手のひらには微細な血管が複雑に張り巡らされており、ここを水で冷やすことでも効率よく深部体温を下げることができます。氷水のような冷たい水に手をつけると血管が収縮し逆効果になりますので、常温の水道水をバケツなどに溜め、手のひらを下にして冷やします。
釣具店、スポーツ用品店などで、夏季シーズン限定ではありますが、シースルータイプのフィッシングベストが売っていることがあります。私はこれにタックルを一切入れずに、全てのポケットに保冷材を入れて釣りをすることがあります。冷たさは長くは続きませんが、2時間程度は体を冷やしてくれます。クーラーボックスに予備の保冷材ををたくさん入れておけば交換しながら一日中体を冷やしながら釣りをすることも可能です。
このように、体を冷やす方法はいくつもありますので、複数の対策ができるように準備しておくと安心です。
尚、言わずもがなですが、アルコールは水分補給にはなりませんので、絶対にNGです! 酒気帯びでの釣りは、水難事故に直結する、大変危険な行為です。厳に慎みましょう。祝杯は自宅に帰って、身体をきれいにしてから、獲物を肴に思う存分あげましょう。
日焼けは火傷と同じです。真夏の強い陽射しは危険です。日焼けは、紫外線に過剰に暴露された際に起こる反応で、紫外線による攻撃を緩和するために起こります。日焼けには2種類あり、表皮が赤く火照りを伴い、急性の炎症状態を示す「サンバーン」と、体内のメラニン色素が表皮に沈着する「サンタン」です。
紫外線は、波長の長さによって、UVA、UVB、UVCがあります。このうち、UVAとUVBは地表まで届きます。表皮を赤く炎症させるものがUVB、肌の奥まで届き、皮膚の硬化やシミシワの原因となるのがUVAとなります。
短期的には急性の「サンバーン」による発赤、浮腫、水疱などの重篤な症状を回避するために対策をします。
夏の海に半袖半ズボン、サンダルで釣りに行くのは自殺行為とも言えましょう。とてつもなく強い陽射しに、1時間も釣りをすれば顔から首、腕、足と、全身遠火にあたり続けたかのように真っ赤に焼けてしまいます。帰宅後風呂に入るのも難儀するダメージを受け、酷いと水膨れができ更に酷くなると頭痛、発熱します。そうならないためにも、服装でガードしましょう。
夏のウェアは釣具店で売られているものを着用するのが良いです。釣具店のアパレルであれば、通気性、ドライ性能、紫外線ガード機能がほぼ網羅されていると考えて良いでしょう。帽子、サングラス、シャツ(長袖推奨)、パンツ(長ズボン)、を着用しましょう。海水浴用のラッシュガードを着用するのもおすすめです。UVガード効果が高く、これ一枚で、首から上を除く上半身の日焼け対策になります。
夏場は熱中症、日焼け以外にも気を付けなければならないことがあります。それは虫対策です。昆虫類(蚊やブヨ、マダニなど)には、繁殖のため哺乳類の吸血をするものが多くいます。これらの生物は、体内で卵を作る際に特殊なたんぱく質を必要とします。そのたんぱく質が、人間をはじめとした哺乳動物の血液に含まれているため、産卵を控えたメスのみが吸血します。蚊は人間の痛点を交わす細い針を皮膚に打ち込み、同時に唾液を体内に送り込み、血液が固まらないようにします。この唾液が人間にアレルギー反応を起こすため、かゆみや腫れ、水疱をもたらします。蚊にされてしまうとかゆみで集中力が維持できなくなります。非常に不快なので、不幸にも刺されてしまったときは、速やかにかゆみ止めを患部に処置しましょう。
蚊よりも激烈な症状に悩まされるのが、写真のブヨ(ブユ)です。これは針で刺して吸血するのではなく、アゴで皮膚を噛みちぎって吸血します。この際、蚊と同様、血液が凝固しないよう唾液を送り込みます。このため、蚊と比較すると出血の量が多く、また、送り込まれる唾液の量も蚊とは比較にならないほど大量になるため、噛まれてから1週間以上(耐性のない人は2週間以上)、腫れ、疼痛、発熱の症状が続きます。ブヨにやられてしまったら、釣りはあきらめて、速やかに病院で処置してもらうことをおすすめします。
対策は先にも言った通り、半袖半ズボンを避けることと、虫よけスプレーを肌にマメに吹いて、害虫を寄せつけないことに限ります。また、服の色には、虫を寄せやすい色、寄せにくい色があります。黒系の服装は多くの虫を寄せ付けやすい色ですので、注意が必要かもしれません。スズメバチも黒い色は敵と認識するカラーだそうです。逆に白系の服装は虫が寄り付きにくいと言われています。服のカラーに気を遣うのも対策のひとつですね。
海では心配ありませんが、淡水域ではヤマビルをはじめとしたヒル類にも注意が必要です。ヒルもブヨ同様、皮膚を齧って血液が固まらない唾液を送り込み吸血します。大量に吸血することと、吸血されていることにほとんど気が付かないこと、出血がいつまでも止まらないことなどから、大変厄介な存在です。ヒルの厄介なところは、少しでも肌が露出している場所があると容赦なく襲ってくることです。靴の裏などに付着し、巧みに靴の隙間などから侵入し、靴下の口などから足に噛みついたりします。ヒルに吸血されたら、速やかにヒルの体液が注入された幹部を指で強く押しながら血液を絞り出して水で洗い流し、消毒液で消毒した後、レスタミンなどの抗ヒスタミン軟膏を塗り、止血のために絆創膏を貼っておきます。
なお、ヒルの忌避は、通常の虫よけスプレーで対応可能です。ただし、対ヒルの場合は効果の持続時間が蚊よけよりも短いので、30分に1回程度の頻度で腕、脚(靴の上からで効果あり)、首などにしっかりと吹き付けておきましょう。
最後に、フカセ釣り限定ではありますが、夏場はコマセバッカンにスズメバチやアシナガバチなどがしつこく寄って来ることがあります。しかし、ハチを追い払おうとして刺激してはいけません。追い払っても、コマセがそこにあって、においを発し続けている以上、何度でも寄ってきます。人間が刺激しなければ、ハチが襲ってくることはほとんどありません。ハチは黒い服を敵とみなす性質があるので、上から下まで黒ずくめの服装をしていると威嚇してくるかもしれません。そんな時でも、人間から攻撃すべきではありません。ハチの攻撃スイッチが入ってしまうと手に負えなくなります。
真夏の釣りは冬の防寒よりも過酷ではありますが、いろいろな魚が高活性になる季節であります。特に青物はショア、オフショアを問わず、チャンスが多い季節です。青物以外も、高水温を好むタコやアナゴ、イシモチやシロギス、マゴチ、スズキ、イシダイなどなど、夏がハイシーズンのターゲットを上げたらキリがありません。しかし、アングラーの準備不足で現地で体調を崩してしまったりしては元も子もありません。熱中症対策、日焼け対策、虫対策をしっかりと準備し、安全に真夏の釣りを楽しみましょう!
記事中の紹介グッズ一覧
この記事を書いた人
合わせてよく読まれる記事
「釣りの豆知識」関連の記事
新着記事