フライフィッシングのファールドリーダーを自作!作り方と使い方
作成:2019.10.01更新:2021.08.20
目次
ファールドリーダーとは糸をテーパー状に撚って作ったもの
ファールドリーダーとはシルクやポリエステルなどの糸やPEラインを、テーパー状に撚り合わせて作られるリーダーのことです。最大の特徴はそのしなやかさにあります。市販のリーダーと比べると、全く別物と言っていいほどです。販売もされていますが、それほど数や種類が多くないのが現状です。
ファールドリーダーはそのまま使ってもいいのですが、乾性オイルを染み込ませ、張りや防水性の調整をすることも可能です。市販品にはないテーパーや使い心地のリーダーを生み出すことができるのが、自作の魅力のひとつです。かつては、馬の毛やシルクなどを撚ってフライラインやリーダーを作っていたので、より伝統に近いものであると考えられますね。
ファールドリーダー自作の大まかな流れ
- ファールドリーダー自作用治具の準備
- ファールドリーダー自作用治具に糸をセット
- セットした糸をルーターで撚り合わせる
- 撚り合わせた先端部部におもりを付ける
- ファールドリーダー自作用治具を壁などに立てかける
- 撚り合わせた糸の元に戻ろうとする反動により、自動でファールドリーダーが編み上がっていく
- 端を処理して完成
PEラインなどで自作したファールドリーダーのメリット、デメリット
メリットはコストパフォーマンスの高さ
ファールドリーダーは普通に使っていれば、1本で1シーズン使用できます。数本自作してローテーションすれば、それ以上使うことも可能です。フライフィッシングのリーダーは、釣行ごとにほぼ使い捨てされていることを考えると、自作したもののコストパフォーマンスの高さは魅力ではないでしょうか。フライフィッシングはリーダー以外にもティペット、フライ、フロータント、ラインドレッシングなどなど、消耗品が多い釣りですよね。もともと貴族のスポーツとは言え、できれば節約したいところ。自作すれば、少しの時間、少しの出費で数シーズン分のリーダーを用意できます。ゴミが減る分、環境に対する負荷が低いという面も見逃すことはできません。
ファールドリーダーは市販のテーパーリーダーと比べて、巻きぐせが付きにくいことも特徴です。釣りの前にリーダーを引っ張って巻きぐせを取るストレスがありません。それほどしなやかなので、ナチュラルドリフトさせやすく、ドラグがかかりにくくなっています。
撚り合わせる糸の細さ、本数の調整で、様々な番手のファールドリーダーを自作することも可能です。今回は#3ラインを想定していますが、慣れれば幅広く自作することができます。ファールドリーダーの特徴であるしなやかさと、エクステンダーを用いることで番手の違うティペットでも違和感なく使用できることもポイントの一つです。
自作することで自分好みのテーパーを作ることができますし、シーズンを通して使えることにより育てる楽しみ、使い込む楽しみも味わえるという点もメリットです。その辺りは、シルクラインを使用する感覚に近いものがあります。
デメリットは制作が難しくリーダーの長さに制限があること
残念ながら、自作ファールドリーダーはメリットばかりではありません。まず、作る難易度がそこそこ高いということ。慣れるまで2、3本は失敗する可能性があります。また、自分好みのテーパーを出すまでは試行錯誤の繰り返しです。こればかりは実際に作って試してみないと分からないので、時間と忍耐が必要になります。
自作する際には、ファールドリーダーを撚り合わせるための治具も必要です。治具の全長の90%ほどが、完成したファールドリーダーの長さになります。それにより、一般家庭の屋内で作る場合、最大でも7ftほどが限界かと思われます。屋外に作る環境があれば10ftを超えるものも自作可能ですが、長くなればなるほど製作難易度も上がってしまいます。
メリットでもある巻きぐせの付きにくさですが、逆に言えば市販のリーダーより張りがないので風に弱く、ウィンドノットが強くできると、現場でほどくことはほぼ不可能になります。ファールドノットにとって、ほどくことができないほどのウィンドノットは致命的で、その釣行では再使用できないでしょう。
加えて、ファールドリーダーは撚り合わせて作られている性質上、水が染み込みやすくなっています。完全に水が染み込んでしまうと、水中に沈んでしまうのでナチュラルドリフトどころではありません。そのため、釣行中も定期的にドレッシングを施さなくてはいけません。フライラインにドレッシングを塗り直すタイミングで充分なので、デメリットというほどではないかもしれません。これは乾性油でのコーティング量で調整できますが、ファールドリーダーの特徴であるしなやかさとの兼ね合いにもなるため、非常に悩ましい部分ではあります。
ファールドリーダーの自作に必要なもの
ファールドリーダー自作用治具
こちらは自作する必要があります。シンプルなものなので、治具自体の自作は難しくありません。ですが、治具のサイズでリーダーの長さが決まりますので、一番重要なものであるとも言えます。一般家庭ではあまり大きな治具は作れないので、どうしてもロングリーダーは作りづらくなってしまいます。しかし、5〜7ftほどで充分使うことが可能です。
糸
できる限り細い糸のほうがテーパーの調整がしやすいです。タイイング用のユニスレッドなら8/0、ミシン糸なら100番をおすすめします。シルクを使えばより本格的になりますが、まずは比較的安価かつ大量に入手できるポリエステルのミシン糸で練習してみてください。他に、ナイロンラインなどを使うと質感の違ったものができあがるので、色々試してみるのも楽しいですよ。
カラーはお好みでなんでもいいですが、やはり目立たない色がいいでしょう。生成りやホワイト、水色などが無難です。
ルーター(USB扇風機でも代用可)
糸を撚り合わすために使います。なくてもできないことはないですが、時間がかかりすぎるので用意したほうが効率はいいです。先端にフックを取り付けて使用します。100円ショップで販売されている乾電池式のルーターや、USB扇風機、電動ドリルなどモーターで回転させられるものならどういったものでも代用できます。ただ、あまりトルクがありすぎると撚り合わせる際に糸が切れてしまうので、気をつけてください。
おもり
ルーターで撚り合わせた後、最後の編み上げに使用します。撚り合わせた糸が元に戻ろうとする力によってファールドリーダーは編み上がります。このおもりが重すぎると編み上がりませんし、軽すぎると編み目が荒くなってしまいます。30~50gほどのものがいいです。カラビナやキーホルダーのフックなどを付けると使いやすくなります。
接着剤
できあがったファールドリーダーの端の処理に使います。好みによりますが、今回は全てループにして処理しますので、瞬間接着剤かエポキシを使用します。ループの根元部分をタイイングスレッドなどの糸で結び接着剤での補強となります。
ハーダニングのための乾性油
ファールドリーダーをオイルコーティングする際は、必ず乾性油を使用してください。リンシードオイル(亜麻仁油)や、ウォルナッツオイル(くるみ油)などの乾性油は乾くと樹脂化するので、ファールドリーダーに染み込んで適度にコーティングしてくれます。食用のものでもいいですし、画材店などでも購入できます。
オリーブオイルなどはいくら乾かしても樹脂化せず、ただべとつくだけなので注意してください。
ファールドリーダー自作用治具(渓流向きリーダーシステム)
今回ご紹介するファールドリーダーは、約6ftのものです。エクステンダー、ティペットと合わせて全長10ftほどになります。バックが取りづらい渓流向きを想定したリーダーシステムです。
幅18cm長さ220cmの板と、ダボもしくはヘッド部分が大きめの画鋲を用意します。板は1×8材などでもかまいません。あまり幅が狭すぎると作業がしづらいので、最低でも18cmは必要です。板以外にも、キッチン収納などに使われるワイヤーメッシュにフックを取り付けたものや、有孔ボードといったものも使えます。
180cmのファールドリーダーの作り方
まずは、ファールドリーダー自作用治具にダボもしくは画鋲を打ち込みます。A、Gがリーダーのバット側、Dがティペット側になります。
Aとa、Gとbの距離 | 20cm |
AとBの距離 | 75cm |
GとFの距離 | 115cm |
AとCの距離 | 150cm |
GとEの距離 | 180cm |
A or GとDの距離 | 200cm |
a、bとDの距離は180cmで、完成するとこの長さになります。aとbは撚り合わせた糸を掛けて置く部分ですので、他のダボもしくは画鋲より数センチ内側に打ち込んでください。
糸のセット
Aを起点に、AからGまで反時計周りに治具に糸をセットしていきます。A部分にはループを作って掛けるだけで構いません。AB間を5回転、BC間を3回転、CD間を1回転、といったようにバット部からティペット部へ向けて細くなるようにします。張りすぎると切れてしまいますが、ピンと張るくらいのテンションをかけてセットしましょう。
- AB間を5回転
- BC間を3回転
- CD間を1回転
- DE間を1回転
- EF間を3回転
- FG間を5回転
この際、必ず糸の間を通してください。FG間を5回転してセットし終わったら、ループを作りGに掛けます。
ルーターで糸を撚り合わせる
正しくセットし終えた治具を見ると、糸が「く」の字のような状態になっているはずです。Aのループをルーターのフックに掛け、テンションが緩みすぎないよう注意しながらA、B、Cのダボから糸をはずします。G、F、E側の糸ははずさず、そのままにしておいてください。Dまで一直線にピンと張った状態でルーターの電源を入れます。糸が一気に撚り合わされていきますので、切れないよう気をつけてください。aにループが掛けられるほど撚り合わすことができたら、電源は切り糸をaに掛けます。G、F、E側も同じように撚り合わせ、糸をbに掛けます。
慣れるまでこの作業が一番の難関になります。張りすぎて切れてしまわないよう、緩みすぎて糸が絡まってしまわないよう、微妙な力加減が必要だからです。
糸のティペット側におもりを付け編み上げる
撚り合わせた糸のティペット側、Dの部分におもりを付けます。カラビナやフックを使うと取り付けやすいでしょう。そのまま治具ごと壁などに立てかけ、倒れないことを確認したらD部分の糸を外します。この時も撚り合わせた糸が緩まないよう充分注意してください。撚り合わせた力の反動でおもりが回転し、自動的に編み上がっていきます。おもりの回転が止まったら編み上げ完了となります。ほどけてしまわないよう、先端部分に接着剤を塗ったり、結んだりして処理します。その後、先端をループにして完成です。
ファールドリーダーの使い方
使い方に関しては特に決まりはありませんが、一例をご紹介させていただきます。自分なりに使いやすくアレンジしていただいて構いません。
フライラインとの接続は交換時のリスクも考慮
基本的にはループ・トゥ・ループでの接続です。交換しやすいという意味もありますが、ネイルノットやブラッドノットで結んでしまうと、リーダー交換の際にファールドリーダーを切断する可能性が出てきます。撚り合わせてできているファールドリーダーは、切れるとほどけてしまう場合もあるので注意が必要です。ループ・トゥ・ループ以外の方法で接続したい方は、ファールドリーダーのバット側先端を接着剤やエポキシなどで処理してください。
ループ・トゥ・ループの問題
フライラインとリーダーの接続方法は、各フライマンの方々それぞれに哲学があるかと思います。キャスティング時の空気抵抗や、綺麗にターンオーバーさせられるか、プレゼンテーションへの影響など。
ファールドリーダーとティペットの接続
ファールドリーダーとティペットは直接接続せず、間にエクステンダーをはさみます。「ファールドリーダーを切断せずティペットを交換するため」、「ティペットへスムーズに力を伝えられるようにするため」というふたつの意味があります。使用するティペットより2番手ほど大きい太さのものを、ファールドリーダー先端に20〜30cm結びます。例えば、7Xのティペットを使用するなら5Xのティペットをエクステンダーにする、といった感じです。
フライラインとの接続と同じく、ファールドリーダーとエクステンダーはループ・トゥ・ループがいいでしょう。エクステンダーとティペットの接続に関しては好みの結び方で構いません。
釣りの前にラインドレッシングを塗り込む
釣りの前には、ラインドレッシングを塗り込みましょう。全体を薄くコーティングする程度で構いません。浮力を維持でき、汚れも付きにくくなります。ですが、あまりに大量に塗ってしまうと重くなり、逆に沈みやすくなってしまうので注意してください。
ポリエステルなどの素材でしたら、シリコン系のラインドレッシングでいいでしょう。シルクで自作したファールドリーダーにはミューシリンのレッドラベルがおすすめです。
水中に沈めて使いたい場合はコーティングもラインドレッシングも施さない
ニンフなど水中に沈めて使いたい場合は、乾性油でのコーティングもラインドレッシングも施しません。ファールドリーダーに水分を含ませてやると、勝手に沈んでくれます。
ファールドリーダーのメンテナンス
ファールドリーダーはメンテナンスすることで長い期間使用し続けることができます。メンテナンスとは言ってもそれほど面倒ではないので、ご安心ください。
水気をしっかり落とし乾燥させる
釣りが終わったら、布やマイクロファイバータオルで拭いて大まかに水分を落とします。汚れがある場合は、水洗いや濡れ布巾を使って綺麗にしてください。帰宅後、完全に乾くまで日陰乾しなどで自然乾燥させましょう。水気をしっかり落とさないとカビが発生する可能性があるからです。その後、ラインクリーナーやラインドレッシングを施し湿度の低い場所で保管します。
汚れがひどい場合は中性洗剤で浸け置き
汚れがひどい場合は、中性洗剤をぬるま湯に溶かし2時間ほど浸け置きします。手でもみ洗いした後、よくすすぎ乾燥させてください。シルク素材はお湯に浸けると縮んでしまうこともあるので、シルクで自作した場合はぬるま湯ではなく水を使います。
フライフィッシングのコスト削減にファールドリーダーで代用を
市販されているリーダーにも使いやすさの違いがあるように、ファールドリーダーにも苦手な場面や使いづらいタイミングはあります。ですが、自由度とコストパフォーマンスの高さから、代用してみる価値はあると言えます。出来上がるまでに時間と労力はかかりますが、選択肢の1つにファールドリーダーを加えてみてはいかがでしょうか。自作して実際の釣り場で使ってみることで新たな発見もありますし、自分で作ることも楽しいですよ。