シマノ・ボーダレスシリーズは万能ロッドだが、フカセ釣りにも使えるのか?
作成:2021.12.13更新:2021.12.13
目次
シマノ・ボーダレスシリーズというロッドをご存知ですか? ボーダー(国境、境界、限界などの意味があります)がない、すなわち、特定の魚種、特定の釣法にこだわらない、思い立ったらこのロッドを持ち出して、様々な釣りを行う、汎用性にフォーカスしたロッドのシリーズ名称です。サーフからの本気のキャスティングから、ジギング、エギング、ロックフィッシュ、フカセ釣りまでこなせるという万能ロッドです。
シマノでは、万能ロッドのことを「フリースタイルロッド」と呼んで、「ボーダレス・キャスティング(並継)」、「ボーダレス・キャスティング(振出)」、「ボーダレス(振出)」、「ボーダレスBB(ブラッドブラザー機・振出)」、「ボーダレス(延竿)」など、一大製品群を形成しています。
シマノのフリースタイルロッドは、「ボーダレス」シリーズ以外にも、安価でコンパクトな振出ロッド「フリーゲーム」、旅客機内持ち込みも想定した、携行性に優れたハイパワーマルチピーストラベルロッド「スコーピオン」、怪魚用ロッド「ワールドシャウラ」など、おびただしいまでのラインアップを取り揃え、国内のみならず、世界中で気軽に行えるフリースタイルフィッシングの普及に尽力しています。
シマノ・ボーダレスシリーズのラインアップ
シマノ・ボーダレスシリーズのラインアップについてまとめてみました。
ボーダレス【並継キャスティング仕様】
ボーダレス【並継キャスティング仕様】シリーズは、ショアからのキャスティングゲーム、中近距離の投げ釣りにと、ルアー釣り、餌釣りどちらにも対応可能な3ピース並継ロッドです。最もライトな「285H2」から、錘負荷20号のライトな投げ釣りまで対応可能な「345H6」まで、2021年12月現在、8モデルがラインアップされています。
いずれのモデルも、ねじれやつぶれの力に対抗するため、ロッドの縦方向の繊維の内層と外層にカーボンテープを逆方向斜めに巻いて締め上げた「スパイラルX」により、キャスト時やファイト時のパワー伝達が向上し、軽さを犠牲にすることなく剛性を確保しています。その上、スパイラルXの上には、カーボンテープをさらにX状に巻いて締め上げ、ねじれを抑え込む補強が施されています。
ボーダレス【振出キャスティング仕様】
ボーダレス【振出キャスティング仕様】は、振り出し式3ピースロッドのラインアップで、並継キャスティング仕様と比較すると、振出キャスティング仕様は先調子で先径1.9mmのティップに統一されており、ライトショアジギングから錘負荷18号までの中近距離の投げ釣りもカバーします。重量も並継キャスティング仕様より軽量で、しかしながら60cm級の中型魚まで射程に入れられます。
ボーダレス 振出キャスティング仕様も245H3-Tから345H5-Tまで6モデルラインアップしており、ショアからのほとんどの釣りのシーンをカバーできます。
ボーダレス【振出】
ボーダレス【振出キャスティング仕様】よりさらにライトなシーンでバーサタイルに使えるベースモデルとしてのラインアップがボーダレスシリーズです。長さは1.8m~4.9mまで、ティップの先径は0.85mm~1.8mmまで、3ピース振出と4ピース振出トータル18モデルものラインアップがあります。堤防でもサーフでも磯でも、キャスティングゲームにもフカセ釣りにもソツなく使えるモデルはこのラインアップの中から選ぶと良いと思います。
ボーダレスBB
ボーダレスシリーズのコンセプトである「魚種を選ばない、釣法を選ばない、フィールドを選ばない」という、究極のバーサタイルロッドを目指している設計はそのまま、あらに求めやすい価格設定にしている、ボーダレスシリーズの弟分(BB=Blood Brother)として人気のシリーズとなっています。長さは3m~4.95mまで、3ピース振出、4ピース振出トータル13モデルのラインアップがあります。スーパーライトショアジギング、サビキ釣り、ちょい投げ、フカセ釣りと、マルチに使える充実のラインアップとなっています。
ボーダレス GL(ガイドレス)
ボーダレスシリーズには、延べ竿のラインアップもあります。こちらも、魚種を選ばず、野ゴイやナマズなどのモンスター相手のラインアップから、継数12~15本、仕舞寸法35という超小継振出ロッド、超先調子ロッドなど、様々なラインアップを取り揃えていますが、今回は割愛いたします。
万能ロッドと専用ロッドとの違い
シマノ・ボーダレスシリーズに代表される万能ロッドは、フリースタイルロッドやバーサタイルロッドなどとも呼ばれるカテゴリーの分類される商品群ですが、特定の魚種や釣法、フィールドを想定した専用ロッドとどのような違いがあるのでしょうか?
専用ロッドの特徴
専用ロッドとは、想定するターゲットを確実に、快適に獲るために必要な特性を徹底的に洗い出し、その特性に最重点に開発されたロッドとなります。例えばキスの投げ釣り専用ロッドであれば、仕掛けを1mでも遠くに飛ばせるように、ブランクスにバネの力を持たせるとともに、PEラインをメインラインに使用することが多いシロギス釣りのため、ガイド絡みの起こりにくいフット形状と、摩擦熱に弱いPEラインへのダメージを軽減する、高級なガイドリングが採用されています。また、引き釣りで海底の状態やシロギスのエサへのアプローチをセンシングし、連掛けをして効率よく釣り上げる必要上、細身のロッドで感度を最重要視したティップを備えています。
フカセ釣りの専用ロッドであれば、フッキング時に魚を弾かないよう、大きくロッドをあおっても、ロッドが大きすぎる力を適度に吸収し、最適なフッキングパワーを魚に与え、一撃でフッキングさせられるよう、ロッドが円弧を描いて大きく曲がる弾力性を備えています。ファイト中も、魚の急激な抵抗にラインブレイクさせられないよう、ロッドが限界まで曲がりながらパワーを吸収し続け、アングラーのファイトをサポートします。フカセ用ロッドは、上物対応のグレ竿に至っても、非常にティップの先端が細いのが特徴で、1mmに満たない極細トップ(0.8mm~0.9mm)を備えていますので、取り扱いには細心の注意が必要です。
また、フカセ釣り専用ロッドの調子については、グレ竿は先調子、チヌ竿は胴調子になっているのが通常です。フッキングした後、根や障害物の奥に潜ろうする性質のあるグレ用の竿は、ロッドの先端が曲がり、ベリーからバットにかけてはしっかりと踏ん張り、グレを潜らせないようにするセッティングとなっており、沖の方向や障害物の少ない広い方に逃げようとするチヌ竿の場合は、ロッド全体がきれいな円弧を描いて曲がり、ロッド全体でチヌのパワーを受け止めて引き抜くといった設定になっています。
このように、専用ロッドは、ターゲットが明確で、釣り方が明確で、フィールドが明確な場合、比類ない能力を発揮します。
万能ロッドの特徴
一方、ボーダレスシリーズに代表される万能ロッドは、ターゲットが明確ではないが、とりあえずこれ一本でできるだけ多くの魚を、多くの釣り方で、色んな場所で使いたいという要望に応えるべく、あらゆる特性が中庸的にセッティングされているものが多いです。また、ユーザー層が初心者中心になることが多いため、極端に長いもの、極端に短いもの、極端に硬いもの、極端に柔らかいものは敬遠され、さらに、ライントラブルを極力軽減するため、ガイド径が大きめになっており、数も少なくなっているモデルが多いです。また、中級者以上のセカンドロッドになるケースも多いため、仕舞寸法が小さく、携行性を考慮した商品が多いのも特徴です。
シマノ・ボーダレスシリーズはフカセ釣りで使えるのか?
さて、本記事の肝である、シマノ・ボーダレスシリーズはフカセ釣りで使えるのか? という核心に迫ります。結論を言えば、【場所によっては充分使えます、場所によっては使えません】となるでしょう。シーン別、ポイント別に解説いたします。
堤防・漁港
おすすめ度:★★★★☆
足元が垂直に切り立っていて足場の良い堤防では、ボーダレスは十分フカセ釣りに使えます。ボーダレス 300MLS-T、340MLS-T、380MLS-T、340MS-T、380MS-T、ボーダレスBB 420MLTがフカセ釣りにも対応できるでしょう。これらのモデルは、ラインアップ中、最も柔らかいブランクスが採用されたグループです。磯竿のような、美しい円弧を描く柔らかさはありませんが、しなやかに、パワフルなやり取りをすることができるでしょう。
堤防の場合は足場から水面まで距離がある場合が多いのですが、25cm級のグレや、30cm程度のチヌであればぶっこ抜きができる程度のパワーは十分ありますが、ロッドの全長が本格的なフカセ釣り専用ロッドより短いため、水深があるところでハリスを3m以上とるような場合は抜き上げに苦労するでしょう。ハリスを長く取らなければならない場合は長めの玉の柄が必要です。また、300MLS-Tのような短いロッドを使う場合は、ランディングの際の立ち位置をヘチ際ぎりぎりまで出ないと、堤防の壁面に魚をぶつけてフックオフしてしまうことも懸念されます。ロッドの長さが短いことはフカセ釣りにおいては大きなデメリットになりますので、頭に入れておきましょう。
地磯
おすすめ度:★☆☆☆☆
ボーダレスシリーズを使い、地磯でフカセ釣りを行う場合は、お世辞にも適しているとは言い難いでしょう。理由は地形です。自分の釣り座の岩の足元が大きく手前に抉れているような場所であれば、ボーダレスでも十分にフカセ釣りを楽しむことができます(図②参照↓)が、足元から前方に向かって根があるような場所では、絶対的にロッドの長さが足りません。最低でも、根の先で仕掛けを自由に操作できる長さが必要です。
地磯でフカセ釣りをする場合は、ロッド長5.3mが最低限必要と思って下さい。ロッドが短いと、満潮時(図③参照↓)はなんとか釣りになっても、干潮時(図④参照↓)には仕掛けが投入出来なくなります。仮に、軽くキャストして仕掛けが根の先に投入できたとしても、回収時に足元から数m先の岩にラインを掛けてしまい、根がかりやラインプレイクに繋がります。もし、魚を掛けている時であれば致命的と言えます。地磯では専用の磯竿、チヌ竿、グレ竿を用意したほうが良いでしょう。
シマノ・ボーダレスが向いている人
シマノ・ボーダレスシリーズが、魚種、釣法、フィールドを選ばない万能のロッドであることは紛れもない事実です。特に、タックルをターゲットや釣り方によってあれもこれもと買い漁ると、経済的な負担も大変です。
特にターゲットは決まっていないが、できるだけひとつのタックルでいろんな釣りがしたいという人、旅先で釣りがしたい人、メインの釣りは決まっているが、状況に応じてターゲットやタックルを変えた釣りをしたい人などには非常に向いていると思います。
ボーダレスシリーズのほとんどのモデルは、メタルジグやプラグ類をキャスト出来るため、ロッド長、硬さの点から考えると、メインの用途はスーパーライトショアジギング、ジグヘッドにソフトルアーを取り付けたロックフィッシュゲーム、サーフからのフラットフィッシュゲームあたりになると思いますが、状況応じてエサ釣りに切り替えることができるのが最大の魅力です。10号〜15号程度のシンカーに付け替えればちょい投げ釣りやカゴ投げ釣りにもロッドを変えることなく変幻自在に切り替えできます。
ボーダレスシリーズは、多様な釣りに対応するために、フカセ釣り専用ロッドよりもパワーが大きな設計となっています。磯竿ではそもそもキャストする釣り自体ができませんが、ボーダレスシリーズのようなフリースタイルロッドであれば、仕掛けのチェンジだけで色々と違う釣りができるので、そこは大きなアドバンテージといえるでしょう。
本格的なフカセ釣りをしたければ、専用ロッドを持つべし!
しかしながら、フカセ釣りを本格的にどっぷりとやりたいならば、やはり専用のグレ竿やチヌ竿を準備したほうが良いでしょう。これまで説明してきた通り、フカセ釣り専用ロッドは、その長さやブランクスの柔らかさは延べ竿に近いセッティングであり、海釣りで使用するロッドとしては特殊中の特殊という立ち位置です。
ボーダレスのように、器用に何でもこなすという芸当は、フカセ釣り専用ロッドには全く出来ません。実際に、フカセ釣り専用ロッドを触ってみればわかると思いますが、ティップの細さ、柔らかさを見ると、他の釣りに使える気が全くしないと思います。しかしそれがまさにフカセ釣り専用ロッドに求められる特性であり、万能ロッドでは本当の意味での「代用」とはならない部分になります。ただし、そこまでこだわらなければ、ボーダレスを1本もっていると、そのアングラーの攻撃力は格段に向上することは間違いありません。
記事中の紹介グッズ一覧