フルモデルチェンジした21カルディアは素材も構造も新しいこと尽くめ!
2021年、ダイワにとって2007年のZAIONの発表から14年ぶりとなる新素材「ZAION V」が登場しました。21カルディアと21フリームスから採用が始まり、以後順次ミドルクラス以下のモデルに拡大して行くものと思われます。この項では、新素材をいち早く採用し、次世代スピニングリールの試金石としてダイワが送り出す、21カルディア LT3000-CXHについて紹介します。
新素材・「ZAION V」って何だ?
まず、新素材である「ZAION V」について説明します。この素材は、従来のカーボン超繊維強化樹脂「ZAION」の強度を大きく落とすことなく、コストダウンを実現したVE材(VE=Value Engineering=価値工学)です。VEとは、製品の「価値」を、「求める機能」と「コスト」の面から検討し、設計段階で設計開発者の考える「理想」と顧客の求める「満足度」の乖離を埋め、結果として、より製品の価値を高める手法のことを言います。ちょっと乱暴に言えば、オーバースペックの部分を見直してコストを下げる設計検討のことをVE活動と言います。ユーザーが求める強度を満足しつつ、ZAIONよりもコストダウンを実現した素材になります。従って、絶対強度はZAION>ZAION Vとなります。ちなみにZAION VのVは"Versatile(バーサタイル=万能の)"のVです。
21カルディアでは、このZAION Vをボディとローター素材に使用しています。また、21カルディアでは、この素材を使用してモノコックボディにするという、もう一歩踏み込んだ進化を遂げています。その結果、ギアスペースの広域化とビス止めの廃止の効果で、ドライブギアの大口径化(従来モデル比107%)にも成功し、巻きパワーとギア剛性も向上しています。
21カルディア LT3000-CXHの基本スペック
21カルディア LT3000-CXHの基本スペックを見て行きましょう。ギア比は6.2、ハンドル1回転あたりの最大巻き上げ量は93cmのエキストラハイギアモデルです。ドラグは最大釣力10kgのATD(オートマチックドラグシステム)が搭載されています。ラインキャパはナイロン8lb(2号)で150m、12lb(3号)で100mです。PEは1号(16lb)で200m、1.5号(24lb)で170mです。自重は205gとなっています。
ZAION Vモノコックボディで巻きパワーと剛性が大幅アップ!
21カルディアは2002年発売の初代カルディアから数えて7代目に当たります。当初から軽さと強さの両立をコンセプトとして商品開発を行い、アングラーに好評を博してきましたが、先代18カルディアで新設計基準「LTコンセプト」を導入し、5代目までのモデルから大きな進化を遂げました。そして、7代目、21カルディアでは、18カルディアの進化を上回る大きな進化を遂げました。それが、「ZAION Vモノコックボディ」の採用です。
カーボン繊維の長さと量を再検討し、成形性を向上させつつ強度はさほど落とさず、コストダウンしたZAION Vでモノコックボディ化することに成功し、21カルディアから採用されました。このZAION Vモノコックボディ化は、今後ミドルグレードのリールに採用が増えるものと思われます。モノコックボディ化でパーツマウントの空間が増え、ボディサイズが変わらなければ、ギアの大口径化ができ、ギアサイズが変わらないのであればボディを小型化出来ます。いずれにしても剛性アップ、ダウンサイジングという付加価値を新たに加えることができます。
どういうシーンで活躍するか?
21カルディア LT3000-CXHは、どういうシーンに向いているのでしょうか? ZAION Vモノコックボディと、ZAION Vエアローターを組み合わせ、そこに大口径化したタフデジギア(超々ジュラルミンの冷間鍛造ギア)を心臓部に組み込み、前モデルに増して軽さと強さを手に入れました。スペック的にはあらゆる釣りに対応が可能でしょうが、敢えて言えば、ZAION Vをふんだんに使ったタックルであるため、感度重視の釣りで使いたいです。例えば、4kgを超える春のモンスターアオリイカ(アオリイカのエギング日本記録は5.6kgのようです)をオフショアエギングで狙うなんて言う使い方をしてみたいですね。他には、水深100m位の場所を狙い、50cmを超えるロックフィッシュ(ハタ類、アイナメ)なんかも挑戦できますね!
メーカーからの品質情報(検査・お預かり要請)あり!
3月に発売されたばかりの21カルディアですが、初期ロット品に回転不良の不具合が報告されております。リールフット裏に貼られている識別記号シールのうち、特定の識別記号の製品が該当します。2021年4月12日付けでグローブライド株式会社よりプレスリリースが出ており、該当品の無償修理を受け付けていますので、もし、既に当該品をお持ちの方、これから購入をご検討中の方は必ずご確認願います。
21カルディア LT3000-CXHは今後のミドルクラスの勢力図を変えるかも知れない。
21カルディア LT3000-CXHのライバル機としては、シマノ・19ストラディック C3000XG或いは、20ヴァンフォード C3000XGも該当するかも知れません。軽さで言えば20ヴァンフォード C3000XGが180gと頭ひとつ抜けていますが、実勢価格は2万円台前半です。21カルディア LT3000-CXHは2万円を僅かに切る価格帯、19ストラディック C3000XGはほとんど21カルディアと同じと言ったところです。
上述の初期ロットの不具合が落ち着けばカルディアが市場でどんな反応を受けるか、非常に楽しみなところではあります。この3モデル唯一のモノコック構造ボディによる大口径ドライブギアの巻きパワーは大変魅力的で、いわゆるコンパクトボディの3000番スピニングリールが想定するより、一回り大きなターゲットと互角に戦えるのではないかと期待しています。