フカセ釣りは夜も出来るのか? 日中の釣りとの違いや装備について解説します。
作成:2023.07.31更新:2023.07.31
目次
フカセ釣りといえば、特に注釈がない限りは、ウキフカセ釣りのことを指します。地磯や沖磯、堤防などで行う釣りで、メインターゲットはクロダイ、メジナでしょう。これらを狙うフカセ釣りは、ターゲットとなる魚が昼行性であることがほとんどのため、多くの場合、夜明けとともに釣りを開始し夕間詰めまで行う、或いは朝間詰めから午前中いっぱい、午後から夕間詰めまでといった、間詰め時をチャンスタイムに設定した日中の釣りとなります。しかし、特に夏の時期は日中の釣りは暑さが厳しいため敬遠しているアングラーもたくさんいることでしょう。
そんな時は夕間詰め時から釣りを始めて夜半まで釣りをする夜釣りが、暑さを回避しつつ、魚の警戒心も緩んで快適な釣りができるのではないかと考えることでしょう。メバルやアジ、タチウオやアオリイカなど、ショアから日中釣ることが難しい夜行性のターゲットであれば夜釣りが主戦場になりますが、日中の闘いがメインとなるウキフカセ釣りを夜行うには、日中の釣りとは異なる部分がいくつかありますので、説明して行きたいと思います。
日中のフカセ釣りと夜のフカセ釣りの違い
同じフカセ釣りと言っても、日中に行うフカセ釣りと、夜に行うフカセ釣りは趣が違います。具体的にどういう違いがあるのかについて見ていきましょう。
魚の警戒心が緩くなる
日中のフカセ釣りであれば、太陽の光が届く場所、届かない場所がはっきりしています。フカセ釣りのターゲットとなる魚は、基本的に身を隠せる場所に潜んでいて、餌を探すときに泳ぎまわります。そのため、捕食のため泳ぎ回っているとき以外は、水深がある場所、藻が生い茂っている場所、根が複雑に入り組んでいる場所など、決まった場所に定着しています。そういう場所は水中に届く太陽光がある程度遮られています。
アングラーからコマセがまかれた場合は、コマセが潮の流れに乗って、一定方向に流れながらゆっくり沈んでいきます。これをすかさず見つけた魚が、自分が身を潜めていた拠点から出て捕食に向かう、或いはエサを探して泳ぎ回っていた魚がコマセに向かって一目散に捕食に来るというメカニズムになります。日中の水中では、ターゲットの魚は自分を狙う捕食者に、自身が水中で動くことで発生する音波で発見される以上に、目視で発見されるリスクが高いので、よほど活性が高い時でない限り、必要以上に動かないのが普通です。そのため、愚直にコマセを打ち続けながら、ターゲットの活性を少しずつ上げて行き、自分の釣り座にポイントを作って行きます。
これに対して夜釣りの場合は、水中に届く光は、常夜灯や船舶の光、月明かりなど、日中とは比較にならないほど限られますので、魚が視覚で天敵に発見され捕食されるリスクが大幅に下がります。そのため、完全に就寝モードに入ってしまうベラやブダイ、カワハギなどの魚を除き、魚の警戒心が緩くなり、日中より釣りやすくなります。もちろん夜行性の魚が中心になりますが、昼行性の魚でも、日没後から日の出までずっと寝ているわけでもないため、メジナやクロダイなども、深夜の時間帯を除けば期待度が上がります。
ポイントは足元まで接近する
フカセ釣りは、コマセを撒いて自分の釣り座周辺に魚を寄せてポイントを作る釣りであると言いましたが、夜のフカセ釣りの場合は、ポイントをもっと自分の足元近くまでひきつけることが可能です。魚の警戒心が薄れていることに加え、岸壁のヘチ際や、橋脚周りについている貝類(牡蠣やムラサキイガイなど)や甲殻類(カニやヨコエビ類など)を好んで捕食する魚たちのうち、日中は人間の影などを恐れて近づけないものが、夜は安心して接近することができるためです。
一部、クロダイなどは日中でも大胆不敵にも近づいてきて夢中で捕食する老獪な個体もいますが(これがヘチ釣りの対象となる所以ですが)、夜になればメジナやその他の種も接岸して捕食します。この写真は、日中、東京湾内のとあるヨットハーバーの係留場の橋脚についている牡蠣を一心不乱にバリバリ食べているクロダイの写真です。日中、こんな近くまでやってきて水面から背びれを出しながら捕食するのはクロダイくらいのものですが、夜であればこのクロダイと同じように、シーバスやメジナ、メバルなども続々と足元までやって来ます。
コマセは比重をやや上げる
夜のフカセ釣りに使用するコマセは、日中に使うコマセより、やや比重を上げ気味にしましょう。理由は、日中のフカセ釣りの際のコマセワークのように、拡散性にあまりこだわる必要がないためです。せっかく足元にターゲットが近寄って来やすい状態なので、足元を主戦場にしたいです。そのため、潮の流れにコマセを載せて拡散させ、食わせエサとの同期を図るというようなシビアなテクニックは必要ありません。コマセは遠投せず、足元を中心に少しずつ撒きましょう。もし、青イソメや岩イソメなどの虫エサを使う場合は、コマセなしでも釣れます。その代わり、足元のヘチ際ギリギリを攻略しましょう。ヘチ際についている貝類や甲殻類を捕食に来るターゲットを確実に狙います。コマセなしで虫エサの場合、ウキ下は深く設定し、仕掛けがメジナやクロダイのいるレンジを直撃できるよう流します。
仕掛けが浮いてしまったり、沖の方へ流れてしまうと、経験上ヒット率が下がる気がします。ボトムレンジをキープしながら、ターゲットの寝床に虫エサを直接届けるイメージで攻略することが成功のカギとなります。勝負エリアは「足元から竿一本分までの間」と言っても過言ではないでしょう。
タックル・仕掛けは日中より強めに!
夜のフカセ釣りは、日中のフカセ釣りと比較して、タックル及び仕掛けを一段パワフルにしておきます。理由は、夜の方がフカセ釣りのターゲットとなる魚のサイズが大きいものが期待できること、そして、日中のフカセ釣りではターゲットとならない、例えばフッコ(スズキの若魚)などの、夜行性の魚がかかる可能性が非常に高いためです。つまり、日中のフカセ連れで通常磯竿の1号を使っているのであれば1.5号を、1.5号を使っているのであれば2号といった感じです。リールは3000番クラスのレバーブレーキ式スピニングリールがあれば理想ですが、汎用スピニングリールでも構いません。
メインラインは日中ナイロンの1.75号を使っているのであれば2号を、2号を使っているのであれば2.5号をといった感じです。日中のフカセ釣りとは異なり、ターゲットを表層付近まで浮かせて釣り上げるようなことはほとんどしないので、仕掛けはやや重めにセッティングし、ハリスも長めにとるのがいいと思います。夜釣りでボトム付近を狙っていると、フカセ仕掛けといえどもエイがかかったりすることもあります。そうなってしまうとミニマムセッティングのタックルではひとたまりもありません。また、夜釣りでは水面が暗く見にくいため、タモ網もうまく当てられない可能性があります。竿のしなりを利用して一気にぶっこ抜かなければならないケースも多々あると思います。
夜釣りでもフカセ釣りのキーパーツはウキ
夜のフカセ釣りで最も重要なパーツは電気ウキです。電池の容量が十分あることを事前に必ず確認し、視認できるだけの光量が確実にある状態で使いましょう。夜のフカセ釣りでウキが視認ができなくなってしまったら夜明けを待つしかなくなりますので、必ず予備の電気ウキ、バッテリー、ケミホタル(シュウ酸ジフェニルと過酸化水素の溶液混合により数時間程度化学発光を起こさせるケミカルライト)を携行しましょう。
夜のフカセ釣りの装備
夜のフカセ釣りは、とにかく暗く、足元が見づらいため、危険がこれでもかというほど隠れています。そのため、装備品は「できる限り少なく」する努力が必要です。安全に関する装備は絶対に割愛することはできないので、スパイクシューズ、フローティングベスト、フィッシンググローブ、ヘッドライト(必ず予備のライトと予備のバッテリーを準備)は絶対に忘れてはいけません。
フカセ釣りの場合は、この他にコマセバッカンとクーラーボックスが外せないわけですが、コマセは日中のフカセ釣りよりも量が少なくても十分勝負になると思いますので、日中のコマセバッカンより一回り小さいもの、具体的には、日中のフカセ釣りで40cmバッカンを使っている場合は、36cmバッカンか、場合によっては30cmバッカンでも良いと思います。クーラーボックスは夜釣りだからと言って小さいものに変更するというわけにはいかないと思いますが、日中の炎天下のフカセ釣りを想定する場合と比較して、板氷の量をやや減らすなどして、少しでも軽くする工夫をしたいものです。
ロッドやリール、仕掛けや各種ツール類は必要最低限のものを厳選し、コンパクトにパッケージングしてリュックなどにひとまとめにしましょう。夜釣りの場合は、現地で別の釣りにも臨機応変に対応できるように、様々な準備をしておくという考えは持たない方が良いでしょう。夜の海は基本真っ暗なので歩くだけでも大変です。そんな中、大量の荷物を担ぐのは危険ですし、道具の紛失にもつながります。荷物の総重量に加えて、総体積も最小限にすることに腐心するべきです。
夜のフカセ釣りの注意点
夜のフカセ釣りは日中のフカセ釣りと比較して、注意しなければならない点がたくさんあります。安全に関する内容がほとんどですので、しっかりと心得ておいてください。
磯釣りは絶対にNG!
まず気を付けていただきたいことは、夜にフカセ釣りを行う場所の選定です。普段から勝手知ったる場所であると言っても、地磯での夜釣りは絶対にNGです。磯は基本、夜は真っ暗です。ヘッドライトを点灯して歩いているとしても、岩場の凹凸や、濡れている場所、海水が溜まっている場所、苔が生えて滑りやすい場所などを完全に回避しながら、目的のポイントまで荷物を持ったまま歩き続けるのはほぼ不可能です。私も日中いつもフカセ釣りをしていて、地形は熟知しているつもりだった場所で夜釣りをしようと思い、フカセ釣りの装備一式を持って目的のポイントまで磯を歩いている途中、岩の段差に気づかず、足を踏み外し転倒し、ロッドを折ってしまうと同時に、膝と手のひらをザックリと切ってしまい、釣りができずに帰宅し、翌朝病院へ行ったという苦い経験があります。
磯での夜釣りは、海面を見渡しても真っ暗なため、根の状態など確認できるはずもなく、根掛かりのオンパレードです。どこに仕掛けが引っ掛かっているかもほぼ確認はできないため、仕掛けを切ってしまうしかありません。タックルのロストも日中のフカセ釣りとは比べ物にならないほど増えます。懐が痛みますし精神衛生上にもよくありません。磯での夜釣りは良いことなしです。
フェンスのある堤防や岸壁で行うのが条件
フカセ釣りを夜行う場合は、最低でも堤防で行いましょう。できることなら写真のような、低くてもフェンスがある場所でできれば安全です。それでも夜は暗いので、常夜灯など明かりがあればその近くに自分のベースを張り、荷物は紛失しないようにひとまとめにしておきましょう。常夜灯がなく、周囲の明かりが全くない場合は、LEDランタンなどの照明器具を、なければ予備のヘッドライトを、光量を最低レベルにして置いておきましょう。
海面を照らすのはご法度!
夜釣りの場合、ついつい海の状態を見たくなって、ヘッドライトで海面を照らしてしまうことがありますが、海面を照らすのは絶対にNGです。急激に水の中に光が入ると、せっかく接岸してエサを捕食していた魚が一瞬で散ってしまいます。ヘッドライトに赤色灯モードがある場合は、ライトを赤くしてから、最小限海面を照らすことは問題ありません。赤色灯は水中の魚に影響を及ぼさないとされています。一番のNG行為は、堤防に車を直付けし、車のヘッドライトを海に向かって点灯させる行為です。直接アングラーの目にライトの光が入ると目がダメージを受ける、危険かつ迷惑極まりない行為ですので、厳に慎んでいただきたいです。
日中釣れない危険な魚が釣れることが多い
釣りでは、日中の釣りではなかなかお目にかかることがない危険な魚が釣れることがあります。毒針を持った魚、歯が鋭く噛まれると危険な魚、身に毒があり食べることができない魚など、日中よりも夜釣りの方が目にすることが圧倒的に多いでしょう。
ゴンズイ
毒針を持つ魚としては、夜釣りで最も遭遇する確率が高い魚はゴンズイでしょう。背びれと胸びれに毒液を出す針を持っています。死んでいる個体でも毒針は毒液を出しますので大変危険です。刺されると数日痛みます。体表を覆う粘液にも弱毒があります。食べられる魚ですので、持ち帰る場合は必ずハサミで毒針を切り落としてから持ち帰りましょう。
ウツボ
ウツボも岩礁地帯での夜釣りで良く掛かる魚です。ウツボには毒はありませんが、「海のギャング」と呼ばれるほどの鋭い歯と強い顎を持っており、噛まれると大変危険です。ウツボに噛まれると、そのまま全身を腕に巻き付けて締め上げる「デスロール」という危険な行動をとります。ウツボに噛まれたときは無理に引きはがそうとすると大怪我することもありますので、ウツボの頭をナイフで刺すなどして外します。傷口は直ちに消毒しないと、雑菌で化膿する危険があります。絶対に噛まれないように気を付けましょう。ウツボは食べる地方もありますので、持ち帰る際は必ず締めて血抜きしてから持ち帰りましょう。
エイ
昼夜問わず浅場でも深場でも釣れることが多い厄介者にエイがいます。特に夏場を中心にアカエイがかかってしまうことは本当に多いです。尻尾の根元の部分に太くて長い毒針を持っています。この毒針はかぎ状にギザギザになっており、刺されると皮膚の中で折れてしまい、容易に抜けなくなると病院で処置してもらうしかなくなる大変危険な魚です。水深10cm程度のところにまで接岸してくるため、海水浴場の砂浜で海水浴客が足で踏みつけてしまい、足の裏に毒針がザックリ刺さってしまう事故も起きています。エイの毒は細胞を壊死させるたんぱく毒です。遭遇率の高さも毒性の強さも、魚類最凶レベルの危険魚です。釣れても決して毒針に触ってはいけません。ハリスごと切ってリリースするのが良いでしょう。
夜のフカセ釣りは危険も多いが大物が足元で釣れる可能性が高い!
いかがでしたでしょうか? 夜のフカセ釣りは、日中のそれとはまったく異なるメソッドと言えるほど、趣が異なりますが、日中のキツい酷暑を回避しつつ、日中よりも足元で大物がかかる確率高いので、非常に魅力のある釣りです。日中ではなかなかお目にかかれない魚も釣れますし、こんな足元でこんな大物が釣れるんだという驚きも味わえると思います。この夏休み、安全面に充分留意し、一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか?