フカセ釣りに最適な道糸は? 主な釣糸4種の特性とフカセ釣りの適性を徹底解説!
作成:2021.09.17更新:2021.09.17
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フカセ釣りに使用する道糸は、長らくナイロンラインの独壇場でした。理由は、しなやかで適度な伸びがあり(ショックを吸収する性質がある)、結束性に優れ、比重が絶妙で、水中ではサスペンド的な挙動を示し、どこでも手に入る入手性の良さをもち、かつ安価ということで、圧倒的なメリットがありました。しかし、近年の釣り理論の進化、理論の進化に基づいたメソッドの進化、メソッドの進化に基づいたタックルの進化がなされ、様々な素材の道糸が続々と発売されています。
現在の釣りのシーンにおける道糸の材質としては、ナイロン、フロロカーボン、PE、エステルと、主に4種の素材がありますが、それぞれに一長一短がるため、短所を補完するために様々な加工が施された道糸が数多く発表されています。本記事では、それぞれの素材ごとの道糸の特徴や、向いている釣りのシーンなど基本的なことについて解説し、さらにフカセ釣りのシーンにおいての道糸の選び方や使い方について掘り下げて行きたいと思います。
ラインの種類と特徴
まずは、釣りに使用されるライン4種について、基本的な性能について解説いたします。
ナイロンライン
「ナイロン」という呼称は合成に初めて成功した、米国デュポン・テキスタイル・アンド・インテリア社の商標で、正式には「ボリアミド樹脂(PA樹脂)」と言います。比重1.13~1.15程度で、フレッシュウォーターではゆっくり沈み、ソルトウォーターではさらにゆっくり沈み、サスペンド的な挙動を示します。釣用のラインとしては、テグス(テグスサンと呼ばれる、ヤママユガ科の蛾の幼虫から作られる糸)を除き、最も古くから愛用されているラインです。風合いが柔らかいため使いやすく、適度な伸びがあるため、ショックを吸収してくれる特性があり、かつ結節性が高く、ほとんどの釣りに適した素材ですが、吸水劣化しやすいという最大のデメリットが玉に瑕です。5%程度の吸水性があり、吸水劣化したナイロンラインは膨潤し、著しく強度が落ちるため、頻繁にラインの交換が必要です。だいたい釣行3~4回で巻き替えるイメージでしょうか?
この欠点を補うべく、原糸へ撥水コーティングや薬剤含浸を施したナイロンラインもたくさん出ています。ただし、価格が非常に高くなりますので、安いナイロンラインを頻繁に巻き替えて、常に新しい状態のラインで釣りを行う方が良いと個人的には思っています。私は釣具量販店のプライベートブランド品(500M巻きで1,000円でお釣りがくるようなもの、ただし製造元がキチンと分かるもの)を、釣行3回で巻き替えています。伸びやすくショックを吸収する特性から、キビキビと操らなければならないルアーフィッシングには不向きですが、それ以外の釣りであれば、ナイロンラインの使い勝手はNo.1です。
フロロカーボンライン
フロロカーボンラインは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と呼ばれる熱可塑性フッ素重合体を製糸したラインです。ポリフッ化ビニリデンは、高強度、耐熱性の高さ、耐薬品性の高さなどから、様々な工業用品の材料として使われています。フロロカーボンのラインはウクレレの弦にも使われている素材で、環境変化に強く、ほとんど吸水せず、伸びもほとんどなく、摩擦にも強いため、ハリスとして使われたり、PEラインのショックリーダーとして使われることの多い素材です。比重は1.78前後と重いため、フカセ釣りでのハリスには必須の材質ですが、非常に風合いが硬く、使い勝手は良いとは言えません。その反面、非常に高感度であるという特徴があります。メインラインとしての使用にはあまり向きませんが、特に穴釣りにおいては、根ズレに強いフロロカーボンラインをメインラインとして使うことをおすすめします。
以前は非常に高価なラインというイメージでしたが、最近は価格がこなれ、ナイロンラインとほとんど変わらない価格帯になりつつあります。紫外線に強く、吸水劣化しないので、長持ちするラインとしても知られています(傷ついてささくれてしまったものは速やかに交換します)。
PEライン
超高分子量ポリエチレン(UHMW)樹脂を非常に細く押し出した原糸を複数本編み込んで1本のラインにしたもので、唯一モノフィラメント(一本の繊維)でないラインです。比重は0.97前後のため、基本水に浮きます(比重を調整したサスペンドタイプ、シンキングタイプのPEラインもあります)。超高分子量ポリエチレンは耐候性、耐薬品性が非常に高く、屋外での使用に大変向いています。その超高分子量ポリエチレンのフィラメントを編み込んで作ったPEラインの最大の特徴は強度です。
PEラインは、同じ太さであれば、ナイロンライン、フロロカーボンラインのおよそ4倍の強度があります。逆に言うと、同じ強度であれば、PEラインは約4分の1の細さにできます。そのため、ロングキャスト性に優れます。また、吸水性が全くなく、伸びがほとんどないため、ルアーをキビキビと操作する釣りに向いています。反面、風合いが柔らかく、コシがほとんどないため、他のラインとは使い勝手が大きく異なります。PEラインは摩擦と熱に大変弱いという弱点があります。そのため、メインラインとしてPEラインを使用する場合、必ずショックリーダーを必要とすることです。
ショックリーダーには、根ズレに強いフロロカーボンラインを使うのが一般的です。また、締結性の悪さもPEラインの弱点です。PEラインを他のラインと結ぶ際は、「摩擦系ノット」と呼ばれる、特殊なノットシステムを組まないと、ほぼ確実にすっぽ抜けてしまします。
ノットシステムには「最強」を謳っているものや、「簡単」を謳っているものなど、さまざまなものがありますが、すべて覚える必要は全くありません。自分が実際にやってみてしっくり来たノットを徹底的に練習し、風が強い中でも、薄暗い中でも、確実に結べるようにしておくことが何よりも重要です。
エステルライン
2010年頃、突如として釣りのシーンに登場したエステルラインは、ボリエステル繊維を使用したラインで、アジングのシーンにおいて近年急成長を遂げてている、比較的新しいラインです。比重は1.38前後で、沈みやすく、ほとんど吸水しないため、非常に風合いはピンピンに硬く、扱いやすいラインとは言えませんが、反面、アジの繊細なアタリを確実にアングラーに伝達することができる、非常に高感度のラインとなっているため、アジングを中心に使用されています。
エステルラインは、PEライン同様、非常に摩擦に弱い特性があります。そのため、岩礁地帯や根が多く張っている場所での使用には不向きです。また、アワセ時など、瞬間的にかかる大きな力にも弱いため、フカセ釣りのシーンにも向いていません。そういう場所ではフロロカーボンもしくはナイロンを使用しましょう。
エステルラインは、機械強度が高いわけでもなく、傷にも弱いのですが、PEラインに劣らない圧倒的な感度が生命線です。できる限り細い号数のエステルラインを使いこなすことができれば、沈む特性があるため、PEラインではどうにもならない、1gの軽量ジグヘッドを遠投することだって出来ますし、軽量リグを素早くディープエリアに運んでいくことも可能です。まち、他のラインではキャッチ出来ない小さな変化を敏感に感じ取ることもできます。
フカセ釣りの道糸に使用するライン
以上のように、現在の釣りのシーンに使われる道糸は、一部のハイブリッドラインや特殊な加工を施したラインを除き、この4種類になります。それぞれ、得意なシーン、不得意なシーンがありますが、それぞれをフカセ釣りで使用する場合、どういうメリット、デメリットがあるのでしょうか? 以下にオススメ度とともに説明します。
ナイロンライン
オススメ度:★★★★☆
磯でも堤防でも、フカセ釣りの道糸に最も適しているものは間違いなくナイロンラインです。比重1.31前後で、潮の流れに乗せやすく、ゆっくりゆっくり沈んで行きます。潮の流れによっては、サスペンド的な挙動を示します。ハリスにフロロカーボンを使用することで、針の先端から正しく食わせ針が沈んで行きます。この、「食わせ針が正しく沈む」という挙動は、コマセと食わせの同期を考慮すると大変理に適った挙動となります。
食わせ餌が、コマセの沈み方より早すぎても遅すぎても同期はうまく行きません。理想は、コマセが拡散しながら沈んでいく中に食わせが自然に紛れていることですが、ナイロンラインの1.31という比重は、フロロカーボンの1.78という比重のハリスに、針と餌の重量が加わったときに、仕掛け全体が重すぎず軽すぎず、絶妙な塩梅でコマセと同期させやすいラインです。
フカセ釣りにおいて、道糸がナイロンラインであることのデメリットは殆どありませんが、敢えて言えば、吸水劣化しやすいこと、巻き癖がつきやすいことです。そのため、長期耐久性においては他のラインに比べて低くなりますが、フカセ釣りの道糸としての使用感、使いやすさで言えば、ナイロンラインに優るものは未だにありません。
フロロカーボンライン
オススメ度:★★☆☆☆
フロロカーボンラインをフカセ釣りの道糸に使う場合のメリットは、根ズレに強いことより、厳しいポイントを果敢に攻められることがあります。また、比重が高いため、ボトムへ素早く仕掛けを届けやすいことから、地磯でのクロダイ狙いに向いています。吸水劣化はほとんどせず、伸びも殆ど無いため、感度の高い仕掛けを作ることができます。
また、根ズレで傷がついてしまったものはだめですが、そうでないものはナイロンラインと比較して寿命も長く使えます。その代わり、道糸の風合いは硬く、口径の小さいスピニングリールにいっぱいまで巻くと、ラインが弾けるトラブルが起こりやすくなります。対策としては、ナイロンラインよりも号数を一つ落とし、より細いラインを使用することで、トラブルを緩和できます。引張強度がナイロンより強いので、号数を一つ落としても問題ありません。ハリスとして使用する場合は、フロロカーボンが最も優れています。
PEライン
オススメ度:★★★☆☆
PEラインをフカセ釣りで使用する、「PEフカセ」をするアングラーが増えています。理由は「圧倒的な強度」、「圧倒的な細さ」、「圧倒的な感度」と言った、PEラインが持つ特性をフカセ釣りに取り入れるためです。ナイロン2号を使うフカセ釣りであれば、PE0.6号で対応できますし、ナイロン3号を使うフカセ釣りでも0.8号で充分対応可能です。大型の尾長グレを狙うような、離れ磯でのフカセ釣りでも、ナイロン4号を使うべきところ、PE1号で事足ります。細いラインが使用できるということは、潮の流れに自然に仕掛けを流すことができます。
比重は0.97前後で水に浮くため、ジンタンなどで調整するだけでサスペンドの挙動にすることができます。すなわち、レンジキープがやりやすい仕掛けにできるということです。表層から中層までのグレを狙うため、ウキ止めやガン玉、ジンタンを一切使わないで自然に流す全遊動仕掛けには、PEラインは非常に向いています。
また、PEラインは表面エネルギーの小さな素材のため、摺動性があり、水をはじく特性もあるので、遊動式ウキ仕掛けにおいては、スイベルの通り抜け性が良く、仕掛けの馴染みも他のセインよりも良いというメリットもあります。ただし、誰にでも向いているかというと、そうではありません。PEラインの特性を理解したうえで、フカセ釣りのメインラインとして使用するメリットとリスクを理解して使用する必要があります。
PEラインは細く柔らかく、コシがほとんどないので、風に大変弱い特性があります。強風時はキャストもままならない状態になりますので気をつけましょう。また、ガイド絡みのトラブルが大変多くなりますので、仕掛けを投入する時、回収する時ともに、すべてのガイドを確認し、ラインが絡んでいないかチェックしてからキャストします。ガイドにPEラインが絡んだ状態でキャストしたりリールを巻いたりしてしまうと、ロッドの破損につながりますので注意します。また、PEラインは、一度絡んでしまうと自力でほどくことがほとんどできないと思った方が良いでしょう。また、ラインスラックがたくさん出た状態でリールを撒いてしまうとかなりの確率でラインが絡み、「ダマ」と呼ばれる、こぶ状の結び目が出来てしまいますので、こちらにも注意しましょう。PEラインは根ズレにも大変弱く、ささくれになると極端に強度が落ちますので、複雑な地形の岩礁地帯での使用には細心の注意を払いましょう。
エステルライン
オススメ度:★☆☆☆☆
フカセ釣りのシーンで、軽量リグを遠投し、さらにディープエリアを攻めたいというデマンドがあれば、エステルラインを使ってみるシーンが無きにしも非ずかも知れませんが、まずそういうシーンはないでしょう。フカセ釣りの場合、遠投する場合はロッドの曲がりの力を利用して飛ばしますので、軽量仕掛けでもそこそこ飛ばすことは可能です。フカセ釣りには今のところ使い道はないと思って良いでしょう。ただし、エステルラインは結束性が良いため、ハリスとして使う分には問題ないと思います。それでも、フロロカーボンハリスと比較した場合、メリットはほとんどありませんので、無理にエステルラインを使う必要はありません。
フカセ釣りに最も向いている道糸はナイロン。しかしPEの今後の進化に期待!
以上の通り、釣りのシーンで使用するライン4種類の特徴とメリット・デメリット、フカセ釣りへの適性について説明してきましたが、現状、使い勝手と入手性、価格などを総合的に俯瞰した場合、フカセ釣りの道糸として最も適性が高いのはナイロンラインで間違いありません。少なくとも、今後10年は、フカセ釣りの道糸には、ナイロンラインが頂点に君臨し続けるでしょう。
しかし、PEラインのメリットには、非常に魅力的な要素があります。特に、「細くて強い」特性は、ナイロンラインには現状求めるべくもない難しい要素ですし、「吸水劣化しない」特性も、ナイロンラインでは現状コストの問題が解決できていません。PEラインの結束性を高め、使い勝手を高めるためにコシを付与し、原糸の改質で耐熱を高め、より摩擦に強いPEラインへと進化して行くことに期待したいですね。