釣りにおけるハリスの役割とは? ハリス・道糸・ロッドの選択が決まれば、タックルは強くなる!

作成:2023.11.16更新:2023.11.16

ナイロン道糸、フロロハリスあれこれ

釣りをするには、最低限竿、道糸、針があれば成立します。しかし、現代の釣りにおいては、道糸に直に針を結ぶ釣りはほとんど存在しません。必ずハリスを介して針を結んでいます。それはどうしてなのでしょうか? 理由が分かれば、最適な太さのハリスを、どれくらいの長さ結べばよいのか、自ずとわかってくるはずです。それが分かっていない状態で、「ネットに書いてあったから」と、道糸の号数、ハリスの号数、ハリスの長さを決めていませんか?

今回は、意外な盲点である「ハリス」について、ハリスの存在意義や、状況に応じた、さらにタックルのトータルバランスを考えた場合の太さ、長さのチョイスはどうすれば良いのか考えてみたいと思います。

ハリスは何のためにあるのか?

ハリスは釣りのタックルにおいて、最もこだわるべきアイテムのひとつです。

そもそも、道糸に針を直結してはいけないのでしょうか? もちろんダメではありません。「魚を釣る」という目的のためだけであれば、竿先に道糸がついていて、その先端に針を結べば、足元にいる小魚くらいは釣れるでしょう。しかし、一定以上の距離、一定以上の深さに餌のついた針を運ぼうと思ったら、竿先に道糸直付けではダメで、リールがどうしても必要になるでしょう。

リールを使うことで、延べ竿ではアプローチできない距離、水深を自在に探れるようになります。しかし、長くなった道糸に直接針を結ぶと、「高切れ」の危険性が高まります。

通常、針に近い部分は魚の歯で傷つけられたり、岩や構造物などにこすれて傷がつきやすいため、水中でラインブレイクは針に比較的近い場所で起こることが多いのですが、道糸の上の方で傷ついていた場合は、根掛かりを外そうと思って大きく竿を煽った時など、道糸の直線強度を超える大きな力がラインにかかった場合は、仕掛けの上端よりさらに上の部分で道糸が切れる、「高切れ」という現象が起こります。高切れは、すなわち仕掛けの全損を意味します。ウキフカセ仕掛けの場合、高切れは一発で2,000円~3,000程度の損害となります。これが一日2回も3回も起こってはたまりません。そのため、不幸にも仕掛けが切れる場合は、できるだけ針に近い部分で起こってもらわなくてはなりません。こんな時は、道糸の先に、道糸の強度よりやや劣るハリスを結ぶことによって、根掛かりなどの時、ハリスの部分で仕掛けが切れてくれれば、被害を最小限にとどめることができます。

もし道糸にPEラインを使っている場合は、そもそも針を結ぶことができません。PEラインを道糸に使う場合は、必ず「ショックリーダー」として、フロロカーボンラインを1ヒロ程度結び、その先に針やルアーを取り付けます。これにより、PEラインの根ズレを防止し、高切れのリスクを低減したり、魚をフッキングする際のショックを吸収したり、ハリスと同じ役目を果たします。

ハリスのセッティングについて

現代の釣りにおいて、ハリスは必須アイテムであることはお分かりいただけたのではないかと思います。では、実際に自分がやろうとしている釣りに際して、ハリスの号数、長さはどうやって選んでいけば良いのでしょうか? ここでは、ハリスのセッティングの方法について説明して行きます。

自分がやりたい釣りを明確にイメージする

小潮で潮が動かない激渋の状況で何とかあげたクロダイ。

ハリスの設定を決める前に、明確にしておかなければならないことが実はたくさんあります。何なら、ハリスの号数や長さを決めるのは一番最後と言っても過言ではありません。「一番最後」とは、「現場で決める」という意味です。ターゲットの魚種、現場の地形、狙うポイントの水深・距離、風の強さ、波の高さ、潮の流れるスピード、フッキングからランディングまでのイメージなどを見極め、さらに、自分が使おうと思っているロッドの性格(調子/硬さ/長さなど)と、リールに巻いてある道糸の号数を照らし合わせ、タックルのトータルバランスを考えて判断するということです。

このように書くととっても難しいように見えるかもしれませんが、ある程度同じ釣り方を集中して行えば、1年もしないで感覚的にタックルのチョイスができるようになります。これはホントです。お財布との兼ね合いもあるので、ハリスや針などのパーツを何十種類も取りそろえ、どんな状況でも変幻自在に対応することは不可能ですので、同じ釣り方をある程度の回数をこなし、パーツのバリエーションを絞れるようになっておくと良いでしょう。

同じ場所で、同じ方法で10回も釣りをすれば、「この釣りだったら、針は〇〇の何号~何号まで、ハリスは〇の何号~何号(何ポンド)まで持っていれば何とかなるな」ということが分かってきます。

整地された波止で、根がきつくない場所で釣りを行う場合は、ハリスの長さは1mもあれば問題ない。

例えば、上の写真のような、大型の船舶が多数出入りする整地された波止で釣りをする場合は、海底は船道の真下が抉られて深くなっていることが多く、船舶の通行の障害になるような根はほとんど存在しないので、ハリスの号数や長さにはあまり神経を使わなくても大丈夫です。

例えば投げ釣りでカレイを狙う場合は、フロロカーボン3号など太目のハリスを使い、座布団サイズの大物の重量に耐えられるようにしておきましょう。エサを大きくつけ、海底でゆらゆら動かしてアピールできるよう、ハリスの長さは30cm程度取ります。

対してシロギス狙いの場合は、感度と食い込み性優先で、ハリスは0.6号や0.8号と言った細いものを使います。ハリスの長さは手返しの良さを重視し、長くは取りません。10cmもあれば充分です。

根がきつい地磯でのフカセ釣りは、根ズレ対策はモチロンのこと、ツケ餌のコントロールのためにハリスを長く取る。最低3mは必要。

地磯でフカセ釣りをする場合は、ハリスは長く取ります。最低でも3m、場合によっては5m〜10m程度取ることもあります。フカセ釣りはコマセを撒き、撒かれたコマセが潮の流れに乗ってゆっくり沈みながら広がって行きます。その広がりの中に付け餌を同期させてやらなければならないため、なるべく細くて長いハリスで、コマセと同じように海中を流れる演出しなければなりません。

ハリスの選びの基本

黒鯛をフカセで狙う時に使用するフロロカーボンハリスの1.5号。最低でも1.5m以上、3m程度は欲しい。

道糸やハリスは、太ければバワーがあり、大型魚にも対峙できますが、太い仕掛けは魚に見切られやすく、水中での仕掛けのコントロールもやりづらくなります。逆に、細い仕掛けは魚に気づかれにくく、水中での仕掛けの動き方も自然に見せることができます。その代わり、瞬間的に大きな力がかかった時や、根ズレが起きた時などはたやすく切れてしまいます。しかし、ハリスの長さを長く取ることで、ハリスにかかる力を分散させることができます。また、柔らかく長いロッドを使うことで、仕掛け全体にかかる力をロッドが大きく曲がることで受け止め、仕掛け全体の引っ張り強度を高めることが可能となります。

号数と直線強度を頭に入れる

フロロカーボンライン シーガー フロロマイスター 12lb

ハリス単体の直線強度はどれくらいか、ざっくりと頭に入れておくことは大切です。号数を示す数字が大きくなればより太く、強いラインであることは誰でもわかるでしょう。ただその号数が、「何kgくらいの負荷まで耐えられるのか?」を知らないと、無駄に太いラインを使ってしまい、感度が悪く、アタリが取れない仕掛けになっているかもしれません。

材質ごとに、さらに付加機能(表面コーティングなど、生産時に付加される機能のこと)により、同じ号数でも直線強度が若干異なりますが、ざっくりと以下の通りと覚えておきましょう。

ナイロンハリス、フロロカーボンハリスの場合、1号=約4lb(ポンド)です。1lb=約0.45kgです(ちなみにPEラインはこの約4倍の直線強度がありますすなわちPE1号=16lb=7.2kgの直線強度)。

つまり、1.5号のハリスなら、4×1.5×0.45=約2.7kgの直線強度が、2号のハリスなら約3.6kgの直線強度があるということです。

ここで気をつけたいのが「直線強度」というもの。これは、静的荷重(直線方向に引っ張った時に切れてしまう荷重の大きさ)なので、水中で魚が激しく暴れる力の大きさではないということです。実際は、ラインに傷がついていたり、道糸や針との結束が甘かったりして、直線強度通りの力に必ず耐えられるというものではないことを肝に銘じておく必要があります。

釣りをしている間、何度も何度も道糸やハリス、針の結束部を指で触り、傷や縮れなどをくまなくチェックする必要があるのです。

ハリスと道糸とロッドの関係性

フカセ釣りの場合、コマセと付け餌の同調をさせ、魚に自然を演出をするため、ハリスは細いものを長く取ると言いましたが、そうなると、往々にして魚のパワーに対して、直線強度が足りないハリスを使わざるを得ないと言うことになります。

そのハリスのパワー不足を補うのが、「ハリス」、「道糸」、「ロッド」のトータルバランスを整えることによる「シナジー効果」です。どういうことか言うと、ロッドの曲がりによる「ショックアブソーバー効果」を発揮させることができるよう、タックルバランスを考えた仕掛けを構築することです。

ロッドの調子によって力の吸収力が異なる

ロッドの調子(テーパー)のイメージ図

先調子のロッドは、ロッドの先端から2:8、3:7程度の部分から曲がる竿で、反応の良さ、取り回しの楽さ、持ち重りしない重量バランスが特徴で、ジャンルを問わず主流のロッドですが、パワーの吸収力の点では胴調子のロッドに劣ります。そのため、先調子のロッドを使う場合は、ロッドのバワーを利用し、魚を短時間で引き抜くファイトスタイルとなります。

この場合、道糸、ハリスともにしっかりと強度を保てる設定がおすすめです。道糸とハリスの号数は同じ若しくはハリスを一段階だけ落とすくらいが理想です。先調子のロッドの場合、仕掛けを細くしすぎるとロッドがバワーを吸収しきれずにラインブレイクしやすくなるので注意が必要です。先調子のロッドを使うフカセ釣りの場合は、道糸がナイロン2号ならハリスは1.75号もしくは1.5号くらいを使うと良いでしょう。

対して、ロッドの先端から4:6程度の場所から曲がる本調子、5:5程度の場所から曲がる胴調子のロッドは、ロッドの曲がり量が大きいため、先調子のロッドよりもパワーを受け止める能力が高いです。パワーを受け止めて、時間をかけて魚の体力を奪い、大人しくなったところで仕掛けを巻き上げてランディングに持ち込むファイトスタイルです。この場合、ハリスはかなり攻めた設定にするのが面白いでしょう。道糸ナイロン2号→1.75号に落とし、ハリスは1.2号あるいは1号と、細い組み合わせにしても、ロッドが十分曲がることでラインブレイクを起こすことなく長期戦に持ち込むことができます。ただし、本調子、胴調子のロッドを使う場合、強引なスピード勝負は禁物です。

いずれの場合にしても、ロッドのスペック表に記載されている、「適合ハリス」のサイズの範囲内で使用することが大前提となります。この「適合ハリス」に示された号数のハリスを使うことで、ロッドがハリス、道糸にかかる力を上手くいなせる曲がり方をしてくれます。適合ハリスの記載より太いハリスを使うと、ハリスは切れずに頑張ってくれるものの、ロッドが魚のパワーに負けてしまい、どんどん穂先の位置が下がって行き、最終的にはロッドが一本棒状に「伸された」状態になりやすくなります。こうなると、レバーブレーキ式のスピニングリールを使っていない場合、体勢を立て直すことが非常に難しくなります。

逆に適合ハリスより細いハリスを使うと、ロッドが十分に曲って魚のパワーを吸収してくれても一向に魚を浮き上がらせることはできず、最終的にラインブレイクの憂き目を見ることになりやすいでしょう。いずれにしても、ロッドに記載されている適合ハリス号数は必ず守るよう心がけたいです。

ハリスのスペックだけに拘らず、タックルのトータルバランスを考えよう!

磯釣りのタックルは繊細。ロッドの曲がる力を借りて大物に対峙するダイナミックな釣り。

いかがでしたでしょうか? 針やハリスのサイズにこだわりを持っている人はそれなりに多いのではないかと思いますが、本記事の中で何度も書いている通り、最も重要なのは、タックルのトータルバランスです。ロッドだけが強くても、道糸だけが強くても、ハリスだけが強くても、しなやかで粘りのある仕掛けは構築出来ません。

タックルのトータルバランスを考える上で、最初に考えなければならないのはロッドのスペックです。すなわち、ロッドの「調子」、「長さ」「硬さ(柔らかさ)」、「適合ハリスサイズ」、「錘負荷」などです。今日使うロッドが決まったら、そのロッドの潜在力を十分に引き出せるよう、リール、道糸、ハリスの選定を行うことが、アングラーに課せられたミッションだと思ってください。

そうして熟考された末に選ばれて組まれたタックルは、それぞれが組み合わさってシナジー効果を生み出し、各パーツ単品のカタログスペックよりもはるかに大きなパワーを発揮してくれます。極細タックルで思わぬ大物をぶっこ抜くなんていう、最高に気持ちの良いランディングを遂げることも夢ではないのです!

この記事を書いた人

ショアおやじのプロフィール写真

初心者歴40余年!
ショアおやじ

 メジナ、クロダイ、アイナメ、カサゴ、メバル、カワハギ、シロギス、イシモチ、カレイ、ハゼ…ベラ、フグ、ヒイラギw、フカセ釣り、投げ釣り、穴釣り、江ノ島周辺(湘南大堤防、表磯、裏磯、片瀬漁港)、福浦岸壁、大磯サーフ、逗子・葉山界隈、城ヶ島(神奈川県)


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