シマノのミドルクラスのフルラインアップ機、19ストラディックC3000HGは基本性能を愚直に磨き続け、フラッグシップ機に迫る大進化を遂げた!
シマノのミドルクラスのスピニングリール、ストラディックシリーズは、実勢価格で2万円台前半の価格帯となっています。一般的なレジャー釣り師にとっては、このくらいの価格帯のモデルがハイエンドクラスになるのではないでしょうか?釣り師の側も、1万円のリールを買うときにはあまりわがまま言わずに使うのに、2万円台のリールを買うとなれば、色々と要求事項が増えるかもしれません。そんな微妙な価格帯のリールは、性能とコストの落としどころが難しいのかも知れませんが、ストラディックは見事な解を出してくれました。一体どんなリールなのでしょうか?
19 ストラディックはシマノの主要テクノロジーをほぼ網羅した秀作!
シマノ・ストラディックは19モデルにモデルチェンジをした際、大幅に仕様が変わりました。前モデル(15ストラディック)と比較するとまるで別のリールになったと言っても過言ではないほどの劇的な進化を遂げたモデルとして、ファンの間ではいろんな意味で物議を醸しました。「全部盛り」「ステラに近づいた」「ここまでやってしまって大丈夫か?」などと言われました。具体的な変更点としては、これまでは上位機種にしか採用されていなかった「マイクロモジュールギアⅡ」「サイレントドライブ」「AR-C ロングストロークスプール」「新HAGANEギア」「HAGANE Body」「X-プロテクト」が新たに19モデルで追加され、巻き心地、剛性、飛距離、軽さのすべてが15モデルより進化しました。
それぞれの機構について・・・マイクロモジュールギアⅡ、サイレントドライブについて
19ストラディックで新たに採用されたテクノロジーは、これまではステラやヴァンキッシュといったハイエンドクラスにでしか採用されていなかった機構がほとんどです。「マイクロモジュールギアⅡ」は、モジュール化されたギアひとつひとつの歯面形状と噛み合わせを見直し、バックラッシ音、噛み合わせ音などの異音や僅かなガタなどのノイズを徹底的に軽減した機構です。この絶妙なバランスの維持には適切なメンテナンス(グリスアップ)が必須です。
「サイレントドライブ」も、マイクロモジュールギアⅡに似た機構ではありますが、ステラ、ヴァンキッシュ、ツインパワー、ストラディックだけに採用された機構で、ドライブギア、ウォームギア、ウォームシャフトピン、ウォームシャフトギアなど、ギア部品自体の精度を見直すとともに、マウント部の軸受構造、レイアウト上のガタ、隙間などを徹底的に排除し、異次元の静粛性と滑らかな巻き心地を実現する機構です。個人的には、この「マイクロモジュールギアⅡ」と「サイレントドライブ」、後述する「HAGANE Body」が備わっていれば、あとは何にもいらないと言えるくらい重要な機構だと思います。
それぞれの機構について・・・AR-C ロングストロークスプール、新HAGANEギア、HAGANE Bodyについて
AR-C ロングストロークスプールは、従来品のスプールよりも、ストロークが2.5ミリ長い17ミリ長くなっています。これはステラ、ヴァンキッシュに採用されているスプールと同形状のもので、ラインが出る際の整流効果を付与する特殊なスプールエッジ形状が特徴です。メーカーによると、15ストラディック比で約4%飛距離が向上するそうです。「新HAGANEギア」は、金属加工の老舗、世界のシマノが誇る孤高の技術「冷間鍛造」により、一発で成形後、切削加工を一切しないで作られたギアのことです。切削が入っていないということは、メタルフロー(金属分子の整列)が強制的に切られることなく、製品の強度が理論的には最強の状態になっていることを表します。これはシマノだけに許された金属加工技術です。
そして、その冷間鍛造技術て作られたボディを持つものが「HAGANE Body」です。HAGANEギアとHAGANE Bodyは必ず対で使わるべきです。いくら剛性が高く、精密な加工がされたギアでも、それを装着するブラケットが軟弱では何の意味もありません。シマノのエントリークラスのリールには、せっかくHAGANEギアが使われているのに、それを受け止めるボディがHAGANE Bodyでないものが見受けられます。ギアだけでもアピールポイントにはなるのでしょうが、肝心のボディがHAGANE Bodyでなければ、残念ながら片手落ちです。
X-プロテクトは、ライバルにどうやって追いつくか、良く考えられたアナログ的なテクノロジー!
賢明な方はもうお分かりですね。シマノは「MAG SEALED」が使えないのです。ダイワの特許技術である「MAG SHEALED」は、磁性流体をシールド材料に使うという、ウルトラC級の発想をカタチにしたテクノロジーです。磁性流体(ダイワ曰くマグオイル)をシールド材料に使うためには、当然シールする部分には磁石が必要です。磁力でマグオイルを隙間にとどめておくのです。この「MAG SEALED」は、CMの打ち方が見事でした。消費者への訴求力は爆発的でした。しかし、MAG SEALEDにも死角がありました。MAGオイルの流出、重量増という欠点があります。
これに対抗すべく、シマノが出した答えは、アナログながら非常に効果の高い「X-プロテクト」というシールド技術でした。この技術、派手さはないものの、非接触防水の技術としては、非常に優れた機構なんです。撥水コートが施されたクランク状のトラップ(ラビリンス構造)により、水が物理的に中まで行かないように巧みに加工されています。これはパーツの成形精度、組立精度の高さによりなせる技術です。ラインローラー部とローラークラッチ部に使用されています。
ストラディック C3000HGのメインフィールドは?
19ストラディック C3000HGは、フィールド不問で汎用的に使えるバーサタイルリールですが、一番活躍する場面は、ピュアウォーターではショアからのビッグバスゲーム、ソルトウォーターではショアシーバス、ライトショアジギングだと言えます。
ストラディックは、ステラ、ツインパワー、アルテグラの4モデルで、「コアソリッドシリーズ」に分類されています。現在のシマノの主流である設計思想「クイックレスポンスシリーズ」が軽さに重点を置き、接近戦でのリールコントロールの正確さ、低慣性ローターを採用し、ハンドル回転に対するローターのレスポンスの早さを追求しているのに対し、コアソリッドシリーズはキャストとリトリーブの安定性、アングラーの負荷軽減を目的にしたグループです。ローターは高慣性モーメントを発生するものを使い、アングラーのパワーをアシストし、遠距離の相手とタフで力強いやり取りをするのに向いています。C3000HGは、2500番相当のボディに3000番のスプールをつけたモデルであるため、他の3000番のリールと比べるとかなりコンパクトに見え、華奢な印象を持たれるかも知れませんが、ストラディック C3000HGは、100m先のシーバスや青物たちとの、パワフルかつ正確なファイトが可能なモデルです。
※参考記事:シマノの「コアソリッド」と「クイックレスポンス」の違いを解説シマノの主要テクノロジーがほぼ網羅された、コスパ最強のミドルクラス機。はっきり言って買いです!
19ストラディックは、3000番以上の機種には、ドラグワッシャーにカーボンマトリックスが使われています。なめらかな滑り出しと耐久性を兼ね備えたドラグ機構になっています。また、折り畳み機構のないねじ込み式ハンドルがついており、ハンドルのガタも全くありません。それにしても、なぜハンドルの折り畳み機構なんて存在するのでしょうか? 収納性のためだけに、不要なガタをわざわざ誘発するハンドルなど必要ないと思うのですが。
以上、19ストラディックについて色々と書かせていただきましたが、このリールは正直2万円程度で買えるモノとしてはかなりハイレベルのリールだと思います。もちろん、ステラ、ヴァンキッシュ、ツインパワーといった上位機種と比べると、やはりフィーリングの違いはわかってしまいますが、基本性能の部分はそれら上位機種とほぼ同等と言えるでしょう。