フカセ釣りにおけるコマセの配合とは? 無限の組み合わせから自分の鉄板レシピを作ろう!
作成:2024.11.27更新:2024.11.27
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フカセ釣りはコマセがないとできません。フカセ釣りにおけるコマセの配合は人それぞれて、全く同じレシピ、同じ配合のコマセを使っている人は一人もいないのではないかと言えるほど個人差があります。
また、ひとたび釣具屋に行けば、対象の釣りに応じた様々な配合コマセや、コマセにある特定の機能(比重や粘度の調整機能や、本命の魚種の集魚効果、エサ盗り対策など)を付加させるための添加材などが山のようにおいてあり、どれを購入すればよいのか分からないなんてことも。
正直言ってしまうと、正解というものは存在しません。しかし、遠投性、拡散性、沈降スピード、濁り性、集魚性、エサ盗り忌避性など、目的に応じてコマセのレシピに自分なりのパターンを作っておくことは非常に有効で、現場で臨機応変にコマセのレシピを変化させて立ちまわることができれば、現在の状況(エサ盗りが多すぎて釣りにならないなど)を打開できる可能性が俄然高まります。
ここでは、季節や状況に応じた最適のコマセのレシピについて、解説して行きたいと思います。
コマセなくしてフカセ釣りは成立し得ない
フカセ釣りは、コマセを撒いて自分が現在いる釣り座にターゲットの魚を寄せて釣るという、他の釣法とは少し異なる釣りです。ダンゴ釣り(紀州釣り)、カセ釣り(かかり釣り、筏釣り)、エビ撒き釣り、サビキ釣りなど、何らかの餌を撒いてターゲットをおびき寄せて釣る釣りはいくつかありますが、フカセ釣りのコマセほどバリエーションが無限にある釣りは他にありません(ダンゴ釣りのダンゴのレシピはフカセ釣りのコマセ同様ですが、これはまたの機会に)。
サビキ釣りもエビ撒き釣りも、自分の釣り座の周りにターゲットがいる場合はそのターゲットの活性を爆上がりさせる瞬発力はありますが、ターゲットが近くにいない時、遠くからターゲットをおびき寄せるというのは得意ではありません。
一方、フカセ釣りのコマセは、比重や水分量、配合を調整することで、潮流に乗せて遠くまでコマセを届けることができます。複数の流れが絡み合い、複雑な潮流がぶつかって収束するような場所へ流せば、コマセの成分がその場所に一定時間留まる、いわゆるコマセだまりを作ることもできます。
そうやって撒いたコマセが水中をどうやって漂い、どの程度のスピードで沈みながら、最終的にどこへ流れつくか、そしてどこでターゲットに喰わせるか・・・そんなことを想像しながら魚との知恵比べを楽しむのがフカセ釣りの醍醐味とも言えるでしょう。
コマセの役割について
コマセは、「ターゲットの魚を自分の釣り座の周辺に集める」ためのツールですが、単に魚を寄せるだけではなく、様々な役割(機能)を付与するために、いろんなものを混ぜて、自分なりのレシピを作るのが普通です。この、「自分なりのレシピ」を築き上げるには、トライ&エラーを繰り返し、Plan→Do→Check→Action→Plan・・・と言った、「PDCA」のサイクルを回し続け、ブラッシュアップして行くしかありません。
ここでは、コマセに持たせる「役割」について簡単に説明します。
においを出して潮流に乗せる
コマセのまず一番目の機能です。潮流に乗って、ターゲットの好むにおい成分が拡散されれば、よほど水温が低く、低活性状態でなければ、においのする方向にターゲットが集まってきます。
水中に濁りを作り、魚の警戒心を和らげる
潮上の方向からいいにおいが漂ってくると、魚はにおいの方向に寄ってきます。しかし、水が澄んでいたりして水中が明るい場合、魚は警戒心を強くしているため、コマセの方向に積極的に向かって行って捕食することはありません。そのため、コマセには煙幕効果を付与しなければなりません。比較的比重が軽く、水中で濁りを作る微粒子を添加し、ターゲットの魚が濁りの中で警戒心を緩めた状態で刺し餌を捕食させるように仕向けてやります。これがコマセの二番目の機能です。
刺し餌を隠す
ターゲットの魚には、針に刺さった餌を食わせてやらなければ絶対に釣れません。かといって、刺し餌がそれ単体で漂っていたとしたら、警戒されてちょっと咥えてすぐに吐き出されてしまうかも知れません。理想は、コマセ中の微粒子が水中に作った濁りの中に、刺し餌と同じものが、「同じ挙動で」カムフラージュとして漂っている状態です。つまり、トラップである刺し餌は、ターゲットの魚にとって安全な撒き餌の中に紛れ込ませる必要があります。そのため、コマセのレシピの中には必ず刺し餌と同じものを混ぜる必要があるのです。この、「刺し餌を隠す」ということが、フカセ釣りにおけるコマセの最も重要な機能であると言えます。
特定の魚種だけの嗜好性を上げる
コマセを撒くと、当然ながら本命の魚以外、いわゆる「餌盗り」もたくさん集めてしまうことになります。こうなってしまうと釣りにならなくなってしまいますので、コマセの打ち方を工夫してエサ盗りと本命を分断させるなどのテクニックもありますが、本命にだけ効くレシピをコマセに混ぜる方法は非常に効果的です。
例えば、クロダイが本命魚ならサナギ(カイコガのサナギ。繭から絹糸を取った後のサナギを釣りエサに再利用)やトウモロコシ、メジナが本命ならノリ(アオサノリやハバノリなど。メジナの食性が変わる冬季に特に有効)をコマセに混ぜて使えば、餌盗りの活性を上げることなく、本命魚のみの嗜好性を上げることができます。
コマセの基本レシピ
ここからはコマセの基本レシピについて説明します。最低限の組み合わせが「配合コマセ(ベース材)」+「オキアミブロック」となります。これだけで十分釣りになりますが、それにどんなレシピを加え、どんな機能を付与するかがフカセ師の腕の見せ所であります。
ベース材(配合コマセ)
ターゲット魚種ごとに、嗜好性が高いものをブレンドした、コマセのベース材となるものが配合コマセです。小麦粉、米ぬかなどを母材として、においで誘うもの(魚粉、ニンニク粉など)、キラキラと視覚にアピールするもの(牡蠣ガラ、雲母など)をブレンドしたものです。これに押し麦やコーン、ウニエキスやアミノ酸などのうまみ成分を加えてより嗜好性を高めたものなど、ターゲット魚種ごとにそれこそ星の数ほど商品がありますので、とにかくいろいろ試してみてください。
配合コマセの袋には、そのコマセの「性状チャート」が記載されています。指定されたレシピと正しい海水添加量で作られたコマセの性質がスケールで数値化されたものです。比重が重いものは沈降が速く、遠投性に優れる。比重が軽いものは遠投性は高くないものの沈降が遅く、拡散性が高い。また、濁りが強く出るもの、弱いものなど、求める性能に応じて使い分ける必要があるので、性状チャートは必ず確認しましょう。
オキアミブロック
ベース材ひと袋に対し、オキアミブロック3kgを添加するよう指定しているものが多いようです。オキアミブロックは冷凍された状態で販売されているので、使用時までに解凍されていないと使えません。事前に釣具店にお願いして解凍してもらうか(解凍サービスをしている店舗に限ります)、前日までに購入し、配合コマセと一緒にバッカンの中に入れて自然解凍しておきましょう。
完全解凍ができていないときは、マゼラーを使ってオキアミブロックを崩しながら配合コマセと混ぜて行きますが、ここで注意したいことは、できるだけオキアミをつぶさないようにして混ぜることです。先述の通り、コマセには刺し餌をカムフラージュさせる目的がありますので、できるだけオキアミの粒を破壊せず自然な状態で海中を漂わせ、その中に刺し餌を紛れ込ませるのが理想です。
オキアミは解凍されるとたちまち劣化が始まります。夏場はあまり早く解凍始めてしまうと、現地入りする前に黒ずんだり、腐敗してしまうこともあるので気をつけましょう。
添加材
コマセの嵩増し、集魚効果のアップ、餌盗り回避、比重の調整、遠投性付与など、様々な目的で、添加材を加えることもあります。フカセ師のこだわりを発揮する部分でもあります。
オカラをベースに、ニンニク粉末を大量に加え、真っ白い粉末に仕立てた、ヒロキュー・ホワイトパワープラスは、水を吸って体積が4倍に膨れるため、コマセの増量効果と強烈なニンニクのにおいによる集魚効果、真っ白い軽比重粉末による濁り効果を付与する非常にコストパフォーマンスの高い添加材です。
押し麦、オキアミ粉末、ニンニクエキス、アミノ酸酵母をブレンドした、ダイワ・強力グレZ ど遠投は、水を加えると粘りが出る添加材で、コマセのまとまりが良くなり、かつヒシャク離れが良く、遠投性が格段に上がります。沖目のポイントを狙うには是非使いたいレシピです。ベース材としてそのままオキアミブロックを混ぜて使うことも可能です。
メジナの食性が変わる冬季に、オキアミベースのコマセ、刺し餌では反応が悪くなることがあります。そんな時に非常に効果があるのが、ノリを配合した添加材です。いわゆる「寒グレ」と呼ばれる厳冬期のメジナは、水深がある磯際の岩の隙間などに隠れていて、体力温存のためあまり泳ぎ回りません、積極的な摂餌行動はとらず、自分の鼻先にやってきたプランクトンや、岩に生えている藻類を食んだりしています。
オキアミでは全く反応がないときは、迷わずノリを配合したコマセに切り替え、刺し餌も岩に生えているノリをはぎ取って、丸めて針に刺して流せば口を使ってくれるケースが多々あります。
その他、コイン精米所で無料で手に入る米ぬか、或いは釣具店でも安価で手に入るパン粉などは、水分量調整、遠投性付与などのため、いつも常備していると便利です。中でも個人的に大変便利だと思うのが、突然雨が降ってきたり、与太波が突然来たりしてバッカンの中に海水が入り込み、コマセがぐちゃぐちゃになってしまった時の粘度調整材としてパン粉や米ぬかをまぜると粘度がもどり、再びコマセとして使用できるようになります。
マルキュー
また、アミノ酸の液体などうまみ成分を凝縮した添加剤はコマセに混ぜたり、挿し餌を漬けたりすると、魚の捕食スイッチを入れる効果や、刺し餌オキアミの締め効果があります。渋くてどうしようもないとき、刺し餌の針持ちが悪くてどうにもならないときなどには使ってみると良いかもしれません。
刺し餌オキアミの自作ハード加工
最後に、刺し餌オキアミについて、オキアミブロックからの自作のハード加工について記述いたします。
私もこれまで、刺し餌のオキアミは釣具店でハード加工がされた生オキアミを長年使ってきましたが、近年の値上げラッシュで、なかなかお高いモノになってしまいました。そこで、コマセ用のオキアミブロックから刺し餌用のハード加工を施し、冷凍庫でストックするようになりました。そのやり方について簡単に紹介します。
1.オキアミブロックを冷蔵庫内で解凍する
まずは家族の許可を得て(これが一番大事!)、釣具店で購入したオキアミブロックを冷蔵庫の中に一日置き、ゆっくり解凍します。大きすぎるものは冷蔵庫内解凍が大変なので、24切(1kg)か、48切(500g)くらいがおすすめです。私は24切で、約6時間の釣行5回分のストックを作っています。
このとき、オキアミはパックから出さず、バックごと解凍します。中身を出してしまうと、冷蔵庫内に臭いが出たり、オキアミが空気に触れて劣化が始まるためです。
2.解凍が終わったオキアミをザル付きボウルに入れる
解凍が終わったらよくほぐし、ザル付きのボウルに入れます。あまり入れすぎると後の工程が大変なので(写真は入れ過ぎ)、ボウルの半分くらいまで入れるのが良いでしょう。
3.みりんをオキアミがひたひたになるまで入れる
ボウルにみりんを注ぎ込み、オキアミがひたひたになる程度まで満たします。みりんとオキアミの浸透圧の違いにより、オキアミの中の水分を抜きながら、オキアミの身にみりん成分が入り込みます。みりんは、本みりんでも、みりん風調味料でも、どちらでも構いません。漬け込む時間はだいたい半日くらいが良いでしょう。
4.漬け込みが終わったらみりんやドリップを完全に切る
うまくオキアミの身にみりん成分が入り込むと、オキアミの身が透明になります。プリプリでいかにも釣れそうな感じになっています。この身はしっかりと締まっていて、針持ちが劇的に向上しているはずです。
5.オキアミ全体に砂糖をまぶし、さらに水分を抜く
水分がきれたオキアミ全体に砂糖をまぶし、さらに冷蔵庫で半日程度置き、水分を抜きます。途中、何度もドリップが出ますので、こまめに捨てながら、完全にドリップが出なくなるまで冷蔵庫に入れておきます。
6.水洗いして、グルタミン酸ナトリウム(味の素)をまぶす
5.の工程で、完全に水分が抜けたら完成でも良いのですが、この状態だと現場で扱ううちに手がベトベトになり、ロッドやリールが著しく汚れるので(釣行後水拭きすればきれいになりますが)、気になる方はオキアミを水洗いしてしまいましょう。
身が完全に締まっていれば、水の浸透圧は低いため、オキアミの身に水が入り込むことはありません。当然、水洗い後はよく水切りをして、最後にうまみ成分のグルタミン酸ナトリウムを全体にまぶし、冷凍保全ができる容器にこわけにし、ハードオキアミの完成です。
毎回ハード加工されたオキアミを買う場合と比較すると、コストは1/5くらいで済みます。針持ち効果も市販のハードオキアミと変わりません。
ただし、自作ハード加工をすると、オキアミのサイズがワンサイズ縮みますので注意しましょう。元のオキアミブロックは大粒のものを使いましょう。
フカセ釣りの醍醐味、コマセレシピを極めよう!
いかがでしたでしょうか? フカセ釣りの最も重要なアイテムであるコマセのレシピには正解はありません。その場の状況に応じて知恵を絞り、あらゆる手を尽くすことが、成功への唯一の近道と言えるでしょう。お互い頑張りましょう!!