フカセ釣りで「仕掛けが沈まない」悩みを解消するテクニックとは?
作成:2021.11.25更新:2021.11.25
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フカセ釣り、特にメジナのフカセ釣りの勝利へのカギは「コマセと刺し餌の同期」に尽きます。と、言うのは簡単なのですが、実際には非常に難しいテクニックを必要とする問題です。ガン玉を仕掛けにつけて、ハリスにもジンタンを打てば仕掛けは沈んで行くのですが、むやみに重くしてはコマセと刺し餌の同期が出来ず、ターゲットは食ってきません。また、風、潮の流れ、波の影響など、様々な要因が複雑に絡み合い、思った通りに仕掛けが沈まないということが良くあります。そんな場面に遭遇した時、どうしたら自然に仕掛けを沈めて行くことができるか、考えてみたいと思います。
なぜ仕掛けを沈めなければならないのか?
そもそも、なぜ仕掛けを沈めなければならないのでしょうか? この点について考えてみましょう。
表層は青物以外期待薄
表層部分は、ベイトフィッシュのような小魚ばかりのエリアですので、基本的には青物を代表としたフィッシュイーターを狙う場合はトップ狙いもありですが、フカセ釣りのシーンでは表層を狙うことは殆どありません。ごく稀に、表層に溜まっている小魚を、下から狙って表層まで浮いてくるような活性の高いメジナなども存在はしますが、滅多にありません。
表層は泳力の小さい小魚が潮の流れに乗って漂いながら、水面近くに浮いているプランクトンを食べています。深い場所まで泳ぐ必要がなく、小魚にとっては体力の消費を抑えることができます。その代わり、鳥の餌食になるリスクを抱えています。また、表層を泳ぐ青物にも襲われる危険性もはらんでいます。そこで、彼らは大量に群れることによって、自分が食われるリスクを低減するようにプログラムされています。
フカセ釣りに必須の「コマセと刺し餌の同期」ができない
フカセ釣りはターゲットの魚がいる泳層に向けて、刺し餌を自然に沈ませて食わせる釣り方なので、少なくとも中層までは沈ませてやらねばなりません。そのためにコマセを撒いてターゲットの泳層をコントロールし、アングラーの刺し餌とコマセが同期しながらゆっくりと漂う層にターゲットを浮かせて食わせるのが理想とされています。仕掛けが沈まないということは、このコマセと刺し餌の同期ができないということになります。すなわち、刺し餌のある場所とは別の場所、別のレンジに安全なコマセがジャンジャン漂っているんですから、刺し餌に食いついて来ようはずはありません。
仕掛けが沈まない原因とは?
タックルの選定は間違っていない、道糸にはガン玉を打ち、ハリスのチモトにもジンタンを打っている。理論上仕掛けが沈まないはずがないのに、うまく仕掛けが沈まない・・・。ということは実はよくあります。様々な要因がありますが、どれか一つが原因であるということはあまりありません。様々な要因が悪い方向に絡まりあい、「ラインは出て行くのに仕掛けが沈まない」という現象が起こります。対処としては、ガン玉を追加する、ジンタンを段打ちにすると言った、物理的に仕掛けを重くすることで、仕掛けが「沈む」ということについては解消しますが、それでは対策にならないのがフカセ釣りの奥深いところになります。
何度も言いますが、「コマセと刺し餌の同期」が出来ていなければ、仕掛けだけ沈んでも何の解決にもならないからです。まずは、仕掛けが沈まない原因をいくつか見てみましょう。
風が強い
「風と坊主は10時から」という言葉を聞いたことありませんか?これ、強ちウソではないんです。夜間は太陽が出ていいため、陸上と海上の温度差が比較的少ないですが、日の出から徐々に陸上、海上ともに太陽光により温められます。陸上は比熱が低い(熱しやすく冷めやすい)ため、陸上の方が早く温められます。すると、温められた空気は上昇気流となり、陸上は気圧が下がります。これにより、日が昇り数時間たった午前10時前後から、相対的に気圧が高い海上から、気圧の低い陸上に向かって風が吹きます(海風)。
夜間はこれと逆の現象が起こり、陸上から海上に向かって風が吹きます(陸風)。この現象に、上空の気象の影響が加わり、沿岸では常に風が吹いている状態になっています。海から離れたところでは無風もしくは微風でも、釣り場は爆風ということが少なくありません。
当て潮/二枚潮/湧き潮
海では、月の引力で一日潮の満ち引きが起こります。満月、新月の前後数日は大潮、半月の前後数日は小潮となります。この「干満」差の大小に風の影響が加わり、非常に複雑な潮の流れになっています。そんな中、釣り人を悩ませるのが「当て潮」、「二枚潮」、「湧き潮」です。この他に「払い潮」という、足元から沖に向かって流れて行く潮があるのですが、払い潮は釣りやすい潮です。
当て潮
沖から足元に向かって流れる潮で、フカセ釣りをしていて個人的に最もイヤな潮です。遠投してもすぐに戻ってきてしまいます。そして、足元直下の岩に仕掛けを引っ掛けてしまうリスクの高い大変厄介な潮です。コマセを打っても足元に帰って来てしまうため、沖のポイントを作ることが難しく、足元にエサ盗りを猛烈に集めてしまいます。しかし、我慢して粘り続けていると、足元付近にターゲットが寄ってきたりすることもあります。
二枚潮
二枚潮とは、表層の潮の流れと中層の潮の流れが反対方向になっている潮、或いは、表層と中層の潮の流れるスピードが異なる潮をいいます。この潮は判別するのが難しく、陸上からウキを見ている限りでは仕掛けが馴染んでいるように見えても、仕掛けは沈んでいないことが多い、注意して見ていないと気が付きにくい潮です。さらに底層の潮が中層の潮と異なる三枚潮の場合もあります。
湧き潮
湧き潮は海面が盛り上がっているように見えるのですぐにわかります。底層から表層に向かって上昇の対流が起こっている潮で、ここにコマセや仕掛けを投入しても沈んで行きません。特に全遊動フカセ仕掛けなど、軽量仕掛けは全くラインが入って行かない潮です。ただし、湧き潮の周辺は必ず潜り潮(湧き潮の反対で、表層から底層に向かって下降の対流が起こっている潮)になっていますので、湧き潮の外縁部、湧き潮から潜り潮に代わる場所を見極めてコマセを打ち、仕掛けを投入すると釣果が上がって行きます。
仕掛けが沈まないときの対処法
では、実際に仕掛けが沈まなくなった際の対処法について説明します。水中パーツを使い、潮をつかみやすくする
水中ウキと呼んだり、潮受けと呼んだり呼び方は色々ありますが、メインのウキより下に取り付け、常に水中にあり、潮の流れを受けて仕掛けを潮の流れに馴染ませるための小さなパーツです。写真右はシマノ・ティピオS(現在は廃番)、左は釣研・メタルクッションです。どちらも仕掛けを潮の流れにうまく乗せ、仕掛けの沈下をコントロールするために大変有効なパーツです。
ガン玉よりも比重が低いため、ガン玉と同じ重量であれば表面積大きく出来ます。ウキの浮力に対し、水中パーツ、サルカン、ガン玉、ジンタン、ハリス、針など、ウキから下のすべてのタックルのトータル重量が釣り合うようセットすると、仕掛けは安定しますが、仕掛けが沈まない状態では、ウキの浮力以上の重量に仕掛けを重くしてやる必要があります。そういう時は、水中パーツ単体の重量をウキの浮力と合わせ、さらにジンタン、針を重量針にするなど、沈めるための工夫をします。
ウキを浮力の大きいものに変更する
ウキをより浮力の大きいものに変更すると、仕掛けをより重くできますので、確実に沈ませることが可能となります。具体的には、通常0号を使っているところを2Bにするとか、Bを使っているところを3Bにするとか、波や風が大変強い時は1号を使用することも考えられます。本来はポイントの水深によってウキの浮力を使い分けるのですが、仕掛けが沈まないタフコンディションの時は、ウキの浮力を大きくして、ガン玉やジンタンを適切に打ち、仕掛けの重量を重くすることで解決します。
ウキを沈ませてしまう
円錐ウキの場合、本来のウキの喫水線(色分けされている部分が喫水線)よりも沈めて、水面ぎりぎりのところでウキ全体が沈んでいる状態にすると仕掛けが馴染んで行くことがあります。ハリスに小さなジンタンを2~3個段打ちし、ウキのトップを水面直下まで沈めてしまいましょう。この場合、大き目のガン玉の1個使うより、小さなジンタンを、ガン玉1個分と同じ程度の重さになる数を一定ピッチでハリスに段打ちする方が仕掛けの自然な沈降を演出しやすいため、ターゲットに違和感を抱かせにくいです。
道糸をワンサイズ細くする
風が強くて仕掛けが沈まないときに特に有効なのが、道糸をワンサイズ細くすることです。針は金属であり、ハリスに海水より比重の大きいフロロカーボンを使っていれば、理論的には仕掛けは沈みます。しかし、水面に出ている道糸が風の力で引っ張られたりすると仕掛けは沈みません。そんな時は、道糸をワンサイズ細くして、道糸が受ける風の抵抗を軽減させてやるとうまく沈んで行くことがあります。
メインラインをフロロカーボンにする
この方法は私が強風や高い波で苦戦しているときに苦肉の策で使ったり、クロダイ狙いの時に使う技なのですが、フロロカーボンラインを巻いたスプールを一つ用意しておきます。フロロカーボンラインの比重は1.7~1.8程度と重いので、フロロカーボンラインに変更すれば、ナイロンラインでは沈まない場合でも沈めやすいです。根ズレに強いというメリットもあります。フロロカーボンを道糸として使う場合は、8lb(2号)~10lb(2.5号)を使います。ただし、ラインの性質上、ほとんど伸びず、風合いも硬いので、大アワセした際に魚をはじいてしまったり、馴染みがイマイチ悪かったりといったデメリットもあります。
ポイントを移動する
ここでいうポイント移動は、荷物をまとめて全く別のポイントへ移動するということではありません。今いる場所から前後左右数mという、非常に近い距離の移動です。潮は風、干満、気圧、海中の地形、海中の障害物などにより複雑に流れがぶつかり合っています。こういった小さな潮のぶつかり合いによる流れの変化があちこちで起こっています。特に複雑な地形の磯などでは、10mも移動すれば全く潮の流れが異なることも少なくありません。コマセを空打ちして沈降する様子をよく観察するなどして、現状を打開できるポイントを探しましょう。意外なほど近い場所に、全く異なった、釣りやすい潮流になっているところが必ずあるはずです。
タックルの選定は当日、現地の状況を見て決めるのが理想
永年通い詰め、水深、水中の地形などを熟知しているような場合ならいざ知らず、殆どの場合は、現地入りしてから自分の釣り座を決めるはずです。もともと狙っていたポイントに先客がいて入れなかったとか、狙っていたポイントよりもよさそうな場所があったなど、予定通りの場所で釣りが始められることの方が稀だと思います。そのため、事前に計画していたタックルがベストの選択ではない場合も当然出てきます。風が予想より強い場合、波が高い場合、はメインラインを細くしたり、浮力の高いウキにして仕掛けを重くしたり、コマセの配合や水分量を調整し、比重をやや高めに設定するなどの対策をしますし、ベタ凪であればウキの浮力をそぎ落とし、00号や0号など、食い込み時に抵抗を与えない、浮力の小さいウキを使い、ガン玉やジンタンを使わず、自然に刺し餌を流す軽量仕掛けに仕立てたりします。釣りをしている最中も、状況は刻一刻と変わります。風の強さや向き、潮位、潮の流れる向きやスピードなど、一瞬と言えども同じコンディションの時間はありません。
そんな中、漫然と同じ仕掛けを一日使い続けているようであれば、狙っているターゲットを釣り上げることは難しいでしょう。運よく良型の本命魚が釣れたからといって、その仕掛けのセッティングのままもう一匹、もう二匹と数を上げて行くことも難しいでしょう。「釣りは短気な人間ほど向いている」と言われることがあります。釣れない状況に我慢が出来ず、仕掛けをいじったり、ポイントを変えてみたり、エサのつけ方を変えてみたり、あれこれと現状打破のための工夫をするからだと言われます。何も工夫せず、同じ仕掛けで、同じポイントで気長にタコ粘りというやり方では釣果は上がって行きません。
あれこれ仕掛けをチューニングする余地を残しておくためにも、できるだけたくさんのフカセ釣り用タックル(最低限ウキ、道糸、ハリス、針)を準備し、状況に応じて変幻自在に仕掛けを作り直せるフットワークを身につけることが上達への一歩です。