完全フカセってなんだ?スレた魚や大物も狙える完全フカセ釣りのやり方を解説!
作成:2022.01.25更新:2022.01.25
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完全フカセ釣りって聞いたことありますか? 文字通り「完全なフカセ釣り」なのですが、どういうことでしょうか? わかりやすく言えば、「エサだけが海中を漂っている状態を限りなく再現する釣り」です。要するに、太古の昔、採集狩漁民が行っていたであろう釣り方です。エサ、針、ラインだけの仕掛けを海に流し、エサ(コマセ)だけを投入したときに、エサが自然に潮に乗って漂いながらゆっくり沈んで行き、ターゲットの魚がいるレンジに届いて魚が自然に食いつくという一連の動きを再現する釣りです。最も魚に違和感を与えない釣りであり、スレた魚や老成魚など、老獪で釣りにくい大物が釣れる可能性が高いのが完全フカセ釣りと言われています。実際にエサが自然に漂いながら沈んで行く状態を再現するということは容易ではありませんが、条件がハマった時は型もサイズも普段より一回りも二回りも上がるメソッドです。
磯釣りにおける、「コマセと刺し餌の同期」も、完全フカセ釣りと同じ理論の釣りですが、磯釣りではウキを使った「ウキフカセ釣り」であり、厳密な意味での完全フカセ釣りとは異なります。しかし、ウキ止めをつけず、全層を流すウキフカセ釣りのことを完全フカセ釣りと呼ぶケースもあります。考え方や釣り方の基本は同じものと考えて差し支えありません。
完全フカセ釣りはどこで何を狙う釣りか?
完全フカセ釣りは実はフィールドを選ばずどこでもできます。ただし、水が全く動いていない止水域では難しいと思います。最も盛んに行われるのはオフショアです。ボート上などからコマセを撒き、同時に仕掛けを落とし、潮の流れに自然に乗せ、ゆっくり沈みながらターゲットのいるレンジまでエサを送り届けます。主なターゲットは表層から水深20m程度までのレンジにいる、ブリやヒラマサ、カツオなどの大型青物だったり、マダイだったり、イサキだったり、スズキだったり、さまざまなターゲットを狙うことができます。ただしあまり深い場所へアプローチするのは難しいでしょう。
地磯でも堤防でも、ある程度水深があり(10m~15m程度あると望ましい)、潮が流れている場所であれば、完全フカセ釣りは可能です。ただし、堤防はともかく、地磯ではラインがどこを流れているのかを目で追うことが難しいため、ウキをつけることが多いです。主なターゲットはメジナ、クロダイ、スズキ、メバル、アジなど多彩です。
完全フカセ釣りのタックル【オフショア】
完全フカセ釣りのメインターゲットである、マダイを完全フカセ釣りで狙う場合のタックルについて説明します。
ロッド
オフショアで完全フカセで釣りをする際のロッドは、マダイやイサキ狙いであれば胴調子の柔らか目のマダイロッドを、青物狙いであればよりパワーのある先調子のジギングロッドを使用します。長さは3m前後を使います。
リール
完全フカセ釣りは、仕掛けを落としたら潮に乗せてラインを手で引き出しながら流していきます。そのため、ラインに巻き癖がついてしまうとうまく仕掛けが出ていかなくなるため、リールは両軸受けリールを使います。電動リールでも手動リールでも構いませんが、ラインの放出量が分かるカウンターが付いているものが必要です。
ライン
完全フカセ釣りのメインラインは、基本的には比重の高いフロロカーボンラインを使います。マダイ狙いの場合はフロロカーボンラインの5号程度で充分に戦えます。青物狙いの場合はフロロカーボンライン8号前後、ブリやヒラマサ狙いの場合は10号以上の太いラインが必要です。完全フカセは、コマセと付け餌を潮に乗せて流しながら沈めて行きますので、300m程度の長さが必要です。
ハリス・針
完全フカセ釣りに使用するハリスは、マダイ狙いの場合、フロロカーボンラインの5号前後、青物狙いの場合は7号以上を使います。針はマダイ狙いの場合はマダイ針の12号前後、青物狙いの場合はヒラマサ針の12号前後を使います。
完全フカセ釣り・オフショアでの釣り方
それでは、オフショアでの完全フカセ釣りのやり方について説明します。マダイ狙いの場合も青物狙いの場合も基本的なやり方は同じです。
潮上にスタンバイする
船上から海面をよく観察し、潮の流れを観察します。よくわからない場合は撒き餌を少し巻いて流れて行く方向を観察しても良いでしょう。そして、潮の流れを確認出来たら、自分の釣り座が潮上に当たる位置にスタンバイします。潮上にスタンバイできないと、完全フカセ釣りは難しい(というよりほぼ不可能)と思っておいてください。潮の流れにラインを乗せ、仕掛けと撒き餌を一緒に潮に引っ張ってもらいながら沈めて行かなければならないので、常に潮上にいることができないと釣りになりません。
撒き餌を撒く
潮上から撒き餌を打ちます。撒き餌はオキアミが良いでしょう。少しずつ、絶え間なく撒き、オキアミがどちらの方向へ、どれくらいのスピードで流れていくのか、そして、沈下スピードはどうかまでじっくり観察します。この撒き餌の動きとほぼ同じ挙動を、刺し餌に再現してやるのが、完全フカセ釣りの真骨頂であり、この仕掛けと撒き餌の同調が、釣れるための絶対条件です。注意点としては、必ず仕掛けを投入する前に撒き餌を撒くことです。
仕掛けを投入する
リールは両軸受けの電動リールを使用します。クラッチをフリーの状態にして、先に撒いた撒き餌の中に仕掛けを投入します。そして、手でラインを引き出して少しずつ送り出します。そして、撒き餌が完全に見えなくなる前に追加の撒き餌を仕掛けのライン上に撒きます。ラインの沈み方を見て、スプールが止まってしまうようであれば、さらに手で引き出し、ラインを常に流し続けます。そして、想定したタナまで送り込んでもアタリがなければ仕掛けを一旦回収し、再度撒き餌を撒いて仕掛けを投入します。基本はこの動作の繰り返しになります。もし、ラインが沈んで行かず、撒き餌との同調が出来ていないようであれば、ガン玉などを打って沈みやすくしたり、逆に仕掛けの沈み方が早すぎるようであれば、ラインの号数を落とすなどの調整を行います。
アタリの出方とアワセ方
完全フカセ釣りには基本ウキがありません。また、脈釣りのように、ラインをピンと張ってアタリを待つこともありません。そのため、アタリはラインの動きからとります。マダイの場合も青物の場合も、食いついたらラインが一気に走りますので、ラインがスーッと動き始めたら素早くクラッチを入れてバックラッシュを防止しましょう。クラッチを切ったままラインを出し続けているときに、魚が食いつくとスプールが一気に回りだします。クラッチが切れたままだと高確率でバックラッシュを起こしますので、よそ見は厳禁です。アワせる際は、ロッドを立て気味にして、ラインがピンと張ってくるまでは手で軽くハンドルを回して、ラインスラックを取ってからロッドをあおってフッキングさせます。ラインスラックが残った状態でアワセを入れてもフッキングが完全にできず、バラシの原因になってしまいます。
完全フカセ釣りのタックル【ショア】
次に、堤防や磯で完全フカセ釣りを行い、メジナやクロダイを狙う際のタックルについて説明いたします。こちらは厳密な意味での完全フカセ釣りではありませんが、視認のためのウキを使う以外はオフショアの完全フカセ釣りと理論も釣り方もほぼ同じですので、敢えて「ショアからの完全フカセ釣り」として説明します。タックルの基本は地磯でのウキフカセ釣りに準じます。
ロッド
メジナ狙いの時は先調子のグレ竿1号~1.5号、もしくは磯竿1.5号~2号を、クロダイ狙いの場合は胴調子のチヌ竿1号~1.5号、もしくは磯竿1号~2号を使用します。長さは5.4m前後のものを使います。
リール
完全フカセ釣りのリールも通常のフカセ釣りと同様、2000番~2500番のレバーブレーキ式リールを使用するのが望ましいですが、なければドラグ性能の良い汎用スピニングリールでも40cm程度の魚までであれば対応出来るでしょう。汎用スピニングリールを使う場合はドラグの性能にこだわり、かつ、ドラグのセッティングをきちんと行っておくことが大前提です。大物がかかる可能性がある完全フカセ釣りでは、ロッドが伸されてしまったときに瞬時に体勢を立て直すことができるレバーブレーキ式スピニングリールの方が有利です。
ライン
堤防あるいは地磯で行う完全フカセ釣りの場合は、何百mもラインを出すことはないので、ナイロンラインのしなやかさ、ショック吸収力を優先しましょう。ナイロンラインの2号~3号を使用します。ナイロンラインはスピニングリールに巻くと螺旋状の巻き癖が付きやすいので、耐久性はあまりよくありませんが、価格が安価なため、こまめに巻替えを行いながら、常に状態のいいラインを使いたいです。最近は、フロロカーボンとナイロンの両方の性質を兼ね備えたハイブリッドライン「カーボナイロン」なるものも売っています。一度試してみるのもおすすめです。
ハリス・針
ハリスは通常のウキフカセ釣り同様、フロロカーボンの1.5号~2.25号程度を使います。完全フカセ釣りの場合は、道糸とハリスの接続にサルカンは使わず、直結をおすすめします。結び方はブラッドノットが簡単で強度もありおすすめです。針は、メジナ狙いの場合はグレ針5号~7号、クロダイ狙いの場合はチヌ針1号~3号を使用します。
完全フカセ釣り・ショアでの釣り方
ショアからの完全フカセ釣りのやり方もオフショアの場合と基本は変わりません。潮の流れを読み、撒き餌としてオキアミを撒きます。そして仕掛けを投入します。スピニングリールの場合は、自力ではラインが出て行かないケースが殆どだと思いますので、手で引き出しながら、仕掛けを潮に乗せて流します。ナイロンラインの比重は1.14程度ですので、比重1.78程度のフロロカーボンラインと比較すると沈み方はかなり遅くなります。風が強い日などは沈んで行かないこともあるでしょう。そんな時は針を太軸の重量タイプに変更したり、ハリスにジンタンを打ったりして浮力を調整します。
堤防のヘチ際ぎりぎりにエサを落とし、クロダイを狙う「落とし込み釣り」は、完全フカセ釣りと言える釣法ではありますが、潮に仕掛けを乗せて流し、撒き餌と刺し餌の同調を行うという行為を伴わない釣りのため、メソッドを考慮すると別の釣りと考えた方が合理的であるため、今回は割愛いたします。
撒き餌を撒く
仕掛け投入前にオキアミを撒きます。カップの小さいコマセ柄杓を使って少しずつ撒きます。オキアミの沈み方をよく観察しながら撒き餌の中に仕掛けを投入します。オキアミの沈下スピードは生タイプが速く、ボイルタイプは遅くなります。狙う水深によって、また、エサ盗りの数などの状況に応じて使い分けると良いでしょう。
仕掛けを流す
オフショアの完全フカセ同様、手でラインを引き出しながら、仕掛けを沈めていきます。できるだけ自然に流したいので、ラインスラックを出しながら潮の流れに任せてラインを出していきます。ショアからの完全フカセ釣りは、小さなウキをつけていることが多いので、アタリはウキで辛うじて視認できます。ただし、軽量の仕掛けですのでどうしてもラインスラックが多めに出てしまいますので、ウキよりも先にラインにアタリが出ます。
アタリの出方とアワセ方
完全フカセ釣りのアワセの出方も、オフショアでの完全フカセ釣りとほぼ変わりません。ウキがついているため、ラインスラックはウキなしの完全フカセに比べれば少ない傾向があるものの、手でラインを引き出しながら仕掛けを流し続けているため、それなりに出ています。あたりはまずラインがスーッと沈んだり横に走ったりします。このラインの変化に注視しつつ、アタリウキの挙動も見逃すことのないように、集中力を高めましょう。
ラインが走れば餌をしっかりくわえ混んだ証拠ですので、大きくロッドをあおり、確実にフッキングさせましょう。ロッドが大きく曲がり、ドカンと言う衝撃とともに魚との息詰まるバトルの始まりです!
完全フカセ釣りの注意点
最後に、完全フカセ釣りを行う際の注意点について記しておきます。
刺し餌先行で沈んで行くことを意識する
浮力の調整の際、ハリスにガン玉やジンタンを打つ場合、むやみに売ってもあまり意味がありません。あくまでも、水中を自然にエサだけが沈んで行く状態を演出するのが完全フカセ釣りですので、仕掛けが沈まないからといって単純に仕掛けの重量を上げるためにガン玉やジンタンを適当に打っていたのでは、海千山千を切り抜けて生き延びてきた大型魚や老成魚はその沈み方に違和感を感じ、エサをガン無視してしまうでしょう。基本は「刺し餌先行」です。ただし、エサ取りが表層付近に多すぎてどうにもならないときは、図の2のように、まずはエサ取りの泳層を素早く回避するため、一気に沈めてエサ取りの層より下で刺し餌を馴染ませるということも必要な場合があります。
本来、完全フカセ釣りはハリスには何もつけず、針とエサだけで流すものです(上図の1が理想)。しかし、風が強い時、うねりがあるときなど、仕掛けが馴染まず、エサが落ちて行かなか状況はどうしてもあります。そんな時は、針を太軸の重量針に変えることから対策し、それでもだめであればガン玉やジンタンをハリスに打ちます。ガン玉やジンタンの打ち方は上の図の通りですが、図の2、3、4を状況によって使い分けることが必要です。どのパターンが良いかはその時々で変わりますので、「ダメならパターンを変えてみる」といった試行錯誤を繰り返すことが大事です。
こうして説明していると、完全フカセ釣りは非常に難しい釣り方に思われるかも知れませんが、決してそんなことはありません。いにしえ人が太古の昔に実践していた釣りの方法と、考え方もメソッドもまったく同じです。思わぬ大型魚が釣れる可能性のあるか完全フカセ釣り、是非チャレンジしてみてください。