今回は、そんなエサ盗りの猛襲に苦しめられる夏のフカセ釣りにおいて、どうやって立ち回ればよいのかについて考えてみたいと思います。
夏のフカセ釣りにおける「エサ盗り」とは、人によって異なると思いますが、基本的には「本命魚ではない魚種」と、「本命魚であっても自分が設定した合格ラインに満たないサイズのもの」の2種類になると思います。
夏の高水温時には、ほとんどの暖海性の魚が高活性になっています。エサ盗りの大本命であるフグの類は、地磯フカセ釣りの場合、避けて通ることはできない、最も厄介な魚種と言えるでしょう。メジナを浮かせて狙いたいときにクサフグの群れに取り囲まれてしまうと、刺し餌を瞬時に奪われてしまうどころか、ひどいときには毎投ハリスを切られてしまいます。フカセ師にとって最もダメージの大きな相手と言えます。
小サバの群れが入ってきたときも厄介です。刺し餌が着水すると同時にひったくられてしまい、一瞬で餌を盗られます。ハリスを切られることはないですが、全くエサを流すことができなくなり、フカセ釣りにならなくなる度合いはフグよりキツいです。
私は小サバが入ってくるのが一番イヤです。青物狙いの泳がせ釣りをやっている人が近くにいれば活き餌としてあげてしまうか、いなければ弱らせないよう直ちにリリースしています。
ベイトフィッシュが入ってきてしまうと、それを追って中型のフィッシュイーターが入ってきます。私がいつもフカセ釣りをやっている、神奈川県の江ノ島の磯ではワカシ・イナダ(いずれもブリの幼魚)、ショゴ(カンパチの幼魚)、マルソウダ、ヒラソウダなどが入ってきます。
これらが入ってくると、本命魚が散ってしまい、しばらく戻ってこなくなります。フカセ師には頭の痛い現象です。フカセ仕掛けのままハリスを強いものに換えて青物を狙うか、思い切って休憩にしてしまうか、移動するか選択を迫られます(私はほとんど小一時間休憩にしてしまいます)。
クロダイを狙っていれば、「チンチン」と呼ばれるような、15cm未満の幼魚、メジナを狙っていれば、「木っ端メジナ」と呼ばれるような、10cm程度の小型のものは、確かに本命魚ではあるのですが、うるさいほどコマセに集まって来て付け餌を奪っていきます。「大きくなってまたおいで!」とリリースしましょう。
ただし、これら本命魚の小型サイズが多いときは、そのままじっと耐えていれば徐々に大きな個体が寄って来て、最終的に満足行くサイズの個体が釣れることが経験上多いです。
エサ盗りの猛襲を受け、釣りにならない時間が長くなってくると戦意を殺がれてしまいますよね、しかし、対策を講じることで多少はそうした「釣りにならない」時間を短くできるかもしれません。ここでは、エサ盗り回避のためのポイントについて紹介して行きます。
この方法は最もオーソドックスなエサ盗り回避の方法です。マイクロベイトやクサフグなど、泳力が比較的低い魚種に有効な手段です。足元付近にこれらエサ盗りのための少量のコマセを撒き、エサ盗りが集まってきたらすかさずそこから沖に向かってコマセを遠投し、沖側のコマセに泳力の高い本命魚を寄せるというものです。
ポイントは、必ず先にエサ盗り用のコマセを足元付近に撒き、十分にエサ盗りが寄っているのを確認したあとに本命用のコマセを撒き、その後エサ盗りが沖に撒いたコマセの方に泳いでいかないように、すぐに足元にもう一度エサ盗り用のコマセを少量撒く、つまり、コマセ打ち3回を1セット(①足元(エサ盗り用)→②沖(本命用)→③仕掛け投入→④足元(エサ盗り用))として、エサ盗りと本命を完全に分断することを心がけます。
エサ盗りの分断には掟があります。「分断用のコマセは必ず潮下に向かって打つ」ことです。基本足元に打ってエサ盗りを足止めするのですが、自分が立っている場所の潮の流れをよく確認し、左から右に向かって潮が流れていれば、分断用コマセは自分の右側の足元に撒き、右から左に潮が流れていれば、自分の左側の足元に撒きます。きちんと潮下にコマセが撒かれていれば、徐々にエサ盗りが潮下側に移動し、本命用コマセとの距離を離すことができます。
また、コマセを打つ量にも気をつけましょう。エサ盗り用のコマセはごく少量で良いです。エサ盗り用のコマセは狙った場所まで沈ませる必要はなく、できるだけ表層付近を漂わせて、エサ盗りを足止めしておきたいので、一回に撒く量は少なく、回数をこまめに撒くのがポイントです。撒く量が多すぎると必要以上のコマセが沈みながら広範囲に広がってしまうので、他所からエサ盗りを却って呼び寄せてしまうことにもなりかねません。
足元にエサ盗り用のコマセを少量打ったら、離れたポイントに本命用のコマセを打ちますが、ここでもひとつ気を付けるポイントがあります。それは、狙ったポイントに着水するまで、決してバラけさせてはいけないということです。飛行中にバラけ、エサ盗り用コマセと本命用コマセの着水点の間にこぼしてしまうと、せっかく足元に留め置いているエサ盗りが本命用コマセの近くにこぼれたコマセを追って来てしまいます。本命用コマセはしっかりとカップをバッカンの内壁に押し付けて圧縮してから打ちましょう。
コマセの打ち方を工夫しでエサ盗りの分断を図る方法と比較して、効果テキメンなのが付け餌を変える方法です。
しかしこの方法には、魚の食性に関する知識が必要で、事前に数種類の餌を用意しなければならないという手間、そしてお金がかかるというデメリットがありますので、時間とお財布に余裕のある方に是非とも実践していただきたいメソッドとなります。
もしも、メインの付け餌にオキアミを使っていて、瞬時に奪われてしまうのであれば、針持ちの良い餌に変えて、エサ盗りの猛攻に耐えるというのが手っとり早いです。青イソメや岩イソメなどの虫エサがあれば理想ですが、なければ小型のカニ、岩に着生しているヨメガカサなどの貝類を使うことで、少なくとも「エサが瞬殺される」ことはなくなります。カニや貝類は、メジナやクロダイなど、フカセ釣りのメインターゲットの嗜好への影響は低く、現地で簡単に調達できるエサのためおススメです。
クロダイのように雑食性の魚であれば、エサ盗りが好まず、かつ、クロダイの嗜好は損なわないという、エサ盗り回避効果の高い餌はたくさん存在します。一番スタンダードなものはコーンの粒でしょう。
クロダイ用の配合コマセにもコーンが配合されていることもあるように、悪食でなんでも口に入れる習性のあるクロダイにはコーンは非常に有効です。また、クロダイ釣りの定番の餌であるカイコ蛾のサナギや、現場にたくさん棲息しているフナムシもエサ盗り回避効果があります。メジナ狙いの場合は、コマセに大量のパン粉を混ぜることでエサ盗りの嗜好を抑えることが可能です。
それでもどうにもならないときは、一時的に本命用のコマセを撒くのをやめ、足元だけコマセを撒き、足元にエサ盗りを集めるだけ集め、沖にいる本命魚が足元付近まで寄ってくるのを待つという手もあります。
そのためには、水中を注意深く観察し、現在どんな魚種が足元に集まっているのかを見極める必要があります。本命と思しき魚影が確認出来たら、沖へのコマセ打ちを再開し、すかさず沖に仕掛けを投入し、泳力の高い本命魚を沖のポイントに引き戻し、刺し餌を食わせます。
夏の高水温時、フグやマイクロベイト、木っ端メジナなどのエサ盗りは、表層付近に溜まっていて、釣り師が撒くコマセを一心不乱に追い続けています。これらがいる層をゆったりと刺し餌を漂わせていればそれこそ瞬殺されてしまいます。
そういう時はハリスにガン玉を段打ちし、エサ盗りが溜まっている層を素早く通過させ、エサ盗りの様子を下から窺っている本命魚に刺し餌を見せます。ただし、極端に重くしてしまうと刺し餌の沈降スピードが速くなりすぎ、本命魚に違和感を抱かせてしまいます。ジンタンサイズの小さなガン玉をハリスに等間隔に2~3個つけるくらいでもエサ盗りのいる層をクリヤーできます。この、ガン玉による仕掛けの重量コントロールは、潮のスピードや潮位、風の強弱、エサ盗りの状況等、刻々と変わる状況に応じ、付けたり外したり繰り返し、常にエサ盗りの層をかわし、本命の泳層に刺し餌を送り込むための微調整を行う必要があります。
地磯では比較的少ないとは思いますが、特に水温が高いときなどは稀にサメが入ってくることがあります。また、マイクロベイトを追って大型青物が入ってくることがあります。これらが入ってくると、それまであれだけうるさかったエサ盗りがまるで蜘蛛の子を散らすかのようにピタッといなくなります。
こうなってしまうとしばらくはフカセ釣りも厳しいと言わざるを得ません。青物が入ってきたときは、もしジギングタックルを持ち合わせているのなら、気分転換に30分程度ジギングに切り替えるのはいかがでしょうか?
サメが入って来てしまった場合はちょっとどうしようもないかも知れません。休憩時間にしたり、付近を歩き回り他の釣り師の釣果を偵察したりしながら、再び時合が来るのを待つのが良いでしょう。
なお、同じ大型魚でも、ボラの群れが入っているときは経験上エサ盗りや本命魚が散ってしまうことはありません。ボラに魚食性がないことを他の魚がまるで分っているかのようです。
この時は、ボラを掛けてしまわないように気を付けるだけで良いでしょう。ボラの誤爆を防ぐには、仕掛けをややに重くして中層以深を狙うようにするといいでしょう。メジナ狙いの時は表層にいるエサ盗りのやや下の層で食わせるように調整すると良いでしょう。
いかがでしたでしょうか? フカセ釣りはショアジギングのようにポイントを足で探しまわるラン&ガンとは異なり、自分が決めた釣り座の周りにコマセを使って魚を寄せ、ポイントを作って釣ります。そのため、魚種を問わなければ、他の釣り方よりも「完全丸ボウズ」を食らう確率は低いと言えます。
人によっては、あえて積極的な回避策を取らず、エサ盗りとの攻防を楽しみながら、気長に本命を待つスタイルの釣りを好むこともあるでしょう。何を隠そう私もどちらかというとそのクチで、何にも釣れない時間を過ごすのが嫌で、ボウズを食らうくらいならフグでもベラでも、魚の引きを味わいたいなと思うこともあります。エサ盗りの猛攻に辟易することはあっても、終日エサ盗り地獄という日はそうそうないであろうと、正常化バイアスに取り憑かれながら、必ず本命が来ると信じて粘り続け、最後の最後に一匹本命の顔を見ることができれば、「終わり良ければすべて良し」と、気持ちよく竿を収めることができてしまう性格です。
しかし、短時間で効率よく本命の数、サイズを追い続ける求道者タイプの方は、現在の状況を的確に判断し、確実にエサ盗りを回避しつつ本命のいるポイントへ速やかに刺し餌を送り込み、次々とあげて行きます。こういうタイプの人は、知識と経験が豊富であると同時に、五感から次々と入力されてくる情報のインプット能力と、インプットされた情報を処理し、最適な対策をアウトプットする能力に長けているのです。自分も斯くありたいと、常々思ってはいるのですが・・・。
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