真冬にこそ釣りたいカワハギ、その釣り方と外道について解説します!
作成:2021.12.27更新:2022.03.04
目次
オフショアからはもちろん、ショアからでもほぼ一年中釣れるカワハギですが、真冬のカワハギは他のシーズンに釣れるものとはモノが違います。
カワハギの旬は年に2回ほどあります。まずは夏、産卵期前後の個体。こちらは筋肉が発達し、白身の肉の味が良い時期。そして2度目の旬が秋の終わりから冬にかけて、水温低下に備えて肝に脂肪を溜め込む時期で、「海のフォアグラ」と呼ばれるほど肝臓がパンパンに大きく発達します。いわゆる「肝パン」と呼ばれる状態で、この時期のカワハギは、肝に栄養分が蓄えられるため、身の味は夏のカワハギと比べると淡白になりますが、他の魚では味わうことができない濃厚な肝が最高に旨いため、これを目当てに厳寒の海でカワハギを専門に追い求めるアングラーも少なくありません。
そんな、夏も冬も抜群に旨いカワハギですが、釣るのが非常に難しい魚として知られています。理由は、カワハギ独特の摂餌行動と、口の小ささ、口周辺にフッキング可能な場所が少ないという、口の構造にあります。エサを突いていてもアタリが取りにくく、フッキングのタイミングも他の魚より成功エリアが狭く、釣り上げることが難しいとなれば、アングラーのチャレンジ精神をくすぐる格好のターゲットであることも頷けます。
カワハギ釣りが難しい理由
先程、カワハギ釣りは難しいと説明しました。もう少し丁寧に説明しましょう。
カワハギの特徴的な摂餌行動
カワハギ釣りが難しいとされる理由には、フグ目の魚の特徴的な行動である「ホバリング」があります。ホバリングとは、ヘリコプターが上空で止まった(ように見える)状態が代表的です。もちろん、実際にヘリコプターが止まっているわけではなく、揚力(浮き上がろうとする力)と重力(落ちようとする力)、推力(前進しようとする力)、抗力(進行方向と反対方向にかかる力)がすべて釣り合った状態で、結果止まって見える状態です。この動きを水中で出来る魚は実は非常に少なく、フグ目の魚などのごく一部に限られます。
特にカワハギのホバリング技術は卓越していて、水中で完全に停止しているように見えるよう、ヒレを微妙にコントロールしたり、水中でバックも出来たりします。すなわち、エサに対し、身体をぴったり止めた状態で齧ることができます。これが、アタリが分かりにくい理由のひとつです。そして、もうひとつの理由が、「口の形状と歯」です。フッキングポイントが大変狭いのです。おちょぼ口で、ホバリングしながらエサを突きながら慎重に捕食するため、ただでさえフッキングが大変なのですが、カワハギの口の中にはフグと同じ、板状の硬い歯が上下にあり、フッキングポイントを更に狭めています。ヒットポイントは、上顎の唇と、上下の板状の歯の間、口の横の僅かな部分に限られます。
そのため、一瞬のバイトを見逃さず、ピンポイントでフッキングさせる事ができる、針の先端の僅か数mmがカギ状に立ち上がっている「ハゲ針」が使われることが多いです。こうした理由で、カワハギ釣りは非常に難しいと言われます。
カワハギ釣りの仕掛け
カワハギ釣りの仕掛けは、ショアでもオフショアでも胴突き仕掛けを使います。オフショアの場合は3本針仕掛け、ショアからの胴付き仕掛けの場合は2本針仕掛けを使うのが一般的です。
仕掛けの先端にはシンカーをつけますが、シンカーの重さは現場の水深や風の有無によって決めます。カワハギ釣りでは、オフショアでも水深100m以深を狙うことはほとんどありませんので、シンカーは30号前後がMAXウエイトでしょう。ショアの場合は、キャスティングの場合は20号前後、ちょい投げや堤防の足元の場合は10号前後のシンカーで間に合うでしょう。
胴突き仕掛けは、幹糸からエダスを出して針をつけるのですが、カワハギ仕掛けはその日の状態で針の間隔を調整する必要があるため、エダスを取り付ける部分には、「ビーズ付き自動ハリス止め」を使うのが便利です。ビーズ付き自動ハリス止めとは、自動ハリス止めのハリスを固定するために潰れた形状の金属の反対側、すなわち、道糸を結ぶための環の部分がビーズになっているもので、ビーズの中心には、幹糸を通す穴が開いているものです。このビーズの穴に幹糸を通し、ビーズの上下の糸にはコブを作り位置を固定します。自動ハリス止めの部分には、ハリスの末端に抜け止めのコブを作り、ハリス止めの潰れた金属部分に挟み込みます。
ここで注意すべきポイントは、「針先が必ず上を向く」ように調整することです。針先が下を向いていたり横を向いていたりすると、フッキングの成功率が著しく下がります。これはショアでもオフショアでも同じです。
道糸の選定
カワハギ釣りの道糸はPEラインが向いています。理由は感度です。特にオフショアから水深50mを超えるようなポイントを狙う場合は必須と言っても過言ではありません。PEラインの細さ、強さ、感度の高さは、アタリの取りにくいカワハギ釣りにおいては大変な武器となります。カワハギ釣りはロッドにも感度を求めるため、テーパー(調子)は9:1、若しくは8.5:1.5と言った、エキストラファストテーパー(超先調子)を使います。ティップの構造も、より細く、感度の良いソリッドティップを求めます。
集寄(しゅうき)の是非
カワハギはエサ取りの名人と言われ、これまで説明して来たように、非常にフッキングが難しい魚なのですが、好奇心は他の魚種よりも旺盛で、動くもの、光るものに反応し、寄ってくる習性があります。この習性を利用して、仕掛けの上部に、ホログラムや鏡面メッキなどを施した金属板を小さく打ち抜いて加工した集寄をつけるということが一時期流行りました。カワハギの寄せを良くする魔法のアイテムのように喧伝され、各社様々な商品が出されたこともありました。
勿論、集寄にはカワハギを寄せる効果はあると思います。しかし、集寄など使わなくても、例えばシンカーに発光コーティングがされているものを使用したり、ハリスに発光玉やスパンコールが付いているだけでも十分カワハギの好奇心を惹起できます。幹糸にケミホタルをつけても効果はあります。集寄のデメリットは、集寄のほとんどが金属の平板であるため、仕掛け全体が重くなってしまうことと、水中で抵抗となってしまうことです。
この、水中で抵抗になってしまうことは、イコール全体の感度が悪くなることですから、感度を最優先にしたいカワハギ釣りにおいてはあまり相応しくないというのが私の見解です。集寄をつけるなら、水中で仕掛けを小刻みに動かしたり、時には大きくしゃくったり、ステイさせたり、仕掛けの状態に常に変化をつけ続ける方が良いと思っています。
カワハギの釣り方【オフショア】
では、カワハギ釣りのやり方について説明いたします。乗り合い船の場合は船長の指示に従えば良いですが、ボート釣りなどの場合は、ポイントは自分で見極めなければなりません。内湾の入り江などでは水深15m~20m程度の場所で、基本、藻のある場所を狙います。カワハギは昼行性の魚で、夜は潮に流されないように、口で藻をくわえながら寝る習性があります。そのため、藻場があり、砂地と岩礁の境目など、地形に変化があり、エサとなる生き物が多い場所に住み着きます。また、深さが急激に変わる場所も狙い目です。カワハギ釣りは、海が荒れた状態よりも、凪の状態の方が良いでしょう。
エサは、カワハギの特効餌である、生アサリのむき身で決まりです。針へのつけ方は、まずは2本の水管の硬い部分に横から針を刺します。次に「ベロ」と呼ばれる足に針を刺します。ここも硬い部位なので、きちんと刺せば針持ち性は良くなります。最後に、ふっくらしていて黒っぽく見えるワタを針先に刺します。このワタの部分はカワハギが一番好む部位ですので、ここに針先を持ってくれば、最初に針先が隠れている部分を齧るため、最初のアタリが最もフッキングの成功率が高くなります。
ポイントを定めたら、仕掛けを投入し、必ず着底させます。シンカーが着底したら道糸を張り、底から50cm~1m程度巻きます。底から1m低度の範囲を、ロッドを上下に動かし、カワハギを誘い、その後ステイさせ、カワハギにつつかせましょう。誘いに乗ってこないときは、シンカーを底から5cm程度の範囲内で激しく動かし、シンカーで底砂をトントン叩いて砂を少し巻き上げるように仕掛けをシェイクします。その後必ずステイを入れることを忘れずに。良型のカワハギがかかる際はだいたい、仕掛けを動かして誘った後のステイで食いついてきます。
カワハギ釣りのアワセの基本は「問答無用の鬼早アワセ」です。しかし、この早合わせには2種類あります。一つは、ロッドをあおらず(ロッドの角度を変えず)に、手首は使わず腕をロッドごと真上に上げるようにアワセる方法と、手首を使いロッドを鋭くグイッと立てるように合わせる方法です。活性が低い時は前者、高い時は後者を使うのが基本ですが、その日の状況を見極めながら使い分ければ良いと思います。ちなみに私は手首は使わずに腕を真上に上げるアワセを多用します。針の先端がまっすぐ上がってカワハギの上唇を捉えやすいような気がしています。先に説明した通り、仕掛けを投入して誘いをかけた後、最初のアタリがフッキング成功率が最も高いので、最初のアタリは絶対に逃してはならないのです!
カワハギの釣り方【ショア】
ショアからのカワハギ釣りも、堤防から足元に仕掛けを落とし込む釣りなどは、オフショアと基本的な釣り方は一緒ですが、地磯などで仕掛けをキャストする「胴突き投げ釣り」の場合は少し注意が必要です。エサもアサリのむき身はキャスト時に身切れを起こしやすく使いづらいので、短く切ったアオイソメやイワイソメなどがメインになるでしょう。沖のシモリ根などが確認できれば、シモリ根のキワをめがけて仕掛けをキャストします。シモリ根の周辺に藻場があれば最高です。
仕掛けをキャストしたらラインスラックを取り、仕掛けを張った状態でシンカーをチョンチョン数回跳ね上げてからステイさせ、アタリを待ちます。アタリがなければ再度シンカーを跳ね上げて誘い、再びステイを繰り返します。カワハギのアタリは鋭いですが小さいので、置き竿は厳禁です。常にラインはピンと張った状態で道糸、竿先、手元に伝わる感覚を、全身を研ぎすませてキャッチしましょう。エサにイソメ類を使っている場合は、針持ちが良いので、ビシッとアワセても問題ありません。
カワハギ釣りの外道について
カワハギ釣りのゲストは手強い魚が多いです。カワハギはフグ目の魚ですので、当然フグ類は多いです。特にショアからのカワハギ釣りであれば、キタマクラ、クサフグ、アカメフグ、サバフグなど、とにかくフグに辟易することでしょう。フグ類以外では、ベラ類、ウミタナゴ、アイナメ、カサゴ、メジナなども外道になります。オフショアの場合はこれらに加え、ウマヅラハギ、ウスバハギなど、同じカワハギ科の魚も外道に加わります。また、マダイやイサキ、コショウダイなど、嬉しいゲストもたくさんいます。
カワハギ釣りをしていて、周りはカワハギが釣れているのに自分には外道ばかり掛かるという場合は、タナがカワハギの泳層と合っていないことが原因である事にほぼ間違いありません。カサゴやトラギスなど底棲魚ばかりかかる場合はタナが深すぎ、キタマクラやクサフグなどのフグ類が多い場合はもう少しタナを下げたほうが良いかもしれません。こまめにレンジを上げたり下げたりしながら、カワハギがいるタナを探り当ててください。
カワハギ釣り、枚数を稼ぐコツ
カワハギ釣りは、テクニックの差が如実に表れます。感度最優先のタックルをチョイスしているはずなのに、確実に釣り上げる人となかなか掛けられない人がいます。アタリはたくさんあるのに掛けられない人は、針とエサを小さくすることをおすすめします。カワハギはおちょぼ口を巧みに使い、少しずつ餌を齧ります。そんな時、エサが大きいと、針の周辺は齧っているものの、針に口が触れていないケースがあります。
この状態ではいくらアタリがあってもフッキングさせることはできません。特に針に対して大き目なアサリのむき身を使っている場合はこの現象になりやすく、結局エサだけとられてしまうことになってしまいます。
この対策として、アサリを小さくする、場合によってはアサリをナイフかハサミで半分に切ってしまっても良いです。そして、アサリのサイズに合わせて針もひと回り小さくします。エサを小さくすると、カワハギへのアピール性は低下しますが、既にアタリがたくさんある状態なので問題ありません。
そして、やはり最後は集中力がモノをいいます。フッキング成功率が高い、最初のアタリを確実にキャッチ出来るよう、ライン、竿先、手元に集中することです。仲間とおしゃべりしながらの釣りは楽しいですが、カワハギ釣りにおいては、アタリを逃す原因になりますので、ほどほどにしましょう。
全集中の呼吸でカワハギを確実に掛けて行こう!
カワハギ釣りは人間と魚の知恵比べです。簡単に釣れる魚ではありませんが、どうしたら確実に掛けることが出来るか、どうすればカワハギの興味を自分の仕掛けに向けられるか、常に考え、試行錯誤を重ねた人には、肝パンの絶品料理が待っています。カワハギの肝を生食出来るのは冬のカワハギ釣り師だけの特権です。確実に掛けて行きましょう!