磯フカセ釣りの竿の調子はどう選ぶ? 先調子、胴調子ロッドの特徴とおすすめの使い分けを解説!

作成:2023.10.10更新:2023.10.10

ロッドあれこれ。場所とターゲットと釣り方によって使い分けます。

釣り竿には、その性状を表すためのパラメーターが多数存在します。その中のひとつに「調子」というパラメーターがあります。ルアーフィッシングの世界では「テーパー」という方が通りが良いでしょうか? 竿に負荷がかかった時、竿のどの部分から曲がり始めるかという指標を「調子(テーパー)」という言葉で表します。この「調子」は、竿がどこから曲がり始めるかを示すと説明しましたが、それが何を意味するかというと、その曲がり始めるポイントこそが「竿にかかる負荷を受け止めるポイント」であるということです。このことは、釣りのシーンにおいては大変重要な意味を持ちます。

「調子」は、初心者には非常にわかりづらいかも知れません。しかし、竿の「調子」を知らずに適当にロッドを選んでしまうと、例えば、「アタリはたくさんあるのにフッキングがうまくいかない」、或いは「大物をかけたけど竿のパワーが負けて伸されてしまう」、など、予期せぬトラブルが起こりやすくなり、結果、高確率でキャッチ機会の損失につながってしまいます。

今回は磯竿の「調子」とそれぞれの調子の使い分けについて、わかりやすく解説して行きたいと思います。

「調子」の種類

ロッドの調子(テーパー)のイメージ図

「調子」を簡単に言うと、「竿の全長を10等分し、先端から何等分目のところから曲がり始めるか」ということです。例えば全長5mの竿があったとすると、先端から50cmの部分から曲がり始める竿は、「9:1」の調子といい、先端から1mの部分から曲がり始める竿は「8:2」の調子、先端から1.5mの部分から曲がり始める竿は「7:3」の調子といいます。この、曲がり方の違いで、おおよそ以下のような呼び方があります。

  • 極先調子(9.5:0.5~9:1 程度)
  • 先調子(8:2~7:3 程度)
  • 本調子(6:4 程度)
  • 胴調子(5:5 程度)
  • 元調子(5:5より手元側が曲がる調子)

これらには具体的にどのような違いがあるのでしょうか?

調子の違いによる特徴の違い

竿の調子の違いによる、特徴の違いについては、非常にざっくりと言ってしまえば、曲がり始めのポイントが穂先に近ければ近いほど、感度優先の竿であり、逆に手元に近ければ近いほど、パワー重視の竿ということになります。

穂先の細い所に曲がり始めのポイントがある場合は、非常に小さな力でも穂先が鋭く反応し、口の小さな魚の食い込みをアシストしてくれるとともに、アングラーへ小さなアタリを確実に伝えてくれる感度を持っています。ウキフカセ釣りの場合は、アタリを伝えるのはウキ、或いは道糸が担いますので、磯竿の調子は、主にフッキングの瞬間からあとに効いてきます。

極先調子

9:1或いは9.5:0.5など、極端な先調子の穂先を持つ竿の調子です。エクストラファストテーパーとも呼ばれます。カワハギ専用竿、フグ専用竿、マルイカ専用竿など、アタリが繊細で鋭く、フッキングが難しい魚種に限られる調子です。メタルトップという、金属のティップ(穂先)を使用し、より高感度に仕立てられたモデルが多いのが特徴です。先端部分しか曲がらないため、キャストが得意ではなく、主な使用シーンは船からバーチカルに仕掛けを落とす釣りになります。汎用性はほとんどないため、これらの釣りを極めたい場合は持っていると便利ですが、幅広くマルチに使える竿を求めるアングラーは敢えて必要はないかも知れません。

先調子

8:2或いは7:3などの調子を持った竿のことを言います。ファストテーパー(8:2)、レギュラーファストテーパー(7:3)とも呼ばれます。フカセ釣りのシーンにおいては、メジナ釣りを中心に、最も一般的に使用されている調子です。応答性が良く、一瞬のタイミングを逃さずフッキングさせやすい特徴を持っています。大物に対し、ガマンして踏ん張る釣りというより、スピード勝負で、手返しよく数を稼ぐようなやり取りに向いています。持ち重りしづらく、本調子や胴調子の竿と比較して長時間の釣りでも疲れにくいです。仕掛けのキャストやラインメンディングなどの操作性に優れているのも大きな特徴です。あらゆるタイプの釣り竿の中で、最も普及しているのがこの先調子といえます。ただし、想定外の大型魚がかかった時などは、竿を伸されてしまうことがあり、アングラーが高度な仕掛けのコントロールができないとバラシの危険性が高い竿ともいえます。

本調子

かつて、釣り竿の調子といえば、6:4調子、すなわち、この本調子が主流でした。レギュラーテーパーとも呼ばれます。特に、竹を材料とする、ヘラブナ釣り日本古来の和竿では、本調子を中心に好まれていました。本調子は、感度とパワーと扱いやすさのバランスに優れる、基本の調子といえます。しかしその後、素材の進化、製造技術の進化とともに、徐々に軽く、より応答性が高く、より汎用性があり扱いやすい先調子のヘラ竿の人気が高まり、各メーカー、本調子の竿は上級者向けの製品に特化するようになっており、全体としては減少傾向にあります。現在ではヘラ竿に限らず、アングラーの好みや技量に合わせて、調子を何段階にも細分化し自在に製造できるようになっており、アングラーの選択肢も格段に増えています。

胴調子

竿のほぼ中心付近、5:5前後の調子を持つ竿を胴調子といいます。スローテーパーとも呼ばれます。胴調子の竿は、先調子の竿などと比較すると、持ち重り感があり、キビキビと自在に仕掛けをコントロールすることは難しくなっています。そのため、早掛けをしなければならなかったり、ルアーの細かいアクションを要求される釣りには向かないのですが、パワーが大きい魚に対して、先調子などの竿ではが伸されてしまう場面では圧倒的な対応力を発揮します。竿の曲がり量が大きく、ファイト時に竿にかかる力を受け止めながら耐えるため、一度フッキングしたらフックオフしづらく、ハリス切れのリスクも軽減できるため、ファイトの手ごたえを存分に味わいながら、徐々に距離を詰めて行くクロダイを相手にするケースや、大型のヒラメなどスロージギングに向いています。

元調子

5:5よりも手元寄りから曲がる竿を元調子といいます。パラボリックスとも呼ばれます。ショア釣りのシーンでは元調子の竿はほとんど存在しません。手元に近い部分から大きく曲がるため、食い込み性とパワーに優れますが、船からマダイを狙う場合のロッドや、カジキマグロなどの超大物をトップウオーターのトローリングで狙うようなロッドに限られます。

地磯フカセ釣りにおける竿の調子選択について

グレ竿はレスポンス重視の先調子、チヌ竿は粘り強い胴調子が多い。写真の際は先調子。

では、ここからは実際に地磯でフカセ釣りを行う際の竿の調子選択について説明したいと思います。まず、ターゲット魚種が明確に決まっている場合はその魚種に適した専用ロッド(グレ竿やチヌ竿など、魚種が謳われている竿)を使用しましょう。現地入りしてから状況に応じて決めるという場合は万能の磯竿を使用すればよいでしょう。

メジナ狙いの場合

寒グレ、寒ブリ、寒ボラは冬の旨い魚の代表格

メジナは、体格当たりのパワーが非常に強く、フカセ釣りのメインターゲットといえる魚種ですが、メジナは【浮かせて釣る】という特徴があります。どういうことかというと、メジナの場合は、比重の軽い、拡散性重視のコマセを打ち、潮に乗せてゆっくり流します。活性が高いときは、メジナはコマセが自分のいる場所まで沈んでくるまで待つことはせず、一気に浮き上がって来て餌を捕食し、その後一気に自分が元々居た根に帰ろうとします。この性質はすなわち、針掛かりした後、メジナが下へ下へと走り、根に潜る行動をとることを意味します。

根に潜られてしまうと、もともと道糸もハリスも非常に細いものを使っているフカセ仕掛けはひとたまりもなく、強引に引き出そうとすればたちまち岩に擦れてラインブレイクしてしまいます。そのため、メジナを狙う場合は、この「根に潜られる」ことを許さないよう、イニシアチブを取り続けなければなりません。このため、メジナ狙いの場合は必ず先調子の磯竿、もしくはグレ竿を使用します。先調子の竿は、#2(ティップ(穂先)の次の節(ベリーといいます))以降が硬く曲がりづらく(硬調)、腰が強い構造となっており、魚に根に潜られにくいようになっています。

しかし、それでもパワーが強く、竿が耐えられず真っ直ぐに伸されてしまうことがあります。そうなると竿では制御ができなくなりますので、一時的にドラグを緩めてラインを出し、その隙に竿を立てて体勢を立て直さなければなりません。この、ファイト中にドラグを緩めてラインを出すという行為は大変危険で、やり方が悪いと一気にラインが出てしまい収拾がつかなくなったり、最悪は怪我をする危険性もあります。そういうリスクを解消してくれるのが「レバーブレーキ式スピニングリール」です。

ファイト中はレバーを握りっぱなしにして、ラインの放出はドラグに行わせます。しかし、相手のパワーに負けて竿を伸されてしまった時に、握っていたレバーを一瞬離してハンドルを逆回転させ(上位モデルはローターが逆転してもハンドルは回らず、ラインだけが放出される)、ラインスラックを出し、素早く竿を立てて体勢を立てなおします。大型のメジナを狙いたい場合は、このレバーブレーキ式リールは必須アイテムと言えるでしょう。

クロダイ狙いの場合

江ノ島表磯で釣ったクロダイ

メジナと並んで地磯フカセ釣りの人気ターゲットであるクロダイは、メジナとは全く釣り方が異なります。クロダイは磯のみならず、湾奥の漁港やヨットハーバーなどの止水域や河口などの汽水域、堤防やサーフなど、ありとあらゆる場所に棲息し、動物性、植物性問わずなんでも食べる雑食性の魚です。橋脚や堤防のヘチに着いた貝やカニを食べるときは背ビレが水面から飛び出すほど浅い場所まで浮いてきて、夢中になって捕食します。

磯でのフカセ釣りのシーンにおいては、季節を問わずボトム狙いが基本となります。比重が重い、沈降性重視のコマセを打ち、ツケ餌もハリスにガン玉を打ち、素早くボトムへ送り込んで食わせます。クロダイはフッキングが決まった後も、根に潜るような行動はとらず、針を外そうとして首を激しく振り抵抗します。このため、竿は十分に曲がる、胴調子のチヌ竿を使い、バット(リールシートがついている「グリップ部」のひとつ前の部分)のパワーで踏ん張り、ベリー、ティップ部を十分に曲げて、クロダイの抵抗のパワーを吸収しながら持久戦に持ち込みます。胴調子の竿はあまり伸されるようなことはありません。また、針を外そうと暴れるクロダイのパワーにも、竿を十分立てた状態で竿を大きく曲げながら力をいなすことができ、落ち着いてクロダイの体力が奪われ、おとなしくなるまで、ファイトを堪能することができます。

ただ、前述したとおり、胴調子の竿はどうしても持ち重り感があり、同じ重量でも先調子の竿と比較すると疲れやすいという欠点があるのも事実です。それでも、クロダイとのファイトを存分に味わいたいなら、胴調子のチヌ専用竿を使った方が醍醐味を満喫でき、ランディングの成功率も高まります。

グレ竿でクロダイ釣りは△、チヌ竿でメジナ釣りは✕

ここまで説明してきた通り、メジナは根に潜ろうとする習性があります。根に潜られてしまうと、再び根から出てきてもらわないと勝負になりません。そのため、メジナはフッキングの後、絶対に根に行かせてはなりません。そのため、メジナ釣りに胴調子のよく曲がる竿は使えないと思った方がいいでしょう。逆に、先調子のグレ竿でクロダイを釣ることは、根に潜られることは比較的考えなくてもいいので、問題ないと言えます。

ただし、先調子の竿に大型のクロダイがかかった時は、頭を大きく振る抵抗を受けた際、パワーを吸収しきれず、フックオフやラインブレイクの危険性が胴調子の竿を使った時よりも高くなることは頭に入れておきましょう。どうしても先調子の磯竿しかなくてクロダイを釣りたいときは、道糸、ハリスを、チヌ竿で釣りを行うときよりもひとつ号数を上げておくなどの工夫が必要でしょう。

こうした、針掛かりした後根の潜ろうとする魚は、メジナ以外にも、根魚全般に言えます。ソイ類、ハタ類、アイナメなども同じような傾向がありますので、これらの魚を狙う場合も先調子の竿を使い、素早く勝負をつけることをおすすめします。

操作性、瞬発力なら先調子、釣り味重視、持久戦なら胴調子!

江ノ島表磯は全体的に足場が低いため、満潮時は水没する箇所が多いので注意。潮位と潮時は必ず頭に入れてから入磯するべき

いかがでしたでしょうか? フカセ釣りにおける竿の調子について説明してきましたが、せいぜい30cm程度のメジナや40㎝程度クロダイまでなら、あまりナーバスになる必要はなく、先調子の万能磯竿1.5号を一本持っていればどちらにも対応はできるでしょう。しかし、それ以上のサイズを狙う場合は、竿の調子による釣果の差は如実に表れてくるはずです。もしこれからフカセ釣りデビューを考えている方がいらっしゃれば、最初は万能磯竿1.5号(長さは5m~5.3m)をおすすめします。そして、フカセ釣りになれたところで、先調子のグレ竿1号、1.25号、1.5号、胴調子のチヌ竿0.6号、1号、1.25号など、徐々に揃えて行き、フカセ釣りの泥沼にどっぷりハマりましょう!

この記事を書いた人

ショアおやじのプロフィール写真

初心者歴40余年!
ショアおやじ

 メジナ、クロダイ、アイナメ、カサゴ、メバル、カワハギ、シロギス、イシモチ、カレイ、ハゼ…ベラ、フグ、ヒイラギw、フカセ釣り、投げ釣り、穴釣り、江ノ島周辺(湘南大堤防、表磯、裏磯、片瀬漁港)、福浦岸壁、大磯サーフ、逗子・葉山界隈、城ヶ島(神奈川県)


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