ハゼ釣りは天秤などタックルの感度にこだわり、独特の小気味良いアタリを堪能しよう!
作成:2022.05.18更新:2022.09.02
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「釣りはフナに始まりフナに終わる」、或いは「海釣りはハゼに始まりハゼに終わる」と言う言葉があります。釣りの「イロハのイ」と言われるターゲットが、フナとハゼの2種ですが、これらがイロハのイと言われる理由は、釣りに必要な要素のすべてを絶妙に兼ね備えているからに他なりません。
すなわち、比較的普遍的に生息していて、簡単な仕掛けでショアから狙えるため、はじめて釣りをする人にとって、親しみやすいターゲットであるものの、釣り師の腕の差が如実に顕われるその奥の深さは、釣りの知識や経験を積み上げてステップアップして行く途中で色んな釣りに手を出しても、最後はフナ釣りやハゼ釣りに回帰すると言う、釣りの輪廻転生を表す格言として語り継がれています。
天気の良い休日に、のんびりと竿を出し、退屈しない程度にハゼを釣るといった程度のゆるい釣りであれば、子供でも手軽に楽しめる釣りメソッドでありますが、数を追ったりサイズを追ったり、テーマを持って行うと、アングラーの技術の差が如実に露呈する、大変奥の深い釣りです。
そのため、ハゼ釣りはシロギス釣り同様、夏から秋にかけて、競技会が盛んに行われるターゲットでもあります。とはいっても、釣具メーカーが主催するトーナメントのようなガチンコの競技会ではなく、自治体や地元の観光協会、漁協などが主催する、お祭り的なハゼ釣り大会であることがほとんどです。どんな仕掛けでも釣れるターゲットではありますが、手返しよく数を稼いで行くためには、タックルを高感度に仕立て、小さなアタリを見逃さず次々と掛けて行くことが重要です。
高感度のタックルとは?
釣りは、魚から発せられる振動、すなわち「魚信」を手元で感知し、タイミングを見計らってアワセを入れてフッキングに持ち込みますが、魚からのシグナルは、基本最初に針に入力され、ハリス→(天秤)→道糸→竿→(リール)→手元と伝達されます。
ウキ釣りの場合は、道糸まで伝わった魚信をウキが可視化し、一足飛びにアングラーまで伝えてくれます。投げ釣りで置き竿でアタリを待つ場合は、ティップの先端に魚信が可視化されますので、竿先を凝視します。ずっと見続けるのが辛い場合は、ティップの先端に魚信を音に変換する鈴を付ける場合もあります。また、エギングなど、一部の釣りはラインの動きだけを見て、手元に当たりが伝わる前にアワセに行くこともあります。
それ以外の釣りは、手元で感じる振動を身体で感じ取ります。当然、針先に入力された振動は、タックルの構成によっては減衰し、手元にアタリが伝わらなくなってしまうこともあります。しかし一方で、感度の良いタックル構成では振動は増幅され、手元にビンビン伝わってくることもあります。
感度の良いタックルとは、針に入力された振動を、減衰されることなくアングラーの手元に伝えることができるものと言うことになります。そして、感度の良し悪しは、タックルを構成するすべての素材に、振動を伝達する特性がある素材を使うことを求められます。
振動伝達特性の良い素材
一般的に、硬いものは振動を減衰させることなく遠くに伝達することができます。すなわち、金属>樹脂>ゴムの順で振動伝達性が高いです。また、ラインの素材ではPE>ポリエステル>フロロカーボン>ナイロンの順です。ということであれば、金属ロッドに金属リール、PEライン、PEハリスでタックルを構成すればよいかというと、それではおそらく釣りは成立しません。タックル重量、想定する釣りにおける必要強度、必要感度、価格など、さまざまな側面から最適な組み合わせを検討し、タックルを構成する必要があります。ハゼ釣りのような小物釣りにおいては、よりタックルの感度を高めることが必要です。
ハゼ釣り用高感度天秤仕掛けについて
ハゼ釣りをするにあたり、最も感度を高いタックルで臨むとすれば、小物用の4.5m程度の延べ竿を使い、道糸はナイロン0.8号、ハリス0.6号の極細仕掛けで構成するのが良いのですが、水深がある場所では使えないのと、竿が届く範囲しか探れない欠点があります。ここでは、数10mのキャストを行ってハゼを狙うちょい投げ釣りを想定し、高感度のハゼ釣り用タックルを考えてみます。
ロッド
ロッドは細身のちょい投げロッドを使いましょう。柔らかく、先調子のもので、ティップはソリッドタイプのものが高感度です。ハゼの「プルプルプルルッ!」という小気味良いアタリを堪能したければ、グラスソリッドティップのロッドをおすすめします。長さは2.7m~3.6m程度が取り回ししやすいでしょう。フルキャストすることはないので、錘負荷は10号あれば問題ありません。
リール
ハゼ釣り用のリールは、あまりシビアになる必要はありませんが、巻きが滑らかなものを選びましょう。もし感度にこだわりたいなら、アルミスプールを搭載したモデルを用意すれば良いでしょう。ラインキャパはナイロン2号が100m巻ければ充分です。
ライン
ハゼ釣りの場合、脈釣りであれば道糸はナイロン0.8号、ハリスはフロロカーボン0.6号くらいで、ハゼの小気味良いアタリを堪能できる高感度の釣りが楽しめますが、ちょい投げとはいえキャストする釣りの場合、道糸はナイロン2号程度必要です。ちょい投げ釣りの場合、ハゼ以外の魚がかかることもありますので、念のため2号くらいの太さを使いましょう。
天秤
高感度のハゼ釣り仕掛けのキーアイテムともいえるアイテムが天秤です。基本は片天秤を使いますが、片天秤には、道糸と仕掛けが分断されて接続される固定式天秤と、道糸と仕掛けがつながっている遊動式天秤があります。
もちろん、片天秤以外の天秤、例えばジェット天秤や海草天秤でもハゼ釣りは可能ですが、使用されている金属の線径が太く、さらにばね鋼は使われていないため、どちらかというと強度や飛距離優先の天秤です。感度重視なら片天秤のほうが優れています。
固定式片天秤
固定式片天秤はスタンダードな片天秤で、天秤上部に道糸を結び、アームの先端に仕掛けを結ぶタイプの天秤です。このタイプの天秤は安価であることが魅力ですが、道糸と仕掛けが分断されているため、特にアームの材質が感度に影響します。
アーム部に写真のような非常に細い、高張力のばね鋼が使われているものは高感度ですが、ばね鋼ではないものが使われている天秤は、剛性には優れているものの、感度の点で劣るものもあります。
遊動式天秤
遊動式天秤は、アームに当たる部分が中通し式になっていて、道糸を天秤の上端から通し、アームの先端から出し、そこでサルカンに結び、サルカンの先に仕掛けを接続します。
道糸と仕掛けが分断されておらず感度を損ねないことと、天秤と道糸、仕掛けが全く固定されていないため、魚が餌に食いついて仕掛けを引っ張った際、仕掛けが魚が引っ張った方向に動くため、魚が違和感を感じて餌を吐き出すことが少ないというメリットがあります。
シンカー
ちょい投げ釣りの場合、大きなシンカーは特に必要ありません。例えば道糸がナイロン2号であれば、シンカーは7号〜8号くらいが良いでしょう。重くしても10号までです。船着き場など、浅いポイントで、足元付近を中心に探る場合は5号程度のシンカーでも良いでしょう。
仕掛け
市販のちょい投げ仕掛けを利用するのが簡単でおすすめです。2本針仕掛けと3本針仕掛けがありますが、ハゼのちょい投げ釣りであれば2本針仕掛けで良いです。仕掛け全体の長さは1mを超えてくると扱いにくくなってきますので、45cm〜60cm程度のショート仕掛けをおすすめします。
市販のちょい投げ五目釣りタイプの仕掛けは、針は流線型が多いです。流線型針は非常に硬い線材が使われていることが多く、フッキング後のバラシは非常に少ないのですが、フッキングさせ難かったり、針が外し難い特徴があります。ハゼ釣りの場合は、細くて柔らかい線材を使った小振りの袖針を使った仕掛けを購入したほうが使い勝手がよく、手返しも良好です。
ハゼ釣りの狙い目
ハゼは、内湾の穏やかな浅い砂泥底を好み、外洋に面した荒れた海域は好みません。また、シロギスが好んで生息する、清澄なサーフのような砂浜も数は少ないです。淡水と海水が混じる汽水域を最も好み、潮汐の影響を受ける、河川の河口域がハゼ釣りの最も期待できるポイントです。その中でも、橋桁などのストラクチャー周り、係留船の下、排水口付近、捨て石周りなど、明るさや地形の変化がある場所に餌となる生き物が溜まりやすいため、そういった場所を丁寧にサビキながら探ります。
ハゼはイソメやゴカイなどの他、小さなエビやカニ、昆虫など、動くものに本能的に反応して食いついてきます。この性質を利用した、ルアーによるハゼ釣りも盛んに行われています。
ハゼ釣りは数と型、どちらも追求したい!
ハゼは江戸前の高級天ぷらタネとして、珍重されています。その味はシロギス、メゴチと並び、江戸前天ぷらのトップ3に君臨すると言っても過言ではありません。一度でも江戸前屋形船遊びをしたことがある方はお分かりかと思いますが、船上でいただく揚げたてのハゼの天ぷらの旨さは異常です。
ハゼ釣りに勤しむ理由はまさにこれにあります。せっかくハゼを狙いに海に出るのです。どうせなら数をたくさん釣って、異常なほど旨いハゼ天を、ビールと共にたくさん食べたい、これに尽きます。そのため、ハゼ釣りは、数も型もどちらも追求したい釣りです。そのためにちょっとだけ意識しておきたいことについて説明します。
餌は針持ち性重視!
ハゼ釣りは、手返し良くポンポン数を稼ぎたいです。そのため、針から外れやすい餌や、ハゼに引ったくられるとすぐにちぎれてしまうような弱い餌は考えものです。鮮度の良いアオイソメやジャリメを小さく切ったものやミミズであれば問題はありませんが、アサリの剥き身やアミエビ、小型のオキアミなどは針持ちが悪く、タイムロスが多くなり、効率の点でおすすめできません。
特におすすめなのは人工イソメです。生分解性ゴムを使ったイソメそっくりの疑似餌ですが、太さ、長さが揃っているうえ、集魚効果の高い液体が含浸されていて、ハサミで小さく切って針に刺せば針持ち性抜群のワームとなります。
時合は満潮後7分と干潮後3分のタイミング
釣りの格言に、「時合は下げ7分、上げ3分」と言うのがあります。これは、満潮時を10、干潮時を0とした場合、下げ7分とは満潮時の10に対して7の潮位、上げ3分とは干潮時の0に対して3の潮位をいいます。この潮位3から7までの上げ潮、潮位7から3までの下げ潮、この間が潮がよく動き、魚の活性が高いと言われます。ハゼに限らず、この時間帯は釣りに集中しましょう。
濁りが強い場所、流れが緩い場所、淡水が流れ込む場所を重点的に攻略しよう
ハゼは濁りが強い場所を好み、流れが緩い場所を好み、塩分濃度が低い場所を好みます。この特徴を頭に入れておけば、おのずと攻略すべきポイントが見えてきます。工場からの排水が流れ込む岸壁沿いや、大雨が降った翌日の、濁りが強く入った河口部などは積極的に狙いたいポイントです。ハゼは好みの条件が揃った場所に溜まる傾向がありますので、重点的に探ると何匹も立て続けに釣れることもあります。
型を追い求めるなら晩秋がベスト
ハゼは春に生まれて夏に最も浅場に生息し、秋の後半、10月下旬〜11月中旬頃までは、徐々に深場に移動が始まりますが、一部はまだ浅場にいます。冬になるとハゼは沖の水深20m〜30mくらいのやや深場に落ち、産卵準備に入りますが、この頃のハゼは「落ちハゼ」とか「ケタハゼ」と呼ばれ、ハゼとは思えないサイズと引きの強さで人気のターゲットとなります。
ショアから大型のハゼを狙うには大遠投が必要で、この時期のハゼはオフショアからのアプローチが普通です。それでも、深場に落ちる直前の時期は、距離は遠くなりますが型の良い、「落ちる直前のハゼ」が期待できます。
ショアからはだいたい20cmを超えるか超えないかといったサイズがMAXではないでしょうか? それでも20cm級になれば、釣り味も食味も最高の嬉しいお土産になります。
ハゼ釣りはライトタックルが断然楽しい!
いかがでしたでしょうか?私が個人的にハゼ釣りが大好きだと言うことで、少し前のめりな記事になってしまった感は否めませんが、ハゼは「アフターフィッシングの天ぷら」のためにあると言っても過言ではないと思うほど美味しいターゲットです。
小物釣りではありますが、どうせ釣るなら、耐えるか耐えないかギリギリの超ライトタックルを組み上げ、プルプルプルッ! という、中毒性の高いアタリを満喫したいですね。
どこにでもいて、気軽に仕掛けが出せて、釣ってよし、食ってよしの最高のターゲットがハゼです。「海釣りはハゼに始まりハゼに終わる」はウソではないんだなぁと、おじさんアングラーはつくづく思います。
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