フカセ釣りの準備、釣果を左右するポイント選定において、考えるべきことについて説明します。
作成:2024.10.22更新:2024.10.22
目次
「一場所、二餌、三に腕」という言葉を聞いたことはありませんか? 釣りに関することわざです。どんなに釣りの技術が長けていても、釣果を左右する最も大切な要素は「場所」であり、「餌」であるという意味です。釣りの腕自慢達のビッグマウスを戒める意味もあるのでしょう。
現代においては、釣りのメソッドが多様化され、タックルも日に日に進化し、「三仕掛け」と呼ばれたり、ビギナーズラックがあると「三に運」と呼ばれたり、色んなバリエーションがあるようですが、「一場所、二餌、三に腕」という原理原則は今でも真理であると私は思っています。大げさに言ってしまえば、「良いポイントに入れたかどうかで、半分勝敗は決まっている」ということです。
今回は、地磯でのフカセ釣りにおける準備として、現地入りした直後のポイントの選定の仕方について考えてみたいと思います。
ポイントを決める前に行うべきこと
通いなれているポイントであれば、自分の経験から導き出した第一のポイントがあり、仮にそのポイントが先行者に入られていたとしても、第二、第三のポイントを知っていることでしょう。しかし、初めて入る場所で、事前の情報が乏しいときは、ここが空いているからと言って、でたらめに入ってベースを張ってはいけません。自分ではよさそうなポイントだと思っても、「空いている理由がある」ことが多いのです。
水深が浅く、魚影が薄いのかもしれませんし、水深があるように見えても肉眼では見えない根が広がっていて攻略が難しいポイントなのかもしれませんし、波をかぶりやすい、足場が崩落しやすいなど、安全性に問題があるポイントなのかもしれません。そういった情報は、実際に竿を出してみないとわからないことも多いのは事実ですが、竿を出す前に、ある程度ポイントの目星をつけることは可能です。
高い場所に登り、釣り場全体を俯瞰する
もし、釣り場の周辺に小高い場所があり、釣り場全体を俯瞰できるような場所があるのであれば、現地入りする前に必ず立ち寄り、見下ろせる場所から隈なく観察することが大事です。具体的にどういったことを意識して観察するべきなのか、ポイントを説明します。
安全に釣りができそうかどうかを見る
まずは磯際の地形をよく観察します。安全に釣り座が設定できそうか? 何はなくとも安全が最も優先される事項です。足場が安定した平面であるかどうか? 足場から水面までの距離は適当か? 潮位が高くなった時波が被らない場所か? などを見極めます。中でも大事なのが、波が被る場所か、被らない場所かということです。必ず現地のタイドグラフを確認し現在の潮位を見て、これから潮位が上がるのか、下がるのかを考慮しなければなりません。
現在の風力も確認ができればなお良いです。現在の波の様子が、風が今よりも強くなったらどうなるのか? 潮位が下がる方向であっても、風が強くなって行くと波が被ることもあります。そういったことも頭に入れ、絶対に波を被らない場所にベースを張らなければなりません。とにかく「安全第一」です。
また、安全にタモが当てられる場所はあるか?足場から水か汲めるかどうか?も考えなければなりません。 水が汲めないとコマセが作れないだけでなく、血抜きした魚を洗えないし手も洗えないので、水が簡単に組み上げられる場所というのは意外に優先順位が高いです。水を汲むためだけに移動するのは大変面倒です。
フカセ釣りの条件が整っているかを見る
潮は動いているか? サラシができているか? シモリ根やハエ根、藻場など、魚の隠れ場所になるような地形が水中にありそうか? 水深は浅そうか、深そうか? 風はどちらから吹いているか、風を背にできそうか? 太陽の位置はどうか(正面に太陽があると釣りにならない)? 他の釣りをしている人とバッティングしないか(コマセを打っても迷惑にならないか)? も確認しましょう。そうやって、なんとなくこの辺が雰囲気良いかも知れないなと思うポイントを2~3か所目星をつけてから磯に入りましょう。
磯に入ってから見るべきポイント
小高い場所から俯瞰して、雰囲気がよさそうな場所を数か所絞り込んだら、それぞれのポイントへ実際に行ってみて、海面をよく観察しましょう。海面に近づくと、遠巻きに見た時とは違った印象を持つこともありますので、じっくりとみるべきです。単調な地形に見えた場所でも近づいてよく見ると足元が抉れていて、足場がオーバーハング状になった絶好のポイントだったり、適度にシモリ根があってよさそうな場所だと思ったのに、実際よく見たら根がキツ過ぎて釣りが難しい場所であったなんてことが往々にしてあるものです。
潮通しはどうかを見る
釣り座の正面に立ち、潮がどの方向から流れてきて、どこへ流れているのかをじっくり観察しましょう。わかりにくいときは、水分を極力減らして沈みにくい状態のコマセを少々撒いてみて、コマセがどの方向に流れて行ってるか見ても良いでしょう。コマセが横方向に流れるスピード、縦方向に沈んで行くスピードを見極めます。
理想はフカセ仕掛けのコントロールが一番やりやすい、足元から沖方向に払い出して行くような潮の流れですが、まずは潮が動いていれば良いでしょう。というのも、風向きや潮位、時間等によって潮の流れは刻一刻と変わるため、潮が動きやすい場所であることが分かれば良いからです。
水中に何がいるかを見る
足場は問題なし、水深がありそうで、根も適度にありそうだ、潮の流れもいい感じ、周囲にライバルが少ない・・・。ヨシッ! ここにベースを張ろう!! ちょっと待って、最後にここを見ましょう、「水中に何かいるか?」。
「何か小魚がたくさんいるのはわかるけど、それが何なのかは見てもわからない」と思うかも知れませんが、まずは魚種はわからなくてもいいです。小魚がたくさんいるということは、その周辺に彼らの餌となるプランクトンが豊富にいるということですので、水中の活性が高い証拠となるからです。
ちなみにこの写真に写っているベイトフィッシュはすべて「稚アユ」です。 ※海面での稚アユの採捕はほとんどの場所で禁止されています。
どんなポイントでも、まずは何らかの生体反応があることは絶対条件です。隈なく観察してもなにも確認できない場所は、例えば直前に大型の捕食者が入って来て、ベイトフィッシュが雲散霧消したということが考えられます。そういった場所では、フカセ師のターゲットとなる魚たちも一時的に姿を消していることがほとんどです。
そうしたポイントでも、フカセ師はコマセという魔法のアイテムを持っているため、再びイチからポイントを再建することができます。時間に余裕があるのなら、気に入ったポイントであれば、地道にコマセを打ちながら、ポイントを作り直すのもアリです。
ベースを張ったら行うこと
色々考えて、初めて入ったポイントで何とかベースを設定することができました。さて、ベースを張ったら一刻も早くスタートフィッシングと行きたいですね。でも、その前にチェックしておかなければならないことがいくつかありますので説明いたします。
水深を把握する
初めて入ったポイントでは、情報が少なく、釣り座周辺の地形がどうなっているか、水深がどうなっているのかなどが分からないことがほとんどです。水深が分からない状態で闇雲に釣り始めるのはスマートではありません。クロダイ狙いの場合はもちろんですが、浮かせて釣ることの多いメジナ狙いの場合でも、水深を把握しておくことで、半遊動仕掛けにするか、全遊動仕掛けにするか、判断が分かれることもあります。
水深をザックリと把握するためには、半遊動仕掛けを利用して計ることができます。ウキの上の道糸にウキ止めが付いた半遊動仕掛けの針先に、ウキ(円錐ウキよりも棒ウキの方が水深測定はやりやすい)の浮力より大きなオモリを付けます。中通しのナツメオモリの中にゴム管が通った「タナ取りオモリ」を刺し、狙い目のポイントに仕掛けを投入します。
仕掛けがするすると沈んで行き、道糸がウキ止めの部分まで沈んだ際に、ウキが水中に沈んでしまえば、水深よりウキ下が短く、ウキが馴染む前に道糸が沈んで行くことをやめた場合は、水深よりウキ下が長いことになります。都度ウキ止めの位置を調整し、道糸が沈まなくなった時に正しくウキが直立した時、針先のタナ取りオモリからウキ止めまでの距離がその場所の水深ということになります。
水温を把握する
空気と水は比熱が全く異なるため、陸上の気温と水中の温度は全く異なります。比熱が高い海水は、空気と比較すると「熱しにくく冷めにくい」特性があります。陸上では春の訪れをはっきり感じる陽気になったと思っても、海中はまだ冬のままであり、陸上で灼熱の夏が終わり、秋の訪れを感じるようになっても海水温はまだ高いままということが普通です。そのため、水温計を使って実温を測定する習慣をつけましょう。18℃~25℃程度であれば何の問題もありません。26℃を超えると高温に強いエサ盗りが優位になって来て釣りづらくなりますし、15℃を下回ると一気に活性が下がり、ボトムに居着く一発大物狙い以外は大変釣りにくい時期となります。
コマセを打って、拡散の仕方や沈み方を観察する
いよいよスタートフィッシングと行きましょう! 仕掛けを投入する前に、まずはコマセを少量撒き、コマセがどの方向に流れ、どれくらいのスピードで沈んで行くのか、コマセが見えなくなるまでじっくり観察します。仕掛けの刺し餌は、最終的に打ったコマセが潮の流れに乗って移動しながら沈んで行き、ターゲットの魚が沈んだコマセを捕食する場所に持って行く必要があります。いわゆる「コマセと刺し餌の同調」です。
コマセの流れる方向に仕掛けを流すためには潮受けパーツが、コマセの沈下スピードと刺し餌の沈下スピードを合わせるにはガン玉がその役目を果たすのですが、ガン玉のサイズや個数、どこに打つかなどによって仕掛けの挙動が変わりますので、何度もチューニングしながら、ベストのセッティングを探す、非常に奥の深い作業です。この設定がビシッと決まれば、あとは爆釣あるのみです!!
ポイントを見限るタイミング
設定した釣り座が、一日中爆釣モードであるということはあり得ません。風、日照、気温、潮位、波の高さなどなど、状況は刻一刻と変化し、一秒たりとも全く同じ状況はありません。これまでコンスタントに本命が釣れていたポイントが、突然アタリがピタリと止まってしまうなんてことも良くあります。そんな時、粘るべきか、見切りをつけて移動すべきかは非常に難しい問題です。私はものぐさなので、基本は最初に設定したポイントでタコ粘りなのですが、こんな状況になったら移動という条件があります。ここではそんなことについて説明します。
ゴミが接岸してきた場合
台風の通過後などで川から流れてきた流木やごみなどが釣り座の周辺に接岸してきて留まってしまうことがあります。量が少なければしばらく様子を見ていればそのうち流れ去ってしまうでしょうが、次から次へと流れついてしまうことがあります。フカセ仕掛けは非常に繊細な仕掛けであるので、海表面に浮遊物が浮いていると釣りになりません。こんな時は速やかに見切りをつけて移動します。
青物が入ってきた場合
ベイトフィッシュがたくさんいることは、海中にプランクトンが豊富な証拠と言いましたが、それを狙って青物が入ってきたときは釣りにならなくなります。小サバが大挙して入ってくると、エサが着水した瞬間に仕掛けがひったくられ、フカセ釣りはほぼできなくなります。30cmを超えるような中型の青物であれば、青物釣りにシフトチェンジするのもアリかもしれませんが、10cm~20cm程度の小サバの猛襲は本当に厄介です。
私は通常、極細のフカセロッドと細目ナイロンラインを巻いたリールしか持ち合わせていないため、青物釣りは行わず、その時間帯は休憩にするか移動します。
風が強くなった場合
軽量な仕掛けを取りまわすフカセ釣りの天敵は風です。秒速3mくらいまでであればガン玉を追い打ちするなど、仕掛けをちょっと重くすることで何とかコントロールできますが、秒速5mになるとコントロールがほぼ不能になり、秒速6mを超えたらほぼ釣りになりません。秒速8mを超えたらその場を早く離れないと危険です。
仕掛けのコントロールがやりづらい程度の風であれば、風を背に受けられる場所に移動すれば良いのですが、釣りにならないほどの風になってしまったら速やかに撤収しましょう。何度も言いますが、安全に優る事項はありません。無事に帰宅することが何よりも大切です。
フカセ釣りは釣り座を設定した時点で勝負は半分決している!?
いかがでしたでしょうか? フカセ釣りは、ランガンのように頻繁に移動する釣りではありません。基本は設定した釣り座にポイントを作る釣りです。しかし、初めて入磯するような情報が少ない釣り場では、自分が持っている知識と経験を駆使し、地形の考察とそれに伴う魚たちの行動を予測して釣り場を設定しなければなりません。少しでも有利なポイントを見出すスキルを身につけておきたいものですね!