「弾道の」という名を持つバリスティックは究極の軽さと高耐久性を両立する、ダイワのミドルクラスの雄だ!
ダイワのミドルハイクラスのスピニングリールは、2018年に新設計基準「LTコンセプト」が導入されて以降、劇的に軽くなりました。かつてダイワが「すべてのリールが過去になる」というキャッチーなCMを流したのは、「マグシールド」を世界で初めてスピニングリールの防水機構として採用した際のキャッチコピーですが、LTコンセプトを採用した、この19バリスティックの軽量化、高耐久化も「すべてのリールが過去になる」と言える大進化を遂げました。自重180gという衝撃の軽量化と、オフショアでのライトジギングまで余裕でこなす、バリスティック LT3000S-CXHを紹介します。
「バリスティック」という名に込められた商品コンセプトとは?
「バリスティック」とは、辞書によれば、「弾道の」、「衝撃の」、「急上昇の」などの意味があります。「バリスティック」と言えば、「バリスティックナイロン」と呼ばれる、デュポン社が開発した、軽量で超強力なナイロン繊維があります。バリスティックナイロンは、通常のナイロン繊維の5倍の強度と耐久性があり、防弾チョッキの表皮材や裏地にも使用される素材です。バリスティックといえば、このバリスティックナイロンのことを指すことが多く、古くから軽さと強さと耐久性の代名詞として、ものづくりの世界ではパワーワードとなっています。このスピニングリールのバリスティックも、当然、バリスティックナイロンの軽量性、堅牢性、耐久性をイメージして商品開発が行われ、ネーミングされたものであることは想像に難くありません。
バリスティック LT3000S-CXHの基本スペック
バリスティック LT3000S-CXHの基本スペックを見てみましょう。ギア比は6.2、ハンドル1回転あたりの最大巻長さは93cmのエキストラハイギア仕様です。ドラグは、最大釣力10kgと、パワフルなATD(オートマチックドラグシステム)がついています。ラインキャパは、ナイロン2号(8lb)で100m、PE0.8号で200mで、軽量薄肉アルミスプールが採用されています。スプールは、エギング用リールの18エメラルダス及び、バス用リールの18タトゥーラと互換性があります。
ZAIONを多用し、軽さと強靭さを両立
バリスティック LT3000S-CXHのボディ及びローターには、ダイワが独自開発した、カーボン長繊維強化樹脂のZAIONが使用されています。カーボン長繊維を樹脂に混ぜると、成形品の強度は格段に上がり、マグネシウム合金を凌ぐ強度と軽さをもたらすことが出来るものの、成形性(金型内の流動性)が悪化するため、複雑な形状はできないとされてきましたが、ダイワは流動解析によるノズル位置と金型の分割、金型温度及び型締力の最適化により、精密な成形を可能にしています。緻密な計算のもと精巧に成形された、薄肉で回転慣性の小さなローターは「エアローター」と呼ばれ、アングラーの意のままに仕掛けを操作できる応答性の速さを実現しています。これがダイワ「LTコンセプト」の真骨頂で、強度を犠牲にすることなく、自重180gという軽さを叩き出しています。
タフなファイトに負けないギアがアングラーをサポート
バリスティック LT3000S-CXHは、強靭なボディ機構に加えて、ドライブギア、ピニオンギアの素材及び加工方法が、ダイワのリールに使われているギア機構のうち、最も高強度かつ精密に加工された「マシンカットデジキア」が使われています。「マシンカットデジギア」は、ダイワがこれまで培ってきた金属加工の現時点での集大成的技術です。ダイワのギアパーツ製法の進化の過程ごとに、コンピュータ構造解析を設計に取り入れた「デジキア」→デジギアのコンピュータ解析精度を格段に高めた「デジギアⅡ」→デジギアⅡのドライブギアの大口径化と歯面の大型化により、さらなる強化を図った「タフデジギア」、タフデジギアの冷感鍛造に、更に精度を高めるためにMC加工を施した「マシンカットタフデジギア」となります。バリスティックには、超々ジュラルミン製のマシンカットタフデジギアがドライブギアに、ピニオンギアには超高強度亜鉛のマシンカットタフデジギアが使われています。
防水性能はどうだ?
バリスティックシリーズには、海水対応の「バリスティック」と、淡水専用機の「バリスティックFW」があります。違いは防水機構です。バリスティックにはローラークラッチ部に、磁性流体による非接触シールドの「マグシールド」が採用されていますが、バリスティックFWにはマグシールドがありません。マグシールドを使うためには、磁性流体をシールしたい場所に留め置くために、磁性流体をマグネットを使って磁界の中に閉じ込める必要があります。そのマグネットの分、重量が上がることと、磁性流体を絶対に流出させないために、原則注油厳禁など、使用上の制約があります。その他は違いはありません。バリスティックFWは、マグシールド機構がない分、軽量で、さらに巻心地が軽くなっています。バスやトラウトをメインでやるならバリスティックFWを、海でタフに使うならバリスティックを選びます。
20ルビアスと19バリスティックの違い
ダイワのミドルハイクラスのスピニングリールには、19バリスティックの他に、20ルビアスがあります。どちらも実勢価格30,000円前後で、軽さと強さを両立したモデルでありますが、この2モデルの違いはどんなところにあるのでしょうか? ひとことで言ってしまえば、「ボディ剛性のルビアス」「巻心地のバリスティック」となります。ちょっと乱暴ですね。具体的に説明します。まずはボディについて。どちらもZAION製ボディですが、20ルビアスは、金型を新造し、「ZAIONモノコックボディ」を採用した初の機種になりますか、19バリスティックはボディは17セオリーがベースとなっているマルチピースボディです。外的応力に対する剛性はモノコックボディのルビアスに軍配が上がります。一方、ギアの巻心地や巻きの軽さについては19バリスティックに軍配です。19バリスティックには「マシンカットタフデジギア」が採用されていますが、20ルビアスには「タフデジギア」が採用されています。どちらも冷間鍛造で作られたギアですが、バリスティックのギアはその後マシンカットでさらに精度が高められたギアを使っています。
19バリスティックか、20ルビアスか?
もちろん、19バリスティックは「バリスティック」の名に恥じない名機です。正直、どちらを選択しても間違いはありません。パワーをより重視するなら20ルビアスを、巻きの質感を重視するなら19バリスティックが良いでしょう。20ルビアスのモノコックボディには、19バリスティックよりもやや口径の大きなドライブギアが収められています。そのため、巻きのパワーはルビアスのほうが優ります。しかし、マシンカットタフデジギアを搭載した19バリスティックのほうが、巻心地はシルキーです。どちらも、ライトジギングやロックフィッシュゲームなど、タフなシーンででも十分にこなす実力はあります。この2モデルは非常に迷うところかと思います。両方とも実物を見て、目を瞑ってハンドルを回してみて、自分のイメージにより近い方を選べば良いでしょう。