フカセ釣りの最重要アイテム、ウキの浮力について考えてみよう。たかがウキ、されどウキ!
作成:2025.01.24更新:2025.01.26

目次
フカセ釣りの「フカセ」とは何なのでしょうか? 本来の意味は「糸、針、餌の重さだけで自然の潮の流れの中に仕掛けを漂わせる」ことを「フカセる」といい、その漂っている餌を魚に食わせる釣りのことを「フカセ釣り」といいます。つまり、今から4万年ほど前の旧石器時代に始まったとされる原始の釣りがフカセ釣りであったといえます。
この「原始の釣り」には、「ウキ」、「オモリ」はまだありません。その時代から人間は知恵を働かせ、より効率的に獲物を釣り上げるためのツールを発明し続けてきました。日本においては、西暦700年代、奈良時代~平安時代頃の釣り用ウキと思われるものが出土しています。
以来、現在に至るまで、ウキは進化を続け、フカセ釣りにおいてはなくてはならないアイテムとなっています。
正確には、ウキを使うフカセ釣りは、「ウキフカセ釣り」といい、ウキを使わない釣りは「完全フカセ釣り」というのですが、現在は「フカセ釣り」といえば、「ウキフカセ釣り」を指すことの方が多いです。本記事でも「ウキフカセ釣り」とはいわず、単に「フカセ釣り」と記載します。
フカセ釣りの最重要アイテムとも言えるウキの役割を知り、状況に応じてベストな浮力を選択できるスキルが身についてくると、ウキの選択は非常に奥が深いことが分かります。
今回はそんなウキについてあれこれ考えてみたいと思います。
ウキの役割

フカセ釣りにおけるウキの役割については、過去記事「フカセ釣り最大のキーアイテム「ウキ」を大解説!最強のウキはどれだ?」で記述しておりますので、詳細はそちらをご参照いただければ幸いです。
簡単におさらいすると、
- 仕掛けを遠くに飛ばす
- 仕掛けを潮の流れに乗せて食わせエサを自然に流す
- 魚信(アタリ)をアングラーに可視化して伝える
という、基本的な役割があります。
ただ、この、「ウキの役割」を正しく発揮させられるか否かは、アングラー自身の手腕にかかっています。
海の状況は二つとして同じ瞬間はありません。天気、風、潮流、うねり、水温、濁り・・・刻一刻と変化し続ける状況に応じて、仕掛けも変化させていかなければ、ウキの役割を適切に働かせ、少ないチャンスを確実にモノにすることは難しいでしょう。
そのためには、ウキの「浮力」、「形状」、「大きさ」といったパラメーターを理解し、状況に応じて変幻自在に使いこなすスキルが必要になるのです。
ウキの「浮力」と「余浮力(残浮力)」

ウキには必ず「浮力」が設定されています。ウキの本体に印刷されている、「0」、「G5」、「B」、「1号」などの表記が浮力です。様々な表記があって分かりづらいのですが、おおよそ以下のグラム数を表しています。
- 000・・・-0.1g以下(ハリス、針、餌の重量で仕掛けが馴染むと沈む)
- 00・・・-0.1g(ハリス、針、餌の重量で仕掛けが馴染むとゆっくり沈みはじめる)
- 0・・・0g(ハリス、針、餌の重量でギリギリ浮く)
- G5・・・0.35g
- G2・・・0.35g
- B・・・0.55g
- 2B・・・0.85g
- 3B・・・1.0g
- 5B・・・1.65g
- 0.8号・・・3.0g
- 1号・・・3.75g
- 2号・・・7.5g
記載されている重量までであれば、ウキが海面に浮いた状態で仕掛けを保持することができます。しかし、海水の塩分濃度や水温などの違いにより、設定重量でも仕掛けが沈んでしまったり、浮力設定どおりの制御ができないことがあります。
そういうことを見越して、ほとんどのウキには「余浮力」、「残浮力」という、設定した浮力+αの浮力が設定されています。製品によって余浮力は異なりますが、大体0.2g~0.3g程度と、非常に小さいです。G4(0.2g)~G2(0.31g)のガン玉をハリスに1個打ってもギリギリウキが浮いていられるといった感じです。
このように、ウキの浮力は非常に細かく調整して使いますが、ここに記載されている数字をすべて丸暗記する必要はありません。一番の目的は、餌盗りをかわしながら本命魚がいる場所まで刺し餌を運ぶということですので、現在の良くない状況、例えば、餌盗りの猛攻を受けていて釣りにならないとか、潮の流れが複雑すぎて狙った場所へ仕掛けを送り込めないとか、湧き潮が強く刺し餌が沈んで行かないなど、状況が良くない原因を正しく把握し、状況を打開するために様々な手を打つという「引き出しの数」をひとつでも多く持つということが大事です。
状況別ウキの浮力の使い分け

ここからは、どういう状況の時にどういうウキを使うべきなのか、使い分けの基本について説明いたします。もちろん、状況は様々でひとつとして全く同じ状況ということはあり得ないので、「これが正解」といったものではありませんので、正解はその時々で自分で見つけ出さなくてなならないことはお見知りおきください。また、本記事では、ターゲットをメジナにする場合とクロダイにする場合で説明して行きます。
スタート時のセッティング

まずは現場について、一番最初の仕掛けについて説明します。スタート時の仕掛けは、とりあえずお試しでやってみるということで、「パイロット仕掛け」ということもあります。ルアーフィッシングでも、第一投で使うリグを「パイロットルアー」といいますね。あれと同じです。
自分が通いなれた場所で、水深や根の状況等が分かっている場合は、自分が最も使うことが多い、信頼できる仕掛けをパイロットとすればよいでしょう。初めて入る場所など、情報が少ないポイントの場合は、水温と風の有無、波の状況やエサ取りの数や種類を見極めてパイロットの仕掛けを決定します。

ターゲットがクロダイの場合は、基本的にはいつでもボトム狙いで問題ありません。タナの調整と言っても、「這わせ(ベタ底)」、「トントン(刺し餌が底をピッタリ打つ程度)」、「宙釣り(刺し餌が底から20cmくらいまで浮かす)」くらいと、調整幅はさほど多くないので、状況不問でまずは必ず「底取り」を行います。ウキ止め糸をつけた半遊動仕掛けにして、ウキの浮力よりも重い「タナ取りオモリ」を針に取り付けて仕掛けを投入します。
ウキ止め糸をつけたラインがウキのスイベル部、もしくはストッパー部まで来たとき、ウキが沈んで行けば浅すぎるため、ウキ止め糸を上げて、ウキの喫水線が水面と同じ高さに来るまで調整します。
逆にウキの喫水線が水面より上に来ていれば深すぎるため、ウキ止め糸を下げて調整します。
正しく底が取れたら釣りを開始しますが、パイロットとしては5B程度のウキで様子をみます。着底前にエサ取りにやられてしまったり、水深が10m程度と深いようであれば、素早く挿し餌が着底するよう、0.8号〜1号程度のウキを使っても良いかもしれません。ポイントが遠く、遠投する場合は2号のウキを使うこともあります。

ターゲットがメジナの場合は、冬季は深め狙いで3B〜5Bのウキを、それ以外のシーズンは2ヒロ〜竿1本くらいの水深までを探るため、B〜0号のウキをパイロットとして使うとよいでしょう。
コマセをこまめに撒きながら、仕掛けを同調させるよう流します。ハリスには通常、ガン玉やジンタンは打たず、自然に仕掛けを流し、様子を見ます。
アタリがないのにも関わらず餌が齧られているようであれば、タナが深すぎの可能性があります。その場合は15cm〜20cm程度のピッチでタナを浅くして、アタリが出るよう調整します。
メジナは下から上に向かって餌を捕食し、餌をくわえたら下に潜ろうとしますので、ウキが一気に沈む明確なアタリが出ることは多いです。活性が高ければどんどんメジナは浮いてきます。場合によっては1ヒロ以下のタナで入れ食いになるなんてこともあります。
逆に厳冬期など、活性が著しく下がっているときはボトム付近まで刺し餌を沈ませて、ターゲットの鼻先に刺し餌を持って行くコントロールが求めらることもあります。
晴天で凪の日中のセッティング

コマセを使うフカセ釣りは、「天気が良く水がピカピカに澄んだ凪の日中」という、一般的には最も釣れないといわれている状況でも十分釣りになります。潮が動いていることが条件ですが、コマセは「濁りを作る」ことができ、濁りの中を探れば魚の警戒心を緩和できます。
また、潮の流れに乗せて流すと、ある場所にコマセ溜まりができ、ターゲットが寄ってきやすい環境を作ることもできます。こうして、状況が悪いときでもポイントを作りながら探れるというのがフカセ釣りの大きなアドバンテージです。
波がなく、ベタ凪の時は広範囲を探れます。遠投しても仕掛けのコントロールがやりやすいので、飛ばせるウキを使い、30m~50m程度の範囲を流すのも面白いです。
クロダイ狙いであればロング棒ウキの1号程度を使い、オモリも中通しの1号などを使います。遠投してもタナはボトム付近を狙うのは変わりません。メジナ狙いの時は、G2~0号程度の浮力の小さいウキを使い、ハリスにはガン玉を打たず、ウキ止めを使わない全遊動仕掛けでコマセと刺し餌の同期に重きを置き、広く探ってみましょう。
悪天候で海が荒れている場合

フカセ釣りにとって非常に釣りづらい状況は風が強いときです。軽い仕掛けが風にあおられてコントロールが極端に難しくなることと、海中が荒れると仕掛けが中に入っていかないということが起こります。こういうケースでは、まずは風の影響を軽減してやらなければなりません。
風の影響を軽減するためには、仕掛けの「水面に出ている部分」をできる限り、水中に入れ込んでしまいましょう。ラインは水に沈む「サスペンドライン」もしくは「セミサスペンドライン」を使い、可能であれば竿先を水中につけてしまい、穂先から先の部分がすべて水中に沈んでいる状態を作りましょう。ウキの浮力を小さめにして、ハリスにガン玉やジンタンを段打ちし、沈め設定にします。
具体的には、形状は大き目ながら浮力がほとんどない、00号、000号のウキにして、ハリスは通常時よりやや長めに取り、G5(0.16g)~G7(0.09g)程度のガン玉を2~3個程度打ちます。仕掛けを投入したら、仕掛けが馴染みやすいようにラインスラックをとり、竿先を数十cmほど海中に突っ込み、強制的に仕掛けを沈めます。
仕掛けが十分馴染んだら竿先を水中から出し、アタリを待ちます。この方法はクロダイ狙いの時もメジナ狙いの時もほぼ同じと考えて問題ありません。沈め設定の場合はウキの視認性が極端に悪くなるので、ラインの動きを見てアタリをとります。そのため、あまり遠投はせず、磯際を丁寧に探る方が釣りやすいでしょう。
潜り潮を探せ!

表層と中層で潮の流れが違う二枚潮や、荒れて白波が立っている時など、どうしても仕掛けが馴染まず、上手く沈んで行かない時があります。そんな時は、「潜り潮」を探し、そこに仕掛けを投入しましょう。「潜り潮」とは、海水が対流していて、表層から底層に向かって下降している潮です。ここに仕掛けを投入すると、刺し餌や潮受けパーツなどが潜り潮の下向きの流れによって引っ張られ、仕掛けが上手く馴染んで行きます。
潜り潮を見つけるのは容易ではありませんが、見つけるコツはあります。潜り潮の近くには「湧き潮」といって、潜り潮とは逆の、底層から表層に向かって上昇する潮の流れがあります。この湧き潮は、海面がわずかに盛り上がって見えるのと、湧き潮の表面には白波やサラシができず、周囲とは明らかに見た目が異なる澄んだ色をしているため比較的容易に見つけられるでしょう。
海水の対流が起こっている場所では、湧き潮の周辺には必ず潜り潮があります。先ほど湧き潮には白波やサラシができないと書きましたが、湧き潮が表層で広がり、潜り潮になって下降を始めるところでは泡やサラシができますので、その境界を探せばよいということになります。仕掛けを重くして強制的に沈める方法もありますが、仕掛けの重量は極端に重くはせず、潜り潮に乗せて仕掛けを下に引っ張ってもらう方が自然な挙動を演出でき、ターゲットに見切られるリスクは少ないでしょう。
起死回生の一手は経験で増やした引き出しからのみ繰り出される!

いかがでしたでしょうか? フカセ釣りが上達するか否かは、まず、目の前の海の現況を正しくインプットし、状況を打開するためのあらゆる対策を検討し、ウキのサイズや浮力、ガン玉やジンタンのサイズや配置、ハリスや針の号数の組み合わせやバランス、さらにどのポイントに投入してどこで刺し餌を食わせるかということをアウトプットし、試行錯誤しながら最適解を見出だして行くスキルが求められます。
しかしこればかりは一朝一夕で身につくものではありません。同じ場所に通い続け、さまざまな状況下で釣りをして、失敗や成功の数を積み上げ、自身の引き出しを増やすしかありません。
いわゆるトーナメンターと呼ばれるような超上級者も、はじめは全員素人で、おびただしい数の経験を重ね、失敗を繰り返しながら、自身のメソッドを確立して現在の地位を獲得された方々ばかりです。
私達もそういう強者たちが辿ってきた軌跡を紐解きながら、とにかく場数を踏んで、自分の引き出しを増やして行きたいものですね!