ベイトリールで飛距離を出すには、ブレーキセッティングとラインチョイスを徹底的に追い込もう!
作成:2023.01.16更新:2023.01.16
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慣れれば片手で操ることができ、狙った場所をピンポイントに撃つことができる操作性と、コンパクトなボディに似合わない巻き上げパワー、そして、エルゴノミクス(人間工学)を極め、徹底的に無駄を省かれたデザイン性から、ベイトタックルを愛用している人が劇的に増えています。特にフレッシュウォーターでのバス・トラウトフィッシングでは、ベイトタックルを常用するアングラーの方が多いと言えるでしょう。ソルトウォーターのシーンでは、ロックショアゲームを中心に、ベイトタックルの使い手が大勢います。そうしたベイトタックルを常用するアングラーに共通する悩みが、バックラッシュ対策と、飛距離を1メートルでも上げたいということではないでしょうか?
ベイトリールを使いこなすには練習を繰り返し、身体で覚えることが必要ですが、一度ベイトリールの使い方を習得したら、スピニングタックルよりも優れた点がたくさんあります。今回は そんなベイトタックルで飛距離を上げるための方法について考えてみたいと思います。
ベイトリールの長所と短所
まずは、ベイトリールとスピニングリールを比較した際の、ベイトリールの長所と短所について簡単に説明します。
ベイトリールの長所
- 巻き上げパワーが強い
- ラインに巻き癖がつきにくい
- 太いラインが使える
- キャスト時のコントロールがスピニングリールよりつけやすい
- 慣れると手返しよく片手でキャストができる
ベイトリールの短所
- バックラッシュが起こりやすい
- ブレーキの設定が慣れるまでは難しい
- ハンドルの左右付け替えができない
- 軽い仕掛けは飛距離が出しにくい
ざっとこのような感じです。
バックラッシュへの対処と、バックラッシュを未然に防ぐためのブレーキ調整さえ克服できれば、スピニングリールよりも享受できるメリットが多いのは紛れもない事実です。ベイトリールを使いこなし、飛距離を出すためには、「ブレーキ設定をこれ以上緩めたらバックラッシュが出てしまうというギリギリのところまで弱くして、スプールの回転の抵抗をなくすこと」に加え、「できる限り細いラインを使用し、放出抵抗を極力軽減させること」、この二つを両立させなければなりません。そのために、ベイトリールの選び方、装備されているブレーキ機構と、その設定の仕方について、スピニングリールよりも真面目に知っておく必要があります。
飛距離を追求するベイトリールの選び方
ベイトリールと一口で言っても、キャスタビリティの高いモデルとそうでないモデルがあります。落とし込み釣りなど、主にオフショアでバーチカルに使用するベイトリールと、ショアを中心にキャスタビリティの高いベイトリールがありますので、よく確認しましょう。基本的に、大口径スプールを搭載し、かつ、シマノでいう「デジタルコントロールブレーキ」「SV BOOST」および「T-WING System」が搭載されているものがキャスタビリティが高いベイトリールと言えるでしょう。
シマノ・デジタルコントロールブレーキ
シマノのデジタルコントロールブレーキは、文字通り、ブレーキ操作をデジタル制御で行うもので、スプール側に超小型マグネットが、スプール受け側に回転センサーとコイルが内蔵されていて、スプールが回転するとコイル部に電気が発生し、センサーがスプールの回転スピードをセンシングし、スプールの回転スピードがMAXになるところで自動でブレーキが発動し、以後着水まで断続的かつ緩やかに制動がかかり飛距離を確保しつつバックラッシュを軽減するという大変頼もしい機構です。電子部品を搭載しているため、機構の重量がかさむ、カスタマイズやメンテナンスが難しい、修理費が高額となりがちなど、というデメリットもありますが、メカニカルブレーキの調整だけで、あとはすべて機械任せの手軽さで、ほとんどトラブルレスで使えるのは大変魅力的です。
ダイワ・SV BOOST
SV BOOSTとは、ダイワ独自のマグネットブレーキシステム「Stressfree Versatile Spool(ストレスフリー・バーサタイル・スプール)」の進化版です。SVスプールは、スプール中央部に、インダクトローターという、非磁性導電体でできた円筒状のパーツが、サイドプレート内に設けられた2個の磁石のリングの間に非接触で格納される構造のスプールで、キャスト時のスプールの回転に応じて、回転の方向と逆の方向に渦電流が発生し、電磁誘導ブレーキがかかるものです。ブレーキ力となる誘導電流は、スプールの回転スピードに比例しますので、キャスト開始から着水まで、最適なブレーキがかかり続けます。
SV BOOSTは、このシステムの進化系で、スプール内のインダクトローターの磁石内への飛び出し量が2段階になることで、キャスト直後のスプールスピードがMAXとなるタイミングでのブレーキ制御に加え、飛行する仕掛けの弾道が頂点を過ぎ、着水に向けて落下を始めるタイミング、スプールの回転が一気に落ち始めるタイミングでさらに1段階弱めのブレーキがかかり、着水直前にブレーキがフリーとなる、いわゆる「最後のひと伸び」を実現させるコントロールが可能となり、軽量ルアーから重量ルアーまで、さまざまなタックルの飛距離を最適化しながら、ライントラブルを極限まで低減することに成功しています。
ダイワ・T-WING System
T-WINGとは、ダイワ独自のレベルワインダーのことです。レベルワインダーは、ベイトリールのスプールに均等にラインを巻くために必要な機構です。スピニングリールの場合はスプールを取り付けているシャフトが上下することで、ラインをスプールに均等に巻きますが、ベイトリールの場合は、レベルワインダーが左右に動きながらラインを均等に巻いて行きます。しかし、キャスト時は、ラインがレベルワインダーにどうしても接触しながら放出されるため、抵抗となってしまいます。
これを回避するために、レベルワインダーが大きな逆三角形をしており、クラッチ操作と連動し、クラッチを切るとレベルワインダーが前傾するように沈み、逆三角形の上部の長辺の間をラインが自由に動きながら放出されます。キャスト終了後、クラッチをつなぐと、沈んでいたレベルワインダーが元の位置に起き上がり、逆三角形の下部に設けられたラインガイドにラインが収まり、レベルワインダーとしての役目を果たします。この、逆三角形ねラインガイドが「T-WING」と呼ばれ、このT-WINGとクラッチが連動する一連の機構を「T-WING System(TWS)」といいます。
ベイトリールで飛距離を追求するためには、これらの機構が搭載されているモデルを選ぶのが賢明です。しかし、どうしても価格が高くなってしまうのが難点です。
安価なベイトリールで飛距離を出すために必要なこと
ハイエンドクラスのベイトリールを選べば、当然ライントラブルが少なく、いい加減に扱ってもそれなりに飛距離も出て、ストレスの少ない釣りができるでしょう。しかし、エントリークラスのベイトリールの場合は、ストレスなく使うためには、慣れと訓練が必要です。
飛距離を上げるためにはあらゆる「摩擦抵抗」を排除する必要がありますが、抵抗を排除するとバックラッシュのオンパレードとなります。このトレードオフの関係にどこで折り合いをつけるか、ギリギリのところを追い込まなくてはなりません。
ベイトリールのキャスト機序を頭と体で覚える
ベイトリールのキャストは、スプール自体が回転し、ラインを放出しますが、スプールの回転スピードがラインの放出スピードを超えた瞬間、必ずバックラッシュが起こります。キャスト時、スプールの回転スピードがピークになるのはキャストの瞬間ではなく、リリースしてから0.1秒程度あとになりますので、そのポイントで一瞬軽く指でスプールに触れ、スプールの回転スピードをわずかに抑えてやることが必要です。
この操作を、ブレーキシステムに頼らず自力で行うことができれば理想です。しかしそれには多くの時間を割いて練習を繰り返す必要があります。そうして放たれた仕掛けは、着水直前まで、徐々にスピードと高度を落としながら飛んで行きます。着水直前は、指でスプールを押さえ、スプールの回転を完全に止めてやると、バックラッシュすることなく着水させることができます。と、文字で書くのは簡単ですが、これができないから、さまざまなブレーキ機構が存在するわけです。まずは頭の中で、トラブルなく飛距離が稼げるベストな一投をイメージし、ブレーキをかけるべきポイントおよびブレーキの強さを頭の中でシミュレートし、そのシミュレーション通りに最小限のブレーキで最大の飛距離が出せるよう、ブレーキの設定を行いましょう。この、ベイトタックルのキャスト機序とスプールの回転スピードの関係を頭で理解していないと、対策のしようがありません。
メカニカルブレーキの設定は原則「ゼロポイント」に固定
メカニカルブレーキの設定は、ベイトリールの設定を始めるにあたり、一番最初に設定する部分です。ビギナー向けのHow to本などでは、ルアーの重量に合わせて、ルアーをぶら下げた状態でクラッチを切った時にスプールがゆっくりと回転し、少しずつラインが出て行く程度に設定すると良いと書いてあることが多いですが、それだと抵抗が大きくなり、バックラッシュの危険性は低減しますが飛距離が伸びません。
メカニカルブレーキは、スプールを指で押さえて左右にゆすった時にガタが出る寸前ぎりぎりのポイントまで緩めます。この、スプールのガタが出るか出ないかぎりぎりのポイントのことを「ゼロポイント」といいます。もちろん、バックラッシュのリスクは上がるかも知れませんが、飛距離を上げたければ、ここは果敢に攻めましょう。スプールのシャフトがメカニカルプレーキで必要以上にボディに押さえつけられていると、いくら遠心ブレーキやマグネットブレーキなどのメインブレーキを調整しても飛距離は伸びません。
メインブレーキの調整
シマノのベイトリールに多く搭載されてる遠心ブレーキと、ダイワやアブガルシアのベイトリールに多く搭載されているマグネットブレーキでは、ブレーキの効く原理が全く異なります。遠心ブレーキは、スプールの回転により発生する遠心力の強さに比例してブレーキシューと呼ばれる小さな樹脂パーツがリング状のライニングに物理的に接触することで摩擦力を与えてブレーキを掛けるものですが、マグネットブレーキは、強力なネオジム磁石を5個~6個、極性を互い違いに並べたケースに発生する磁界の中を導体が回転するときに発生する誘導電流の作用で非接触ながらスプールの回転にブレーキをかける仕組みです。仕組みは全く異なり、ブレーキ調整の方法も異なりますが、どちらも、はじめはブレーキを強めにしてキャストし、キャストごとにバックラッシュが起こるか否か確認し、バックラッシュが起こらなければ徐々にブレーキ設定を緩めて行きます。
着水前のサミングは必ず実行すべし
これでメカニカルブレーキ、メインブレーキともに、バックラッシュぎりぎりを狙った設定になりました。飛距離は最も出せる設定になっているはずです。しかし、この設定で投げればトラブルなく飛距離が稼げる設定となっているかと言えば決してそうではありません。アングラーはサミングのテクニックを適切に使わなければなりません。どういう場面でサミングを使うべきか、もうお分かりですね。着水直前にスプールの回転を止めるケースはもちろんですが、仕掛けの飛行中も、スプールの回転スピードがラインの放出スピードをわずかに上回っているケースでは、バックラッシュとまでは行かなくても、ラインがスプールから浮き上がってくる、いわゆる「モモる」と呼ばれる状態になってきます。バックラッシュになってしまう前に、軽くスプールを指で触れ、スプールの回転スピードを落としてやる必要があります。仕掛けの飛行中も決して目を離さず、適宜「ポン」とサミングを入れてやることができるようになれば、バックラッシュ問題は解決するはずです。
ラインは限界まで細くする
ベイトリールの飛距離を伸ばすための方法として、もう一つはラインを細くすることがあります。スピニングタックルにも言えることではありますが、ライン放出時はスプールの抵抗、レベルワインダーの抵抗、ロッドガイドの抵抗、それらに付着した水滴の影響、風の抵抗など、飛距離を阻害する抵抗だらけです。これらを小さくしてやらなければなりません。しかし、ただ細くすればいいわけではなく、当然強度とのバランスを考慮しなければなりません。メインラインにナイロンやフロロカーボンを使っている場合は、PEラインに変更することで、強度を維持したまま劇的に飛距離を向上させることができますが、PEラインでのバックラッシュはほぐすことが出来ず致命傷となってしまうことがあるので、普段ベイトリールでPEラインを使っていない方は、十分取り扱いに慣れてから行いましょう。
ナイロンラインやフロロカーボンラインを細くする場合は、号数を1落とすと4ポンドほど引張強度が落ちますので、普段より根ズレなどによるラインの傷つきにはナーバスになる必要があります。ラインの状態はこまめにチェックしましょう。できれば0.5号単位(2ポンド)や0.25号単位(1ポンド)など、小刻みに号数を落としていくことをおすすめします。
ベイトリールは慣れてしまえばスタイリッシュで攻撃的なタックルです!
ベイトリールは、スピニングリールと比較するとやはり手軽に使えるといったツールではないですが、仕組みを覚え、正しく扱えるようになれば、メリットがたくさんあります。コンパクトなボディながらビッグフィッシュを力でねじ伏せるパワーがありますし、片手で正確なキャストができるため、厳しいポイントにピンポイントでルアーを撃ち込むことができます。スピニングリールのように、ラインがスパイラル状に癖がつくこともなく、快適な釣りを長く楽しむことができます。
使いはじめのセッティングも一度コツを掴んでしまえば、あとは自分の力量の向上度合に応じて少しずつ自分が求めるキャストフィールに近づけて行くべくチューニングすることもできます。是非、自分の意のままになるよう、ベストの設定値を探してみて下さい。貴方のアングラーとしての幅が広がること間違いナシです!