に完全に水没してしまうタイドプールの場合は、満潮になる前に必ず魚を回収しましょう。
現場で後片付けする際に、コマセで汚れたバッカンやコマセ柄杓、コマセが飛び散った釣り場を掃除する際に、ハンドブラシがあると便利です。特にコマセバッカンは完全にキレイになるまで海水を何度も変えながらブラシで徹底的に洗いましょう。洗い残しがあるとコマセの臭いが染み付いてしまいます。そして帰宅したら洗剤を使いもう一度ブラシでよくこすり、真水で徹底的に流しましょう。バッカンはコーナー部が特に洗い残しが発生しやすいので、写真のようなL字型になっているブラシがおすすめです。使い終わったブラシはパッカンの中に入れて持ち帰ることができるよう、柄は長すぎないものを選ぶとよいでしょう。また、ハンドブラシの適度な硬さは、魚のヌメリを落とすのにも好適です。現地で血抜きして持ち帰るような場合、海水を入れた水汲みバケツの中で魚の表面をゴシゴシ洗えばかなりヌメリが取れます。自宅に帰った後にヌメリ取りの手間がなくおすすめです。
タオルや濡れた服など、濡れ物、汚れ物をまとめて収納する、大きめのターポリンバッグがあると何かと便利です。ターポリンバッグは完全防水ですので、とにかく濡れたもの、汚れたものは全部突っ込める、ある程度容量のあるタイプ(30リットル程度)を選びましょう。臭いが付きやすいので、帰宅したら必ず洗剤で洗い、真水で塩分を完全に流してから日陰で乾燥させましょう。私は、濡れ物はバッカンの中にまとめて突っ込んで帰宅し、ターポリンバッグは、磯から上がったあと、履き替えたスパイクシューズを収納するのに使っています。
アウトドアウォッチは、複数のセンサーを内蔵し、登山者用やランナー用、サイクリスト用など、そのアクティビティに必要な情報をリアルタイムに計測し、オーナーに伝える機能を備えた腕時計です。
近年はスマートウォッチの隆盛で、アプリを自由にダウンロードして様々な機能を簡単に追加できるようになってきていますが、カシオ・PROTREKシリーズは古くからセンサーを3〜4個搭載した本格的なアウトドアウオッチとして多くのモデルをラインアップしてきました。
写真のモデルは、PROTREK PRW-7000FC-1BJFというモデル(現在は販売終了)ですが、トリプルセンサー(温度センサー/圧力センサー/方位センサー)内蔵で、高度、気温、気圧、方位がリアルタイムで測定できるほか、月齢、タイドグラフ、さらに月齢とタイドグラフの相関から、一番釣れやすい時間を割り出す「フィッシングタイム」機能を搭載したモデルです。また、PROTREKシリーズ中、最高の防水性である20気圧防水を備え、海でも山でも、カジュアルでもフォーマルでも、シーンを選ばずタフに使える「マルチフィールドライン」に該当するモデルです。フィッシングタイム機能はオマケのような機能としても、気圧の急変による天候悪化のアラーム機能は秀逸です。
いずれの機能も、スマートフォンでも得られる情報ばかりではありますが、スマートフォンとは違い、いちいちアプリを開く必要もなく、常時リアルタイムに情報が得られるところはアウトドアウォッチの絶対的に優位なところです。
広幅の粘着テープは何かと用途が多い便利グッズです。おすすめは布基材のガムテープです。釣りをしている間に仕掛けを作り直したりする際に出るラインのゴミや使えなくなった針などの小さなものを地面に落としてしまうと、岩の色と同化してしまい、なかなか拾うのも大変です。それらを効率的に拾い上げるために、粘着テープでペタペタと貼り付けて確実にピックアップすることができます。また、長靴などを岩の尖った部分に引っかけて穴をあけてしまった際などの応急パッチとして、数時間程度であれば機能します。また、レジ袋の取っ手の部分を片方だけ、岩やクーラーボックスの側面に貼り付けておけば、簡易的なゴミ箱になります。
さらに、風が強い日で、小型のタックルケースなどを岩の上に置いておくと飛ばされてしまうような場合、タックルケースの下に粘着面を外側に向けて小さな輪にしたテープを挟んで、岩と貼り付けておくだけで風に飛ばされることはなくなります。ただし、強く圧着するように貼ってしまうと、タックルケース側に粘着剤が残ってしまうことがありますので、タックルケースの自重だけで岩に圧着する程度にとどめておきます。
いかがでしたでしょうか? 車を磯にジカ付けできるような場所であれば、あらゆる場面を想定し(例えば、フカセ釣りしていて、真の前でボイルが起こったらすぐにルアータックルを準備してナブラ打ちに変更したり)、たくさんの荷物を持ち込むことも可能でしょうが、そういうポイントは少ないと思います。磯釣りの場合、ロッドケース、クーラーボックス、コマセバッカン、リュックサックといった荷物を持って、歩いてポイントに向かうはずです。現場に持ち込む荷物は吟味し、使う可能性の少ないものは持ち込まず、できるだけ身軽で臨みたいです。そんな中でも、アイデアを絞って、さまざまな便利グッズを使いこなし、手間の掛かる磯釣りを少しでも快適に行いたいですね!
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