長い堤防であればかなり沖寄りまでを攻略できるため、ショア釣りのカテゴリーと言っても大物の期待値も高いでしょう。外洋との隔絶のために建設されていますので、回遊性の青物なども入りやすい構造をしています。
投げ釣り、カゴ投げ釣り、サビキ釣り、ジギンク、ヘチ釣り(落とし込み釣り)、ダンゴ釣り(紀州釣り)、フカセ釣りと、どんな釣りにも対応出来るのが堤防釣りの魅力です。
今回は、そんな堤防でフカセ釣りをする際に必要なアイテムや、注意すべき点などについて書き連ねていきます。
堤防でフカセ釣りをすることは、地磯でのフカセ釣りと比較し、どんな魅力があるのでしょうか? 実は結構あるんですよ!
やはり何と言っても足場の良さがあげられます。堤防にはさまざまなタイプのものがありますが、コンクリートブロックや、コンクリート製のケーソン(水中に沈める中空の箱)を何個も連結した直立提と呼ばれるタイプの堤防は、足場がフラットで、非常に釣りがしやすいです。
大規模漁港や大型船舶の船着き場などは、場所によっては車で直付けできるような場所もあります(もちろん、車の進入が禁止されていない場所に限りますよ)。
堤防での釣りに関するルールは毎年のように変わるので、釣り場ガイドなどの出版物を購入したり、スマートフォンの釣りアプリなどで必ず最新の情報をチェックしてください。基本、厳しい方向に変わることはあっても、緩和されることはありません。
幅が狭い直立提は転落の危険性が高いので、十分な幅がある堤防を選びましょう。また、満潮時の水位を必ず確認しておきましょう。満潮時に足場と水面の高低差が1mを切るような場所は避けた方がいいでしょう。また、外洋に長く張り出している直立提は強風時やうねりが強い日は波が堤防に乗り上げ、大変危険なのでおすすめしません。
堤防は、速すぎる潮の流れや荒れる波を抑え、堤防の内側で様々な経済活動がしやすくなるように、或いは船舶の航行が安全に行えるように設置されたものです。
そのため、堤防の内側は周辺と比較して穏やかな環境になり、結果様々な魚種が産卵のために接岸し、そこで生まれた稚魚が若魚時代を過ごします。それらを狙って外洋からフィッシュイーターが入ってきたりします。
また、堤防は魚たちにとって人工的な要害になります。すなわち、天敵から身を隠せる場所であり、かつ、堤防の壁面には貝類や甲殻類、海藻など、魚たちの餌となるものがたくさん着生します。そのため、様々な魚種が生活の拠点としているのが堤防周りということになります。
堤防周辺には、サーフや地磯などと比較すると、経験の少ない初心者にも釣りがしやすいスポットといえるでしょう。堤防でフカセ釣りをするということは、特定の魚種をシビアに狙う釣りでなければ、様々な魚種をたくさん狙うことができるため、いわゆる「気軽にフカセ五目釣りを楽しめる」ということも言えます。
堤防でのフカセ釣りは、フォローティングベストと足元をきちんとサポートする滑りにくい靴、帽子、サングラス、虫除け、日焼け止めなど、安全に関する最低限の装備を身に着けていれば、磯釣りなどと比べカジュアルな格好で釣りを行うことができます。陽射しが強い場所がほとんどなので、半袖半ズボンは避けた方が良いでしょうが、スパイクブーツやウエーダーなどは特に必要ありません。サンダル履きはいくら足場が良い堤防といえど厳禁です。
ここからは、堤防でフカセ釣りをする際に必要なアイテムについて紹介します。以下の記事でも必要なアイテムについては記述しておりますので、素その中で取り上げたもの以外をご紹介します。
過去の執筆記事はこちらになります。▼
キャスティング オンライン
DRESS
スカリは、釣れた魚を入れてそのまま海に投げ込むメッシュ状の容器です。昔はスカリといえば、写真上のような、竹または樹脂製のリング3~4個に浮きとネットを取りつけた漁具に釣った魚を入れて水中に沈めて活かしておく方法が主流でしたが、最近は釣れたらすぐに活〆、血抜きしてクーラーボックスに入れることが多いので、あまり使うことがないかも知れませんが、今は写真下のような、メッシュタイプで機能的なスカリもあります。このまま海に投入するだけで魚を活かしておくことができます。
尚、必ず干潮時の低下した水面よりも長い距離のロープを取り付け、スカリを堤防の突起や構造物などにしっかりと固定しておくことをお忘れなく。
ヤマワ産業
スカリの代わりに、ストリンガーという大型の金属スナップに魚を括り付け、そのまま海中に沈めて活かしておく道具もあります。スナップのロックを外し、魚の口からスナップを入れ、下顎からフックを出してスナップをロックします。ここで注意したいのは、ストリンガーのスナップは必ず魚の下顎を貫通させて固定することです。
下顎以外の場所を貫通させた場合、魚が弱ってしまったり、魚が暴れた際に切れて外れてしまったりするので注意が必要です。稀に口からスナップを入れてエラ蓋から出して固定する人を見掛けますが、エラ蓋に通してしまうと魚がすぐに弱ってしまいます。
また、ストリンガーはスカリと違って魚を直接海に沈めているため、大きくない魚を固定して沈めていると大型のフィッシュイーターに食われてしまうことがありますので、常に魚の様子を観察する必要があります。
堤防釣りが唯一他の場所と比較して難しい場合があるとしたら、「大物がかかった際のランディングが難しいことが多い」ことでしょうか。堤防釣りの場合、足場と水面の距離が大きいところが多いため、大物がかかった際は玉の柄が必須となります。
柄の長さは最大で6m程度までありますが、あまり長いものは取り回しに経験が必要ですので、初心者なら4mくらい、通常は5m程度の物を扱えるようにしておけばよいでしょう。もちろん、足場から水面まで届き、さらに多少の余裕がある長さであることが絶対条件です。つまり、足場と水面の距離が4mの場合、4mの長さの玉の柄では役に立たないということです。最低でも1m程度の余裕が必要です。
玉の柄は、竿を持つ反対の手で繰り出し、竿を片手で高く上げて魚をコントロールしながら魚を取り込みます。一見簡単そうですが、実はかなり練習しないとひとりではなかなかできないと思います。ましてや堤防とあらば、足場から水面までの距離が遠く、片手に竿を持った状態では初心者は厳しいでしょう。そんな時は遠慮なく近くの釣り人にSOSを要請しましょう。
玉の柄はあまり安価なものはグラスファイバーの使用比率が高く、重くて取り回しが大変なので、ある程度値の張るものを購入したほうが良いでしょう。実際の店舗で伸ばして振るってみて、自分の腕力で無理なく扱えるものを選びましょう。
足場の良い堤防でフカセ釣りをする場合は、アウトドアチェアを使うことができます。フカセ釣りの場合、基本座ることはないのですが、休憩時、食事の時など、ちょっとした時に腰を下ろすことができれば、一日の疲労度が全然違います。
持ち運ぶには軽いものの方が良いのですが、軽すぎるものは堤防の上では風で飛ばされてしまうことがあるので注意が必要です。
コールマンのファンチェアは、小さくたため、キャリーバッグも付属していますのでおすすめです。
堤防では、海底や周辺の環境保護のため、コマセの使用が禁止されているところが少なくありません。フカセ釣りで撒かれる大量のコマセが、海中で消費または代謝しきれず、流れの悪い場所に堆積してしまうとそこで腐敗してヘドロと化することがあるようです。すると、ヘドロから発生したガスが悪臭を放ったり、磯焼けを起こしたりすることが稀にあるようです。
私は、代謝しきれないほどのコマセとは、毎日何十人、何百人ものフカセ師がそれぞれ大量に撒いた場合の量であり、数人がひとり1日数kg程度コマセを撒いたくらいでは、堆積してヘドロ化することは少ないのではないかと思っています。堤防や漁港でのコマセ使用禁止は、フカセ釣り師のマナーの問題(釣り終了後、きちんとこぼれたコマセを洗い流しているか?)に起因する、周辺環境の悪化が理由なのだと思っています。
コマセが使えない場所では、オキアミや虫エサを使えばいいのですが、最近は生分解性素材に生オキアミのエキスを配合した「ヒロキュー・ポケオキアミ」というスグレモノもあります。コマセを打たなくても、こういうものを使ってフカセ釣りは十分可能です。ただし、近くにコマセを打ちながら生エサを使っているフカセ師がいたら圧倒的に分が悪くなります。
ここからは、堤防でフカセ釣りをする際の狙い目と、気を付けるべきことについて考えてみたいと思います。堤防でのフカセ釣りのポイントは、基本は「コマセを打ちながら自分で作る」ものであるため、他の釣りとはやや異なる部分があります。
青物をはじめとした回遊魚を狙う場合は、堤防の先端部や、外洋に面した側の潮通しの良い場所に仕掛けをキャストするのが鉄則です。フカセ釣りにおいても、基本的には狙うべきポイントは同じと考えて差し支えありません。しかし、先端はいつでも混雑しているので、簡単にポイントに入れるとは限りません。そんな場合は無理に先端部にこだわる必要はありません。
フカセ釣りの対象魚はあまり回遊性が強くないものが多く、漁礁周りやケーソンの切れ目、堤防の分岐点や曲がり角の付け根など、自分の身を隠すことができ、餌となるプランクトンや甲殻類、藻類などが豊富に存在する場所を好みます。また、周囲より光量が少ない場所や、船道の直下で海底が抉れて駆け上がり状になっている場所など、変化がある場所が狙い目です。
地磯でのフカセ釣りの場合は、コマセを撒き、潮の流れに乗ってゆっくり沈みながら流れて行くコマセに同調させるように仕掛けを流すのがセオリーですが、堤防では人口密度が高く、他の釣りをやっている人の仕掛けに絡めてしまってはお互い気分を損ねます。自分の釣り座が極端に狭い場合がほとんどですので、仕掛けを潮の流れに乗せて流すことはできないと思った方が良いでしょう。
そのため、原則は自分の釣り座の正面だけが仕掛けを流して良い場所となります。従って、堤防でのフカセ釣りの場合の主戦場は足下周辺となります。
足元周辺はサビキ釣りをやっている人がアミコマセを詰めたカゴを仕掛けにつけている場合がありますので、そういうところでは既に様々な魚が足下に集まっています。マイクロベイトから小型のメジナなど、小物が中心とはなりますが、足下は見逃してはいけないポイントです。
ここにコマセを少しずつ打ってさらに大きな魚が寄ってきたと思ったら、足下に小魚を足止めするためのコマセを追加で打ち、その直後少し沖寄りにすかさずコマセを打ち、泳力の高い大型魚に沖寄りのコマセを食わせるようにしてエサ取りとの分断を図り、大型魚を狙い撃ちにします。
堤防フカセ釣りでは、いわゆる「置き竿」はNGです。理由は、仕掛けが勝手に流れて行くと簡単に隣の人の仕掛けとオマツリを起こすからです。堤防でフカセ釣りをするということは、ウキの動きに集中するとともに、自分の仕掛けがどこにあるのか、両隣の釣り人の仕掛けはどこにあるのかも同時にウォッチしなければなりません。置き竿で仕掛けを流しっぱなしという行為は絶対にNGです。
また、キャストが未熟な子供などが、フカセ釣りの仕掛けの上に自分の仕掛けを被せてしまい、オマツリになることも何度もあります。そんな時は、イライラするかも知れませんが、くれぐれも嫌な顔したり怒鳴ったりせず、余裕を持った大人の対応を心掛けましょう。オマツリがほぐれず、止むを得ず仕掛けを切らなければならない時は、たとえ自分に過失がなくても自分の仕掛けを切り、相手の仕掛けに傷をつけずに返してあげるといった対応をしたいものです。
コマセの使用が禁止されている場所では勿論コマセは使用出来ません。コマセの使用についてのルールがない堤防の場合も、地磯でのフカセ釣りのようにバンバンコマセを撒くのはあまり好ましくありません。
周りには様々な釣りを楽しんでいる人がいて、それぞれターゲットの魚種も釣り方も異なります。フカセ師がたとえ自分の足下周辺にだけコマセを撒いているつもりでも、投下したコマセは水中で拡散し、潮下方面に流れて行きます。すると、他の釣り人にとってはありがた迷惑な魚を寄せてしまうことにもなりかねません。
周囲への配慮から、コマセを打つ回数や、一投あたりの投入量を減らすなどの調整をしましょう。
2024年4月1日、改正遊漁船業法(水産庁・遊漁船業の適正化に関する法律)が施行されました。遊漁船営業に関する安全管理義務の強化がメインの改正点なのですが、我々釣りを楽しむ者にとって最大の関心事は「立入りが禁止されている場所への利用客の案内の禁止」が明記されたことでしょう。
これはすなわち、「沖堤防への渡船業務の禁止」を意味します。釣り人の立ち入りが認められている沖堤防などは存在しないのですが、これまでは渡船業者の安全運航を条件に黙認されていました。これが禁止事項として明文化されました。安全には代え難く、残念ながら、渡船で沖堤に上陸するという釣り文化は過去の文化遺産となってしまいそうです。
いがでしたかでしょうか? 堤防でのフカセ釣りは、人が多いことが玉に瑕ですが、サイズはともかく、様々な魚種を狙え、地磯よりも安全で手軽に楽しむことができます。地磯釣りのような重装備の必要もなく、思いついたら身軽に電車やバスに乗って、半日釣りをして・・・というのが堤防フカセ釣りの正しい楽しみ方なのかも知れません。
近年、沿岸の漁港や堤防では、安全上の問題との建前で、釣り師の排除が急速に進んでいます。釣りをライフワークとしている者として、これ以上遊び場を潰されぬよう、ルールを守って釣りをさせてもらいましょう。釣り師のマナーと責任が試されています。
記事中の紹介グッズ一覧
この記事を書いた人
合わせてよく読まれる記事
「フカセ釣り」関連の記事
新着記事