程度のロッドを使用します。本気で投げることはしないので、20号くらいのシンカーまで投げられます。釣りデビュー戦であれば、あまり高価なロッドは不要ですが、最低でも、伸ばしてみてガタガタしないもの、ガイドがきちんと固定できるものを選びましょう。メーカーも分からない、ロッド、リール、仕掛けの激安セットのようなものは買わないほうが賢明です。
リールは汎用スピニングリールの2000番を準備しましょう。リールの価格はそれこそピンキリで、2000番のスピニングリールだと、店頭価格980円くらいから、7万円くらいまであります。ちょい投げ釣りで使うだけなら5,000円くらいのリールで十分でしょうが、少なくとも、メーカー名もモデル名もどこにも表記されていないような激安リールは避けましょう。リールもロッドも、軽くなればなるほど高価になりますが、まずはエントリーモデルをもとめ、基本操作を覚えましょう。
ラインはナイロン3号をスプールいっぱいに巻きます。テーパーライン(力糸)は、ちょい投げ釣りには必要ありません。ナイロンラインは、吸水劣化する性質があり、吸水して膨潤すると著しく強度が下がります。そのため長期耐久性の点では不利なラインではありますが、しなやかで適度な伸びがあり、初心者にも扱いやすいラインです。最近はコーティング技術の進歩で、吸水劣化しにくいナイロンラインもたくさん販売されていますが、そうした高性能ナイロンラインは非常に高価です。
そのため、初心者がちょい投げ釣りで使うラインであれば、釣具量販店のオリジナルブランドの安いナイロンラインを2号、3号、4号と常備しておき、釣行3回程度で惜しみなく巻き替えるなどして、常に新しいナイロンラインを使い、傷つきによる強度低下や、癖付きによるライントラブルを回避しましょう。
釣具量販店のオリジナルブランド品は、量販店を運営する会社が、信頼のおけるメーカーと判断した外注先に製造を委託しているケースが殆どで、品質は必要最低限確保されています。ラインのボビンやボビンケースなどに、「製造元」の企業名や住所が記載されているものは信頼できる商品と判断できるでしょう。連絡先が「販売元」のみでも、きちんと企業名と連絡先が記載されている製品は、最低限の品質は保証されていると判断してもOKです。
メインラインと仕掛けの間に取り付け、仕掛けを飛ばすのに必要なシンカー(錘)と仕掛けを取り付けるための道具を天秤といいます。様々なタイプの天秤が売っていますが、ビギナーアングラーが使いやすいのは「ジェット天秤」と呼ばれるものです。これは、連結された二本の金属シャフトの上側シャフトに弾丸状のシンカーが付いているものです。シンカーが付いている側のシャフト先端にメインラインを、何もついていない側のシャフトの先端に仕掛けを取り付けます。天秤サイズは8号~10号を、潮の流れがきつい時は15号以上を使用します。
仕掛けは市販のちょい投げ仕掛けを使用しましょう。2本針仕掛け、3本針仕掛けがありますが、おすすめは、よりトラブルが少ない2本針仕掛けです。サイズは、当日どんな種類の魚か、どの程度のサイズの魚が釣れるのかわからないので、幹糸2号、ハリス1号~1.5号、針は流線形、丸セイゴの2種類を数サイズ(1種類あたり3サイズ用意出来れば理想的)準備しましょう。根掛かりがなくても、フグやカワハギなどがかかると高確率でハリスを切られてしまいます。仕掛けは潤沢に用意しましょう。
手を洗うため、納竿後に釣り場を掃除するためなど、海面から水をくむ場面は非常に多く、水汲みバケツは必須です。堤防から水面までの距離を考慮し、8m前後のロープおよび糸巻きが付いているものが必須です。糸巻きを決して手放さないようにしてバケツを海面に投げます。投げた後、バケツの開口部が下を向き、沈みやすくなるように、フチに錘が付いているものや、中に魚が入った状態で、スカリ(魚を入れたまま海中に投入し、魚を生かしておく道具)代わりにも使えるよう、開口部にメッシュのフタが付いているタイプなどもあります。
あまり容量の大きなものは、海中からバケツを引き上げるのが大変になりますので、大きくても8リットルくらいまでにしておきましょう。また、多くのビギナーの釣り人が用途を誤っているのですが、水汲みバケツに水を入れた状態で、地上で魚を入れたままにしておく人が多いのですが、水量が少ない水汲みバケツの中の水はすぐに温度が上がり、一気に魚が弱ってしまいます。水汲みバケツは魚を生かしておくものではありません。どうしても魚をいれて生かしておくなら、専用のクーラーボックスと酸素供給ポンプを用意するか、生かし用のスカリを用意するか、水汲みバケツごと海中に沈めておかなければなりません。
ちょい投げ釣りをする場合のエサはアオイソメで決まりです。アオイソメを食わない魚はほとんどいません。どこの釣具店でも手に入り、価格も安いため、究極の万能エサとして、陸っぱりでは最も多用されている釣りエサです。ロッド1本あたり50匹も用意しておけばほぼ半日使えるでしょう。アオイソメのサイズが選べるのであれば、太すぎず、細すぎない「中」サイズをおすすめします。もしターゲットが明確にある場合は、例えば、シロギス狙いならジャリメ(イシゴカイとも言われる)を、イシモチ狙いならイワイソメ(マムシ、ホンムシとも)を使うとより効果的ではありますが、まずはアオイソメが万能です。
ちょい投げ釣りの具体的なやり方について説明します。針にエサをつけたら、ロッドの先端から天秤まで50cm~1m程度のタラシをとり、リールのラインローラー部にかかっているラインを、リールフットを握っている手の人差し指ですくい取り、ベールを上げます。そして、ロッドを肩の後ろに担ぐように構え、後方に人や物がないか注意しながら、竿を軽く、まっすぐに振り下ろします。
ロッドを振り下ろす際、ロッドが頭の上を追加する瞬間にラインを押さえている指を離すと、仕掛けがまっすぐ飛んでいきます。ちょい投げ釣りですので、あまり強く振り下ろす必要はありません。30m程度飛ばせれば充分です。仕掛けが着水し、ラインの放出が終わったら、すぐにベールを下ろし、ラインスラック(ラインのたるみ)をとるためにリールのハンドルを数回転回し、ラインをピンと張ります。この状態で待っているだけでも、活性の高い時は魚は釣れますが、ハンドルをゆっくり回して仕掛けを巻きとりながら(この動作をサビくと言います)、エサを動かしていくと、様々な魚が食いついてきます。
活性の高い時は、人間が歩く程度の速さで、食いが渋い時は、サビくスピードを半分以下に落とします。仕掛けを引いて行くと、突然重く感じる場所があると思います。そういうところは砂地であれば「ヨブ」といい、波が作ったくぼみで、魚が好む場所です。こういうところで暫く仕掛けを止め、アタリを待つのも良いでしょう。砂地でない場所で巻きが突然重くなる場合は、根に錘が触っている可能性が高いため、ロッドをあおって錘を跳ね上げ、素早く巻き取って根掛かりを回避します。
堤防からのちょい投げ釣りには、いくつか注意点がありますので説明します。
堤防は人気の釣りスポットとして、特に休日は多くの釣り人が訪れます。そんな中で、短い距離のキャストとはいえ、右に左にと仕掛けが飛んで行ってしまっては、他人の仕掛けと絡めてしまいます。ミスキャストしたときは素早くリールを巻いて仕掛けを回収し、真正面にキャストをしなおしましょう。譲り合いの精神が気持ちよく釣りを行うための鉄則です。
「置き竿」と「放置」は、意味が全然違います。「置き竿」は、仕掛けをキャストした後、三脚などにロッドを立てかけてアタリを待つことですが、アングラーは竿先に常に注視し、アタリを見逃さないように見張っている状態です。この状態は、ラインがたるんだら適宜リールを巻いて、ラインスラックをとるなどして、仕掛けを常にケアしている状態ですので問題ありません。
しかし、ロッドを立てかけたところまでは同じでも、そこで仕掛けから目を離してしまっている状態が「放置」です。錘をつけていても、仕掛けは潮流で簡単に流されます。知らぬ間に大きく右に左にと流され、気が付いたら隣の人の仕掛けに絡まっているなんていうトラブルが続発します。「放置」は絶対にNGです。トイレに行く、飲み物を買いに行く、他人の釣果を偵察するなどで、自分のタックルから目を離す場合は、必ず仕掛けを回収した状態にしておかなくてはなりません。仕掛けを投入したままの「放置」は、最大の迷惑行為と言っても過言ではありません。
堤防は、壁際に各種プランクトンや貝類や甲殻類といった、多くの魚のエサとなる生物がたくさん着きます。これらを狙う魚や、堤防の割れ目にできた隙間や、波の力で堤防が破壊されないように一定距離ごとに設けられた堤防の切れ目など、地形の変化点に魚が集まります。こういう足元には、一発大逆転的な大物が潜んでいることもあります。キャストして広範囲を探ることももちろん重要ですが、足元もおろそかにせず、丹念に探りましょう。私の経験では、カサゴ、アイナメなどの根魚や、クロダイ、メジナなどの磯上物は堤防の足元で大型が釣れることが多いです。
肩ひじ張らずに、お金もあまりかけず、気軽に近所の堤防で竿を出し、まずは釣りをはじめてみましょう。最初のタックルは必要最低限の品質が保証されているもので充分です。不思議なもので、初めての釣りには「ビギナーズラック」という不思議な力が働くことが多いようです。デビュー戦で釣った魚が最大の大物というアングラーもたくさんいます。2020年に引退したプロアングラーの児島玲子さんも、某アウトドア番組で、初めて渓流釣りに挑戦し、そこで釣った47cmのイワナが、その後もまったく更新できなかった最大サイズだったと言っています。堤防でのちょい投げ釣りも、そういうビギナーズラックが降臨する可能性の高い釣りだと思います。最初に成功体験が得られれば・・・あとはどっぷりと、釣りの底なし沼にハマってください!!
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