春のフカセ釣りは大物の期待大!最大の敵は不安定な天気。ポイントの選定が重要になる!
作成:2023.04.27更新:2023.04.27
目次
春は一般的に釣りが難しい季節と言われます。陸上では寒かった冬が終わり、日に日に気温が上がってきて、少しずつ過ごしやすくなってくる春ですが、水中はまだ水温は低く、一部の魚種を除き、まだ沖の深場に身を潜めているものが多く、魚の活性はさほど高くありません。しかし春は多くの魚種で産卵期を迎え、成熟した大型の個体が産卵・産仔のために磯の浅場の藻場などにやってくる、俗にいう「乗っ込み」という時期を迎えます。
この時期の釣りは、産卵のために接岸してくる魚種については、一年のうちで最もエキサイティングなものとなります。すなわち、フカセ釣り師にとっては、ここは逃してはならないという、スペシャルなシーズンと言えます。そんな春のフカセ釣りについて解説します。
なぜ春の釣りは難しいのか?
春といえば、カレンダー上では大体3月〜5月頃を指すと思いますが、この時期にはどんなイメージをお持ちでしょうか? 日を追うごとに寒さが緩み暖かくなって行き、虫や草花が眠りから覚め、やがて桜の季節へというように、穏やかな時期であるというイメージをお持ちの方も多いかと思います。しかし春は実はそんなに穏やかな季節ではありません。
春に三日の晴れなし
「春に三日の晴れなし」という言葉があります。春の変わりやすい気候を端的に表した諺です。春の日本近海は荒れやすく、特に南岸側では上空の冷たい低気圧に南岸の湿った暖気が流れ込んだりすると、突風が吹き荒れたり、雪が降ったりします。冬の間日本上空を支配していた、寒冷で乾燥したシベリア寒気団(高気圧)の勢力が衰えてくると、温暖で乾燥した揚子江気団(高気圧)が支配的になってきます。
しかし、この揚子江気団は、偏西風の影響をまともに受ける移動性高気圧のため、長く日本上空にとどまっていることができず、高気圧と低気圧が短いスパンで繰り返し日本上空を通過します。このため、天気は短い周期で変わりやすいため、春に三日の晴れなしと言われます。
風に苦しめられる日が多い
同じように移動性高気圧が支配的な秋も変わりやすい天気が続く季節ですが、春の方が南からの湿った暖気が流れ込みやすいため、風が強く荒れた天気になりやすいのが春の特徴です。特に3月の上旬から中旬あたりにかけては、天気は良いのに爆風と高波で釣りにならないという日が多いです。軽量な仕掛けを扱うフカセ釣りにとって、強い風は雨よりも困る現象で、これが春は非常に釣りが難しいといわれる所以です。
水温はまだまだ低い
そして、水は空気よりも比熱が高いため、熱しにくく冷めにくい性質があります。比熱とは、温度を1℃上げるのに必要な熱量のことで、ざっくり言うと、空気よりも水の方が、同じ温度を上げるのに約4倍の熱エネルギーを必要とします。すなわち、陸上は寒さが緩んで春の訪れを感じる日々になっても、水の中はまだまだ冬のままのため、魚の活性がそれほど上がっていないということもありますので、釣りの場面において、陸上の気温は春についてはほとんど参考になりません。気温よりも風向きの方が重要なファクターになります。
春のフカセ釣りは乗っ込み狙いが基本
そんな天気が不安定な時期になぜフカセ釣りをやるのかといえば、理由はただひとつ、「産卵に備えて大型の個体が続々と接岸するから」です。この、産卵に備えて接岸してくることを「乗っ込み」と呼び、フカセ師にとっては特別なシーズンとなっているのです。この「乗っ込み」シーズンの釣りの対象となるのは、クロダイを筆頭に、マダイ、カレイ、アオリイカが人気です。また、ウミタナゴ、メバル、カサゴなど、卵を胎内で孵化させ、1cm程度に育った仔魚を産み落とす卵胎生魚も同じ時期に出産シーズンを迎えます。
産卵に備え、成熟した良型個体が緩やかな水温の上昇とともに接岸し、体力をつけるために荒食いします。そして、十分に産卵に耐える体力をつけた個体はお腹がパンパンに膨れ、普段よりも強烈な引きを楽しませてくれます(資源保護の観点より、抱卵個体の乱獲は慎みたいです)。
春の地磯乗っ込みフカセ釣りの主役はクロダイ
乗っ込みの時期は、産卵のために浅場に接岸してくるので、外洋に面した地磯の藻場などでは、普段は深場でしか見られないマダイなどもウキフカセ仕掛けに食ってくることもありますが、基本、乗っ込みシーズンのフカセ釣りのメインターゲットはクロダイになるでしょう。クロダイは基本居付きの個体が多いのですが、乗っ込みのシーズンになると居付きのものに加え、沖から移動してくるものや、河口付近から地磯の藻場に集まってくるものが加わり、良型の個体の絶対数が多くなります。乗っ込みで釣れる大型魚は、居付きのものよりも、産卵のために沖から移動してきた個体の方が多いようです。
クロダイは生息域が被るメジナに比べると、比較的低水温でも活動します。クロダイの乗っ込みは13℃程度から始まり、15℃を超えると産卵が活発化してきます(メジナは+3℃程度必要)。そして18℃まで上がってくると産卵のピークを迎えます。地域によって差はありますが、3月中旬から5月末頃がクロダイの乗っ込みシーズンといえるでしょう。
春のフカセ釣りはポイント選定が重要、キーワードは「風裏の藻場」
春のフカセ釣りは天気が不安定であることはお分かりいただけたかと思いますが、風も波も大変強く大荒れの時は、撤退する勇気を持ちましょう。春の嵐の中ではフカセ釣りの仕掛けなどコントロールできるはずもなく、釣りどころではありません。しかし、そこまでではない場合は、風の影響を軽減できるポイントを探しましょう。具体的には「風裏」を探します。風が吹いてくる方向に崖や防潮壁などを背負うことができる場所が風裏です。
写真は、北側に崖があり、手前側が海になっている江ノ島表磯の写真です。江ノ島表磯は足場から海面までの距離が非常に近いため、南風が強く吹く日は全く釣りにならないのですが、北風の日は高い崖が風よけになり、周囲と比較して快適に釣りを継続することができます。ここまでわかりやすい風よけはそんなに多くはないと思いますが、ちょっとした風よけになるような壁や建物、大型船舶の影などを探すことはできると思います。そういう場所の中から、ターゲットが産卵する場所、すなわち藻場を見つけることができたら、コマセを打って仕掛けを流してみましょう。
仕掛けはひとまわり大きくして一発大物を狙おう
乗っ込みの時期のフカセ釣りは、しかるべきポイントさえ確保できれば、ターゲットの魚は産卵前の荒食い、あるいは産卵後の体力回復のための荒食いをしているはずです。他のシーズンよりも大型の個体が高活性で数多くいると決め打ちし、仕掛けのサイズをひとまわり大きくしても良いでしょう。クロダイ狙いのウキフカセ釣りであれば、メインラインはナイロン2.5号~3号、ハリスはフロロカーボンの2号~2.5号で、50cmオーバーの、いわゆる「年なし」に挑みたいですね。
春のフカセ釣りはコマセにひと工夫
春の乗っ込み狙いのフカセ釣りは、シーズン序盤はまだまだ水温が低く、一か八かの釣りとなりますことが多いです。この時期はまだエサ取りもさほど多くないので、とにかくマイクロベイトを集める配合で始めることで、比較的本命を早めに寄せることができるでしょう。
アミやサナギ、ニンニク粉などを混ぜる
フカセ釣りのコマセのレシピは無限にありますが、基本のレシピは配合コマセに刺し餌に使うオキアミブロックを混ぜますが、ここにアミコマセを混ぜると集魚効果が高まります。アミは粒が小さく、マイクロベイトが食いつきやすい利点もあります。サナギ粉やニンニクパウダーなど、においが強いものを添加するのも集魚効果が高いためおすすめです。
まずはマイクロベイトを集める
水温が低く、活性が上がっていない状況の場合、嗜好性の高いレシピでマイクロベイトを寄せて、それを狙うベイトフィッシュを集め、さらにそれを狙う本命魚を寄せて、自分の足元にポイントを作ります。春先のマイクロベイトはオボコ(ボラの稚魚)が多く、桜の季節を過ぎると稚鮎が多くなります。どちらも捕食者の嗜好性が非常に高いマイクロベイトであり、これが集まってくればチャンスです。
エサ取りが増えすぎてしまったらコマセワークでエサ取りを分断する
しかし、フグや小サバなどのエサ取りが増えてしまったら本命狙いどころではなくなってしまいます。そんなときは、コマセワークを駆使し、エサ取りと本命を分断する工夫をしましょう。エサ取り用のコマセは足元に撒いて留め置き、本命用のコマセは遠投し、遠投したコマセに這わせるよう仕掛けを流します。もし潮が横方向に速く流れているようであれば、潮下にエサ取り用のコマセを撒き、自分のいるポイントからエサ取りを遠ざけます。そして頃合いを見て潮上に本命用のコマセを遠投し、自分の正面で仕掛けが馴染むように工夫します。
春のフカセ釣り・その他の注意点
これまで説明したように、春のフカセ釣りは、天気や水温などのコンディションが不安定で、毎日水中の状況が変わっていることが多いため、昨日爆釣した方法が今日は全く通用しないということがよくあります。そのため、釣りを始める際の仕掛けのセッティングが難しいです。以下に、仕掛けのセッティングの注意点をいくつか記載します。
底取りは必ず、正しく行う
クロダイを狙うなら、必ず底取りは行わなければなりません。クロダイは基本ボトム狙いなのですが、正しく底取りが行われていないと、食いつきが悪くなるだけでなく、運よく食いついたとしても、正しい場所にフッキングさせることができません。釣りを始める前に、針先にウキの浮力を超える重量のオモリをつけて仕掛けを沈めます。
ウキ止めまで仕掛けが沈んだ後、ウキが一緒に海中に沈むようであれば底が取れていない(仕掛けのタナが浅い)ので、ウキ止めを少しずつ上げて、ウキが正しい位置で自立するよう調整します。逆に仕掛けが着底した際にウキが沈まず、ラインスラックが出てしまう場合はタナが深すぎますので、ウキ止めを少しずつ下げ、ウキが正しい位置で自立するまで調整します。
だからと言ってボトムが正しいタナとは限らないのが春のフカセ釣り
底取りは正しくできていると言っても、先ほど述べたように、春は毎日のように水中のコンディションが変わります。強風で海が荒れるたびに水温や水質が異なる海水が流入してくることに加え、水がかき回されることにより、プランクトンが広いレンジに拡散し、結果としてターゲットのタナがボケてしまいます。
底取りは確実に行わなければなりませんが、タナはこまめに調整して、本命のアタリが出やすいところを探さなければなりません。一度本命のアタリが出たタナは必ず覚えておき、そのレンジを中心にして、10センチ単位と細かいタナ調整を頻繁に行います。
ひたすら藻場を打て
乗っ込みで接岸した魚が産卵する場所は、浮遊性卵を産み落とすタイプの魚種も、粘着性卵を産み付けるタイプの魚種も含め、ほとんどの種で、海藻が生い茂る藻場です。そのため、藻場の際に仕掛けを落とし、仕掛けをコントロールしながら藻場の中へ果敢に送り込み、産卵場所を探しているターゲットを狙います。
当然このポイントは根掛かりのリスクがありますが、果敢に責めなくてはなりません。どうしても根掛かりで釣りにならないと思う場合は、針だけをワンサイズ小さいものに変え、付け餌の先から針先が出ないようにつけると若干ではありますが根掛かりが軽減します
藻場には本命魚の他にもたくさんの魚種が身を潜めていますが、魚たちにとって藻場は他の場所よりも天敵に見つかる危険性が少ない場所と認識されていますので、しっかり攻略しましょう。
フカセ師にとって乗っ込みは一大イベント。チャンスを逃すな!
いかがでしたでしょうか? 春のタフコンディションを強調するような記事となってしまいましたが、春の釣りは本当に風や波との闘いであることが多く、非常に苦戦を強いられますが、それを差し引いてもあまりある魅力があります。乗っ込み時の気の荒いクロダイを掛けた時の強烈なファイトは、他のシーズンではなかなか味わうことができません。
私は普段はメジナ狙いで、クロダイがいそうな気配があれば深タナにして針をチヌ針に交換してクロダイを狙うというスタンスなのですが、厳冬期から春の乗っ込みシーズンにかけては仕掛けもコマセもクロダイをターゲットにしています。条件がハマれば一発大物も狙える乗っ込みシーズンのフカセ釣り、オススメです!!