フカセ釣り、遠投釣りの極意とは? ウキの選定とコマセの調整、ラインコントロールにあり!
作成:2025.03.08更新:2025.03.08

目次
フカセ釣りのメインターゲットとなるメジナやクロダイは、磯際の根の周辺や藻場などの複雑な地形で、餌となる甲殻類や環虫類、貝類や藻類などが豊富な場所を好む傾向があります。すなわち、フカセ釣りは原則、比較的足場から遠くない場所でも十分に勝負になります。しかし、足元が餌盗りが多く釣りにならない場合、或いは、足元周辺の潮が極端な当て潮で釣りづらいなどの場合は、思い切って40mくらいまで遠投し、広範囲を流して探るケースもあります。
遠投をすると、仕掛けの視認性が悪くなり、今自分の仕掛けがどこをどう流れていて、コマセや刺し餌はどのレンジを漂っているのかがわからなくなってしまうことも少なくありません。
また、風の影響を受け、キャスト時に仕掛けが絡んでしまったり、思った場所へ仕掛けを飛ばせないということもあるでしょう。
そういう状況に直面した時に、知っておきたいことについて、まとめてみたいと思います。
遠投が威力を発揮するケースとは?
フカセ釣りの場合、沖磯であれば足元からそこそこ水深があることが多いため、あまり遠投をしなくても、数も型も足元の周辺で十分狙えるでしょう。しかし、地磯からのアプローチの場合や、沖磯でも足元に複雑な根があり釣りづらい場合、或いは足元にエサ取りが集まってしまい釣りにならない時は、思い切って遠投することをおすすめします。また、足元の潮が動いていない場合や、沖目に良さそうな潮目が出ているときなども、積極的に遠投してみると良い結果につながることがあります。
このように、足元に仕掛けが入れられない地形であるなど特殊なケースを除き、のべつ幕なし遠投ということはありません。原則は足元から20m前後程度のエリアで闘います。コマセの遠投をずっと続けていると、打ったコマセが拡散し、ポイントがどんどん遠くなってしまします。フカセ釣りは、釣り座のそばにターゲットを寄せ集め、釣り師有利のステージで釣るのが原則です。
遠投する際に意識すること
遠投をしなければならないケースがあることはお分かりいただけたかと思いますが、フカセ釣りの遠投は、投げ釣りのそれとは異なり、力任せにフルキャストして距離を稼げばいいというものではありません。フカセ釣りでいう「遠投」とは、竿2~3本程度以内の「足元」に対しての「遠投」ですので、せいぜい30m~40m程度です。フカセ釣りの軽い仕掛けではそのくらいまでしか飛ばせないでしょう。そんな、フカセ釣りにおける「遠投」には、軽い仕掛けであるが故の、意識しておかなければならない事項がいくつかありますので説明して行きます。
ウキの選定は熟考に熟考を重ねて!
フカセ釣りで遠投するにあたり、最も厄介であるのにもかかわらず、最も重要なパーツはウキです。中通し式の円錐ウキを使う場合でも、棒ウキを使う場合でも、まず意識すべきことは、適度な重量があり、かつ重心が正しい位置にあり、飛行姿勢が安定するセッティングと仕掛け全体の重量バランスを考慮するということです。
仕掛けを遠投するシーンにおいては、ウキは仕掛けの飛行姿勢をつかさどる重要なアイテムです。フカセ釣りの非常に軽くて細い仕掛けの飛行は、最も重量のあるウキがパイロットとなって仕掛けの飛行を牽引しなければなりません。すなわち、ウキが先行して飛行し、ウキに道糸が引っ張られ、その後ろを潮受けパーツ、ガン玉、ハリス、刺し餌の順番で真っ直ぐ飛行するのが理想です。そして、着水直前にラインの放出を手で軽く押さえて(パーミング)、その抵抗で仕掛けを180度反転させて、刺し餌、ハリス、ガン玉、潮受けパーツ、ウキの順番で着水させるのが、最もトラブルが少ないキャスト法になります。パーミングを行わない場合は、着水時に仕掛けが絡んでいないことを確認したら速やかにリールを少し巻いてラインスラックを取り、刺し餌、ハリス、ガン玉、潮受けパーツ、ウキの並びを作り、仕掛けを早く馴染ませることが大切です。
しかし、遠投時の視認性を優先し、体積が大きく、かつ浮力の高いウキをつけてキャストすると、ウキが空気抵抗を受けて大きく失速し、ウキの後方を飛行しているパーツ類がウキを追い越し、空中で仕掛けが絡んだ状態で着水するという重大なトラブルが起こりやすくなります。棒ウキを使って遠投する場合は円錐ウキを使う場合よりもリスクが高くなります。
遠投する際は、できるだけ体積が小さく、重量がある程度あるウキを選択すべきです。
因みに、私は普段、地磯でフカセ釣りをする際は、写真の小型自立棒ウキ「釣研・T-LANCER S」を使うことが多いのですが、浮力違いを5種類使っています(00、0、B、3B、5B)。外観上のサイズはすべて全く同じです(19mm×153mm)が、重量がすべて異なります(00=15g、0=14.5g、B=14g、3B=13.6g、5B=12.8g)。狙う水深、風の有無、潮の流れの強弱を考慮して使い分けています。小型自立ウキは、遠投するとウキはほとんど視認できませんが、見えない時は道糸を張った 状態で右手親指と人差し指で摘んで、道糸からアタリをとっています(私は竿は左手持ち、リールは右手巻きです)。
コマセを打つ際に意識すること
遠投する際は、コマセを打つ際に気をつけなければならないことがあります。足元にエサ盗り用のコマセを打ちながら、ターゲットを狙いたいポイントにコマセを力いっぱい遠投するわけですが、むやみに撒くとかえって逆効果になることがありますので注意しましょう。
コマセの調整をもう一度行う
コマセを遠投するには、近くに打つ時とは違い、強い力でコマセ柄杓を振り下ろす必要があります。その際、コマセがある程度の粘りをもってしっかりまとまっていないと、コマセ柄杓から放たれたそばから空中でバラバラになってしまい途中で落下し、狙ったポイントに着水するものはほんのわずかとなってします(全く届かないことの方が多い?)。
そうなると、コマセを狙ったポイントに効かせられないだけではなく、途中でバラけて落下したコマセが広範囲に拡散し、せっかく餌盗りを足元に釘付けにして分断していたのが破綻し、餌盗りの範囲を爆発的に広げてしまうことになりかねません。コマセを遠投する場合は、決して飛行途中のポイントにこぼしてはいけません。
狙ったポイントよりちょっと手前に打つ
コマセのチューニングをバッチリ行ったら、次はコマセを打つポイントについて考える必要があります。ただでさえ遠いポイントに撒かなければなりません。どうしてもコントロールは甘くなり、ピンポイントにズバリ打ち込むことは難しいかも知れません。沖目は足下と比べ潮の流れも早く、コマセを打ち込むコントロールのズレはあっという間にポイントの分散につながります。すなわち、ただでさえ遠いポイントがさらにどんどん遠くなってしまいます。自分が軽量のフカセ仕掛けをキャストできる距離を超えた場所にコマセが効いてしまったら、刺し餌を食わせることはほぼ不可能になります。
また、遠投した仕掛けは着水したあと、ラインメンディングする際に、道糸が引っ張られる力がかかるため、自分の方に向かって流れます。そして、仕掛けが馴染み、刺し餌がゆっくり沈んで行く時にも、道糸がスルスルと出ていく状況だったとしても、ウキを支点としてわずかに手前に戻りながら沈んで行きます。そのため、コマセの着水点よりも遠いポイントに仕掛けを着水させなければ、仕掛けをコントロールしながらコマセと刺し餌を同期させることができないのです(当て潮の場合を除く)。
コマセ柄杓はチタンカップ+カーボンシャフト75cm以上のモノを
コマセの遠投が上手くできるか否かを左右する要因として最も重要なのは、コマセのまとまり度合いを高めることですが、その他の大きな要因として、コマセ柄杓の選定が挙げられます。コマセ柄杓は、一本数百円の安価なものから、1万円を超える高級品まで様々な商品があります。上の写真の2本のコマセ柄杓は、上がチタンカップ+カーボンシャフト(カーボンテープによるねじれ補強付)、下が樹脂カップ(ABS)+カーボンシャフト(補強なし)です。
コマセ柄杓はカップ、シャフト、グリップの3つのパーツで構成されていますが、これらのパーツの材質がいくつかあります。
- 【カップ材質】チタン>ステンレス>樹脂(ABSが多い)
- 【シャフト材質】カーボン繊維>グラス繊維>樹脂(ABSが多い)
- 【グリップ材質】コルク>EVAスポンジ>樹脂(ABSが多い)
これらのうち、フカセ釣りのコマセの遠投に向いているものはズバリ、チタンカップ+カーボンシャフト+EVAスポンジで構成された柄杓です。長さは75cm以上が遠投に向いています。価格は1万円前後と安くありませんが、探せば5,000円~6,000円程度で買えるものもあります。
チタン製のカップは、圧倒的に軽く、耐久性が高く(チタンは通常の使用では劣化せず半永久的に使える)、コマセ離れの良い素材です。
樹脂製のカップは価格は安くて良いのですが、コマセ離れがあまり良くありません。一部の製品では、樹脂カップに不粘着コーティングが施されているものもありますが、耐久性はあまり良くありません。
カーボンシャフトは、カーボン繊維の含有率が高いモノや低いモノ、カーボンテープでねじれ補強をしているか否か(ねじれ補強がされているシャフトを使ったものはコントロール性が良くなる)など、様々なものがあり、正直玉石混交ではありますが、カーボン繊維97%程度で、カーボンテープで補強され、張りのあるシャフトを選んでおけば問題ないでしょう。
グリップの材質や形状は正直好みの問題かと思います。私はトリガータイプのEVAスポンジグリップが手にしっくりくるので愛用しています。
ラインコントロールに神経を集中!
最後はラインコントロールについてお話します。
遠投する距離にもよりますが、直径3cm程度の円錐ウキや、トップの長さが10cm程度しかない棒ウキなどは、40mもキャストしたらもうほとんど目視は出来なくなっていることでしょう。遠投フカセ釣りの場合、ウキの役割のひとつである、「魚信(アタリ)をアングラーの目に伝える」という機能は死んでしまっていると言っても過言ではありません(ロング棒ウキを使う場合は別ですが)。
そのため、アタリは他の方法で取らなければなりません。となると、ラインで取るしかないのですが、視認性の良いカラーのラインを使ったとしても、距離が遠いため、目視でアタリを取るのはやはり非常に難しいと言えます。
遠投時の仕掛けの流し方とアタリの取り方
遠投すると、どうしてもラインスラックが多く出ます。これをできる限り回収し、道糸を張り気味にして流さなければなりません。
仕掛けが着水したらベイルを下ろしてラインスラックをできるだけ取ります。ラインがある程度張り気味になったらベイルを上げて仕掛けを流します。その際、スプールに軽く手のひらを添え、潮の流れに引っ張られている抵抗を感じればスプールに添えた手を離し、少しずつラインを出して行きます。
そして狙ったポイントに仕掛けが入れば、ラインの張りを維持しながら、竿を持っていない方の手の親指と人差指でラインをつまみ、ダイレクトにアタリを取りましょう。アタリが出たらベイルを下ろし、フッキングに備えます。
ラインの張りはフッキングに影響する
フッキングに際しては、ラインをできる限り張り気味にしておかないと、距離がある分、アワセが効きづらくなります。アワセがバッチリ効かないとフッキングが正しく出来ず抜けてしまったり、フッキングが出来たとしても刺さりが甘かったり、位置が悪かったりして、高確率でバラシに繋がってしまいます。遠投の場合は、足元で釣る場合と比較して、やや強めにアワセを入れたほうが良いでしょう。
遠投フカセで型を追求しよう!
いかがでしたでしょうか? 遠投フカセ釣りは意外と体力を消耗しますので、一日中ロングキャストを続けることは難しいかもしれません。また、近距離を流すフカセ釣りと比較して、ウキの選定やコマセの性状調整と打ち方、ラインのテンションコントロールなど、やり方がかなり異なりますので、慣れないうちはコマセと刺し餌の同調がうまくできなかったり、アタリが感じられず、フッキングのタイミングが分からなかったりするかもしれません。
しかし、フカセ釣りを一度でも経験したことがある方であれば、一日でコツはある程度習得できるはずですので、あまり難しく考えず、接近戦が難しい場合のオルタナティブとして、遠投フカセ釣りをいつでも繰り出せる準備をしておきましょう。遠投フカセ釣りは思わぬ大物が期待できる、夢のあるメソッドです!