ベースとなる配合コマセに加えるのが、オキアミブロックもしくはアミエビブロックです。釣具店で冷凍になったものが売っています。集魚効果としてはアミエビが最強ですが、食わせにもオキアミを使い、コマセと食わせを同期させて確実に本命を狙うのであればオキアミを使用します。釣具店では、「4切」、「8切」、「16切」などと表記されて売っていますが、オキアミとアミエビではブロックの原板の重さが異なるので注意が必要です。オキアミブロックの原板は24kg、アミエビの原板は16kgです。すなわち、オキアミブロックの場合は、4切=6kg、8切=3kg、16切=1.5kgとなり、アミエビブロックの場合は、4切=4kg、8切=2kg、16切=1kgとなります。配合コマセの袋の裏に、配合コマセ1袋あたりのオキアミブロックまたはアミブロックの添加量が記載されているので、指定量を混ぜます。
尚、釣具店にあらかじめ予約しておけば、解凍した状態の商品を買うこともできますが、凍ったままのブロックを購入する場合は、前日にバッカンに配合コマセを入れておき、その上に凍ったままのブロックを置いておきます。先にブロックをバッカンの底においてから配合コマセを上に敷くと、バッカンがかなり汗をかき、バッカンを置いている床が濡れますので、必ず先に配合コマセを入れて、その上にブロックを置き、臭いが出ないようバッカンを密閉して自然解凍します。翌朝、現地入りした頃には解凍されているので、指定量の海水を加えてよく混ぜるだけですぐコマセが出来上がります。
コマセを混ぜる際の注意点として、海水の添加は、配合コマセに記載の指示量を必ず守ることと、一度に加えるのではなく、少しずつ加えていくということです。最初は規定量の半分程度をまわしかけ、全体に水分が行き渡るようにして、まとめながら混ぜて行きます。この時、アミエビを添加している場合は、マゼラーという道具を使ってアミブロックを細かく切りながら一気に混ぜて行きます。
そして残りの水を加えながら、全体にアミエビが均一に混ざるように更によくかき混ぜ、全体をまとめて行きます。オキアミブロックを添加している場合は、オキアミの形をそのまま残したいので、マゼラーは使わず、素手で丁寧に混ぜて行きます。素手で混ぜるのが嫌な方は、長めのゴム手袋をはめて、オキアミを崩さないように混ぜて行きます。食わせのオキアミとコマセのオキアミを海中で極力同化させる必要があるためです。
上記で作った基本のコマセで大抵のフカセ釣りをカバーできますが、比重の調整のため、あるいは経済性を上げるための増量剤や、集魚効果を上げるための添加材など、基本のコマセに加えて付加機能をもたらす添加材もたくさん売っています。必須ではありませんが、これらを使ってみるのも面白いでしょう。添加剤には以下のものがあります。
「オカラダンゴ」や「ホワイトパワープラス」などが有名です。単体で使うことはなく、配合コマセに添加して、遠投性を上げたり、煙幕効果を付与したり、また水分を吸って3~4倍に体積が膨張するため、コマセの増量効果を狙ったり水分量を調整したり、様々な機能を付与できる添加材です。最初からベースのコマセに混ぜるのではなく、状況に応じて適宜使うのが賢い使い方と言えます。
最も多く使う状況としては、雨天でバッカンに雨が入り、水分が多くなりすぎた際に少しずつ投入し、硬さを元に戻す用途かも知れません。意外な添加剤としては、現地の砂も重要な添加剤になります。比重を重くでき、ボトムにコマセを送りやすくなります。特にコマセを柄杓で撒くのではなく、ダンゴに握って投入する場合は、コマセに現地の砂を混ぜるのは必須です。
コマセを撒くと、本命魚以外にも様々な魚を寄せてしまうという面を持っています。特に、アミエビフロックを入れすぎたような場合、集魚効果の高まりすぎが顕著になってきます。その結果、本命魚の数百倍、外道を寄せ付けてしまい、釣りにならないなんてこともあります。
そんな時、本命魚の嗜好を考えて、外道はあまり好まないけれど「本命魚には効く」添加材もあります。クロダイ狙いのコマセであればサナギ粉、コーン粒、砂糖漬けにしたスイカなどがあります。メジナ狙いのコマセであれば海苔、パン粉、押し麦、米ぬかなどです。これらを添加することで、多少ですが、外道の猛攻を緩和しつつ、本命が寄りやすい環境を作り出すことができます。
その他にも様々な添加剤があります。アミノ酸の液体や魚油、魚粉など、におい成分やうまみ成分をアップさせる専用の添加材から、コマセの変色を抑制する添加剤や、オキアミの身を締める添加材など、釣具店には様々なコマセ用添加剤が売っています。また、釣具店には売っていなくとも、みりん、醤油、砂糖、おから、酒粕、味噌など、人間が使う調味料や発酵食品などもコマセを強化する添加剤となり得るので、いろいろ試してオリジナルのレシピを作るのも一興です。
コマセはむやみに撒いても意味がありません。あちこちに撒いてしまっては、ポイントが分散してしまい、狙うべきポイントが分からなくなりますし、大量にエサ盗りを寄せ付けてしまいます。そのため、様々なテクニックが必要になります。その中でも、最も重要なテクニックとされているのが、「コマセと食わせの同期」です。
すなわち、コマセが着水した後、コマセがどの方向に流れて行き、どのくらいのスピードで沈み、ターゲットのタナに到達する時にどの辺にコマセがあるか、そして、コマセがターゲットのタナに到達したとき、そのコマセの中に食わせの餌がきちんとあるかどうか? これに尽きます。潮の流れは複雑で、刻一刻と変わっています。また、表層と中層以深では潮の流れが違っていることもあります(二枚潮といいます)。また、対流により上昇している潮(湧き潮)、下降している潮(潜り潮)もあります。これらの海況をすべて見極めることは不可能ですが、いくつか覚えておくと良いポイントがありますので、以下に解説して行きます。
これはわかりやすいかと思います。自分が投入する仕掛けよりもコマセの方が潮下に流れて行ってしまっては、刺し餌を食わせることはできません。必ず潮上にコマセを撒き、その後仕掛けを投入るようにします。コマセの投入ポイントと仕掛けの投入ポイントをどのくらい離すかは、潮の流れのスピード、コマセの比重、ターゲットがいるであろう水深などによって変わります。
打ったコマセがどのように流れ、どのように広がってゆくのか、どのように沈んで行くのかを具に観察し、ベストの距離をはじき出す必要があります。先に仕掛けを投入し、自分のウキをめがけてコマセを撒くのは、無風かつベタ凪の場合を除き、正しいコマセワークとは言えません。
コマセが正しく効いていて、本命がコンスタントに釣れているときは必要ありませんが、エサ取りの猛攻がキツい時は、エサ盗りと本命を分断する必要があります。そのため、エサ盗りを自分の足元に集めて足止めさせると効果的です。そしてすかさず本命用のコマセを狙ったポイントに投げます。
ここで重要なのは、本命用のコマセを投げるとき、投入予定ポイントまでの途中にコマセが着水しないようにすることです。飛行中にコマセがバラバラになって、狙ったポイントより手前に着水してしまうと、エサ盗りを分散させてしまうことになるからです。コマセ柄杓で掬う際に、バッカンの壁に掬ったコマセを良く押し付けてまとめ、コマセが飛行中にバラけないようにする工夫が必要です。
コマセを遠投する際に、オーバーハンドで投げる人がいますが、オーバースローキャストはコマセがばらけやすいため(コマセ柄杓のカップ内面に不粘着加工が施されているものであればオーバースローも可)、初心者は遠投の場合でもアンダースローでコマセを投げることをおすすめします。コマセ柄杓は、できるだけカップが小さく、シャフトが細くて長いものを使いましょう(70cm以上が理想)。手首のスナップとシャフトのしなりの力を利用し、小さなアクションで遠くへコマセを飛ばします。
コマセを潮上に打ち、仕掛けをコマセの潮下に投入し、10秒程度経過したタイミングで、最初にコマセを打った潮上の場所にコマセを追い打ちします。道糸やハリスの抵抗があるため、どうしても沈降のスピードはコマセよりも遅くなります。刺し餌はコマセの中に同期させ、紛れさせておかなくてはならないので、刺し餌の上にもう一度コマセの塊を形成させ、刺し餌を包み込んでもらうためです。
その後は、ラインを出しながら仕掛けが流れ行く先を見極め、コマセを少しずつ、かつ絶え間なく打って行きます。アタリが出なければ、刺し餌が到達した水深がターゲットの泳層と合っていないか、コマセと食わせの同期ができていないか、そもそもそこに魚が寄っていないかのいずれかとなりますので、仕掛けの浮力を調整する、一投目のコマセの着水ポイントを変えてみる、エサのつけ方はどうか? 針のサイズはどうか? など、考えられる対策を講じます。
潮の流れがとても速い場合の流心や、サラシ場のど真ん中などにコマセを打ってしまうと、コマセはあっという間に数十メートル先まで流されてしまい、ポイントが遠くなり、釣れなくなってしまいます。流心の手前の潮上に打つ、或いは、サラシ場の外縁部のサラシが出ていない部分に打ち、コマセが不必要に遠くに流されないように気をつけましょう。
当て潮とは、潮が自分の足元に向かって流れていることで、非常に厄介な潮です。仕掛けを投入してもほどなく自分の足元に流されてきてしまい、エサ盗りの格好の餌食になってしまう、非常に本命が釣りづらい潮です。当て潮の時は仕掛けを張ることが難しく、アタリ自体取りづらい状態です。こういう時の打開方法は、ハリスにジンタンを多点打ちして一気に沈めるように調整するか、仕掛けとコマセをできる限り遠投するしかありません。
仕掛け投入ポイントよりもさらに5m程度先にコマセを打ち、コマセが手前に流れながら沈み、刺し餌と同調するようにコントロールしなければなりません。当て潮の場合、コマセも足元の一点に集まることが多いため、思い切って足元にコマセを打ち、エサ盗りも本命も一緒に集めてしまおうという手もなくはないですが、当て潮は幅が狭いことが多いので、釣り座を左右に数メートル移動するだけで解消することもあります。ここは移動するか、辛抱するか、アングラーの判断が求められるところです。
私見ですが、沖磯など、アプローチ自体が難しい釣り場はさておき、地磯からのフカセ釣りは年々難易度が上がっているような気がします。釣り人口が増え、ショアでフカセ釣りをするアングラーが大量にコマセを撒き、人気スポットにおいては、そこに生息する魚の主食は釣り人が撒くコマセであるなんて言うことが実しやかにささやかれています。
その証拠に、メジナやタカノハダイなど、甲殻類や多毛類を主食としている時期は身が磯臭くないものの、海草類を主食としている時期には身が磯臭くなる魚が、コマセを通年主食とするようになってからは、一年中磯臭くない個体が激増したと感じます。そうした地域に生息する飽食の魚はスレた個体が多く、簡単には口を使ってくれなくなっているのかなと思っています。人気のフカセ釣りのポイントでは、アングラーが撒くコマセの量は、魚や他の生き物のエサとなって自然に消化できる量をはるかに超えていて、腐敗してヘドロ化した余剰コマセが海底に堆積し、環境悪化につながっていることにも目を向けなければなりません。残念ながら、特に漁港や釣り公園などではコマセの使用が禁止されている場所も増えています。だからこそ、コマセワークが重要になってきます。
最小限の量のコマセで本命を効率よく釣り上げるために、ターゲットの鼻先にコマセと食わせをピンポイントで送り込まなければならないのです。フカセ釣りのコマセワークは、まさにアングラーと魚の知恵比べ。妙味は潮を読み、コマセの流れを読み、仕掛けの流れを読み、ターゲットに口を使わせることにあります!
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